緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/08/30

ヤマモモ (山桃、楊梅) No.261

ヤマモモ ヤマモモ科

「山桃、楊梅 」
原産地=日本(関東南部以西)四国
九州、朝鮮半島南部
中国、台湾、フィリピン

ヤマモモは、熱帯を中心に分布し、3属およそ50種程が知られている。


熱帯から暖帯に約35種が分布し、日本に自生するのはヤマモモ1種だけである。


香川県琴平山にはヤマモモが優占する森がある。

江戸時代阿波藩ではマツ、スギ、ヒノキ、クヌギにヤマモモを加えた五木を保護育成し、やせた山野に肥料木として植えました。

江戸中期以降に頻発した飢饉(ききん)には代用食にもされていました。

嘉永年間には、ヤマモモの改良繁殖が研究され「御前」「肥山」など多数の品種が存在していました。

現在の主要品種の「瑞光」は大正2年頃、中国福建省から「森口」は昭和20年頃発見されました。

春早く萌芽前に開花し、夏に果実がなります。

果樹として栽培されますが、比較的強い樹木なので公園、街路樹など緑化木としてよく植栽されている。

暖地の庭の主木、並木、防風、防潮林にもなります。

熟した果実は落果しやすく、日持ちもしないため、あまり市販されることはありませんが、生食だけでなく塩漬け、ジャム、砂糖漬け、果実酒などにされることが多い。

徳島県が有名な産地。




また、乾燥樹皮は「楊梅皮=ようばいひ」と呼ばれ、漁網などの染料に用いられるほか、タンニン及びフラボノイドを多く含み、下痢や打撲傷の薬にも用いられます。

夏に果実の紅熟したものを楊梅(ようばい)

7月~8月頃樹皮を剥いで天日乾燥したものを楊梅皮

樹皮にはタンニンが含まれ、楊梅染め(やまももぞめ)=天然染料
楊梅皮は諸媒染剤により茶、黄色、黄金、褐色、緑黒色など、魚網を染める染料や薬用に利用される。

塩水に耐えると言うのも染料の特徴である
合成繊維が出現してからはあまり利用されなくなった。





◆植え付け
ヤマモモは根に「根粒菌=こんりゅうきん」が共生して栄養分を供給しているため、やせた土壌でもよく育つ。

★根粒菌とは
マメ科植物の根に根粒を形成する根粒菌は、共生有機栄養窒素固定微生物群のグループに属し、いずれの窒素固定菌も他の植物と共生しており、菌体合成に必要な炭素源とエネルギー源を共生植物に依存しています。

根粒内には宿主から、光合成産物が供給されることにより、共生関係が成立している。

根粒菌は増殖能力を失った、バクテロイドと呼ばれる形態で、窒素固定を行い増殖に要するエネルギーを必要としないだけ窒素固定能力に優れている。

ヤマモモは暖地に適していて、乾燥にも強く庭木としては多少の日陰にも耐えます。

植え穴は大きく深めに掘り、腐葉土を多めにすき込んで埋め戻します。

苗木の根がとても傷みやすいので、根鉢はできるだけ崩さないようにして、植え付ける必要があります。

植え付け後、しっかり根つき、生育を始めるまでは十分に水を与えます。

植え付けは3月下旬~4月上旬が適期です。

◉肥料
寒肥として、堆肥や鶏ふんを根まわりに軽くすき込んで
土中湿度を保ちやすくします。

果実収穫後の夏場には、配合肥料と油粕を同量混ぜ
2~3握り根まわりにばら蒔きます(お礼肥)

