緑のお医者の徒然植物記

Translate

緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2020/09/26

ハナショウブ (アイリス) No,287

 ハナショウブ アヤメ科 宿根草(常緑)

別名=アイリス 「花菖蒲」

アヤメの仲間は非常に種類が多く、世界各地で200種以上の自生種が確認されており、欧米的では、「アイリス(アヤメ科の学名)」と呼ばれている。

原産地は日本、朝鮮半島、東シベリア、中国東北部一帯で、ハナショウブと呼ばれているのは、日本に自生する「ノハナショウブ」の改良品種です。




そのため欧米では「ジャパニーズ·アイリス」ので名で親しまれています。

5月下旬から7月上旬にかけて紫、白、絞りなど、様々な色合いの直径10~20㎝に達する大輪の花を咲かせます。

梅雨期の代表的な草花として、万葉時代(歌が詠まれたのは西暦629年~759年)から親しまれてきました。

花、葉ともに同属の「アヤメ」や「カキツバタ」とよく似ていますが生育環境がそれぞれ違います。

※アヤメは乾燥にも強く陸生植物。

※カキツバタは水の中で育つ水性植物。

※ハナショウブは水辺の湿地帯に育つ陸生植物である点が異なります。

しかし、平安時代から鎌倉時代頃までは、ハナショウブをアヤメと呼んでいたために、かなり混同されているようです。

現在も各地でよく開かれる「あやめ祭り」のあやめが実際には、ハナショウブであることが多いのもその名残りと言えるでしょう。

あやめ園などでハナショウブが、水中に咲いている風景をよく見かけますが、これは開花中だけの演出です。

ハナショウブには葉の中央に隆起した、葉脈が1本通っていてこれも、アヤメやカキツバタと見分ける大きなポイントになります。


(菖蒲湯に利用されるサトイモ科のショウブ)


単にショウブと言った場合は、ハナショウブを指す事が多いようですが、ショウブは本来端午の節句の「菖蒲湯」にその葉を使う「サトイモ科」の植物の事で、ハナショウブは葉の形がショウブによく似ている事から、名付けられた呼び名です。

園芸種が多いアヤメ属の中でも、ハナショウブの品種は最も多く、江戸時代から盛んに品種改良が行われ、現在では約2000種と言われています。

★品種系別
※爽やかで華麗な江戸系

※気品ある伊勢系

※豪華絢爛、壮麗な大輪の花を咲かせる肥後系

※アメリカで改良されたアメリカ系に大別されます。

近縁種として、明治初期に渡来した、花の黄色いヨーロッパ原産の「キショウブ」があります。

葉の中央の隆起した葉脈など、ハナショウブとの共通点も多く、交配種も多数作られています。


         (ハナショウブ)


◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい湿潤地を好みます。

日陰では花が咲きません。

花壇や鉢植えで楽しむことが多いようですが、休眠期の冬以外は水やりをこまめに行い、乾燥を防げば庭植えも可能です。

◉植え付け新芽を数個残して、葉を半分に切り詰め、浅く植えてたっぷり水を与えます。

土は苦土石灰で中和しておきます。
元肥に暖効性肥料を与え、根茎の上部が出る程浅く植えます。

花の終わった直後の6月下旬から7月上旬が適期です。

葉が生長した状態を想定し、列植、群植にする場合は、株と株の間隔を30㎝以上開けるようにします。

茎丈が高くなるので鉢植えの場合は、最低でも6号鉢以上の大きさが必要です。

夏期は充分な水やりが必要なので、底面給水鉢を用いると便利です。

耐寒性は強い植物ですが、土中水分が凍ると根を傷めやすいので、冬期は鉢を花壇に植えるか、寒冷紗で覆うなどの対策が必要になります。

◆肥料
寒肥として完熟堆肥を与え、春と秋に油粕などを少量与えます。

肥料を与え過ぎると株が腐りやすくなるので、控えめに与えましょう。

チッソ分の多い肥料は、軟腐病になりやすいので避けます。

◉病害虫
まれにズイムシ(アヤメキバガ)が発生し、花芽を食害することがあります。

見つけ次第捕殺するか、大量発生した場合は、オルトラン水和剤などを散布します。

★軟腐病=なんぷびょう
病原体のバクテリアが導管部で繁殖し、養水分が地上部に行き渡らなくなり、青枯れ状態になります。

地際部から根にかけて、やわらかく溶けるように腐敗し、悪臭を放つようになります。

高温多湿を好むので、5月から9月に発生します。

チッソ肥料のやり過ぎも多発の原因になります。

バクテリアの病気は薬剤による治療は困難です。

病気にかかった株は見つけ次第、引き抜いて処分しましょう。

バクテリアは傷口から侵入するので、根を傷つけないように注意しましょう。

5月頃から月に1~2回ストレプトマイシンや、銅水和剤(ボルドーなど)を散布すると、多少の予防になります。

この病気はキク、ユリ、ダリア、チューリップ、タマネギ等にも発生します。

◉せん定
一番花、二番花と次々に花が咲くので、終わった花びらは速やかに摘み取ります。

一般的に花期は、5月中旬頃から7月までですが、品種により異なります。

つぼみの先端を突くと開花しないので、作業は慎重に行いましょう。

花が終わったら茎ごと切り取り、3~4年に1回は6月頃に植え替えます。

この時に株分けで殖やせます。

★殖やし方
植え付けて3~4年が最盛期でその後は衰えます。

鉢植えは1~2年、庭植えは3年に1度を目安に株分けします。


古株を掘り起こし、葉を3分の1程度切り詰め、子株を傷めないように切り分け、植え付けます。







2020/09/25

ユズリハ No,286

 ユズリハ ユズリハ科 (譲り葉)

別名=ユズルハ、ユズル 助力広葉中高木

原産地は日本、朝鮮、中国一帯で日本では福島県以西の山地に多く自生しています。

以前はトウダイグサ科に分類されていましたが、DNAを用いた研究により、ユズリハ科とする説が有力です。

ユズリハ科に分類されている植物は、1属10種程ですべて東アジア一帯に分布しています。

新葉が生長すると、入れ換わるようにふるい分け葉が一斉に落葉します。

その様子を子供が立派に、成長するのを見届けてから親が家督を、譲る事になぞらえて「譲り葉」と名付けられました。

世代交代と一家繁栄を象徴する縁起木として、記念樹や正月飾りに古くから珍重されてきました。

また、神仏への供え物を乗せるのに、その葉を用いたとする古文があり、神社などによく植えられていました。

清少納言の「枕草子」にも、ユズリハを使って正月を祝う様子が記載されている。

万葉時代にはユズリハ「弓弦葉」と呼ばれていました。

新葉が成長してから古葉が落ちる現象自体は、常緑樹に一般的に見られるもので、さほど珍しい訳ではありませんが、ユズリハは急激に新旧交代が行われます。

大きな葉で、特によく目立ったことが命名に影響しているようです。

樹高は5~10㍍に達します。

雌雄異株で5月から6月にかけて、前年枝の葉腋に穂状の総状花序をつけます。

樹皮、葉にはアルカロイド系の物質が含まれていて「有毒」です。

古くは薬用に用いたり、家畜につく害虫の駆除に使われていました。


         (ユズリハ)

◉品種
園芸種として、葉に白や淡黄色の斑が入る「フイリユズリハ」葉柄が緑色の「アオジュクユズリハ」などがある。

類似種として、内陸部に多い自生するユズリハと異なり、海岸沿いに自生し、葉が一回り小さい「ヒメユズリハ」耐寒性が強く本州中部から北海道の、日本海側の山地に多く自生する、矮性の「エゾユズリハ」がある。

★生育環境
やや粘土質の湿潤地を好みます。

日陰にも強い樹種ですが、ある程度の日照があった方が枝が、密に茂り樹形が美しくなります。

◉植え付け
植え付けは冬の寒風の当たらない場所を選び、植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込み土中湿度を十分に保つように管理します。

