緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/10/03

ブルーベリーの話 No,559


 ブルーベリー  ツツジ科

別名=ヌマスグリ

ブルーベリーは、日本に自生しているクロマメノキやナツハゼなどと同属の低木果樹で、葉の紅葉や花も美しい樹です。


クロマメノキは食べられる果実を黒豆に例えた名であるが、長野県ではアサマブドウと呼び、ジャムなどに加工された土産物になっている。


ナツハゼは黒く熟し、食べられる。
果実をブンブクチャガマと呼び、よく熟すとザラッとした舌触りはあるがブドウのような味がする。


ブルーベリーは、果実の加工品が主にアメリカから輸入されるようになってから、一般にも知られるようになった。

日本でも長野県や東北地方などの一部で国産品も栽培されるようになり、今では栽培可能地で栽培されることが増えている。

庭植えは、生育が早いと2年で開花結実しますが、確実に収穫できるのは4年、5年目からです。


樹高1.5m程で100〜200果、鉢植えは3年目で開花結実し、5号〜6号鉢で20〜30果が収穫の目安とされます。




栽培適地

耐寒性の強いハイブッシュ系は、東北地方や長野県など、夏期も涼しい場所に適しています。

ラビットアイ系は、関東地方以西で庭植えが可能とされる。

耐寒性があるので半日陰でも育ちますが、西日の当たる場所は避けます。

ツツジの仲間で酸性土を好み、通気性の良い砂質土か火山灰土が適しています。


水はけ、通気性の悪い粘質土などの重い土質の場合、栽培が上手くできません。

一般の庭では、ピートモスを土壌改良剤として用いて、多めに土壌にすき込むと生育が良好になります。


鉢植えは、赤玉土4、鹿沼土3、ピートモス3の酸性の強い混合土に植え、西日を避け、風通しの良い場所に置きます。


主なハイブッシュ系品種

✪ブルークロップは乾燥に強く香り、果肉も良く大粒で甘みがある。

✪ノースランドは食感が良く果肉はジューシーでバランスが良い。

✪アーリーブルーは美しい早生品種で樹勢が強く直立性で、果皮は明るい青色で樹木も丈夫。

✪ブルージェイは房なりで果実も大きく、収穫量の多い品種。



写真=ジャージーは成長が早く栽培しやすいハイブッシュ系品種で、果肉が締まって雨による裂果の被害も少なく、風味も良く樹も丈夫。


主なラビットアイ系品種

✬タイタンはラビットアイ系ではNo.1の大きさ特大サイズで、ジョージア大学が育種した品種。

✬クライマックスはラビットアイ系の早生種。
中粒で日持ちも良い収穫が簡単な品種。

✬プレミアは大粒で甘くて食感も良く美味しい。
欠点は受粉が難しく収穫量が少なめであること。


✬ベッキーブルーは早生種で樹勢がやや弱い。

✬ハーモニーは甘さ控えめでブルーベリー本来の自然の味と風味が味わえる。



写真=ウッダードはラビットアイ系品種で、比較的暑さに強い暖地性品種、関東以西の太平洋側の夏期もよく成長し、九州地方まで栽培可能とされている。

その他にもいくつかの系統の品種がある。


庭植えの株仕立てにする場合

①一年目の落葉期に、ピートモスを多めに土壌にすき込み、土壌を改良しておく。

②二年目の生育期に出来るだけせん定しない。
花芽をつけた弱い枝は切り取ります。

③2年目の落葉期は、弱い枝や混み合う枝は元から間引きせん定を行う。

④三年目の落葉期は混み合う新梢を間引きせん定する。

