レモン ミカン科
レモンは、独特な香りと酸味が特徴の香酸柑橘です。
果実に含まれるビタミンCは100g当たり約50mgもあり、柑橘類の中ではトップクラスです。
ビタミンCは活性酸素を防ぐ抗酸化作用を持ち、一般的に動脈硬化や高血圧などの症状を防ぎ、疲労回復にも良いと報告されています。
また、日本では、農薬の心配のない果実スライスを紅茶などに浮かべて飲みたいなどの思いが高まり、自宅で栽培されている方が増えています。
原産地はインド、ヒマラヤ地方で降水量が少なく、暖かい気候を好みます。
そのためやや寒さに弱いのですが、最低気温がマイナス3℃までなら耐えることができるので、瀬戸内海地方以西の平野部なら庭でも育てることができます。
リスボンやマイヤーレモンなどの寒さに強い品種を選び、鉢植えで適切な冬の管理を行えば、関東地方以西の平野部でも十分育てることができます。
果樹は1品種では実がつきにくいものが多いが、レモンは一本でも果実が収穫できる品種が多い。
レモンにはユーレカ、リスボン、ビラフランカ、ピンクレモネード、クックユーレカなどの品種がある。
柑橘類と言うと日本では「ミカン」と一般的には言われる。
その中では温州ミカンが一番に挙げられます。
産業的にはミカン属にキンカン属とカラタチ属を加えて、柑橘類と総称し、温州ミカンやブンタン、グレープフルーツ、オレンジ、レモンやユズ、キンカンなどが含まれます。
レモンやユズは料理などに利用される柑橘類で「香酸系柑橘」と言われて、洋種ではレモンとライム、アジアまたは日本発祥のものとしてはユズ、スダチ、カボスなどが含まれます。
この「香酸系柑橘」に共通する特徴は、どれもが直立する樹形であることです。
温州ミカンや甘夏(ナツミカンの突然変異)、日本産の柑橘雑種タンゴール、ブンタンは樹形が大きな円形または扇形のものが多い。
樹高を低く育て若木の時から主枝を短く切り戻しつつ、複数の主枝を育てるようにします。
しかし、香酸系の樹形は直立するため、同じように育てると樹が小さくなる反面、柔かく細い無数の枝が伸びてしまい、樹勢の低下に繋がります。
このような樹形になると、樹体を作る前から多くの花芽が付き、多くの花は咲くけどまともな大きさの果実を収穫できず、樹勢の衰弱によって枯死してしまう場合もあります。
そのため、植え付けから3年間は主枝となる強い枝を地面から垂直に伸ばし、主枝の直立した自然な樹形を作って行くことが重要となります。
栽培適地
瀬戸内海沿岸以南なら庭植えが可能で、日当たりがよく土層の深い肥沃地が適しています。
冬期はむしろなどで防寒、防風対策を行う。
レモンはマイナス以下では成長できず、越冬は不可能となります。
春植えで鉢植えにするか、ハウス内で霜よけをして栽培します。
秋植えは避けます。
鉢植えの場合は、赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置きます。
晩秋から厳寒期は室内へ移動し防寒します。
レモンは庭植えより鉢植えの方が、温度や水の管理がしやすい果樹です。
特に果実が肥大する6月から8月は、水分を多く求めるので、一日に3回は鉢底から水が流れ出るくらい、たっぷりと与える必要があります。
初収穫を植え付けから3年目と設定し、最終的に露地栽培になる場合でも、植え付けから2年間は鉢植えで育て、基本となる樹形を作ることだけを考えます。
植え付け(2月下旬〜4月中旬)
根鉢が一杯になると株は老化します。
レモンは寒さに弱い果樹なので、基本的には鉢植えで、植え付けはスリット鉢を利用するのが理想的です。
根が鉢底でぐるぐる巻いたような状態にならず、直下に伸びる直根を鉢内に均等に伸ばすことができます。
苗木は主枝が太くしっかりしたものを選びます。
植え付け前に、根を鉢の幅に合わせて切除しますが、この時に根をできるだけ長く残さず、基部から2〜3㎝程度の長さに切り戻します。
また、下方に伸びる直根も鉢の深さの3分の2程度の長さまで切り戻します。
苗木は植え付け前後に、接ぎ木部分から50㎝程度の高さの位置で主枝を短く切除します。
こうすることで、太く元気な新梢が多く発生します。
植え付け後は主枝がぐらつかないように支柱を立て固定します。
暖地では9月から10月も可能で、この時期に実つき苗を購入した場合は、収穫を終えたあと、春を待って植え付けを行います。
鉢植えは、南向きで日当たりがよく、風の当たらない場所に置きます。
1年生の接ぎ木なえであれば7〜10号(直径21〜30cm)の鉢を準備し、鉢底土を適量入れた後、赤土4、腐葉土3、赤玉土小粒3、緩効性化成肥料、土1㍑当たり5㌘程度を混合し、鉢の半分程度まで入れ、根鉢を崩し、根を広げて、接ぎ木の部分が埋まらない程度まで用土を入れます。
植え付け後は十分に水を与えます。
植え付け後1年から2年目