日陰に強いので建物の北側の植栽や目隠しとしても活用できます。

移植は比較的容易ですが、大木は前年から根回しし、細根を十分発根させてから行います。

乾燥を嫌うので、移植時では幹巻きして、蒸散を防ぐことも大切です。

◆肥料
寒肥として鶏ふん、腐葉土、完熟堆肥などの有機肥料を株回りに溝を掘って施肥します。

化成肥料や油粕など、チッソ分の多い肥料は枝分かれが粗くなり、樹形を乱す原因になるので控えるようにします。

◆病害虫
枝葉が密生し過ぎると、アブラムシやカイガラムシ発生する事があります。

定期的にせん定し、樹冠内の枝葉が蒸れないように注意し、必要に応じて薬剤を散布して防除します。

◉せん定
樹形を乱す徒長枝や立ち枝が目立ってきたら、思いきって2分の1から3分の1の長さに切り戻し、細かい枝が多数出るように促し、樹形を更新します。

葉が大きく枝が粗いので、細い込み枝は枯れ込みます。

弱い枝や込み過ぎた枝を間引き日照、通風を保つようにしましょう。

★殖やし方
秋に種子を採り乾燥しない様に貯蔵し、翌春に蒔きます。

土中湿度を保ちながら管理します。

発芽までには1年程かかり、3年目の春に定植します。






2020/09/24

リヨウブ No,285

リヨウブ「令法」落葉中高木 

リヨウブ科別名=ハタツモリ、サルダメシ

北海道南部から九州にかけて、山麓や低山地に幅広く自生する日本原産の樹木で、その他朝鮮半島にも分布が見られる。

「リヨウブ」の仲間は世界で数十種が確認されていますが、日本に自生しているのはリヨウブ1種だけです。

樹皮に特徴があり、赤褐色または灰褐色の樹皮が剥がれ落ち、まだら模様になる様子には深い味わいがあります。

すべすべした幹肌は中国から伝来した、「サルスベリ」によく似ていますが、実際にリヨウブをサルスベリと呼ぶ地方もあるようです。

また「サルダメシ」と言う別名もあります。

7月から9月にかけて枝先に、白い小花を密につけた円錐花序を形成します。

ひとつの花は5ミリ程の小さなものですが、蜜腺が発達していて、蜜を求めて多くの昆虫が集まります。

花は5弁で花びらより雄しべの方が長く伸びる。

葉は枝先近くに多く集まり互生し、先端が尖り鋸歯があります。

花もそれなりに楽しむことも出来ますが、リヨウブの魅力は何と言っても、樹皮の趣と一斉に出る、新芽の芽吹きの美しさにあります。

庭木だけでなく茶花や生花の材料としても幅広く利用されています。

大量に芽吹く若芽や若葉は柔らかく、古くは食用に共されました。

塩ゆでにした若芽を刻んで米に混ぜた「リヨウブ飯」や、天ぷらが今日でも郷土料理として残っている地方があります。

一説によると令法(りょうぶ)と言う表記は、飢饉(ききん)の時に山村の非常食として、リヨウブの葉の採取、貯蔵を命じる官令がよく発せられた事に、由来すると言われています。

