緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/09/30

糸状菌とは何? No,557

 糸状菌について

糸状菌はカビ、菌類と呼ばれる菌糸体で栄養成長する微生物、細菌やウイルスで起こる病気より圧倒的に多い。


細菌による感染症が中心の動物とは異なり、植物病害の約7〜8割が糸状菌によるものです。

栄養繁殖期に菌糸状をなす接合菌、子嚢(しのう)菌、担子菌などの総称で、大きく変形菌類と真菌類に分けられる。


細菌に比べて一般に耐酸性が強く、酸性土壌中での有機物分解において重要な働きを担っている。


土壌中における「リグニン」の分解は主に糸状菌によって行われる。


「リグニン」とは、木質素とも呼ばれる高等植物の木化する高分子のフェノール性化合物で、「木材」を意味するラテン語から命名された。

「リグニン」は、陸上植物の細胞壁を固くしっかりした構造とするために生み出された物質のことで、木材中の繊維同士を接着される役割を果たしている。


土壌中の腐植物質の生成過程では、植物遺体に含まれる「リグニン」が、腐植物質の「芳香族成分」の主要な供給源と考えられている。

★芳香族成分=ベンゼンを含む化合物成分(石油精製、液体炭化水素混合物の製造)

糸状菌病の診断

地上部の病害と異なって土壌病害の場合は、地上部に症状が現れた時にはすでに、地上部は予想外に侵されています。

その病害個体に限らず、栽培土壌でのかなりの部分に被害が及んでいると考えてもよい。

土壌病害にかかると地下、地際部の茎や根が侵されるので、全身病の様相を現します。


一度発生してしまうと発病個体を救うことは難しいので、植え付け前に発生の予測や予防対策を行う必要があります。


土壌病害の発生は、植え付け土壌の条件や栽培管理で左右されます。

植え付け前の調査は、土壌病害の検診と呼ばれ重視されています。

そして、この検診の結果に基づいて、植え付け計画の変更や消毒などの土壌管理が行われます。


検診法では、栽培地から土壌を採取して分析するが、ほとんどの病原菌の活動好適域は地表から15〜30㎝までに限られるので、それ以上の深層から土壌採取はあまり意味がありません。


糸状菌病は種類が多く、ほとんどの樹種で主要病害の原因となっています。


空気伝染性、土壌伝染性、水媒伝染性で、通常はその第一次伝染源が樹上に分布する事が多い。


夏に「永久組織」が侵害される枝幹病害である胴枯病の種類も多い。

永久組織=分裂能力を失った細胞からできている植物の組織、表皮(樹)や維管束など







2021/09/29

梅の潰瘍病 No,556

 ウメ潰瘍病(かいようびょう)


葉、枝、果実に発生し、若木では主に枝に被害があり、成木では主に果実の被害が大きい。

葉が展開する頃のごく若い葉では黒色の葉焼け症状となり、黒変して落葉する。

生育期の若葉でははじめ小斑を生じ、やがて周縁が赤色で中心が褐色か黒褐色になり、裂けたり穴が空いたりする。


新梢では、円い初期病斑から周縁部が赤色で縦長楕円形の褐色病斑となり、やがて中心が裂ける。


秋以降の当年枝では、円形病斑が現れて越冬し、翌春やや膨らんで更に拡がり縦に裂けて、潰瘍状となるかもしくは年内は潜伏して病症を現さないが、開花前期から病症が急速に拡がって潰瘍状の症状となる。


これらは潜伏越冬病斑と呼ばれるが、越冬伝染源としての役割が大きく付近に芽枯れ、葉焼け、花腐れ、幼果発病などの諸症状を引き起こす。

また、病斑部は夏以降2次寄生菌の加害によって、表面が粗い病斑となって枝込みが起きる。


果実では、落花直後の幼果が発病すると水浸状のまま縮んで落果する。

大豆粒大以上の幼果が感染すると、周縁は紫赤色、中央部が黒褐色か灰褐色の小斑点が形成される。

病原菌はウメのほかにスモモにも寄生して同様の被害を及ぼす。


病原菌は越冬枝上の潜伏病斑から放出され、雨媒伝播によって樹幹の傷口などから侵入して伝染する。


病原菌は比較的低温を好む性質があり、冬も徐々にではあるが進行が見られ、ウメの開花期には活発に増えて伝染が起こる。


平均気温が12〜15℃、風雨を伴った環境条件で激しい果実感染が起こる。

また、樹木に潜在している病原菌も伝染に関与していることが多い。


防除法

秋の感染期に軟弱な枝が多い場合、越冬病斑を持つことが多く、翌春への伝染源となる菌量が増大する事になるので、晩秋まで若枝を発生伸長されないように適切な肥培管理を行う。

