緑のお医者の徒然植物記

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2021/02/08

原始の地球に生まれた生物の祖先 No,368

 原始の海から生まれた生物の祖先

地球上には多種多様の生物がいますが、動物や植物などを合わせると、約130万種いると言われています。

生物は何を栄養として生きているかで、2つのタイプに分けられます。

⑴植物的な生き方

自分に必要な栄養物を自分で作って生きることで、植物は空気中の二酸化炭素を吸収し、光を使ってブドウ糖やデンプンを作っています。

⑵動物的な生き方

他の生物が作った栄養物を食べて生きることです。

だから、動物は植物や動物を食べます。

人類の周りにある全ての食べ物は、元を辿れば植物が作り出すものです。

地球上に初めて生まれた生物は、当然他の生物の作った栄養物を、食べることは出来ません。

つまり動物的な生き方をすることが出来ません。

その事から地球上で初めての生物は、植物的な生き方をする生物でなければならないと、言うことになります。

しかし、地球上に最初に生まれたのは、自分で栄養を作らない動物的な生き方をする生物だったのです。

その生物は何を食べて生きていたのでしょう?

その答えは、生物が初めて生まれた頃の「原始の海」の中にあります。

原始の海は生物が生きるために必要な栄養のスープ。

約46億年前に誕生した地球に、当時はどんな生物も存在しませんでした。

それから約6億年が過ぎた約40億年前に、地球上のあらゆる生物の祖先となる、最初の生物が誕生したのです。

初めての生物は、原始の海の中で生まれ、その頃の海はアミノ酸などの栄養になる物質が多く含まれていました。

地球上の最初の生物たちは「スープの海」に含まれる栄養物を食べていたのです。

なぜ、植物のいない当時の海に豊富な、栄養物が含まれていたのでしょう?

1953年にアメリカのスタンリー·ミラーが当時シカゴ大学、大学院生の時に行った実験
(ユーリーミラーの実験)
原始生命の進化に関する最初の実験的検証の一つで、いわゆる化学進化仮説の最初の実証実験として知られる。

この実験によって謎が解明されました。

当時の地球では、火山が噴火し、雷が鳴り、稲妻が走っていたと想像されます。

そこでミラーは、その時代に起こった稲妻に見立てて(フラスコA、図)で電気火花を長時間にわたり散らし続けました。


(ミラーの実験装置図)


それにより生成した化合物は(フラスコB)に集まるように工夫されています。

その結果、この様な気体の反応によって多種類のアミノ酸が作り出される事が解ったのです。

アミノ酸は、生物に不可欠のタンパク質を作る物質です。

つまり、地球が生まれてから生命が誕生するまで、約6億年と言うとてつもなく長い歳月をかけて、アミノ酸やタンパク質などの栄養物が蓄積され、やがて海は栄養物のスープの海になって行ったのです。