リヨウブは伐採に強い、再生能力の高い樹木として知られています。

リヨウブの根は浅く広がり、地中深く伸びる直根がほとんどありません。

そのため、野生のものは強風を避けるように松やコナラなどの大木の下に、二次的発生し群生します。

浅い根は太い幹を支えるためには不利ですが、地表近くに豊富にある栄養分を吸収するには有利です。

倒れやすい反面、栄養を十分取れるので大変丈夫で幹元付近に常に、休眠状態の不定芽を多数準備しています。

そして幹が倒れたり傾くとすぐに活性化し、新しい幹として伸長すると言う面白い性質を持っています。

◆品種
園芸種として、樹高2㍍前後で花が咲く「一才リヨウブ」

日本のリヨウブより低木で小庭に向く「アメリカリヨウブ」があります。

◆生育環境
日当たり、水はけともによい腐植質に富んだ肥沃な土地を好みますが、痩せ地や乾燥地、酸性土壌にもよく耐えます。

◉植え付け
植え穴に完熟堆肥、腐葉土を十分すき込み高植えにします。

強風に当たると倒れやすいので、樹高の高い木の下など、風避けが出来る場所に植えるようにします。

植え付け後は必要に応じて支柱などで支えます。

耐寒性は強く、北海道南部まで庭植えが可能です。

◉肥料
生長力が強くよほどの痩せ地でない限り、肥料は余り必要としません。

与える場合は、鶏ふんなどの有機肥料を冬期に寒肥として、株元にすき込みます。

★病害虫
まれに「うどん粉病」が発生する場合があります。

白いカビが若い葉や若い茎、新芽などの表面にうどん粉をまぶした様に、びっしりと生える病気の総称です。

病気が進行すると、葉が変形して形状が小さくなります。

発生する時期は植物によって異なりますが、高温(20度前後)多湿を好み、4月から10月に発生します。

病気を見つけ次第、10日ごとにモレスタン、トップジンM、ベンレート、水和硫黄剤などを散布します。

チッソ肥料を与え過ぎると発生しやすくなります。

チッソ肥料を減らし、カリ肥料を多めに与えましょう。

樹木の場合は、枝で越冬している菌糸を殺すために、1月から2月に冬期限定使用薬剤の、石灰硫黄合剤を1~2回散布するのも効果的です。

この病気は数多くの植物に発生します。

◆せん定
自然樹形で楽しむのが一般的です。

倒れやすいので樹冠が重くならないように、徒長枝や枯れ枝、込み枝は付け根から切り取り整理します。

通常のせん定は、落葉期の冬に行います。

ひこばえが盛んに出る性質があるので、見つけ次第早めに切り取るようにします。

◆殖やし方
実生は10月から11月に種子を採り、冷暗所で貯蔵し、翌春の3月から4月に蒔きます。

挿し木は、6月中旬から7月上旬に今年伸びた枝を15㎝程切り、さし穂とします。

一時間ほど水揚げしてから赤玉土、鹿沼土などの用土に挿します。


(リヨウブ)





ネズミモチ No,284

ネズミモチ 「鼠黐」モクセイ科

別名=タマツバキ、テラツバキ常緑広葉樹

原産地=日本(九州、四国、関東以西、沖縄)
中国、朝鮮半島一帯

ヨーロッパにも同種の自生種が見られる。

樹高は5~7㍍程で6月頃、枝先に円錐花序を形成し、長さ5ミリ前後の筒状の白色小花を多数咲かせる。

萌芽力が強く、よく枝分かれすることから、主に暖地の生け垣、公園樹などに幅広く利用されている。

卵形の葉はなめらかで、短い葉柄があり対生する。

花、葉ともほのかな香りを放ちます。

10月から12月にかけて、長さ1㎝前後の楕円形の果実が紫黒色に熟し、果実の表面は白い粉をまぶした様になっている。

この果実が地表に落下した様子が、ネズミの糞に似ていること、葉がモチノキの葉に似ている事から「ネズミモチ」と名付けられました。

10世紀中期頃の「★和名抄」と言う書物にネズミモチが薬用樹として利用されていたとする記述があり、古くから薬用として用いられていた事が分かります。

★和名抄とは和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)の略称。

平安時代中期(承平年間=しょうへいねんかん、931年~938年)に作られた、意義分類体の辞書の事。

約2600の漢語を分類し、その文例、語訳を漢籍から引用して、割注で字音と和訓を示す。

漢籍=かんせき(中国の漢文書物)

割注=わりちゅう(文章の途中に小さな文字で入れる注釈、二行にする事が多い)

字音=じおん(特に日本に伝わって国語化した漢字の発音)

和訓(倭訓)=わくん(漢字に固有の日本語を当てて読む事、その読み方)

果実、樹皮、葉などを乾燥したものを「女貞=じょてい、にょてい」と呼び、滋養強壮、便秘、生理不順、健胃整腸、網膜炎など幅広い薬効があり、東洋医学では貴重な生薬とされています。

木材は道具の柄や杖、楊子(つまようじ)などに用いられ、実用的価値も高い樹種です。


         (ネズミモチ)

◉品種

ネズミモチの変種でフクロモチ

樹高が10㍍以上になり葉、花、果実ともにネズミモチより一回り大きい、中国原産の類似種★トウネズミモチ(女貞の元祖の樹)

園芸変種として、フクリンネズミモチ、キマダラネズミモチ、キモンネズミモチなどがある。

★トウネズミモチは一見するとネズミモチによく似ていますが、葉が大きく先端が尖っていること、陽に当たると葉脈が透けて見えることや、花期が遅い(7月)事などから見分けることが出来ます。

◉生育環境

日光を好みますが日陰でもよく耐えます。

樹勢が大変強く、土質は特に選びませんがやや湿潤地がより適しています。

◆植え付け、移植

厳寒期を除きいつでも可能ですが、暖かくなる3月から4月と、酷暑が過ぎた9月から10月頃が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んで高植えにし、十分水を与えます。

