緑のお医者の徒然植物記

Translate

緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2021/07/05

なんじゃもんじゃの木 No,517

 有馬のなんじゃもんじゃの木

樹種はハルニレ ニレ科  落葉高木

江戸時代、徳川家光の主治医であった半井蘆庵(なからいろあん)によって、国外から有馬村(現、神奈川県海老名市本郷)に移植されたと伝えられている。

この樹は太さ日本一の「ハルニレ」である。

「ハルニレ」は北東アジアなどに分布し、水分の多い場所を好み沢沿いや湿地などに生える。

春に花が咲くことからこの名があるが、「ニレ」の語源は樹皮を剥がすとヌルヌルする「滑(ぬ)れ」に由来するという。

当時、神奈川県下では見られない珍しい木で「よく分からない」事から「なんじゃもんじゃの木」と呼ばれ親しまれてきた。


「木のろう」といういうものがいくつもある。

木のろうとは、樹木の幹や太い枝にできた洞窟状の空間で、樹皮が剥がれて内部が腐ったり、キツツキ類が巣穴を掘ったりすることによって形成されます。

主に広葉樹でできるが、大きなものは「がらんどう」とも呼ばれます。

直径が1メートルを超えるものや、樹齢を重ねた老木にはたいてい木のろうがある。

虫たちや動物が巣を作ったり、子育ての場所にしたりします。

フクロウが巣を作ったり、リスがどんぐりを蓄える倉庫に使ったりすることも知られています。

樹洞(じゅどう)=(洞=うろ)


有馬のなんじゃもんじゃ「ハルニレ」

県指定天然記念物1954年(昭和29年) 推定樹齢374年以上



   有馬のハルニレなんじゃもんじゃの木


「なんじゃもんじゃ」とは植物学的には特定の植物名ではなく、その地方でどんな種類の木なのか分からない場合に使われた呼び名である。

そのため、クスノキやカツラ、ニレなども「なんじゃもんじゃ」と呼ばれる場合がありますが、中でも代表格とされるのが「ヒトツバタゴ」です。

なんじゃもんじゃの木と呼ばれる植物は、全国に45箇所29種類があるとされ、明治神宮外苑の「ヒトツバタゴ」が有名なものとされている。

✿有馬のなんじゃもんじゃの木
所在地=神奈川県海老名市本郷上星谷
県道406号線沿い


ヒトツバタゴ

モクセイ科の落葉高木でヒトツバタゴ属の一種。

アジア東部と北アメリカにだけ知られる独特の属の植物で、日本産の種は対馬、犬山市、岐阜と長野の県境などごく限られた地域に自生し、また朝鮮半島や中国、台湾にも自生している。


ヒトツバタゴは自生のものは希少種としても知られ、レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定され、国指定、及び一部の県では天然記念物として指定されている樹もある。


栽培されているものは日本国内でも公園樹や庭木としても多く見られます。

一般的には「なんじゃもんじゃ」と言う名前の方が馴染み深い。

神社などに植えられている事が多く、明治神社外苑にかつてあった大木は有名で、大正13年に天然記念物に指定されたが、昭和8年に枯れてしまった。

現在ではこの樹の2代目、3代目が生育し、外苑の至る所で見る事ができる。

中部地方には数える程しか自生していないが、対馬ではこの花で山肌が真っ白く見えるほど群生している。


ヒトツバタゴを「なんじゃもんじゃ」として有名にしたのは、牧野富太郎植物記によると昔、江戸青山六道の辻、明治神宮外苑にあった木は名前が分からないので、何というものかが転化して「なんじゃもんじゃ」となったもので、青山六道の辻にあったことから「別名六道木」と呼ばれていた。


この場所は明治、大正の頃には青山の陸軍練兵場となり、一般人の立ち入りが禁止されていたが、この木が何なのかを確かめるために夜中に侵入して、この木の一枝を採取して調べた結果、ヒトツバタゴであったと植物記に書かれていた事による。



