緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2022/10/03

グァバ No,620

 グァバ フトモモ科

原産地=熱帯中央アジア、ブラジル

グァバの起源は紀元前800年のインカにまで遡るとされます。

ハワイにはモントゴメリーにより、1851年にオーストラリアから導入されたとされるが、それ以前の1830年代にはすでに記載されている。

ただし、1851年までは野生種はなかったとされています。

一般にグァバという名で呼ばれている果樹には、熱帯中央アジア原産の「バンジロウ」とブラジル原産の「テリハバンジロウ」の、二種類がある。

普通、グァバと呼ばれる種類の他に、ブラジルグァバ、コスタリカグァバ、ストロベリーグァバがあります。

ストロベリーグァバは、グァバの中では耐寒性があり、東京以西の暖地なら庭植えも可能です。

同じ種類に、淡黄色の実をつけるイエロー·ストロベリーグァバがある。


沖縄や鹿児島南部以外では栽培できないので鉢植えにします。


果実は甘く、酸味を含み、ビタミン類が豊富で麝香(じゃこう)に似た芳香があるとされる。

葉にタンニンを含むので、お茶の代用としても利用されます。

白い花や葉も美しく、切り花や観葉鉢物としても楽しめます。





栽培場所

生育適温は20〜25℃で、6℃以下になると生育が止まります。

赤玉土小粒6、腐葉土2、川砂2の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置き、冬は室内に入れ10℃以上で越冬させます。


肥料

毎年3月、玉肥を4個から5個を根回りに置き肥します。

せん定

対生して枝が発生する習性があるので、一方を間引きせん定し、交互に枝が出るようにして樹形をつくります。

毎年伸びる主枝は先端部を半分ぐらい切り戻して、節間のつまった丈夫な株に仕立てます。


果実管理

果実が大きいので摘果が必要です。

一本の結果枝に1〜2個の果実を残して他は摘果し、ひと鉢全体で8〜10果ぐらい収穫できるようにします。


実生(7月〜8月)

