緑のお医者の徒然植物記

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2020/09/26

ハナショウブ (アイリス) No,287

 ハナショウブ アヤメ科 宿根草(常緑)

別名=アイリス 「花菖蒲」

アヤメの仲間は非常に種類が多く、世界各地で200種以上の自生種が確認されており、欧米的では、「アイリス(アヤメ科の学名)」と呼ばれている。

原産地は日本、朝鮮半島、東シベリア、中国東北部一帯で、ハナショウブと呼ばれているのは、日本に自生する「ノハナショウブ」の改良品種です。




そのため欧米では「ジャパニーズ·アイリス」ので名で親しまれています。

5月下旬から7月上旬にかけて紫、白、絞りなど、様々な色合いの直径10~20㎝に達する大輪の花を咲かせます。

梅雨期の代表的な草花として、万葉時代(歌が詠まれたのは西暦629年~759年)から親しまれてきました。

花、葉ともに同属の「アヤメ」や「カキツバタ」とよく似ていますが生育環境がそれぞれ違います。

※アヤメは乾燥にも強く陸生植物。

※カキツバタは水の中で育つ水性植物。

※ハナショウブは水辺の湿地帯に育つ陸生植物である点が異なります。

しかし、平安時代から鎌倉時代頃までは、ハナショウブをアヤメと呼んでいたために、かなり混同されているようです。

現在も各地でよく開かれる「あやめ祭り」のあやめが実際には、ハナショウブであることが多いのもその名残りと言えるでしょう。

あやめ園などでハナショウブが、水中に咲いている風景をよく見かけますが、これは開花中だけの演出です。

ハナショウブには葉の中央に隆起した、葉脈が1本通っていてこれも、アヤメやカキツバタと見分ける大きなポイントになります。


(菖蒲湯に利用されるサトイモ科のショウブ)


単にショウブと言った場合は、ハナショウブを指す事が多いようですが、ショウブは本来端午の節句の「菖蒲湯」にその葉を使う「サトイモ科」の植物の事で、ハナショウブは葉の形がショウブによく似ている事から、名付けられた呼び名です。

園芸種が多いアヤメ属の中でも、ハナショウブの品種は最も多く、江戸時代から盛んに品種改良が行われ、現在では約2000種と言われています。

★品種系別
※爽やかで華麗な江戸系

※気品ある伊勢系

※豪華絢爛、壮麗な大輪の花を咲かせる肥後系

※アメリカで改良されたアメリカ系に大別されます。

近縁種として、明治初期に渡来した、花の黄色いヨーロッパ原産の「キショウブ」があります。

葉の中央の隆起した葉脈など、ハナショウブとの共通点も多く、交配種も多数作られています。


         (ハナショウブ)


◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい湿潤地を好みます。

日陰では花が咲きません。

花壇や鉢植えで楽しむことが多いようですが、休眠期の冬以外は水やりをこまめに行い、乾燥を防げば庭植えも可能です。

◉植え付け新芽を数個残して、葉を半分に切り詰め、浅く植えてたっぷり水を与えます。

土は苦土石灰で中和しておきます。
元肥に暖効性肥料を与え、根茎の上部が出る程浅く植えます。

花の終わった直後の6月下旬から7月上旬が適期です。

葉が生長した状態を想定し、列植、群植にする場合は、株と株の間隔を30㎝以上開けるようにします。

茎丈が高くなるので鉢植えの場合は、最低でも6号鉢以上の大きさが必要です。

夏期は充分な水やりが必要なので、底面給水鉢を用いると便利です。

耐寒性は強い植物ですが、土中水分が凍ると根を傷めやすいので、冬期は鉢を花壇に植えるか、寒冷紗で覆うなどの対策が必要になります。

◆肥料
寒肥として完熟堆肥を与え、春と秋に油粕などを少量与えます。

肥料を与え過ぎると株が腐りやすくなるので、控えめに与えましょう。

チッソ分の多い肥料は、軟腐病になりやすいので避けます。

◉病害虫
まれにズイムシ(アヤメキバガ)が発生し、花芽を食害することがあります。

見つけ次第捕殺するか、大量発生した場合は、オルトラン水和剤などを散布します。

★軟腐病=なんぷびょう
病原体のバクテリアが導管部で繁殖し、養水分が地上部に行き渡らなくなり、青枯れ状態になります。

地際部から根にかけて、やわらかく溶けるように腐敗し、悪臭を放つようになります。

高温多湿を好むので、5月から9月に発生します。

チッソ肥料のやり過ぎも多発の原因になります。

バクテリアの病気は薬剤による治療は困難です。

病気にかかった株は見つけ次第、引き抜いて処分しましょう。

バクテリアは傷口から侵入するので、根を傷つけないように注意しましょう。

5月頃から月に1~2回ストレプトマイシンや、銅水和剤(ボルドーなど)を散布すると、多少の予防になります。

この病気はキク、ユリ、ダリア、チューリップ、タマネギ等にも発生します。

◉せん定
一番花、二番花と次々に花が咲くので、終わった花びらは速やかに摘み取ります。

一般的に花期は、5月中旬頃から7月までですが、品種により異なります。

つぼみの先端を突くと開花しないので、作業は慎重に行いましょう。

花が終わったら茎ごと切り取り、3~4年に1回は6月頃に植え替えます。

この時に株分けで殖やせます。

★殖やし方
植え付けて3~4年が最盛期でその後は衰えます。

鉢植えは1~2年、庭植えは3年に1度を目安に株分けします。


古株を掘り起こし、葉を3分の1程度切り詰め、子株を傷めないように切り分け、植え付けます。