◉病気
※こぶ病
こぶ病は様々な形のこぶが幹や枝に発生し、その部分から弱っていき、やがて枯れてしまいます。

こぶ病には銅マイシン水和剤500倍液を散布します。

◆害虫
※ヤマモモハマキ
春から夏にかけて葉を巻いて食害します。
被害が多い時は、スミチオン乳剤1000倍液で駆除します




◉せん定
ヤマモモは放っておくと大きくなるので、庭の広さに合わせた樹形で育てます。

萌芽力が強く、刈り込むこともできるので
枝葉が密生して樹形を維持しやすくなります。

樹冠から伸びすぎた枝は切り戻し
徒長枝や立ち枝は付け根から切ります。

樹冠内部の枝が多くなるため、込み枝の間引き切りや
不要枝の切り取りが必要になります。

幹から出る胴吹き枝は見つけ次第切り取ります。

管理できる樹高にするために、3月頃葉の量が全体の半分以下になるくらいに、各枝を切り返し樹形を整えます

同時に樹木内に光が当たるように、長い枝や樹の上部にある枝を枝を間引き、風通しをよくするために
込み枝、弱い細枝など不要な枝を間引きます。

2年枝の先端に実が生るので、枝の先端は切らないようにします。

春枝がよく伸びるように、枝の込み合ってる
部分を間引きます。

◉殖やし方
接ぎ木は3月~5月上旬に行います
充実した前年枝を接ぎ穂に使い、実生2年生の苗木を台木にします。

実生は夏に種を採取し、翌年3月に蒔きます。

ヤマモモの天然記念物

蓮着寺(れんちゃくじ)のヤマモモ
国指定天然記念物
所在地=静岡県伊東市

伊豆半島にはヤマモモの巨樹が多いが、その中でも最大のヤマモモが蓮着寺の境内にある。


                        「蓮着寺のヤマモモ」

ヤマモモは根元から3本に分かれて生長し、合体したものと想像できるが、株立性で株は多数枝分かれする性質がある。


市ノ瀬のヤマモモ
福岡県指定天然記念物
1963年のクリスマス・イブの日に指定され、一本の樹形が崩れて今の姿になったのではなく、雄株と雌株との案内板に説明されている事から、2本まとめて株周り(6㍍)を測定したものである。

指定された当時は一本の木の様に見えていたのかも知れません。


                     「市ノ瀬のヤマモモ」

所在地=福岡県那珂川市市ノ瀬







2020/08/29

フヨウ (芙蓉) No.260

フヨウ アオキ科フヨウ属 落葉低木

別名=モクフヨウ、キハチス、スイフヨウ
原産地=日本、中国、東アジア

一般家庭の庭や公園、社寺の境内などによく植えられています。

株元から枝分かれして、株立ち状になるが、幹の数は多くありません。

枝はあまり木質化せず、冬には上部が枯れ込んで翌年は株の側芽から萌芽します。

そのため扱いは寧ろ、大型の宿根草と云えるでしょう。

葉は互生し、長さ幅ともに10~20㎝ほどで浅く3~5裂します。

枝葉には白い毛が密生しています。

美人の事を「芙蓉のよう」と形容したり富士山を「芙蓉峰」と呼んだり、美しさを例える際にフヨウが使われることがありますが、この場合の芙蓉は「ハスの花」を指します。

古代中国では、ハスの花を芙蓉と呼んでいて、後代になってハスの花に匹敵する美しさを持つとして、この植物に「フヨウ」の名が与えられました。

別称のモクフヨウ(木芙蓉)、キハチス(木蓮)はそうした経緯をよく表しています。

フヨウは一年枝の上部の葉脈に、直径10~20㎝の花が単生します。

花期は7月~10月頃で、ひとつの花はアサガオなどのように朝咲いて夜に閉じます。

このような花を1日花(いちにちばな)と呼びます。

原種の花は白か淡紅色の一重ですが、園芸品種が多く栽培されています。

※代表的な「スイフヨウ=酔芙蓉」はその名の通り、朝には白かった八重咲きの花が夕方には、お酒に酔った顔色のように濃い紅色へと変化します。

※他にも同じアオキ科の🌺ハイビスカスのつぼみに似た花をつける「ヒメフヨウ」

30㎝ほどにもなる大輪の花が人気の「アメリカフヨウ」

中国の「ロザンフヨウ」との交雑種の「ハイカグラ」などがある。




◉植え付け
4月上旬~中旬が適しています。
日当たりののよい、しかもやや湿り気のある場所に植えます。

風通しと将来の枝の広がりを考えて、1メートル四方程度の広さを設けましょう。

土は砂質で、腐葉土など有機質の多いものが適しています。

植え穴は深めに掘り、下に堆肥と鶏ふんを埋めます。

◉肥料
1月~2月に寒肥として、鶏ふんや堆肥など有機質の肥料を根元に埋め込みます。

その他の時期には施肥は必要ありませんが、花を美しくするなら、追肥を7月頃、10月頃の花後に与えます。

どちらも化成肥料を株周りに与えます。

◆害虫
アブラムシやハマキムシなどが発生します。

4月~9月の虫がつきやすい時期には月1~2回、スミチオンなどの薬剤を散布します。

◉せん定
落葉期に徒長枝や枯れ枝などを整理します。

春以降に伸びた新梢に芽をつけるので冬期(11月~2月)にはどこで切ってもよく萌芽します。

株数が増えてきたら、古い株は地際で切り取ります。

樹高を低くしたい場合は、落葉期に高く伸びた枝の分岐点のすぐ上で切り戻します。

栽培できる北限の関東より北では、秋には地上部が枯れてしまうにで冬越し対策(防寒)として、枯れた株を地際から切り、敷きわらや落ち葉、土などでマルチングしておきます。