①種子をよく洗い1日〜2日、日陰に干します。

②4〜5鉢に10から15粒をまき、1cmぐらい覆土します。

赤玉土小粒6、腐葉土2、パーライト2の混合土で、鉢底にはゴロ土を入れます。

③本葉3〜4枚で鉢上げし、2.5〜3号鉢に植えます。

その際には根に触れないようにして化成肥料を入れます。

✿関連ブログ記事
バンジロウ(グァバ)No,486








2022/10/01

スダチ、カボス No,619

 スダチ、カボス ミカン科

酢橘 東洋のレモンとも呼ばれる。

スダチの歴史は古く、万葉の昔から徳島の地に自生していたとの説もある。


          「スダチ」


スダチは「ユズ」の偶発実生と言われていて、今から300年ほど前の書物(大和本草1706年)には「リマン」という名前でスダチの記録が残されているようです。

本格的に栽培されるようになったのは昭和30年以降とされる。

スダチは徳島県原産の果物で、カボスやユコウと同じ香酸柑橘類

名前の由来は食酢として使っていたことにちなんで「酢の橘」から酢橘と名付けていたが、現代の一般的な呼称はスダチである。

近縁果に「ユコウ」「ユズ」があります。

1974年(昭和49年)にはスダチの花が徳島県の県花に指定されました。


スダチの露地ものは8月下旬から10月頃が収穫時期で、貯蔵されたものが3月頃まで出回ります。

ハウスものは3月中旬から8月中旬頃に収穫されます。


カボスは大分県の特産品として有名です。

江戸時代に臼杵市で栽培が開始したのが最初とされ、臼杵、竹田、豊後大野市などが主な産地です。

カボスは全生産量の95%以上が大分県産です。


          「カボス」


スダチは2年目、カボスは3年目から開花結実しますが、3年目までのものは摘果してしまい、4年から5年目の果実から収穫します。

栽培地

耐寒性があり、マイナス5℃以下にならない場所では庭植えできません。

水持ちの良い土層の深い場所が敵地で、やや日当たりの少ない方が芳香の良い果実が得られます。

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、西日の当たらない場所へ置きます。

寒風に弱いので冬は室内に入れて管理します。


肥料

3月に300gぐらいの配合肥料を根回りに溝を掘って埋め込みます。

鉢植えは、毎年4月に玉肥を3〜4個置き肥します。

収穫するようになったらいずれも9月に同量ぐらい追肥します。


せん定

発芽前の3月上旬に行います。

内部によく日が当たるように間引きせん定し、側枝は長くなったら更新し、若枝を保つようにします。


果実管理

7月上旬に目標数を残し、不良果実や小果実を摘果します。

スダチの効能

スダチはビタミンC、リモネン、クエン酸、食物繊維、果糖などが多く含まれており、ビタミンCは免疫力強化や風邪予防、美肌などの効果があります。


また、クエン酸には体内の疲労物質の除去や浄血作用などを行い、体の疲労感を取り除く効果があるとされています。


芳香成分のリモネンには精神を安定されたり、食欲を増進させたりする効果があるとされる。









2022/09/28

肥料成分の配合と性質 No,618

 肥料の三大要素

要素の種類によって植物に及ぼす効果は異なり、肥料の性質は三大要素のチッ素、リン酸、カリの配合比と量で決まります。


葉茎の育ちを良くしたい場合は、チッ素成分の多い肥料を与え、花をたくさん咲かせ実のなりを良くしたいのであれば、リン酸成分の多い肥料を与えます。


肥料の性質を知って、目的に応じて使い分けることが大切です。

化成肥料には「8-8-8」や「5-8-4」などの数字が記載されていますが、これはそれぞれの肥料に含まれる「チッ素、リン酸、カリ」の順番で表記しているもので「8-8-8」の場合は、肥料全体を100gとした時に、チッ素8g、リン酸8g、カリ8gが含まれることを表しています。

また、数字が大きければ、同じ重さの肥料を与えても施用量は異なります。

必要以上に肥料を与えると植物が軟弱に育ち、病害虫が発生して枯れたり、肥料やけを起こし、成長が悪くなることもあります。


しかし、養分が不足した場合、生育は衰えますが急に枯れることはありません。

施肥する時は、肥料の表記をよく確認して与え過ぎない事が大切です。



①マグネシウムはリン酸の吸収や光合成を助ける。

②カルシウムは植物の組織を作る。
不足すると新芽が枯れて成長が遅れる。

③チッ素は葉肥(はごえ)とも呼ばれ、植物の体、特に葉や枝を大きく成長させる要素で、足りなくなると葉が黄色っぽくなる。


④リン酸は、花肥](はなごえ)実肥(みごえ)とも呼ばれ、開花や結実、根の成長を促します。

不足すると花つきが悪くなったり、開花や結実が遅れたりする。

⑤カリは根肥(ねごえ)とも呼ばれ、根や茎を強くし、各部の成長を良好にする。

足りなくなると葉の中心は暗緑色、先端や縁は黄色っぽくなるなど、病気にもなりやすく成長が遅れます。


化学肥料

チッ素肥料(N)


✪硫酸アンモニア(速効性)
アルカリ性の肥料、石灰、草木灰などと混ぜて使用しない。
日数をおく。

✪硝酸アンモニア(速効性)
他の肥料と混用しない。
貯蔵中は火気に注意する。

✪尿素(ウレア、やや速攻)
大豆かすと混用しない。

✪石灰窒素(速効性)
カルシウムを含む
アンモニア系の肥料と混用しない。

✪IBチッ素(暖効性)
化学的に暖効性を持たせた肥料

✪大豆かす(有機質肥料、暖効性)
N:P:K=6:1:1程度
チッ素肥料として使用


リン酸肥料(P)

✫過リン酸石灰(速効性)
腐葉土や堆肥と混ぜて使用すると良い
石灰を含む肥料とは混用しない

✫骨粉(有機質肥料、緩効性)
リン酸肥料として利用
肉が混ざったものはチッ素含む


カリ肥料(K)