⑤四年目以降は、根際から出たシュートは先端で切り詰めておくと、翌年短果枝が発生し4本ほどの主枝の株になる。

弱小枝や混み枝などは切り取ります。


鉢植えの株仕立てにする場合

①一年目の落葉期に、抜き出した苗生は、根を少し崩して土ごと植える。

赤玉土4、鹿沼土3、ピートモス3の混合土
5〜6号鉢に植える。

②二年目の落葉期に、混み合っている枝は間引きせん定する。

③三年目の落葉期は、主枝が若いうちは株から発生する新梢は元から切り取る。

④四年目以降は、花芽のついた枝は2年から3年で株元から出てくる新梢に更新する。


着果習性

花芽は新梢の先端部に数個つきます。

葉芽からは翌年新梢が発生し、同じように花芽を持ちます。

収穫後は自然に枯れてしまう。


肥料

庭植えは毎年1月から2月頃、株周りに配合肥料200gと多めのピートモスを撒き、浅く土壌にすき込んでおきます。

鉢植えは毎年3月頃、玉肥を3〜4個置肥します。


果実の管理

ハイブッシュ系は、自分の花粉で結実しますが、ラビットアイ系は自家不結実性であるため、他品種の花粉で受粉させる必要があります。

2〜3品種を植えて人工受粉をすると、ハイブッシュ系もラビットアイ系も、大果になり成熟も早くなります。

開花後5日ぐらいは受粉可能なので、他品種と交互受粉すると効果的です。



ブルーベリーの効能

ブルーベリーの果実に含まれるアントシアニンが、目にやさしい事はよく知られていますが、この効能は、イギリス空軍の一人のパイロットの言葉がきっかけとなり、見つかったと言われています。

第二次世界大戦中に、夜間の空中戦や明け方の薄明かりの中での攻撃の際に、いつも大きな戦果をあげたとされるパイロットは、その理由を聞かれて『ブルーベリージャムをつけたパンを食べてから戦闘に飛び立つと、薄明かりの中でも物がはっきり見えるからです』と答えたそうです。


この話をヒントに戦後のフランスやイタリアで、ブルーベリージャムに含まれるどの成分が、視力を良くするのかを調べるための研究が始められました。


その結果、ブルーベリーに含まれる赤紫色の色素であるアントシアニンが、視力を高めるのに効果を持つことが明らかになったのです。

その後の研究で、ブルーベリーに含まれるアントシアニンには、人間の目の網膜にあるロドプシンという物質の合成を、活発にする働きがあることがわかりました。

このロドプシンに光が当たると人は、物が見えると感じます。

しかし、目を使っていると徐々に分解されて無くなっていきます。

アントシアニンがロドプシンの合成を活発にすることから、ブルーベリーのアントシアニンは、目をよく使う人の視力の維持や回復に役に立つことがわかります。


また、ブルーベリーのアントシアニンについて、2012年7月に国立研究開発法人、国立長寿医療研究センターの研究者から「骨粗鬆症の予防に効く」という発表がなされました。

この事はマウスによる研究結果で得られている事である。

このように、ブルーベリーのアントシアニンの効果が分かってきましたが、アントシアニンは多くの植物の葉っぱや花、実にも含まれています。

ではどうして、ブルーベリーのアントシアニンだけが『目に良い』と言われるのでしょうか。


それは、アントシアニンというのは総称であり、アントシアニンには色々な種類があるからです。

アントシアニンには、デルフィニジン、シアニジン、ペツニジン、ペオニジン、マルビシンなどの種類があり、それぞれが色々な効能を持ち、効能の強さも種によって異なります。