また、病斑の枝はせん定除去、焼却処分して伝染源を断つようにする。


薬剤防除法

開花前の休眠期に銅製剤を散布し、3月下旬頃から5月下旬頃にかけて、ストレプトマイシン剤の散布を3回から4回行う。

状況によって更に散布回数を増やす。

土壌の湿りやすい所や風当たりの激しい場所で多発しやすいので、排水を良くしたり防風対策を行う事が重要です。








2021/09/28

主に柑橘類に多い潰瘍病 No,555

 潰瘍病(かいようびょう)

潰瘍とは表皮の一部が剥がれることで、葉、枝、果実などに発生します。

病状ははじめに病斑ができ、病斑の色は発生する植物によって様々です。

やがて被害部に裂け目を生じて潰瘍症状を現し、被害部は枯死する。

発生時期は4月から7月

病原体はバクテリアで、枝などに潜伏して冬を越し、翌年の春に発病します。

感染経路は、空気感染や水媒感染で病菌は新梢部や花芽、または傷口などから感染し、植物体内で潜伏します。


葉でははじめに、淡黄色水浸状の円形小斑点を生じるが、のちに表面がやや盛り上がり拡大すると、中央部が褐色または赤褐色にコルク化して粗くなる。

夏、秋の葉では、ミカンハモグリガの食害痕や風でこすられた傷口から感染し、傷口に沿った形の病斑を生じる。

枝でも葉とほとんど同様の病斑を作るが、病斑の周囲が黄色になることはなく、濃緑色の★水浸状となり、病斑は古くなると灰褐色ないし褐色に変化する。

★水浸(すいしん)状とは、初期病斑の頃、病斑の周りが黒っぽい緑色になっている状態の事を言う。

発病の激しい時は、葉柄やトゲにも病斑を生じ、落葉が甚だしくなる。

発病が甚だしい時は、病斑が果実面の大半を覆い、著しく外観を損ねるほか腐敗しやすくなる。


世界のミカン産地のうち、夏に湿度が高く多雨の地域に発生が多く、日本では全国で発生があるが特に九州地方に被害が多い。


品種によって、病気に対しての耐病性に違いがあり、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、ナツミカン、イヨカン、カラタチなどが病性で、温州ミカン、ポンカン、ハッサクは耐病性であり、キンカンやユズにはほとんど発生しない。