❉塩化カリウム(速効性)
吸湿性が強いので密封保存する

❉硫酸カリウム
肥効が長持ちする
ただし、施肥量の多い場合は一度に与えず分肥する

❉有機質肥料
魚かす(速効性)
魚肉にチッ素を含み骨にリン酸を含む
草木灰を混ぜると良い

❉乾燥牛糞(緩効性)
チッ素は鶏ふんの三分の一程度


石灰肥料

消石灰(水酸化カルシウム)
生石灰(酸化カルシウム)
炭酸石灰(炭酸カルシウム)

石灰肥料は、カルシウムの補給よりも土壌の中和を目的として使用される。

チッ素肥料などの肥効を減少させることがあるので、肥用には注意が必要となる。

炭酸苦土石灰(炭酸マグネシウム)

苦土石灰は土をアルカリ性に傾ける効果があるので、苦土石灰をうまく使えば植物はとても育ちやすくなります。

苦土=マグネシウム、石灰=カルシウム、「ドロマイト」と呼ばれる岩石を使いやすいように、粉状、粒状にした肥料で、炭酸カルシウムと酸化マグネシウムが主成分








2022/09/27

植物に必須な元素 No,617

 植物に必要な中量要素

チッ素、リン、カリウムの三大要素に次いで、重要な成分であるカルシウム(Ca)マグネシウム(Mg)イオウ(S)に「中量要素」と呼びます。

カルシウムは、植物の細胞分裂や組織形成に関わる成分で、不足すると新芽の先や葉の先端の色が白っぽくなり、枯れてきます。


カルシウムは細胞壁成分の1つであるペクチン酸のカルボキシル基と、架橋を作ることによって細胞壁の構造の維持に関わっている。

大半は細胞壁や細胞膜などの部分(アポプラスト)に存在し、細胞質内の濃度はごくわずかで、ショウ酸と不溶性の塩を作って液胞中に存在する。


細胞質内ではタンパク質(カルモジュリン)と結合し、セカンドメッセンジャーとして機能している。

その他、ATPase、ホスホリパーゼなど膜結合性酵素を賦活化する。

❉賦活化(ふかつか)
活力を与えること、活性化


❉ホスホリパーゼは、リン脂質を脂肪酸とその他の親油性物質に加水分解する酵素である。

触媒する反応の種類により、A.B.C.D.の4種に大きく分類される。

❉触媒(しょくばい)とは、一般に、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものを言う。

化学的には触媒は、化学反応を促進させるような物質のことである。


マグネシウムは、葉緑素を構成する元素で、すべての植物にとって重要な成分です。


不足すると、古い葉から順に葉脈と葉脈の間が黄色くなってきます。

マグネシウムは、葉に含まれる約10%はクロロフィルの構成成分となっているが、70%は水溶性で多くの酵素の活性化や、細胞pH調節アニオン(陰イオン)のバランス維持に重要な役割を果たしている。


酵素タンパクと「ATP」との間に、架橋を作りリン酸化反応を助ける。

また、「グルタミン合成酵素」の活性化やタンパク質合成系に関与する。


ATP(アデノシン三リン酸)とは、すべての植物、動物及び微生物の細胞内に存在するエネルギ分子です。

細胞の増殖、筋肉の収縮、植物の光合成、菌類の呼吸及び酵母菌の発酵などの代謝過程にエネルギーを供給するために、すべての生物が利用する化合物である。

グルタミン合成酵素は、細胞内の窒素利用を制御する上で中心となる酵素である。

グルタミンはタンパク質を作るだけではなく、DNA塩基やアミノ酸のように窒素が多く含む分子を作る酵素に、窒素原子を渡すのにも使われる。

そのため、グルタミンを作るグルタミン合成酵素は、慎重に制御されなければならない。


イオウ(硫黄)は、タンパク質、アミノ酸、ビタミンなどを構成する元素なので、全く無いと植物は生育できません。

火山の多い日本では、天然の土壌中に含まれているので不足することは殆どありません。


鉄、マンガン、ホウ素などの量としてはごく微量でも、植物の生育に欠かせない元素を「微量要素」と呼びます。

天然の供給、又は培養土や堆肥などの資材に十分に含まれているので、不足することはほとんどありません。

植物は根から硫酸イオンの形で吸収する。

葉からも少しではあるが空気中の二酸化硫黄(無機化合物)ガスを吸収する。

硫酸イオンは還元されて、含硫アミノ酸などの有機化合物に変化し、一部はそのまま膜の糖脂質(スルホリピド)に組み込まれる。









2022/09/24

三大芳香花 No,616

 どれだけ香るというの?