アントシアニンを含むと言われる花や野菜、果物にこれらが1種類だけ含まれていることは無く、いくつかが組み合わさって含まれています。


更に、組合わさるときにはそれぞれの比率が違ってきます。

ですから、アントシアニンを含むと言っても花や野菜、果物ごとにアントシアニンの種類やその組み合わせと比率が異なるのです。


『ブルーベリーのアントシアニン』と限定される理由は、ブルーベリーに含まれるアントシアニンの種類、その組み合わせ、その比率が相まって効果がもたらされるからです。


ブルーベリーは北アメリカ原産やヨーロッパ原産などの品種がありますが、品種によっても含まれるアントシアニンの種類、組み合わせ、比率は違っています。


その事から、品種によって効果も違うというような事が言われることもあるのです









2021/10/01

檸檬(レモン)No,558

 レモン ミカン科

レモンは、独特な香りと酸味が特徴の香酸柑橘です。

果実に含まれるビタミンCは100g当たり約50mgもあり、柑橘類の中ではトップクラスです。

ビタミンCは活性酸素を防ぐ抗酸化作用を持ち、一般的に動脈硬化や高血圧などの症状を防ぎ、疲労回復にも良いと報告されています。


また、日本では、農薬の心配のない果実スライスを紅茶などに浮かべて飲みたいなどの思いが高まり、自宅で栽培されている方が増えています。

原産地はインド、ヒマラヤ地方で降水量が少なく、暖かい気候を好みます。

そのためやや寒さに弱いのですが、最低気温がマイナス3℃までなら耐えることができるので、瀬戸内海地方以西の平野部なら庭でも育てることができます。

リスボンやマイヤーレモンなどの寒さに強い品種を選び、鉢植えで適切な冬の管理を行えば、関東地方以西の平野部でも十分育てることができます。

果樹は1品種では実がつきにくいものが多いが、レモンは一本でも果実が収穫できる品種が多い。


レモンにはユーレカ、リスボン、ビラフランカ、ピンクレモネード、クックユーレカなどの品種がある。

柑橘類と言うと日本では「ミカン」と一般的には言われる。

その中では温州ミカンが一番に挙げられます。

産業的にはミカン属にキンカン属とカラタチ属を加えて、柑橘類と総称し、温州ミカンやブンタン、グレープフルーツ、オレンジ、レモンやユズ、キンカンなどが含まれます。


レモンやユズは料理などに利用される柑橘類で「香酸系柑橘」と言われて、洋種ではレモンとライム、アジアまたは日本発祥のものとしてはユズ、スダチ、カボスなどが含まれます。


この「香酸系柑橘」に共通する特徴は、どれもが直立する樹形であることです。


温州ミカンや甘夏(ナツミカンの突然変異)、日本産の柑橘雑種タンゴール、ブンタンは樹形が大きな円形または扇形のものが多い。


樹高を低く育て若木の時から主枝を短く切り戻しつつ、複数の主枝を育てるようにします。

しかし、香酸系の樹形は直立するため、同じように育てると樹が小さくなる反面、柔かく細い無数の枝が伸びてしまい、樹勢の低下に繋がります。


このような樹形になると、樹体を作る前から多くの花芽が付き、多くの花は咲くけどまともな大きさの果実を収穫できず、樹勢の衰弱によって枯死してしまう場合もあります。


そのため、植え付けから3年間は主枝となる強い枝を地面から垂直に伸ばし、主枝の直立した自然な樹形を作って行くことが重要となります。




栽培適地

瀬戸内海沿岸以南なら庭植えが可能で、日当たりがよく土層の深い肥沃地が適しています。

冬期はむしろなどで防寒、防風対策を行う。


レモンはマイナス以下では成長できず、越冬は不可能となります。

春植えで鉢植えにするか、ハウス内で霜よけをして栽培します。


秋植えは避けます。

鉢植えの場合は、赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置きます。


晩秋から厳寒期は室内へ移動し防寒します。

レモンは庭植えより鉢植えの方が、温度や水の管理がしやすい果樹です。

特に果実が肥大する6月から8月は、水分を多く求めるので、一日に3回は鉢底から水が流れ出るくらい、たっぷりと与える必要があります。


初収穫を植え付けから3年目と設定し、最終的に露地栽培になる場合でも、植え付けから2年間は鉢植えで育て、基本となる樹形を作ることだけを考えます。


植え付け(2月下旬〜4月中旬)

根鉢が一杯になると株は老化します。

レモンは寒さに弱い果樹なので、基本的には鉢植えで、植え付けはスリット鉢を利用するのが理想的です。

根が鉢底でぐるぐる巻いたような状態にならず、直下に伸びる直根を鉢内に均等に伸ばすことができます。

苗木は主枝が太くしっかりしたものを選びます。

植え付け前に、根を鉢の幅に合わせて切除しますが、この時に根をできるだけ長く残さず、基部から2〜3㎝程度の長さに切り戻します。

また、下方に伸びる直根も鉢の深さの3分の2程度の長さまで切り戻します。

苗木は植え付け前後に、接ぎ木部分から50㎝程度の高さの位置で主枝を短く切除します。

こうすることで、太く元気な新梢が多く発生します。

植え付け後は主枝がぐらつかないように支柱を立て固定します。

暖地では9月から10月も可能で、この時期に実つき苗を購入した場合は、収穫を終えたあと、春を待って植え付けを行います。

鉢植えは、南向きで日当たりがよく、風の当たらない場所に置きます。

1年生の接ぎ木なえであれば7〜10号(直径21〜30cm)の鉢を準備し、鉢底土を適量入れた後、赤土4、腐葉土3、赤玉土小粒3、緩効性化成肥料、土1㍑当たり5㌘程度を混合し、鉢の半分程度まで入れ、根鉢を崩し、根を広げて、接ぎ木の部分が埋まらない程度まで用土を入れます。