移植にも強いですが、大木は半年程前に根回しを行い細根を株回り出してから、枝葉を出来るだけ切り詰めて蒸散を防ぐ対策を取り、移植することが大切です。

◉肥料

葉の色が悪い場合は、春先にチッソ系の肥料を株元に蒔きます。

また、寒肥として堆肥、油粕を与える。

◆病害虫

新梢や若葉に「うどん粉病」が発生する事があります。

病変部を切り取り処分しますが、症状が酷い場合は、カラセン水和剤などを散布します。

カイガラムシの発生には、1月から2月にマシン油乳剤を2~3回散布し防除する。

◉せん定、整姿

せん定期間は4月から11月
萌芽力旺盛で強せん定にも耐えるため、様々な樹形に仕立てる事が出来る樹種です。

かなり大胆に切り詰めても2~3年で元に戻るので、成木になってからの仕立て直しも可能です。

樹形が乱れやすいので、こまめに整姿、せん定をして樹形を保つようにします。

徒長枝やひこばえ(やご)が盛んにでるので、早めに切り詰めます。

枝が密生すると細枝が枯れ込むので、随時枝抜きを行い、樹冠内の通気を保つことも大切です。

生け垣の場合では、樹形を保つためには最低でも年2回の刈り込みが必要です。

★殖やし方

実生は晩秋から冬にかけてよく熟した種子を採ります。

暖地ではそのまま採り蒔きにできますが、寒地では冷暗所で貯蔵し、翌春に蒔きます。

種子の表面を少し傷つけると発芽率が高くなります。




1年程で40㎝前後になるので、よい苗を選んで4月から5月に定植します。

挿し木は、充実した本年枝を15㎝程に切って指し穂とし、赤玉土、鹿沼土などの単用土に挿します。

挿し木の適期は6月から7月です。







2020/09/23

タイサンボク No,283

タイサンボク

「泰山木、大盃木」

別名=ハクレンボク(白連木) 
モクレン科

原産地=北アメリカ南部、フロリダ半島を中心とする、メキシコ湾岸沿いの暖地帯で原産地付近のいくつかの州では州の花に指定されている。

日本には明治時代初頭に伝えられましたが、芳香を放つ大輪の花が人気を呼び、急速に全国に広まりました。

樹高が10~20㍍に達することから、多くは公園樹や広いスペースのある庭のシンボルツリー、記念樹として利用されています。

公害に強く、成分を多く含み耐火性があることから、暖地では街路樹、防火樹としても利用されています。

学名のマグノリア=モクレン属の総称で植物学者のマグノールに由来

※フランスの植物学者
ピエール·マグノール (1638~1715)
植物の分類体系を考案した人物です。


グランディフローラは「モクレン属の大きな花」と言う意味でその名の通り6月から7月にかけて、直径15~20㎝にも達する巨大な6弁の白色花を咲かせます。


              (タイサンボクの花)


果実は袋果が集まった集合果で10月から11月に熟す。

袋果には種子が二個入っていて、裂開すると赤い種子が顔を出す。

葉も20㎝と大きく、葉の裏は鉄錆び色(褐色)の柔毛が密生する。

大きなカップ状の花を盃に見立てて「大盃木」と呼んだのが和名の由来と言われています。

また、雄大な樹形を山に見立てて
(泰「大」山木)としたとする説もある。

タイサンボクは樹高がかなり高くならないと、花が咲かないので、小庭での栽培は難しいが、一般の庭でも栽培可能な近縁種が多数あります。

★品種
タイサンボクよりもやや小ぶりのホソバタイサンボク。

樹高が5㍍前後で、鉢植えにもできる落葉性のウラジロタイサンボク(ヒメタイサンボク)

落葉性で樹高が低く、積雪にも耐える程の耐寒性の強いオオヤマレンゲ。

園芸種として、樹高数十センチから花が咲く、矮性の「リトルジェム」がある。

◆生育環境

日当たりがよく腐植質に富んだ、肥沃なやや湿潤地が適しています。

痩せ地や乾燥地では生育がよくありません。

庭植えに向くのは、関東地方以南の暖地ですが、耐寒性の強い類似種が多数あります。

◉植え付け、移植

植え付けは4月から5月、または9月が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土を十分にすき込んで植え、必ず支柱で保護するようにします。