数本の新梢が発生してきますが、接ぎ木部から上に20㎝程度の間に発生する枝は、すべて基部から切除します。
また、それより上の部分から発生する新梢は、20㎝伸びた時期に成長の良さそうなものから5本をバランスよく残し、それ以外は切除します。
尚、この時に生育には全く不要なトゲをすべて取り除きます。
この事で、大敵とされる「カイヨウ病」の発生をかなり抑えることができます。
その後もトゲの発生があればその都度取り除きます。
残した新梢5本が50㎝程度に伸びたら、まとめて支柱に枝を真っ直ぐに上向きに伸びるよう、軽くひもで結束します。
こうすることで新梢の樹勢は衰えることなく伸長します。
冬の寒さで新梢の伸長は止まりますが、結束したひもはそのままにしておき、翌春の発芽までにひもを解いて、その時にすべての枝を翌年の夏枝が伸び始めた所まで切り戻します。
(充実した部分で切り戻す)
肥料
庭植えは毎年2月、根回りに溝を掘って配合肥料を200〜300g埋め込み、9月には同量を追肥する。
せん定(間引きせん定が重要)
時期は3月から4月上旬
庭植えは主幹形か半円形に仕立て、鉢植えは模様木仕立てにします。
3月に垂れ下がった枝や冬の間に枯れた枝を切り取ります。
主幹や主枝は、伸びの良い夏枝を切り詰めせん定して作ります。
ミカン類は常緑樹なので、せん定すれば時期に関係なく必ず葉を切り落とすことになります。
葉を切り落とせばそれだけ栄養分を失い、樹木を弱らせることになるので生長も遅くなります。
内部への日当たりを良くし、樹高を止めて管理しやすくするためにせん定は必要ですが、出来るだけ軽くなるようにすることが大切です。
不要な枝の除去は生育中も欠かさず行います。
鉢植えは鉢の高さの2.5〜3倍の樹高にします。
果実管理
レモンの花は5月から10月までほぼ連続して咲きます。
花は良い香りを漂わせる。
開花後約6ヶ月で果実は成熟するので、暖かい適地で栽培されている場合、樹上には幼果から収穫可能な成熟果まで揃うことになり、冬以外は順次収穫できます。
しかし、一般の庭植えや鉢植えでは年中着果させると、樹勢が弱くなるので年に一回の収穫を目安にします。
春果だけを利用しますが、葉20〜30枚に1果が適し、混み入ったものや弱小果は摘果し、良いものを目標数だけ残して育てます。
鉢植えも同様に春果を3〜5果バランスよく残し、それ以後できる夏果や秋果はすべて摘果してしまいます。
病害虫
着花と同時に発生する夏芽には、ミカンハモグリガが付きやすいので注意します。
葉の裏側の柔らかいところに侵入し、葉の表面に蛇行した食害痕を描く事から、エカキムシと呼ばれます。
主な病害虫として、黒点病、灰色かび病、ハダニ、スリップス類があり、果実の外観にも大きく影響します。
イセリアカイガラムシはスミチオン乳剤などを発生初期に散布して防除します。
ハダニ類が雨の少ない、高温期の春から夏にかけて発生が多くなります。
殺虫剤を発生期に散布しましょう。
最も重大な病気はカイヨウ病で、葉や果実、緑枝に褐色のコルク化した病斑を作ります。
夏から秋にかけてカイヨウ病が発生するので、コサイド3000などの殺菌剤を散布しましょう。
風や台風による傷み、害虫による食害を極力抑える必要があります。
カイヨウ病についてはNo,555『主に柑橘類に多い潰瘍病』を参照
害虫駆除にはボルドー液、ICボルドーを毎月1回の頻度で散布すると効果的です。
尚、カイヨウ病に抵抗性のあるレモンの品種が作出されている。
「璃の香」と言う従来の品種より果実が大きく、酸味もまろやか。
リスボンレモンと日向夏の交配種で果汁は多く、種も少ない新品種のレモンです。
「レモンの実生苗」
せん定(追記)
レモンのせん定は2月から3月に行います。
レモンは年3回程度開花し、次々に結実するので、樹への負担が大きくなります。
そこで、春の花が結実した果実のみを残し、それ以外の時期に開花した花は除去し、最終的には一株当たり(鉢植え)3〜5個の果実を付けるのが目安です。
温州みかんなどのトゲは、樹が古くなるとなくなっていきますが、レモンのトゲはなくなりません。
特にリスボンの品種はトゲが比較的多いので、トゲが果実や葉を傷つけたり、子どもたちにも危ないと考えられます。
植え付け後、樹勢がついてきたらトゲの付け根から切り取りましょう。
収穫
春に咲いた花は、およそ6ヶ月で収穫期を迎えます。
色で判断すると果汁が少ないものもあるので、ゴツゴツした皮がなめらかになったら収穫するようにします。
温暖な地方を除いては12月までに収穫を終えた方が無難です。
また、成熟させ過ぎてしまうと酸味が少なくなります。
直径5cm程度になった果実は、青くても香りが高く、皮を刻んでサラダに入れたり、料理や飲み物の香り付けにも最適です。
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