植え付け後は十分に水を与えます。

植え付け後1年から2年目

数本の新梢が発生してきますが、接ぎ木部から上に20㎝程度の間に発生する枝は、すべて基部から切除します。

また、それより上の部分から発生する新梢は、20㎝伸びた時期に成長の良さそうなものから5本をバランスよく残し、それ以外は切除します。

尚、この時に生育には全く不要なトゲをすべて取り除きます。

この事で、大敵とされる「カイヨウ病」の発生をかなり抑えることができます。

その後もトゲの発生があればその都度取り除きます。

残した新梢5本が50㎝程度に伸びたら、まとめて支柱に枝を真っ直ぐに上向きに伸びるよう、軽くひもで結束します。

こうすることで新梢の樹勢は衰えることなく伸長します。


冬の寒さで新梢の伸長は止まりますが、結束したひもはそのままにしておき、翌春の発芽までにひもを解いて、その時にすべての枝を翌年の夏枝が伸び始めた所まで切り戻します。
(充実した部分で切り戻す)



肥料

庭植えは毎年2月、根回りに溝を掘って配合肥料を200〜300g埋め込み、9月には同量を追肥する。


せん定(間引きせん定が重要)

時期は3月から4月上旬

庭植えは主幹形か半円形に仕立て、鉢植えは模様木仕立てにします。


3月に垂れ下がった枝や冬の間に枯れた枝を切り取ります。

主幹や主枝は、伸びの良い夏枝を切り詰めせん定して作ります。


ミカン類は常緑樹なので、せん定すれば時期に関係なく必ず葉を切り落とすことになります。


葉を切り落とせばそれだけ栄養分を失い、樹木を弱らせることになるので生長も遅くなります。


内部への日当たりを良くし、樹高を止めて管理しやすくするためにせん定は必要ですが、出来るだけ軽くなるようにすることが大切です。

不要な枝の除去は生育中も欠かさず行います。


鉢植えは鉢の高さの2.5〜3倍の樹高にします。



果実管理

レモンの花は5月から10月までほぼ連続して咲きます。




レモンの花は寒さに弱いが、鉢植えにして室内で冬越しさせれば、栽培は容易。

花は良い香りを漂わせる。


開花後約6ヶ月で果実は成熟するので、暖かい適地で栽培されている場合、樹上には幼果から収穫可能な成熟果まで揃うことになり、冬以外は順次収穫できます。


しかし、一般の庭植えや鉢植えでは年中着果させると、樹勢が弱くなるので年に一回の収穫を目安にします。

春果だけを利用しますが、葉20〜30枚に1果が適し、混み入ったものや弱小果は摘果し、良いものを目標数だけ残して育てます。

鉢植えも同様に春果を3〜5果バランスよく残し、それ以後できる夏果や秋果はすべて摘果してしまいます。

病害虫

着花と同時に発生する夏芽には、ミカンハモグリガが付きやすいので注意します。

葉の裏側の柔らかいところに侵入し、葉の表面に蛇行した食害痕を描く事から、エカキムシと呼ばれます。


主な病害虫として、黒点病、灰色かび病、ハダニ、スリップス類があり、果実の外観にも大きく影響します。

イセリアカイガラムシはスミチオン乳剤などを発生初期に散布して防除します。

ハダニ類が雨の少ない、高温期の春から夏にかけて発生が多くなります。

殺虫剤を発生期に散布しましょう。

最も重大な病気はカイヨウ病で、葉や果実、緑枝に褐色のコルク化した病斑を作ります。


夏から秋にかけてカイヨウ病が発生するので、コサイド3000などの殺菌剤を散布しましょう。

風や台風による傷み、害虫による食害を極力抑える必要があります。


カイヨウ病についてはNo,555『主に柑橘類に多い潰瘍病』を参照

