フウキラン 富貴蘭
別名=フウラン 「着生蘭」
元々温暖な地方で、樹木に着生するラン科の植物で1属一種。
茨城県南部から九州、南西諸島に分布し、わずかに朝鮮半島や中国にも見られる。
野生種に対して、変異株を収集したものを「フウキラン」と呼びます。
江戸時代には、将軍や諸大名が金と力で300種もの貴品、珍品を山野から集めた記録がある程の流行りだったようです。
1属一種で、交雑によらず、突然変異でできた品種がこのように発展した事は、チョウセイラン(長生蘭、セッコクの園芸品種)を始め、ハナショウブ、ニホンサクラソウなど日本の独特の技とも言えるでしょう。
✿性質
フウキランは常緑短茎性の蘭で、日当たりの良い樹上や、岩上の風通しの良い所に着生します。
茎は短く、独特の堅くて厚いトヨ状の葉を左右2列に互生し、一年に2〜3枚程度の新しい葉を出します。
普通5年くらいで葉が落ちますが、品種や管理の良いものは8年くらいもつ時もあります。
葉の枚数が多いものは、状態が良く少ないものは弱っている傾向があり、その株の健康状態の目安になります。
✿花
花は葉腋から生じ、白色花、まれに淡桃色の赤花が3〜10輪、7月下旬頃に咲き、芳香を放ちます。
近年では、品種改良が進み、花色も増えているようです。
✿耐寒性
温暖な地域に自生するものは、熱帯産の洋ラン程でもありませんが、寒さには弱い。
冬越しの際に、根は水分の吸収を止め休眠します。
体内の水分を減らして、耐寒性を増やし、やや寒い地方での越冬を可能にしています。
フウキランの自生する地域では、休眠期間中、加湿や保温の必要はありませんが、冬の乾燥や寒風は水分を奪うので傷みが激しくなり、ひどい場合は枯死してしまいます。
乾燥を防ぐ為の保護や加湿が必要です。
特にフウキランは変異した株であるため、野生種より弱い傾向があります。
斑入り種は日照にも弱く、夏は十分な保護が必要です。
✿栽培のポイント
自生地では、照葉樹の中部から上部分に着生が多く見られますが、針葉樹や岩の上に着生する事もあります。
環境に対する適応性は強く、その特性を理解していれば難しい植物ではないと思います。
ただし、植物が好まない状態にすると弱ってしまい、回復も難しい事になってしまいます。
⑴根が空気に触れる事を好むので、通気性を良くする事が大切です。
⑵根先が緑色や、ルビー色に透き通っている時は、成長期ですので水も肥料も十分に与え、白く不透明な時は休眠期なので、乾燥気味に管理して肥料は与えません。
⑶朝の2〜3時間は直射日光で、それ以外は1年を通して半日陰で育てます。
斑入り種は、やや強い70%位の遮光が適しています。
✿植え付け、植え替え
一般的にランの性質として、根の動き出す直前の4月上旬頃が適しています。
また、暖かい地方では3月中下旬が適しています。
最も自然環境に近い状態で、鉢植え栽培するには、過湿を避けるために腰高の鉢を使い、排水が良く根が空気に触れやすい形に植え付けます。
✭植え付け方
木炭を使った(風蘭鉢)植え
◉鉢に入れる前の状態
②木炭をミズゴケで1cm程度覆い
木炭の上部は多めに覆う。
③根を折らないように木炭の上に広げてまたがせます。
④長めのミズゴケを網目状に根に巻きつけ、根と株を固定します。
⑤鉢底の穴に防虫網を入れ、鉢にはめ込むように植え付けます。
植え込みの高さは3〜4cm程、鉢から盛り上げる程度。
✫場合によって、それ以上に高植えして植え込む事もあります。
鉢底と木炭は(防虫網と木炭の間)少し空けて通気を良くする。
⑥根を押さえたミズゴケの乱れを切りそろえ、潅水します。
✻木炭を使わない空洞植え
✻風蘭鉢
現在、花鉢の多くはビニールポットやプラスチック製の成形品の鉢が、多く出回っていますが、江戸時代には「白磁染付」の焼成された素晴らしい、瀬戸や有田焼でした。
当時、栽培するには素焼鉢や瓦焼鉢が利用され、人の目にとまる場所に置く時や、販売される時などでは、美しい鉢が使われていました。
“江戸蔵前八幡神社において展示会
当時流行した「オモト」の品種図譜”
図譜を見ると分かるように、江戸時代には植物鑑賞する為に、植木鉢にも拘っていた事が伺えます。
✿水やり
ミズゴケに✫緑藻が付かないように管理します。
✫緑藻(りょくそう)
緑藻とは緑色植物のうち、陸上植物の苔植物、維管束植物を除いたものの総称で、緑色藻とも言う。
5〜10月の成長期は2日に1回、休眠期は週に1回を目安として与えます。
✿肥料
着生ランは一般に多肥や濃い肥料は避けます。
5月頃に根の成長を見て、豆粒大の固形の油粕を2〜3個置き肥する。
追肥には液肥を標準の3〜4倍に薄め、成長期間中に3〜4回を目安に与える程度で十分です。
✿置き場所、環境
野生の植物の栽培は、適した環境をいかに作るかが最も重要になります。
日照は、気温の高い午後の直射日光は避けます。
生育期(4月〜9月)は、通気性を良くするために、涼しい風の通る木に吊るすか、ヨシズを張った棚に置き、冬期は暖地ではビニールで覆う程度で、凍る恐れのある地方では、室内などで保護します。
最低温度5℃を目安に湿り過ぎないようにして、暖かい日には葉水を与えます。
❆病害虫
過湿または乾かし過ぎた場合、生育不良になり、生理病が発生することがあるので通風には注意します。
鉢植えは、ミズゴケが古くなると発生するので、早めの植え替えが予防になります。
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