かつてキンモクセイは、トイレの消臭剤としてその香りがよく使われていました。

「九里香=きゅうりこう」の別名を持つことからも分かるように、強い芳香があります。

九里は日本の1里で約4kmですから36kmにもなります。

キンモクセイの原産地である中国の1里は400〜500㍍ですので、10分の1程に短縮されます。

それでも相当な距離になります。

強い香りでトイレの臭いを消すためと言われていますが、実際には無理があります。

「秋の香り」とも言われるキンモクセイの香りは、10月の上旬に10日間ほど香るだけです。

なので、トイレの横に植えたとしても消臭作用は、ごく短期間しか発揮することはできません。

長らくトイレの消臭剤として使われてきたキンモクセイも、現在ではほとんど使われなくなりました。

一方、この九里香に対して「七里香」の名を持つ植物が「ジンチョウゲ」です。


早春に「ダフネチン」という香り成分を持つ花が咲いて、甘い芳香を漂わせます。

また、歌謡曲に「旅路の果てまでついてくる」と歌われる「クチナシ」の花もすごい香りですが、旅路の果てまでが一体何kmなのか?と疑問ですが、どれだけ臭うのかと言う話です。

様々に例えられた3種のキンモクセイ、ジンチョウゲ、クチナシは『三大芳香花』とされています。


✿関連ブログ記事
キンモクセイNo,290
ジンチョウゲNo,7.No,134
クチナシ(アカネ科)No,6








2022/09/23

虫を惑わす植物の香り No,615

 虫を惑わす色香

数ある花の中には強すぎて嫌われる香りがあります。

ユリの女王と呼ばれる「カサブランカ」

「カサ」が家、「ブランカ」が白色、スペイン語で「白い家」を意味しますが、レストランなどの料理店では、料理の香りがこの花の強い香りに負けてしまう事から、敬遠されています。


        「カサブランカ」


そのため、香りを抑えた品種が作られていますが、そこまでしても『飾りたい』と思われるのもこの花の美しさからでしょう。


一方、「官能を刺激する香り」と言われるのは「イランイラン」という花の香りです。

この花の名前はタガログ語で「花の中の花」を意味し、香りはとても官能(特に性的感覚)的で東南アジア(フィリピン、インドネシア)では、新婚カップルが夜を過ごす部屋に巻き散らかす花として知られています。


        「イランイラン」


イランイランノキはバンレイ科の東南アジア原産であるが、世界中の熱帯地域で栽培され、香料や材、観賞用に利用されている。

特に花から抽出される精油は、様々な香水に利用され、アロマテラピーにも用いられています。


『芳香が百里漂う香り』と言われる滋賀県伊吹山に自生する「イブキジャコウソウ」別名を「百里香=ひゃくりこう」といい、全体に麝香(じゃこう)のような香りがする。



❉イブキジャコウソウ シソ科
別名=イワジャコウ、ナンマンジャコウソウ

基本は高山植物

人間の場合、「色香で惑わす」と言うような言葉はあまり良いとされる表現ではありませんが、植物は確実に色香で虫を惑わし、誘い込むという生き方をしています。


そのために花には色々な香りがあり、香りは虫を誘う役割をしているのです。


❉麝香(じゃこう)とは雄のジャコウジカの腹部にある麝香腺(香りを入れる袋)から、(雄1頭から約50g)得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種でムクスとも呼ばれる。


麝香は甘く粉っぽい香りを持ち、香水の香りを長く持続させる効果があることから、香水の素材として古くから重要されてきた。