この状態づ春になれば再び萌芽してきます。

◉殖やし方
園芸品種は通常、3月下旬~4月に挿し木で殖やします

実生で殖やす場合は、11月頃に種を採取し翌年5月頃に蒔きます。



2020/08/28

ハギ (萩) No.259

ハギ マメ科 落葉半低木

原産地=日本(北海道、本州)対馬、朝鮮半島

秋の七草に数えられ、昔から日本の秋を代表してきた植物である。

外見は草のように見える。

「ハギ」の名は総称として使われているが、学問的には「ヤマハギ」のことを指す。

日当たりのよい山地にに生え、高さは2㍍ほどになる。

萩の名所として知られる、社寺に植えられているものは、枝が垂れる「ミヤギノハギ」が多い。

ハギは種類が多く、白い花もあるが一般的なのは紅紫色。

日本に自生するものだけで20種類はある。

✣代表的な品種として

ヤマハギ、ミヤギノハギ、ツクシハギ、シロバナハギ
小形のヤクシマハギなどがある。

※萩の名所として知られる社寺園
京都市
①梨木神社
②上賀茂神社(賀茂別雷神社=かもわけいかづちじんじゃ)
京都で最も古い神社
③迎称寺
④平安神宮
⑤真正極楽寺(真如堂)
⑥伏見勝念寺