海の中には糖やミネラルも含まれ、栄養豊かで濃厚なスープであった。

生物の祖先はスープの海で生まれ、増殖して行き栄養物が十分にあったため、自分で栄養物を作る事が出来ない生物も、他の生物が作る栄養物に頼らずに生き続けられたのです。


✿植物の祖先の誕生

しかし、いつまでも栄養豊かなスープの海であるはずもなく、生物が生まれそれを食べ始めると、6億年の歳月をかけて蓄積した、栄養物もやがてつきてしまいます。

そして、30数億年前になると生物たちは、初めて地球規模の食糧危機に直面する事になります。

全ての生物が飢え死にする深刻な危機だった。

ところが、思いもよらぬ能力を持つ生物が出現したのです。

自分で栄養を作り出すことが出来る、植物の祖先の誕生です。

太陽の光を使って、ブドウ糖やデンプンを作り出す能力を身につけた生物たちです。

材料になる二酸化炭素と水は豊富にあり、植物の祖先たちが自分で栄養を作ることによって、動物の祖先はそれを食べて生きて行く事ができます。

こうして、植物の祖先が出現して以来、動物は自分たちの食糧を植物に依存して行くことになったのです。

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地球誕生での最初の地上植物は苔植物No,230







2021/02/07

花の色は2つの色素で決まる No,367

 花の色素

白色の花にも色素がある。

多くの植物の花はアントシアニンカロテノイドと言う、2つの色素で決められています。

✭アントシアニンは植物界において広く存在する色素。
青紫色をした天然色素の一種で、糖や糖鎖と結びついた配糖体成分のこと。

フラボノイドの一種で、抗酸化物質としても知られる。

アサガオ、ペチュニア、シクラメンなどの赤色の花や、キキョウ、リンドウ、パンジーなどの青色の花を色づけています。

✻カロテノイドは動植物に広く存在する黄色、橙、赤色などを示す天然色素の一群。






タンポポやマリーゴールドなどの花の色です。

因みに、カロテノイド、カロテンは英語読みで、ドイツ語読みではカロチノイド、カロチンです。

最近は英語読みが多く使われています。

✿黄色いキク、白いキクの場合
菊の花の色は多くの場合、黄色です。

これはカロチノイドによるものです。

菊の花にも赤みがかった色もありますが、それはカロテノイドにアントシアニンの赤色が混ざったものです。





カロテノイドやアントシアニンが、花びらの中に作られるためには、それらの色素を作る遺伝子が働かなければなりません。

よって、菊の黄色の花びらの中ではカロテノイドを作る遺伝子が働いているのです。

菊の黄色はカロテノイドによるものです。

それでは、白色の花を咲かせる菊の場合はどうなるのかと言うと、カロテノイドを作る遺伝子を持っていないか、あるいはカロテノイドを作る遺伝子が働いていない、と言う事になるのでしょうか?

ところが不思議な事に、黄色い花と同じ様に白い花にも、カロテノイドを作る遺伝子が存在しているのです。

しかも、白い花の中でも遺伝子が働いている事が解っています。

それならなぜ黄色くならないのかと言う疑問が出ます。

そこで更に調べられると、黄色い色素であるカロテノイドを作る遺伝子が働くと同時に、この黄色い色素を分解する遺伝子が働いている事が解明されました。

結果、作られるはずのカロテノイドが次々と分解されて、黄色くならないのです。

✿花が白色になるわけ

花が白色になる理由は別にあります。

白色の花にはフラボノイドやフラボンと言う色素が含まれています。

でもそれらは、色の色素ではなく無色透明か薄いクリーム色です。

つまり、これらの色素しか含まない花なら、花びらは無色透明か薄いクリーム色に見えるはずなのです。

ところが花はきれいな白色に見えます。

その理由は、花びらの中にたくさんの空気の泡があるからです。

小さな泡が多くあると、光が当たった時に反射して白く見えるのです。

滝などで、水しぶきは白く見えますが、滝に流れる水は普通の水です。

多くの空気の泡ができることにより、白く見えているのです。






つまり、白い花の色というのは、花びらの中に多くの小さな泡を含んでいて、それが白く見せているのです。

白い菊も花びらから空気の泡を追い出したら、白色ではなくなります。

花びらを指でつまんで強く押し付けると、その部分が透明の花びらになります。

アントシアニンを含んでいる赤色や、青色の花、カロテノイドを含んでいる黄色の花にも、空気の泡は多く含まれています。

しかし、これらの場合には、2つの色素の色が強いので、泡が反射する白色は見えないのです。









天敵利用による害虫防除 No,366

 天敵による害虫の防除

春になると虫の活動が活発になり、被害も増加してきます。

害虫防除や駆除には、薬剤が使われる事が多いですが、天敵を利用して害虫防除する方法もあります。

例えば、アブラムシの天敵として
テントウムシが有名ですが、この天敵を害虫防除に利用することを、生物的防除といいます。

生物的防除は、天敵の導入によって害虫による被害を、ある程度一定の水準以下に抑えようというものです。

これは、虫をもって虫を制すと言う考えに基づくものです。

天敵にはどういうものがある?

天敵には害虫を捕食する昆虫や、害虫に寄生する昆虫がいます。

昆虫以外に、害虫に病気を起こし、死亡させてしまう微生物も天敵として扱われます。

その他にも昆虫に寄生する線虫がいます。

✿食虫性動物

害虫を捕食する天敵昆虫には、テントウムシ、オサムシ、アカヤマアリメクラカメムシなど捕食虫がいます。

捕食寄生する天敵昆虫には、寄生バチ、寄生バエがいます。

これらの寄生虫には、特異な行動により寄主である害虫を、最終的に死に至らせる。

寄生バエ、寄生バチなどのことを特に捕食寄生者と言う。

寄生バチは、産卵管を害虫の卵、幼虫に差し込んで産卵します。

孵化(ふか)したハチの幼虫は、害虫の体を食べて成長し、そのまま害虫は死んでしまいます。

この様な寄生バチの種類はかなり多く存在していて、害虫の天敵の主力と言える。

天敵に関する研究は大変盛んで、多くの害虫において個体数の変動に及ぼす日本の生物的防除も、柑橘類の大害虫である「イセリアカイガラムシ」に対する「ベアリアテントウ」による防除が、1911年から行われて成功して以来、多くの試みが行われてきました。