           「明治神宮外苑のヒトツバタゴ」

全国各地には、様々な樹種が“この木何の木?”なんじゃもんじゃ、、と呼ばれている。










2021/07/04

7月のバラ手入れ、管理 No,516

 7月のバラ手入れ

関東地方では7月上旬頃は梅雨の盛りですが、下旬には明けて猛暑が訪れます。

バラは咲き柄を摘んだ後の二番花が咲き始めます。




①咲き柄摘み

この時期は雨がちなので、二番花は長持ちしません。

放って置くと灰色かび病の温床になるので、こまめに摘み取るようにします。


②シュートの処理

中旬頃まではシュートの発生が盛んです。

時々、庭を見回って目につき次第シュートをピンチします。

遅れてほうき状に広がってしまったものは、下の2本の枝を残して上をせん定ばさみで切ります。

つるバラは6月同様の処理を行います。


③病害虫の防除

病気では引き続き黒点病の発生を見たら、サプロールなどを散布して拡がるのを防ぎます。

うどん粉病にも注意して、発生が止まらないようなら、治療薬を変えて交互使用します。

カミキリムシは上旬まで、ハダニは雨が続くとやや収まります。


④施肥

夏の元肥は梅雨が明けてから施します。

早すぎると夏のせん定前に効いてきて株が茂り過ぎたり、秋の生育期に養分を浪費してしまうことになります。

鉢植えには置き肥と液肥を続けます。


⑤水やり

梅雨が明けても庭植えのものには不要です。

鉢植えは、梅雨明け後からほとんど毎日水やりする事になります。

一日一回で間に合わないようなら、鉢を大きなものに替える必要があります。








2021/07/03

早川のバクチノキ(ビランジュ) No,515

 早川のバクチノキ 

バラ科サクラ属

別名=ビランジュ「 博打の木」

「早川のビランジュ」となっているが、ビランジュとはバクチノキの別名である。

バクチノキは、関東地方以西の暖帯で海辺に近い所に自生がある常緑高木です。

早川のバクチノキの巨樹は急な斜面に生育していて、通常、生長する幹の径は30〜50cmと言われていますが、早川のバクチノキは1㍍を超え、また樹高は約20㍍に達している。


バクチノキは生長につれて灰褐色の外皮が剥がれ、赤橙色になることが大きな特徴である。

博打打ちが賭けに負けて身ぐるみを剥がされ、丸裸になった様子に例えて名付けられたと言われている。

花は9月頃に、新しく伸びた枝の葉腋から長さ3cm程の総状花序を出し、白い小さな花を多数つけます。

果実は長さ2cm程の長楕円形で翌年の初夏(5月頃)に黒く熟します。




周辺にも大木になる可能性のあるバクチノキが自生している。

やや窪みのある地形で生育している事から、台風の影響も少ないと考えられ、長寿を保っているようである。

類似種には、樹皮が剥がれても赤橙色にならない小高木の「セイヨウバクチノキ」がある。

セイヨウバクチノキは花が4月頃に咲き、葉の色が淡色である。


バクチノキは庭木としては余り利用されていない樹種ですが、樹皮の様子を眺められる配植をすれば利用できます。

赤橙色の樹皮を見せるようになるには、概ね10年以上の年月が必要です。


枝が横に広がるので、植栽間隔にゆとりを持たせることが大切です。

自然樹形を基本にし、絡み枝や徒長枝、逆さ枝などの不要枝のせん定が基本になります。

セイヨウバクチノキは、枝葉が多く刈り込んで樹形を整えることもできます。


早川のバクチノキ(ビランジュ)



国指定天然記念物(大正13年12月9日)

所在地=神奈川県小田原市早川
飛乱地(びらんち)








2021/07/02

アジサイのうどん粉病 No,514

 アジサイのうどん粉病

葉身、花(がく片)、新梢に発生する。

はじめ葉身表面に灰白色ないし白色粉状の薄い菌叢(きんそう、菌の集まり)が小円斑状に散生するが、次第に拡大するとともにお互いに癒合しやがて、葉面全体を覆うようになる。

古い病斑は、雨水に洗われて菌の集まりがまばらになり暗紫色になる。

新梢が侵されると、その後に展開する病葉は萎縮することがある。

発病が激しい場合には、病葉の黄化が進み落葉も早まる。


                  「アジサイのうどん粉病」


梅雨期頃に発生が激しいが、盛夏には一旦消滅するが秋に再び発生する。

秋には白色菌叢上に点々と子のう殻(微小黒粒状物)を形成することがある。

病原菌は子のう菌類に属するうどんこ菌(糸状菌)の一種であるが、完全世代が確認されていない。

病原菌の他に、野生のアジサイ属植物に寄生するうどん粉病菌3種が記録されている。

病原菌の越冬及び第一次伝染源は未詳であるが、生育期においては病葉身上に生じた分生子が飛散して、伝播を繰り返すことに違いはない。


この病気は、施設栽培の鉢物では問題となることが多いが、露地では白粉状の菌叢が目立っても、薬剤防除を必要とする程激しく蔓延しない。


防除法

毎年発生して薬剤防除を必要とする場合は、新葉展開期から秋にかけてキノキサリン系剤、チオファネートメチル剤、トリホリン剤、フェナリモン剤、ミルディオマイシン剤などを用い、月に1〜2回散布して蔓延防止を図る。