根が太く柔らかいため、大木の移植は枯れやすく困難です。

やむを得ず移植する場合は、前年の春に根回しして、細い根を十分発根させてから乾燥に注意して素早く移植を行います。

◉肥料

冬に寒肥として油粕などの有機物を、株元に施します。

病害虫の心配はほとんどありませんが、まれにカイガラムシが発生することがあります。

冬期に石灰硫黄合剤を散布して防除します。

◉せん定

広い庭では、自然樹形を楽しみ楽しみたいものですが、花が高い所につくので適当な位置で芯を止める必要があります。

花芽は今年伸びた新梢の短枝の頂芽に夏頃分化し、翌年その位置で開花します。

通常のせん定は、花芽が分かる10月から11月に行います。

生長が早く、樹形は乱れやすい傾向にありますが、余り枝分かれしないので徒長枝や込み枝を、間引く程度で十分です。

切り口から枯れ込む事があるので、枝は必ず付け根から切り、太い枝を切った時はツギロウなどの保護剤を塗布します。

枝葉が密生して花芽が出来にくい時は、株元を掘って太い根を切り樹勢を抑えます。

◉殖やし方

11月頃に熟した種子を採り蒔きにし、乾燥に注意して管理します。

寒地では、低温貯蔵して翌春に蒔きます。

生長の早い品種は2年程で開花しますが、遅いものは10年以上かかる場合もあります。

早く開花されるには、4月に充実した枝を挿し木にする方法もありますが、発根率が悪く困難です。









ビヨウヤナギ No,282

ビヨウヤナギ

「未央柳、美容柳」

オトギリソウ科 半落葉低木
原産地=中国 別名=ビジョヤナギ

日本には江戸時代中期に伝わりました。

その美しさからすぐに人気が高まり、庭木や生け花用の切り花として、幅広く親しまれてきました。

ビジョヤナギの名は日本で名付けられましたが、出典は唐代の詩人白楽天の「長恨歌」です。

中国では、「金糸桃」と呼ばれています。

日本の花屋(店)では、専(もっぱ)らビジョヤナギ(美女柳)の名称で親しまれている。

6月から7月にかけて、直径5~6㎝の鮮黄色の5弁花が、密に茂った枝先一面に開花します。

枝は垂れ下がりますが、花は上向きに咲きます。

花の中心部からたくさん出ている細長い雄しべは、花弁よりも長く繊細でふんわりと広がる様子は、
金の糸の様で他の花にない
独特の美しさを持っています。

葉の展開する時期が非常に早く、葉の緑と後から咲く花の、黄金色との対照も見事です。


        (ビヨウヤナギ)

★園芸品種
キンシバイの仲間の類似種に、ホソバキンシバイ、オトギリソウ、ヒメオトギリソウなどがあります。

西洋の類似種であるヒペリカム(オトギリソウ科の植物の学名)には、大輪種のヒペリカム·フオレスティー

葉に黄白色の斑が入ったヒペリカム·モゼリアナムなどの園芸種がある。

◉生育環境
日当たりのよいやや湿潤地を好みますが、半日陰でもよく育ちます。

土質は特に選びませんが、乾燥が苦手です。

午後の日が当たらない肥沃で、湿潤な土の方がよく生育するので、その様な場所を選んで植えると、花もよく咲きます。

◉植え付け
植え付けは出来るだけ乾燥しない場所を選び、広めに掘った植え穴に完熟堆肥、腐葉土を十分にすき込んで植え付けます。

暖地性の植物ですが、耐寒性は比較的強く、東北地方南部まで庭植えが可能です。

植え付けの適期は3月から4月です。

◉肥料
丈夫でよく育つので、痩せ地でない限り肥料はほとんど必要ありません。

花数を増やしたい時は、花後に化成肥料や鶏ふん、油粕などを少量株元に蒔きます。

◆せん定
放任しても枝葉が密生した株立ち状に樹形がまとまります。

刈り込みにも耐えますが、自然樹形で楽しむのが一般的です。

通常の整姿、せん定は花後の9月頃に伸び過ぎた枝や込み枝を切る程度で十分です。

大きくなり過ぎたり、古枝になって柔らかい風情がなくなった枝は、地際から切り取り新枝に更新します。

花芽は春に伸びた新梢の先端に分化します。

そのため、花芽を傷めたり切ってしまわないよう、春先のせん定は控えます。

◉殖やし方

簡単に出来るのは株分けです。
新芽が出る前に大株を、3分の1程の高さに切り詰めて掘り起こし、2分け割して半日陰に高植えします。

十分に水を与え、乾燥に注意して管理します。

実生は秋に種子を採ります。
温暖地はそのまま採り蒔きにできますが、冷寒地では低温保存して、翌春に蒔きます。