害虫の卵が成虫になるまでには、色々な要因で死亡するが、一般には天敵の役割が極めて大きい。

天敵保護と言う観点になった場合、殺虫剤の使用量をなるべく減らした方がよいのは言うまでもない。

これらの頻繁な散布は、✻圃場の天敵密度を低下させることになる。

✻圃場(ほじょう)
栽培する植物を植えてある畑
農園、農場など

また、天敵が生息しやすいような環境を作ることは大切であるが、天敵保護を圃場ごとに行うことは難しい。

地域を単位に行わなければ効果は上がりにくい事になる。

外部から天敵を導入し、それを定着させることによって、半永久的な防除効果を狙う方法は、果樹を中心にして行われてきた。

これまでに柑橘害虫の「ヤノネカイガラムシ」を対象にした「ヤノネキイロコバチ」と「ヤノネツヤコバチ」を用いた防除試験や、クリ害虫の「クリタマバチ」を対象にした「ウゴクオナガコバチ」を用いた防除試験などが積極的に行われてきました。

捕食、寄生するハチの種類では、コマコバチ、ヒメバチ、ヤドリタマバチ、タマゴヤドリコバチ、クロタマゴバチなどがいる。

ハエの種類では、ヤドリバエなどがいます。


✿昆虫病原微生物

微生物天敵とは害虫に病気を起こす微生物のグループのことで、昆虫病原微生物という。

昆虫に伝染性の病気を起こす微生物には、ウイルス、細菌、糸状菌(カビ)などがあります。


昆虫寄生性線虫は、分類学的には微生物ではないが、便宣的に微生物天敵として扱うことがある。


昆虫のウイルス病は600種以上の昆虫に認められています。

宿主となるのは大部分がチョウ目な幼虫で、他に一部のハチ目、ハエ目に感染する種も報告されています。

これらの天敵による補食や寄生は、自然界では害虫の大きな死亡原因となっている。

補食者は一般に広食性で多くの種類の害虫を攻撃するが、補食寄生者の多くは単食性や狭食性で、特定の害虫を攻撃するため、特定の害虫を防除するのに適しています。

✿ウイルス

昆虫に病気を起こす昆虫ウイルスで、防除に利用されているのは核多角体病ウイルス(NPV)、細胞質多角体病ウイルス(CPV)、顆粒病ウイルス(GV)です。

これらのウイルスは多角体あるいは顆粒体と言った、タンパク質でできたウイルス粒子の包理体を作る。

エサとともに昆虫体内に取り込まれた多角体や、顆粒体は中腸で消化液の作用で溶解し、その中に包理されているウイルス粒子が放出されて感染する。

ウイルスはアメリカやロシアで害虫防除に利用されている。


✿顆粒病

日本全土で発生し、活動時期は10〜30℃で棒状の形をしたウイルスで、特定の寄主にのみ感染する。

昆虫に強い病原性を示す細菌に、パチルス菌があり、この菌の生産する毒が昆虫を死に至らせる。

現在では、殺虫剤も進化し、天敵を殺すこともなく、人畜毒性も結晶性毒素を用いた殺虫剤が実用化され、蛾や蝶の幼虫の防除用に使われている。

それ以外の昆虫には毒素を示さないので、この様な色々なものが売られています。

これらを上手に使用すれば、自然に優しい防除が可能になるでしょう。


2021/02/05

ひこばえが出てくるのはなぜ? No,365

 ひこばえが出てくる理由

樹木は材木として使われるため、あるいは間引きするために、地上部を幹の基部(地際や枝など)で伐採されることがあります。

多くの樹木の場合、伐採されたとしても樹木の切り株はそのまま生涯を終えません。

それは、土の中で根は生きているので、水や養分が運ばれ、残された切り株から芽が再び出てきます。

この様に切り株から出てくる芽生えを「ひこばえ」と呼びます。

ひこばえの「ひこ」とは孫のことでつまり、孫が生えてきたという意味で、ひこばえにはそのまま樹木として成長できる能力があります。

なぜ芽のない切り株からひこばえが出てくるのか?