害虫駆除にはボルドー液、ICボルドーを毎月1回の頻度で散布すると効果的です。


尚、カイヨウ病に抵抗性のあるレモンの品種が作出されている。

「璃の香」と言う従来の品種より果実が大きく、酸味もまろやか。

リスボンレモンと日向夏の交配種で果汁は多く、種も少ない新品種のレモンです。



     「レモンの実生苗」

せん定(追記)

レモンのせん定は2月から3月に行います。

レモンは年3回程度開花し、次々に結実するので、樹への負担が大きくなります。

そこで、春の花が結実した果実のみを残し、それ以外の時期に開花した花は除去し、最終的には一株当たり(鉢植え)3〜5個の果実を付けるのが目安です。

温州みかんなどのトゲは、樹が古くなるとなくなっていきますが、レモンのトゲはなくなりません。

特にリスボンの品種はトゲが比較的多いので、トゲが果実や葉を傷つけたり、子どもたちにも危ないと考えられます。

植え付け後、樹勢がついてきたらトゲの付け根から切り取りましょう。

収穫

春に咲いた花は、およそ6ヶ月で収穫期を迎えます。

色で判断すると果汁が少ないものもあるので、ゴツゴツした皮がなめらかになったら収穫するようにします。

温暖な地方を除いては12月までに収穫を終えた方が無難です。

また、成熟させ過ぎてしまうと酸味が少なくなります。

直径5cm程度になった果実は、青くても香りが高く、皮を刻んでサラダに入れたり、料理や飲み物の香り付けにも最適です。









2021/09/30

糸状菌とは何? No,557

 糸状菌について

糸状菌はカビ、菌類と呼ばれる菌糸体で栄養成長する微生物、細菌やウイルスで起こる病気より圧倒的に多い。


細菌による感染症が中心の動物とは異なり、植物病害の約7〜8割が糸状菌によるものです。

栄養繁殖期に菌糸状をなす接合菌、子嚢(しのう)菌、担子菌などの総称で、大きく変形菌類と真菌類に分けられる。


細菌に比べて一般に耐酸性が強く、酸性土壌中での有機物分解において重要な働きを担っている。


土壌中における「リグニン」の分解は主に糸状菌によって行われる。


「リグニン」とは、木質素とも呼ばれる高等植物の木化する高分子のフェノール性化合物で、「木材」を意味するラテン語から命名された。

「リグニン」は、陸上植物の細胞壁を固くしっかりした構造とするために生み出された物質のことで、木材中の繊維同士を接着される役割を果たしている。


土壌中の腐植物質の生成過程では、植物遺体に含まれる「リグニン」が、腐植物質の「芳香族成分」の主要な供給源と考えられている。

★芳香族成分=ベンゼンを含む化合物成分(石油精製、液体炭化水素混合物の製造)

糸状菌病の診断

地上部の病害と異なって土壌病害の場合は、地上部に症状が現れた時にはすでに、地上部は予想外に侵されています。

その病害個体に限らず、栽培土壌でのかなりの部分に被害が及んでいると考えてもよい。

土壌病害にかかると地下、地際部の茎や根が侵されるので、全身病の様相を現します。


一度発生してしまうと発病個体を救うことは難しいので、植え付け前に発生の予測や予防対策を行う必要があります。


土壌病害の発生は、植え付け土壌の条件や栽培管理で左右されます。

植え付け前の調査は、土壌病害の検診と呼ばれ重視されています。

そして、この検診の結果に基づいて、植え付け計画の変更や消毒などの土壌管理が行われます。


検診法では、栽培地から土壌を採取して分析するが、ほとんどの病原菌の活動好適域は地表から15〜30㎝までに限られるので、それ以上の深層から土壌採取はあまり意味がありません。


