材質腐朽(ふきゅう)病
この病気は木材から栄養を吸収している「木材腐朽菌類」という、一群の菌類によって引き起こされる病気です。
腐朽すると細胞壁が破壊され、材は強度が低下してしまって、用材としての利用価値を失ってしまいます。
木材腐朽菌類には、担子菌類(キノコなど)のヒダナシタケ目に属する菌類が多く含まれるが、クロサイワイタケ科などに属する子のう菌類や、不完全菌類(無性生殖とされるもの)の一部も含まれます。
シマサルノコシカケやナタタケなどの一部の菌類を除き、木材腐朽菌類は直接生立木(せいりゅうぼく)を枯死されることはありません。
しかし、材質腐朽病害は樹木の材の利用を妨げるだけではなく、しばしば幹折れの原因となり、更に樹木の衰弱の誘因ともなります。
立木の腐朽の仕方は、根株腐れ(根株心腐れ)、幹腐れの2種類があります。
◉根株腐れ(ねかぶくされ)とは、樹木の根系の傷から菌が侵入して腐ることで、原因は土壌や水分と密接な関係があります。
立木が強風に揺らされたり、車などに踏み固められて根系が切断されたことで傷ができ、土壌の中にいた腐朽菌が侵入したりして起きます。
根から侵入した菌で腐朽する場合は、根株の心材が被害を受けて、それから地上部の心材まで、円錐状に被害が広がることが多く、このような侵入方法をとる菌にはレンゲタケ、ハナビラタケ、ベッコウタケなどがあります。
✪根株辺材(へんざい)腐れは、根から侵入しても皮層部分から、樹幹の辺材部分を腐朽される菌です。
これはナラタケ菌によって起きますが、この菌は根に傷がなくても樹が弱っていると、根に侵入できます。
多湿土壌を好むので、水はけの悪いところで被害が大きくなります。
✪幹腐れは樹幹にできた傷から菌が侵入して腐る。
樹と樹の接触が下でできた傷や、動物の食害!間伐のときにできた傷から、菌が侵入して幹が腐ります。
しかし、一番多い原因は枯れ枝で、空中湿度の高い林の中などが菌の最も好む環境です。
幹腐れにも、樹幹心腐れと樹幹辺材腐れの2種類があり、心腐れを起こすものはエゾノコシカケ、チウロコタケモドキ、マツノカタワタケなどがある。
辺材腐れを起こすものは、モミサルノコシカケ、チャアナタケモドキなどがある。
材質腐朽病害の種類
腐朽病害は発生する部により「根株腐朽」「樹幹腐朽」「枝腐朽及び辺材腐朽」「心材腐朽」のように分けられ、これらを組み合わせて樹木の腐朽被害を《根株心材腐朽》《樹幹部辺材腐朽》のように呼ぶ。
また、材の腐朽様式により、材中の❉セルロースと❉リグニンの両方が分解され、リグニンが残される褐色腐朽に大別される。
更に、腐朽材の形状により、海綿状白色腐朽/孔状白色腐朽/立方状褐色腐朽/孔状褐色腐朽などに区分される。
❉セルロースとは、植物の細胞壁及び繊維の主成分で、植物はすべてセルロースを主構成成分として含んでいる。
地球で最も多く存在する炭水化物である。
❉リグニンとは、植物の細胞壁の構成成分の一つで、セルロースとともに二次壁に含まれ、木部での水分移動や植物たちの物理的支持などの役割を果たしている。
防除
この病害は樹材の外見から判断できない場合が多く、早期の発見は難しい。
一般に樹木の枝や幹、地際部腐朽菌類のキノコ(子実体)が発生している場合は、その樹木の材内部では腐朽が進んでいると考えられるので注意が必要です。
樹幹腐朽に関しては、林木では枝打ちを実施して、枯れ枝や傷が生じないようにします。
庭園樹や街路樹では、枝のせん定痕が腐朽菌の侵入口となる場合が多いので、せん定後は切り口にペースト状の殺菌剤(トップジンМペーストなど)を塗布するなどの処理を行います。
根株腐朽の防除は難しいが、林木では間伐や択伐(たくばつ)時に、残存木の幹や根系に傷をつけないようにすることが大切です。
以前に、根株腐朽が発生した伐採跡地に再造林する場合は、地中に原因となった腐朽菌が生息している可能性が高い。
よって、腐朽病害に抵抗性のある樹種に転換する必要があります。
また、老樹や名木に腐朽病害が発生した場合には、腐朽した部分を取り除き、殺菌剤を塗布した後、空洞部を樹脂で充填、または保護対策などの外科手術を行うこともある。
外科的対策では、再生可能な状態になるようにすることが重要です。