これは幹を作っている細胞が持っている能力によるものです。

植物の体は細胞でできていて、細胞はそれぞれが一つの個体を作る能力を持っているのです。

その能力を「分化全能性」という。

✫分化全能性(ぶんかぜんのうせい)

植物の細胞が持つ能力

個体を形成する様々な種類の細胞のどれにも、分化することができる潜在能力がある。

動物でも植物でも全ての細胞の起源となる受精卵は、明らかに分化全能性能力を持っている。

次の受精卵に繋がる生殖系列の細胞も、分化全能性を保持しているとみなされる。

植物の細胞が分化全能性を持つことは、1958年にアメリカのスチュワードらによって示されました。

スチュワードは、ニンジンの食用部である根を構成する一個の細胞を取り出して、人工的に用意した適切な条件の下で育てました。

すると細胞が増殖して細胞のかたまりになった。

これは、根や茎の一部になっていた細胞が文化していない状態に戻ったもので「カルス」と呼ばれます。

更にこのカルスを適当な条件で育てると、カルスから根、茎、葉などが作られてきて、完全なニンジンの植物体が出来上がったのです。


       カルスが形成を始めた切り口
 

 カルス形成により切り口が塞がれた状態

こうした一個の細胞からでも、植物の体は再び作り上げられることがわかりました。


これが細胞の持つ分化全能性と言う能力です。

つまり、ひこばえは切り株の断面にある細胞が、分化全能性により芽を出したものである。

ひこばえは切り株の中心部からは殆ど生まれず、周囲から多くなる。

それは切り株の周囲には若い元気な細胞があるからで、幹の中心部は年を重ねた古い細胞で出来ているためです。



枝の切り口から新しく芽が出ている状態もこの能力です。

分化全能性は光を遮断されると能力を発揮できず、やがて切り株は枯れてしまいます。

この能力を利用したのが「挿し木」での殖やし方で、挿し木を可能にしているのです。

特にキク、ばら、ツツジ、アジサイイチジク、などが挿し木で増やしやすい植物として知られています。

    (アジサイの挿し木)









2021/02/04

スミレ 「菫」No,364

 スミレ スミレ科  宿根草

別名=フタバグサ英名=バイオレット

花言葉=誠実、小さな幸せ

海辺、高原、高山、湿地、砂礫地
北は北海道から南の西南諸島まで
広く分布し、スミレが咲かない所はないくらいです。

古くから人々に親しまれてきた花
で、神話や伝説の中にも多くの逸話が残されています。

特に日本では、スミレの種類が多
く、基本種とされるものだけでも
70種余りあって、変種を加えると
100種以上にも及ぶ。

世界でも珍しい「スミレ大国」である。




世界中では、850種が確認されています。

花色はすみれ色と言われる様に、
紫色系が多い中で、変化も多く白、紫の濃淡、絞り、紅の濃淡、黄色の濃淡などがあります。

葉についても様々な形があり、葉色は緑以外に黄斑、白斑、赤斑、黒葉葉裏の紅紫などがあります。

また、株の形も様々です。


春に咲く花は結実しにくく、花後に真夏を除いて秋まで、次々と花弁の無い花(閉鎖花)を出して種子を作ります。

目に付く頃には、結実した実となって花柄を伸ばします。


始めは下向きのサヤが横向きになって、やがて上向きのなって熟すと、3つに裂けます。

それぞれの口縁(こうえん)部分で種子を締め付けて、種を弾き飛ばします。(種子散布)