糸状菌病は種類が多く、ほとんどの樹種で主要病害の原因となっています。


空気伝染性、土壌伝染性、水媒伝染性で、通常はその第一次伝染源が樹上に分布する事が多い。


夏に「永久組織」が侵害される枝幹病害である胴枯病の種類も多い。

永久組織=分裂能力を失った細胞からできている植物の組織、表皮(樹)や維管束など







2021/09/29

梅の潰瘍病 No,556

 ウメ潰瘍病(かいようびょう)


葉、枝、果実に発生し、若木では主に枝に被害があり、成木では主に果実の被害が大きい。

葉が展開する頃のごく若い葉では黒色の葉焼け症状となり、黒変して落葉する。

生育期の若葉でははじめ小斑を生じ、やがて周縁が赤色で中心が褐色か黒褐色になり、裂けたり穴が空いたりする。


新梢では、円い初期病斑から周縁部が赤色で縦長楕円形の褐色病斑となり、やがて中心が裂ける。


秋以降の当年枝では、円形病斑が現れて越冬し、翌春やや膨らんで更に拡がり縦に裂けて、潰瘍状となるかもしくは年内は潜伏して病症を現さないが、開花前期から病症が急速に拡がって潰瘍状の症状となる。


これらは潜伏越冬病斑と呼ばれるが、越冬伝染源としての役割が大きく付近に芽枯れ、葉焼け、花腐れ、幼果発病などの諸症状を引き起こす。

また、病斑部は夏以降2次寄生菌の加害によって、表面が粗い病斑となって枝込みが起きる。


果実では、落花直後の幼果が発病すると水浸状のまま縮んで落果する。

大豆粒大以上の幼果が感染すると、周縁は紫赤色、中央部が黒褐色か灰褐色の小斑点が形成される。

病原菌はウメのほかにスモモにも寄生して同様の被害を及ぼす。


病原菌は越冬枝上の潜伏病斑から放出され、雨媒伝播によって樹幹の傷口などから侵入して伝染する。


病原菌は比較的低温を好む性質があり、冬も徐々にではあるが進行が見られ、ウメの開花期には活発に増えて伝染が起こる。


平均気温が12〜15℃、風雨を伴った環境条件で激しい果実感染が起こる。

また、樹木に潜在している病原菌も伝染に関与していることが多い。


防除法

秋の感染期に軟弱な枝が多い場合、越冬病斑を持つことが多く、翌春への伝染源となる菌量が増大する事になるので、晩秋まで若枝を発生伸長されないように適切な肥培管理を行う。

また、病斑の枝はせん定除去、焼却処分して伝染源を断つようにする。


薬剤防除法

開花前の休眠期に銅製剤を散布し、3月下旬頃から5月下旬頃にかけて、ストレプトマイシン剤の散布を3回から4回行う。

状況によって更に散布回数を増やす。

土壌の湿りやすい所や風当たりの激しい場所で多発しやすいので、排水を良くしたり防風対策を行う事が重要です。








2021/09/28

主に柑橘類に多い潰瘍病 No,555

 潰瘍病(かいようびょう)

潰瘍とは表皮の一部が剥がれることで、葉、枝、果実などに発生します。

病状ははじめに病斑ができ、病斑の色は発生する植物によって様々です。

やがて被害部に裂け目を生じて潰瘍症状を現し、被害部は枯死する。

発生時期は4月から7月

病原体はバクテリアで、枝などに潜伏して冬を越し、翌年の春に発病します。

感染経路は、空気感染や水媒感染で病菌は新梢部や花芽、または傷口などから感染し、植物体内で潜伏します。


葉でははじめに、淡黄色水浸状の円形小斑点を生じるが、のちに表面がやや盛り上がり拡大すると、中央部が褐色または赤褐色にコルク化して粗くなる。

夏、秋の葉では、ミカンハモグリガの食害痕や風でこすられた傷口から感染し、傷口に沿った形の病斑を生じる。

枝でも葉とほとんど同様の病斑を作るが、病斑の周囲が黄色になることはなく、濃緑色の★水浸状となり、病斑は古くなると灰褐色ないし褐色に変化する。

★水浸(すいしん)状とは、初期病斑の頃、病斑の周りが黒っぽい緑色になっている状態の事を言う。

発病の激しい時は、葉柄やトゲにも病斑を生じ、落葉が甚だしくなる。

発病が甚だしい時は、病斑が果実面の大半を覆い、著しく外観を損ねるほか腐敗しやすくなる。


世界のミカン産地のうち、夏に湿度が高く多雨の地域に発生が多く、日本では全国で発生があるが特に九州地方に被害が多い。


品種によって、病気に対しての耐病性に違いがあり、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、ナツミカン、イヨカン、カラタチなどが病性で、温州ミカン、ポンカン、ハッサクは耐病性であり、キンカンやユズにはほとんど発生しない。