病原菌は葉、枝、果実の病斑内で越冬するが、発病葉は落葉するので枝の病斑が伝染源として重要で、特に夏、秋の枝の病斑で生存率が高い。

また、秋期の低温時に感染するとそのまま潜伏して、外観的には健全な状態で病原菌は越冬する。

越冬菌は翌年3月中下旬頃から発病する。

病原菌の増殖は3月げから多くなり、雨滴で分散するが風雨によって遠くまで飛散する。

冬から春先が温暖な場合は、新葉展開前に前年葉の気孔から感染し、4月頃から発病して多発の原因となる。

また、若葉でも気孔より感染し、5月上旬以降発病するが、特に中下旬が最盛期となる。


その後、感染組織が硬化すると裂け目や傷口から感染する。

葉や枝に生じた新しい病斑からは盛んに病原菌を出して、その後の果実への伝染源となる。

果実では、落花後の5月から9月頃まで感染するが、7月頃から病斑が認められるようになり、8月から9月の台風シーズン以後に発病が多くなる。


防除法

この病気に対して薬剤防除だけでは困難で、防風対策が不可欠です。

更にミカンハモグリガの防除や、チッ素質肥料の多用を避け、適切な肥培管理を行う事も重要となります。


また、せん定時には特に病患部の枝の除去を行う。

薬剤での防除は、発芽前の3月頃から開始し、銅製剤では3週間おきに、ストレプトマイシン剤では10日もしくは2週間おきに散布を繰り返し行う。

最も重要な散布時期は、成木の場合で発芽前と5月下旬及び6月下旬頃であるが、台風の影響がある場合には更にその前に散布しておく事が大切です。


潰瘍病はいわゆる細菌病である。

柑橘潰瘍病、核果類穿孔細菌病、キウイフルーツ花腐細菌病などの病害に加えて、多くの果樹類を宿主とする根頭(こんとう)癌腫病がある。


これらはいずれも難防除病害とされている。










2021/09/27

樹を枯死させる病気④=かわらたけ病 No,554

 かわらたけ病

枝幹に発生し、傷口や枯れ損傷部から病原菌が侵入し、樹幹を枯死、腐敗させる。

腐朽部は白化してもろくなり乾燥すると粉状となる。

腐朽部の表面にはキノコ(子実体)が重層状に形成される。

病原菌は担子菌類に属する糸状菌の一種で、栗のほかナラ類、樹木ではクヌギ、コナラなどに寄生する。

また、ポプラ類、ヤナギ類、ハンノキ類、ブナ類、カシ類、シイノキ類、サクラ類、ナナカマド、キリ、スギ、スモモなど多くの樹木や果樹に寄生することが知られている。

病原菌は樹上で越冬し、カワラタケから噴出、飛散する担子胞子が第一次伝染源となって風媒伝播を行なう。

担子胞子は幹や枝に生じた傷口から侵入感染するが、他の胴枯性病害などによる衰弱、枯死枝、幹に生じた病患部の古い樹皮から感染発病に至る。


防除法

被害樹の根の周囲の土を掘り上げ、病患部及び病根をすべて切除する。


切り口にはチオファネートメチル塗布剤を塗り、掘り上げた土壌にバーク堆肥と土壌殺菌剤を加えて、よく混ぜ込んで埋め戻す方法がある。


処置は樹勢が回復し根が発達し終えるまで支柱を添えておく。

枯死樹の跡地には、クロルピクリン剤、ダゾメット剤などのガスくん蒸剤による土壌消毒を行う。


✬同様の病気として知られる「ナラタケ病」については、ブログNo,549『庭木の突然枯死の原因』の項目の中で記載していますので参照ください。





2021/09/26

樹を枯死させる病気=胴枯病、枝枯病③ No,553

胴枯病 (病原体はカビ) 枝枯病

枝枯病は、枝が枯れる病気を指すのに対して、胴枯病は幹が枯れる病気の総称です。

胴枯れ、枝枯れ性病害は2つの型に大別される。

病気の初期段階では症状が現れないが、病気が進行すると樹皮に暗褐色の病斑が現れます。


病斑部はやわらかくなり指で摘むと簡単に剥がれる。


更に、病気が進むと病斑が褐色に変わり、小さな突起物が現れます。

この突起物は病菌の繁殖器官です。
発生時期は6月から10月

病菌は害虫による傷口、せん定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

この病気は樹が若いうちは少なく、樹齢が進んだものほどかかりやすくなります。

感染経路は、繁殖器官で作られた胞子が、風や雨、虫の体などに付着して運ばれ感染します。

また、樹の手入れに使うノコギリの歯から感染することもあります。

この病気に対しての薬剤などを使った直接的な治療法は見つかっていません。

病斑部は出来るだけ深く削り取り、せん定による切り口、傷口などにトップジンMや石灰硫黄合剤を塗りましょう。

乾いたら墨汁や接ぎロウなどを塗って予防します。

せん定のし過ぎなどによって幹を傷つけないように注意し、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたら駆除しましょう。


サクラ胴枯病

大、中径木の樹幹や太枝で特に枝の分岐した部分で発生します。

はじめ樹皮の一部が突起し、内部は褐変腐敗するが、のちには乾燥して陥没する。

樹勢が旺盛な場合は、夏に患部周囲に融合組織を生じて癌腫状になるが、衰弱した樹や小枝では患部が枝幹を一周して上位部がしぼんで枯死に至る。


やや大きいイボ状の突起物が形成されたものは子のう殻の状態で越冬して、伝染源となって春から秋にかけての降雨の後に、子のう殻内の胞子を放出して風媒伝播を行う。


病原菌は糸状菌の一種で、サクラ類の他にモモ、ウメの癌腫病やヤナギ、ハンノキの腐らん病を起こす病原菌でもある。


防除法

晩秋から早春にかけて被害による枯死枝を切除、焼却処分する。

患部が幹や枝の一部であれば、少し大きめに健全部を含めて患部樹皮を削り取り、切り口からの材質腐朽菌の侵入防止と癒合促進のために、硫酸オキシキノリン剤、チオファネートメチル塗布剤を塗布する。