それは想像以上の力で、弾き飛ばす距離は2㍍にも達します。

更に種子についている種枕と言う
脂肪分を含むコブを、アリが好み
巣に運びます。

その途中で種子は種枕から離脱し、広範囲に散らばる事になります。

アリの種蒔き?🤔


このような植物を「蟻植物」と呼びます。

閉鎖花や種子の飛散、蟻植物の3つを合わせ持つのが、スミレの面白い特徴と言えるでしょう。

植栽しやすい種類は、明るい山野、浜辺など日向を好むものや、山地の木陰や林床の半日陰を好むものの2つの仲間です。

殆どが冬から春は十分に日に当た
り、6月から9月中旬は半日陰か、日陰になる落葉樹の下などに植えるとよく生育します。

また、✻亜高山、高山帯に分布する
仲間は、栽培の難しいものが多くあります。

✻亜高山(あこうざん)とは
植物の垂直分布帯のひとつで、高山帯と山地帯との間のことで、本州中部の山岳地方では標高1700〜2500㍍に相当する。


✿主な種類

❆明るい山野や浜辺など日向を好む種

アツバスミレ、タチツボスミレ
イソスミレ、コスミレ、マルバスミレ、ノジスミレ


✺山地の木陰や林床の半日陰を好む種

エイザンスミレ、ミヤマスミレ
シハイスミレ、アケボノスミレ
オオバキスミレ


✿栽培環境

環境に応じた育て方が大事です。

環境に合えばひとりでに殖えます。

しかし、丈夫な種類でも環境が変わると大変な場合もあります。

本来、弱い植物と思って環境を考えて植えます。

肥料、消毒、植え替え、繁殖、季節の手入れなど心掛けることも重要です。

スミレは多年草ですが、株自身の
寿命は短く、同じ株を何年も栽培していると老化して枯れるので、常に株(苗)の更新をしなければ株がなくなってしまいます。


✿植え付け、植え替え

4月中旬から6月中旬の梅雨入りする前までの、花が終わった頃と9月中旬から10月中旬が適期です。

大株は枯れやすいので小株や小苗を用います。


庭などの地面から掘り上げた株は、根をよく洗い長い根や茎、多すぎる葉は半分位に取って活着率を良くします。


✿植え付け場所

植栽環境が重要になる植物です。

庭石や飛び石などに添って、自然に生える実生はよく育ちます。

石に添わせて植えたり、植えた所に石を置くなど工夫する事で、生育環境は適してくる。

このことは鉢植えにも応用できる。


✿🚰水やり

植えた時に与えれば後はまず必要ありません。

石に添わせて植えたものは、夏の乾燥でも弱りにくい。

✿肥料

栽培するスミレは原種か、それに近い品種なので多肥と濃い肥料には弱い傾向があります。

薄い液肥と暖効性の肥料が適しています。

春の花後と秋に1回マグアンプKな
どを置き肥し、追肥は植え替え直後と夏を除き、ハイポネックスの
2000〜3000倍液を2ヶ月に1回程
施します。

✿病害虫

✻害虫
葉ダニ、アオムシ、アブラムシ
ヨトウムシ、ナメクジ、ネセンチュウがつくことがあります。

オルトランなどで駆除します。


✿病気

ソウカ病が発生する事があります。
葉柄に白いブツブツができます。

ダイファー、ダコニールの混合液
500倍液の散布で防除する。

✿殖やし方
完熟種子は初芽がしにくく、長期間経って発芽します。




採りまきにすると初芽がよく、サヤが上か斜めの上の部分で色が、緑色から白色の時に採取し、すぐにまきます。(2月〜3月、7月〜9月)

種蒔き床は清潔な土を用い、覆土はタネが隠れる程度とします。

一週間程で発芽します。

本葉が出たら液肥を10日に一度与え本葉が3枚で1回目の移植をします。

移植後は半日陰で、その後は成株同様に管理し9月中旬に庭や鉢に
定植すれば翌春には開花します。

✫その他
根伏せ、株分け、葉押しで殖やします。


❆葉押し(下図)
スミレ、エイザンスミレなど、地上茎のないグロープで成功率が高い


図①托葉

図②約一ヶ月で発根したら、葉柄を残して葉を切る。

図③切る

図④不定芽が出る。








2021/02/03

フウキラン 着生蘭 No,363

 フウキラン  富貴蘭

別名=フウラン 「着生蘭」

元々温暖な地方で、樹木に着生するラン科の植物で1属一種。

茨城県南部から九州、南西諸島に分布し、わずかに朝鮮半島や中国にも見られる。

野生種に対して、変異株を収集したものを「フウキラン」と呼びます。

江戸時代には、将軍や諸大名が金と力で300種もの貴品、珍品を山野から集めた記録がある程の流行りだったようです。

1属一種で、交雑によらず、突然変異でできた品種がこのように発展した事は、チョウセイラン(長生蘭、セッコクの園芸品種)を始め、ハナショウブ、ニホンサクラソウなど日本の独特の技とも言えるでしょう。