また、秋には病葉落葉を集めて処分する事が伝染源の低減に有効となる。









2021/07/01

サルスベリのうどん粉病 No,513

 サルスベリのうどん粉病

新梢や葉、つぼみに小麦粉をまぶしたような白いカビが生え、被害が進むと全体がカビで被われる。

カビが原因で発生する主要病害で、サルスベリ以外の植物にも多く発生します。

一般に夏の高温期を除き、初夏や秋口に雨が少なく雨天が続く、比較的冷涼でしかも乾燥すると発生します。

肥料のやり過ぎで枝葉が茂り過ぎたり、密植して日当たりや風通しが悪いと発生が促されます。

発病した葉の上にできる胞子が風で飛散し、周囲に伝染するのが一般的です。






一度発生すると連年発生が続き、多発生が続くと生育が阻害されて、次第に衰弱し、貧弱な樹となります。

病原菌は病葉上に形成される子のう殻や、枝上の芽の組織内に潜伏した菌糸の状態で越冬して、翌春の第一次伝染源となり、新葉展開期以降に子のう胞子及び分生子を飛散し、秋期に至るまで二次伝播を繰り返します。


防除法

被害部位や発病した落ち葉は、早めに取り除いて伝染源を断ちます。

密植を避け、枝葉が茂り過ぎる場合はせん定して日当たりや風通しを良くします。

チッ素肥料を一度に与え過ぎると発生しやすいので施肥には注意します。

チッ素肥料

硫酸アンモニア、硝酸アンモニア、尿素
石灰窒素、硝酸ソーダ、硝酸石灰、IBチッ素など

植物が吸収利用するチッ素の形態は、大部分がアンモニア性及び硝酸性である。

そのため、チッ素肥料はアンモニア性か硝酸性、または、土壌中でアンモニア性チッ素に変化しやすい化学形態を持っている。


薬剤による防除

生育初期からマンネブ剤、ジネブ剤、
キノキサリン系剤、チオファネートメチル剤、ベノミル剤、トリホリン剤、ミルディオマイシン剤などを用い、特に発生初期を重点に月に2回程度散布してまん延防止を図る。









2021/06/30

ハナモモ、せん定、縮葉病 No,512

 ハナモモのせん定

ハナモモは樹勢が強く、放任すると枝が張り出して暴れてしまうので、毎年花後すぐにせん定して、大きさを抑えることが大切です。

花芽は今年伸びた新梢の葉腋に7月頃作られます。

せん定は落葉期の2月から3月、花後の6月から7月、晩秋の11月から12月が適期です。

木の内部まで日が当たるように、ふところ枝を間引き、長枝は短く切り戻します。

夏にひこばえや、幹から直接出る胴吹きが出ていたら、付け根から切り取ります。

太枝を切って樹高を切り詰めたい場合は、雨水の染み込みを防ぎ、腐朽菌の侵入から守るために必ず45度程度の斜め切りを行います。

こうする事で傷口を塞ごうとするカルスの形成を早めます。

切り口には殺菌保護剤の「トップジンMペースト」や「カルスメイト」などを塗布します。

古枝には、やがて花も咲かなくなるので、数年に一度、つぼみの出る時期の2月から3月頃に枝元の花芽を残して切り詰め、新しい枝を出されるようにします。





縮葉病の対策

縮葉病(しゅくようびょう)は、杏、梅、桃につきものの病気で、年一回新葉の展開する3月から4月に雨が多く、低温が続くと発生しやすくなります。

被害葉の表面を覆う白いカビが飛散して枝につくと、その表面で更に増殖して越冬します。

越冬中は、枝の組織内に侵入しているわけではないので、「石灰硫黄合剤」や「ビズダイセン水和剤」などを念入りに散布することで予防できます。

薬剤は休眠期の間はいつでも行なえますが、新芽が発生する直前に散布すると感染防止効果が高くなります。

また、散布時期が遅れ、花芽が見え始める頃に散布を行った場合や、開花後の散布は手遅れになり薬害が発生するの注意が必要です。


                            「ハナモモの縮葉病」


病葉は異常に膨れたり縮んだりして奇形を呈する。

病原菌は子のう菌類に属する糸状菌の一種である。


連年発生する樹では、果実や葉が白カビで覆われる前に、それぞれを摘除処分し、いつまでも放置しないことが発生源を減らすために重要です。