モミジ、カエデ類の胴枯病

樹幹や枝梢に発生し、はじめ小枝に暗褐色の病斑を生じるが、次第に太枝に拡がってやがて幹全体が枯死に至ることがある。


枯死した樹幹の表面には多数の小さな突起物を生じる。

この突起物から白色または淡黄色のヒモ状粘塊物を噴出する。

患部の樹皮を剥がすと、材の表面には白色不定形の斑紋が確認できる。

病原菌は3種の胴枯病菌が関与しているが、主にヤマモミジ系の栽培品種に多く発生する傾向があります。

いずれの病原菌も患部に形成された子のう殻、柄子殻(へいしかく)の状態で越冬して、翌年の伝染源となる。

患部は被害が大きくならないうちに健全部も含めて大きく削り取り、傷口にはチオファネートメチル塗布剤を塗って拡大防止を図る。

重症被害樹は放置しないで、早期に伐採処分を行って、伝染源を排除する事が重要です。


イチジク胴枯病

枝、幹に発生し、はじめは樹皮の表面に淡紅色のくぼんだ小さな病斑が生じる。

病斑は次第に大きくなり縦、横の亀裂を生じる。

太枝や幹は衰弱するだけですが、細い枝では枯死するものもある。

翌年の春に小さな黒い粒を生じ、夏になると胞子の塊を噴出して感染源となる。


オウトウ胴枯病

枝、幹に発生し、幹の途中から樹脂がにじみ出て、その部分とその上の部分の樹皮が暗褐色または赤色になります。

次第に水分が被害部から先に行き渡らなくなり、水分不足の状態になって枯れてしまう。

古い樹によく発生し、若い樹にはあまり発生しない。

防除法

病斑部を出来るだけ深く削り取り、せん定の切り口や傷口なども含め、トップジンMや石灰硫黄合剤を塗り、乾いたら墨汁や接ぎロウなどを塗って予防します。

幹に傷をつける害虫を見つけたらすぐに捕殺します。

せん定のし過ぎによって樹幹に傷をつけないよう注意します。


★まとめ

胴枯、枝枯病
樹体の衰退を招かないよう、土壌改良や肥培管理、防寒及び乾燥害対策によって樹勢を維持することが基本です。

病患部の削り取りが困難な場合はそのまま塗布剤を塗ります。

また、チオファネートメチル剤、ベノミル剤、銅製剤などを初期ら秋にかけて、降雨後を重点に樹幹や枝梢が充分に濡れるくらい散布する。

萌芽前に石灰硫黄合剤10倍液を散布し、越冬菌による感染防止を図ることも重要です。








2021/09/25

樹を枯死させる病気=立枯病② No,552

 ボタン立枯病

病気になった株は生育が次第に悪くなり衰弱して行く。

症状が進むと黒く枯れて立枯れ状になります。

この病気は青枯病や萎凋病(いちょうびょう)の症状と似ていて、見分けにくい場合が多いので注意が必要です。

発生時期は5月から9月

病原体は発生する植物によって、カビの場合とバクテリアの場合があります。

病原体は根の傷口から侵入しますが、根を傷つける原因は虫による傷口か、作業中にスコップなどで傷つけることによるなどが考えられます。


葉、茎、花が侵され、葉でははじめ紫褐色を帯びた類円形の病斑を生じ、激しくなると病斑が互いに融合して大型不整形となり、病葉は褐変して枯死する。

茎でははじめ、暗緑色水浸状の不規則な病斑が現れるが、次第に暗褐色のくぼんだ病斑となり茎が腐敗する。

激しい時には、茎葉全体に腐敗病斑が広がって地際から立枯れ症状となる。


花はつぼみのうちに褐色になって枯死する事が多い。

病原菌は不完全菌類に属する糸状菌の一種で、ボタンのほかシャクヤクにも寄生して立枯病を起こす。

病原菌は被害患部組織内の菌糸や表面に形成された菌核の状態で、あるいは被害植物遺体とともに土壌中で越冬し、翌春菌核の発芽によって生じた分生子または遺体上に生じた分生子が飛散して、第一次伝播を行う。


防除法

葉、枝、花などの病気になったものは摘除し、落下したものも処分する。

発生期にはベノミル剤、チオファネートメチル剤、イプロジオン剤、ビンクロゾリン剤などを用いて、月に2回から3回程度降雨前後を重点に散布し防除する。

特に開花期は、咲き終わった花柄をできるだけ早めに摘除する事が重要です。



センリョウ立枯病

株全体に症状が出て、5月から6月に発病を始めます。

病気の進行が非常に早く、地際部の茎は灰褐色になって枯れ、葉は落ちてしまいます。


根では細い根が黒変して腐ってしまいます。

病気が重い程、根の腐敗も激しく株は抜けやすくなります。

病気になった株の新梢は生育が悪くなり2年から3年で枯れてしまいます。

土の中に住む病菌が根から侵入するこの病気は、発病してからでは薬剤による治療はできません。

病気になった株は抜き取って処分しましょう。

病気が発生した土壌は消毒し、土壌に薬剤が残らないように十分にガス抜きをします。

また、なるべく連作することは避けます。

✪立枯病が発生する主な植物
カーネーション、センリョウ、ケイトウ、シャクヤク、ナデシコ、エンドウ、ジャガイモ、ニンジン、アスパラガスなど