✿性質

フウキランは常緑短茎性の蘭で、日当たりの良い樹上や、岩上の風通しの良い所に着生します。

茎は短く、独特の堅くて厚いトヨ状の葉を左右2列に互生し、一年に2〜3枚程度の新しい葉を出します。

普通5年くらいで葉が落ちますが、品種や管理の良いものは8年くらいもつ時もあります。

葉の枚数が多いものは、状態が良く少ないものは弱っている傾向があり、その株の健康状態の目安になります。

✿花

花は葉腋から生じ、白色花、まれに淡桃色の赤花が3〜10輪、7月下旬頃に咲き、芳香を放ちます。

近年では、品種改良が進み、花色も増えているようです。




✿耐寒性

温暖な地域に自生するものは、熱帯産の洋ラン程でもありませんが、寒さには弱い。

冬越しの際に、根は水分の吸収を止め休眠します。

体内の水分を減らして、耐寒性を増やし、やや寒い地方での越冬を可能にしています。

フウキランの自生する地域では、休眠期間中、加湿や保温の必要はありませんが、冬の乾燥や寒風は水分を奪うので傷みが激しくなり、ひどい場合は枯死してしまいます。

乾燥を防ぐ為の保護や加湿が必要です。

特にフウキランは変異した株であるため、野生種より弱い傾向があります。

斑入り種は日照にも弱く、夏は十分な保護が必要です。

✿栽培のポイント

自生地では、照葉樹の中部から上部分に着生が多く見られますが、針葉樹や岩の上に着生する事もあります。

環境に対する適応性は強く、その特性を理解していれば難しい植物ではないと思います。

ただし、植物が好まない状態にすると弱ってしまい、回復も難しい事になってしまいます。

⑴根が空気に触れる事を好むので、通気性を良くする事が大切です。

⑵根先が緑色や、ルビー色に透き通っている時は、成長期ですので水も肥料も十分に与え、白く不透明な時は休眠期なので、乾燥気味に管理して肥料は与えません。

⑶朝の2〜3時間は直射日光で、それ以外は1年を通して半日陰で育てます。

斑入り種は、やや強い70%位の遮光が適しています。

✿植え付け、植え替え

一般的にランの性質として、根の動き出す直前の4月上旬頃が適しています。

また、暖かい地方では3月中下旬が適しています。

最も自然環境に近い状態で、鉢植え栽培するには、過湿を避けるために腰高の鉢を使い、排水が良く根が空気に触れやすい形に植え付けます。

✭植え付け方
木炭を使った(風蘭鉢)植え

◉鉢に入れる前の状態


①傷んだ根や枯れ葉などを取り除き植え込みの準備をします。

②木炭をミズゴケで1cm程度覆い
木炭の上部は多めに覆う。

③根を折らないように木炭の上に広げてまたがせます。

④長めのミズゴケを網目状に根に巻きつけ、根と株を固定します。


⑤鉢底の穴に防虫網を入れ、鉢にはめ込むように植え付けます。

植え込みの高さは3〜4cm程、鉢から盛り上げる程度。
✫場合によって、それ以上に高植えして植え込む事もあります。




鉢底と木炭は(防虫網と木炭の間)少し空けて通気を良くする。

⑥根を押さえたミズゴケの乱れを切りそろえ、潅水します。

✻木炭を使わない空洞植え




✻風蘭鉢

現在、花鉢の多くはビニールポットやプラスチック製の成形品の鉢が、多く出回っていますが、江戸時代には「白磁染付」の焼成された素晴らしい、瀬戸や有田焼でした。

当時、栽培するには素焼鉢や瓦焼鉢が利用され、人の目にとまる場所に置く時や、販売される時などでは、美しい鉢が使われていました。




“江戸蔵前八幡神社において展示会
当時流行した「オモト」の品種図譜”

図譜を見ると分かるように、江戸時代には植物鑑賞する為に、植木鉢にも拘っていた事が伺えます。


                            ( 現代の風蘭鉢)


✿水やり
ミズゴケに✫緑藻が付かないように管理します。

✫緑藻(りょくそう)
緑藻とは緑色植物のうち、陸上植物の苔植物、維管束植物を除いたものの総称で、緑色藻とも言う。

5〜10月の成長期は2日に1回、休眠期は週に1回を目安として与えます。

✿肥料

着生ランは一般に多肥や濃い肥料は避けます。

5月頃に根の成長を見て、豆粒大の固形の油粕を2〜3個置き肥する。

追肥には液肥を標準の3〜4倍に薄め、成長期間中に3〜4回を目安に与える程度で十分です。

✿置き場所、環境

野生の植物の栽培は、適した環境をいかに作るかが最も重要になります。

日照は、気温の高い午後の直射日光は避けます。

生育期(4月〜9月)は、通気性を良くするために、涼しい風の通る木に吊るすか、ヨシズを張った棚に置き、冬期は暖地ではビニールで覆う程度で、凍る恐れのある地方では、室内などで保護します。

最低温度5℃を目安に湿り過ぎないようにして、暖かい日には葉水を与えます。

❆病害虫

過湿または乾かし過ぎた場合、生育不良になり、生理病が発生することがあるので通風には注意します。

鉢植えは、ミズゴケが古くなると発生するので、早めの植え替えが予防になります。