病原菌は葉、枝、果実の病斑内で越冬するが、発病葉は落葉するので枝の病斑が伝染源として重要で、特に夏、秋の枝の病斑で生存率が高い。

また、秋期の低温時に感染するとそのまま潜伏して、外観的には健全な状態で病原菌は越冬する。

越冬菌は翌年3月中下旬頃から発病する。

病原菌の増殖は3月げから多くなり、雨滴で分散するが風雨によって遠くまで飛散する。

冬から春先が温暖な場合は、新葉展開前に前年葉の気孔から感染し、4月頃から発病して多発の原因となる。

また、若葉でも気孔より感染し、5月上旬以降発病するが、特に中下旬が最盛期となる。


その後、感染組織が硬化すると裂け目や傷口から感染する。

葉や枝に生じた新しい病斑からは盛んに病原菌を出して、その後の果実への伝染源となる。

果実では、落花後の5月から9月頃まで感染するが、7月頃から病斑が認められるようになり、8月から9月の台風シーズン以後に発病が多くなる。


防除法

この病気に対して薬剤防除だけでは困難で、防風対策が不可欠です。

更にミカンハモグリガの防除や、チッ素質肥料の多用を避け、適切な肥培管理を行う事も重要となります。


また、せん定時には特に病患部の枝の除去を行う。

薬剤での防除は、発芽前の3月頃から開始し、銅製剤では3週間おきに、ストレプトマイシン剤では10日もしくは2週間おきに散布を繰り返し行う。

最も重要な散布時期は、成木の場合で発芽前と5月下旬及び6月下旬頃であるが、台風の影響がある場合には更にその前に散布しておく事が大切です。


潰瘍病はいわゆる細菌病である。

柑橘潰瘍病、核果類穿孔細菌病、キウイフルーツ花腐細菌病などの病害に加えて、多くの果樹類を宿主とする根頭(こんとう)癌腫病がある。


これらはいずれも難防除病害とされている。










2021/09/27

樹を枯死させる病気④=かわらたけ病 No,554

 かわらたけ病

枝幹に発生し、傷口や枯れ損傷部から病原菌が侵入し、樹幹を枯死、腐敗させる。

腐朽部は白化してもろくなり乾燥すると粉状となる。

腐朽部の表面にはキノコ(子実体)が重層状に形成される。

病原菌は担子菌類に属する糸状菌の一種で、栗のほかナラ類、樹木ではクヌギ、コナラなどに寄生する。

また、ポプラ類、ヤナギ類、ハンノキ類、ブナ類、カシ類、シイノキ類、サクラ類、ナナカマド、キリ、スギ、スモモなど多くの樹木や果樹に寄生することが知られている。

病原菌は樹上で越冬し、カワラタケから噴出、飛散する担子胞子が第一次伝染源となって風媒伝播を行なう。

担子胞子は幹や枝に生じた傷口から侵入感染するが、他の胴枯性病害などによる衰弱、枯死枝、幹に生じた病患部の古い樹皮から感染発病に至る。


防除法

被害樹の根の周囲の土を掘り上げ、病患部及び病根をすべて切除する。


切り口にはチオファネートメチル塗布剤を塗り、掘り上げた土壌にバーク堆肥と土壌殺菌剤を加えて、よく混ぜ込んで埋め戻す方法がある。


処置は樹勢が回復し根が発達し終えるまで支柱を添えておく。

枯死樹の跡地には、クロルピクリン剤、ダゾメット剤などのガスくん蒸剤による土壌消毒を行う。


✬同様の病気として知られる「ナラタケ病」については、ブログNo,549『庭木の突然枯死の原因』の項目の中で記載していますので参照ください。