東京都
龍眼寺

茨城県水戸市
偕楽園
その他、全国に多くの名所がある。

花の見頃は全国的に差はあるが、早くて7月から10月下旬頃まで




小さな蝶形のハギ花に派手さはありませんが、かえって上品な趣が人々に親しまれている。

古典文学にも度々登場し、有名な芭蕉の句では「一つ家に遊女も寝たり萩の月」がある。

万葉集には130首を超す歌が詠まれている。

◆植え付け、移植

秋から冬又は、2月下旬から3月上旬頃に行う。

根は浅く横に広がる性質があるので、植え付け場所を広く掘り起こし、堆肥を多めにすき込んで少し高植えにする。

◉せん定
冬期の12月から2月にかけて行う。

大株に仕立てる場合は別として、狭い庭などでは地際の5㎝~10㎝ほどを残して切り取り、これを毎年行えば小形の樹形で花を楽しめます。

また、萌芽力があるので低い丈にしたい時は、新芽が20㎝ぐらいに伸びたところで先端を摘み、横枝が出るようにします。

◆肥料
あまりたくさんは必要ありません
1月から2月に鶏ふんや油粕を、成木の場合で200㌘~300㌘株のまわりを軽く掘って埋め込みます。

◉病気
※さび病
発生時期9月~10月
ダイセンの400倍液を散布

※うどん粉病
発生時期4月~10月
病気を見つけしだい、10日ごとにモレスタン、トップジンM、ベンレート、水和硫黄剤などを散布

※褐斑病
発生時期5月~10月
ダイセン、ダニコール、ベンレートなどを散布

◆害虫
※ヒゲナガアブラムシ
風通しが悪いときにアブラムシが発生する。

マラソン乳剤を散布し防除する。
ほとんどの殺虫剤が効く。


★殖やし方
株分け
2月~3月、10月に1~2本ずつ行う。

挿し木は3月に前年枝を挿す。
梅雨期には新芽を挿す。

実生もまれに行われる。







2020/08/26

タラノキ No.257

タラノキ ウコギ科 山菜

原産地=日本、朝鮮、中国北東部、アムール·ウスリー地方 別名=ウドモドキ

日当たりのよい山野や雑木林に生えるが、裸地の先駆植物なので、崖や道路の法面(のりめん)など、まだ他の植物があまり入り込んでいない場所に多い。

山菜の珍味、たらの芽としてお馴染みです。

特有の香織とややしつこい味が好まれ、若芽を天ぷらや味噌漬けなどにし賞味される。

枝には鋭い大きなトゲがあるので採取には要注意。

トゲの少ないものは(メダラ)という。

日陰では育たないが、樹勢は強く生長は早い。

栽培にはトゲの少ないメダラもよい、移植は可能(11月下旬~3月頃)でせん定は不要。



◉肥料
油粕、腐葉土、化成肥料を冬に与える。

◆観賞用品種
葉に黄色の斑紋があるキモンタラノキ

葉の縁が白いフクリンタラノキ

※メダラは葉の裏が白く、脈上に褐色や汚黄色の短い毛がある。

◉タラノ芽料理
一般的なのは天ぷら外側のかたい葉を落とし、根元に十文字の切り込みを入れて熱を通りやすくする。

衣は薄めにし、天つゆに大根おろしを添えて食べてもよい。

また、茹でたものをごま和えや酢味噌あえにしてもよい。

保存しない時は味噌漬け、塩漬けなどにする。







2020/08/25

プラタナス (スズカケノキ) No.256


プラタナス すずかけの木

落葉高木


原産地=北アメリカ、メキシコ、アジア西部
別名=スズカケノキ(鈴掛木)

プラタナスと言えば並木や公園樹として有名ですが、もともとは明治時代に渡来した植物です。

「日比谷公会堂、スズカケノキ」

明治43年に当時の芝区桜田本郷町に、十数本が植えられたのが街路樹としての最初である。

樹皮が剥げ落ちまだらになるのが特徴です。

このまだら模様が迷彩服のデザインのもとになっている。

高さが30㍍にもなる高木で、葉が大きくよく日陰を作り、秋になると丸いトゲのある実を枝からぶら下げ、その姿が鈴のように見えることから、スズカケノキの名がある。




若葉の頃に密生する綿毛が、アレルギー体質の人々を悩ますと言われて問題になっている。

雌雄同株で4月頃に雌花は淡緑色、雄花は黄色または暗紅色の花を咲かせる。

寒さに強く、乾燥地や湿地以外では土質を選ばずよく生育し、公害にも強い。

肥料はほとんど必要ない。

◉害虫
※アメリカシロヒトリ 
主に落葉広葉樹に発生する。

枝先に白い糸が袋状に張られています。

この袋状の巣の中に、幼虫が群棲していて集団で葉を食べる。

老熟幼虫は3㎝ほどになり、単独で行動し葉肉だけでなく、葉脈以外の葉のすべてに部分を食べるようになり、被害も拡がる。

巣を見つけしだい枝ごと除去するか、ディプテレックス、DDVPなどの薬剤を散布します。

年に2回、6月と8月に発生します。

幼虫は樹皮のすき間などで、サナギの状態で越冬するので、秋に樹の幹にムシロを巻いておき、冬場にこれを処分します。

★せん定時期
10月下旬から2月下旬


          (果実)

★殖やし方
実生は3月頃に蒔きます。
挿し木は新枝を6月~7月頃挿し木する。






サカキ No.255

サカキ (榊)ツバキ科

雌雄異株 原産地=関東以南、四国、九州

花弁の先がやや尖った白の5弁花をつける(5月~7月)

葉の付け根に1~3個の黒い実をつける。

庭の主木、植え込み、生け垣のほか、神前に供える玉串などに用いる。

温暖地の林に見るサカキは、10㍍にも伸長するが、庭では3~5㍍に仕立てる。

性質は強健で日陰にもよく耐えるが、日当たりのよい場所に植え付けると、しだいに弱ってくる。

湿潤な所が適し、日陰を好む。
株元を乾燥させない。

生長は遅く、樹姿は自然に整うので特に混み合う部分を間引く程度でよい。

切り戻しは必ず枝分かれしている部分で行う。




◉肥料

12月から1月に有機質肥料を株の周囲に施す。

◆害虫

チャドクガ

葉の裏にケムシが群れて、葉肉だけを食べるので表からは葉の色が黄色に見えます。

このケムシは、淡黄色に黒い紋のはいった姿で、老熟幼虫は2.5㎝ほどになります。

年に2回、4月と7月頃に発生する。

この虫は毒毛を持ち、触るだけではなく近寄ってもかぶれるので、他のケムシのように捕殺するのは適切ではありません。

薬剤は、産卵初期にカルホス乳剤、スミチオン、ディプテレックス、DDVPなどで防除する。

葉の色が黄色く変わるので、これを目印に孵化(ふか)後早いうちに駆除します。

成虫も毒毛をまき散らかしますので、早期に駆除することが大切です。

◉殖やし方

実が黒く熟したら、種をよく洗って蒔く。

挿し木は2年生枝を切り、葉を2枚~3枚つけて挿し穂にして、小粒の鹿沼土に挿します。

★サカキとヒサカキの違い

サカキの葉を縁に鋸歯がなく、ヒサカキの葉の縁には鋸歯がある。

葉がサカキの方が大きい。

花期はヒサカキが少し早い。