緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/10/02

 ジュウガツザクラ No,294

ジュウガツザクラ バラ科 落葉低木

別名=オエシキザクラ 「十月桜」

原産地=日本
名前の通り、10月頃から可憐な花が咲きます。

地方によっては七五三の頃に咲くことから、「七五三桜」と呼ぶ地域もある。


多くは淡紅色または、白色の八重咲きですが時折、一重咲きのものが見られることもあります。

春に咲くソメイヨシノのように、一斉に開く事はありませんが、開花期間が長く12月頃までポツポツと断続的に咲き続けます。

花数が少ない上に花径(1.5~2㎝)も小さいため、一般の「桜」と言う言葉から連想する、華麗さはありませんが、さっぱりとした魅力がある花です。

また、二度咲きの樹種として知られ、3月下旬から4月上旬にかけても、一般の桜と同じように開花します。


春に咲く花は秋花より大きく、一斉に開花するがソメイヨシノなどと比べると花数は少ない。

樹高が3~4㍍と低く、一般家庭でも育成可能です。

小ぶりに育てることもできるので、小品盆栽や山野草の寄せ植え盆栽の主木として、用いられることも多い花木です。

サクラの野生種は大きく6つのグループに分けられますが、その中のエドヒガン群に分類される、コヒガンザクラの園芸品種と言われています。

★コヒガンザクラとは
房総半島、伊豆半島の山地に自生するエドヒガンとマメザクラの交雑種です。

品種改良の歴史ははっきりしていませんが、明治時代中期頃には、寺院や公園などを中心に全国で栽培されるようになりました。

特に寺院との関わりが深く、日蓮聖人の命日に行われる法要=御会式(おえしき)の頃に、花が咲くことから「オエシキザクラ」の別名があります。

◆エドヒガン(江戸彼岸)
別名=アズマヒガン、ウバヒガン
日本に自生するエドヒガン群の野生種は、エドヒガンだけだが、ソメイヨシノをはじめ栽培品種の数は多い。

この仲間はガク筒が丸く膨れ、上部がくびれてツボ形になるのが特徴、寿命の長いサクラで天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。

春の彼岸の頃に咲き、東京に多く植えられていた事からこの名が付いた。

◆マメザクラ(豆桜)
別名=フジザクラ
マメザクラ群のサクラは、葉の展開前または同時に開花する。

マメザクラの仲間とタカネザクラの仲間の2つのグループに分けられる。


        (ジュウガツザクラ)

◆品種
同じコヒガンザクラ系の園芸種で、晩秋から冬にかけて開花するものに一重咲きの「シキザクラ」

花径が3㎝前後とやや大きい、一重の白色花が咲く「フサザクラ」などがあります。

◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

日陰や半日陰では花芽のつきが悪く、生育もよくありません。

庭の広さに余裕があればできるだけ、群植は避け日陰を作らないようにします。

乾燥を嫌うので、適度な保湿力を持った土壌に植え付けるようにします。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥を十分にすき込んで高植えにします。

植え付け、移植の適期は2月下旬~3月と11月~12月です。

◆肥料
普通の土壌であれば、寒肥として1月から2月に油粕、鶏ふん、腐葉土などを株元にすき込む程度で十分です。

造成地など土壌が痩せている所では、4月から6月に油粕と粒状化成肥料を等量混ぜたものを、必要に応じて9月から10月にも同様のものを、追肥します。

◉病害虫
サクラ類によく見られるテングス病や胴枯れ病、テッポウムシなどが発生する場合があります。

★テングス病 (天狗巣病)
5月~12月に発生
病状は色々ですが、代表的な症状は幹や枝の間からたくさんの小枝が群生して、箒「ほうき)状になる症状です。

病菌は患部の枝の中で越冬し、花が咲いた後に葉の裏側に胞子をつけ飛散し、空気感染します。

この小枝は軟弱なものが多く、葉はつきますが花は咲きません。

この病患部は年々大きくなり、枝は次第に弱まり枯れたり折れたりします。

被害の激しい樹では樹勢が著しく衰えます。

テングス病は病菌に色々な種類があるが、どの種類も薬での治療は困難です。

しかし、この菌は感染力が弱いので病気にかかった枝を取り除き、処分することでほとんど治す事ができます。

切り取った切り口に癒合剤(保護剤)を塗っておくことが予防になります。

また、1月から2月頃にダイセンや銅水和剤、石灰硫黄合剤などを散布し予防します。

★胴枯れ病
6月~10月に発生
幹が枯れる病気の総称で、病斑部はやわらかくなり指で摘まむと簡単に剥がれます。

病気が進むと病斑が褐色になり、小さな突起物が現れますが、これは病菌の繁殖器官です。

病菌は害虫による傷口、せん定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

この病気に対しての、薬剤による直接的な治療法は見つかっていません。

病斑部を出来るだけ深く削り取り、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたらすぐに駆除しましょう。

病斑部を削り取った跡やせん定による切り口、傷口などにトップジンMや石灰硫黄合剤を塗り、乾いたら墨汁や保護剤などを塗って予防しましょう。

せん定による傷口や寒害、日焼けの幹の傷などに注意して、傷口を手入れしてあげましょう。

★テッポウムシ(カミカリムシの幼虫)
穿孔(せんこう)性の甲虫類で重要な害虫の一つ

成虫は見つけ次第捕殺します。

幹に食入口(虫穴)を見つけたら、穴にスミチオン乳剤などを注入し、土などで穴を塞ぎます。

発生時期にサッチューコートやスミバーグなどの薬剤を散布すると有効です。

大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

◉せん定
春の花が終わったら、飛び枝や込み枝などを軽く整理すると、秋にまとまった樹形で花を楽しむことができます。

サクラの仲間は、枝などをせん定した後の傷口から水分がしみ出して乾燥しにくく、腐朽菌が侵入しやすいため、太枝の強せん定は出来るだけ避けるようにします。

必ず付け根から切り、残す枝が切る枝より細いと言う事がないように注意します。

また、地際から出るひこばえは早めに切り取ります。

★殖やし方
5月から6月に新芽が固まった新梢の枝先を、10~15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土小粒などのさし床にさします。

乾燥に注意しながら管理するとよく活着します。







2020/10/01

ビナンカズラ No,293

 ビナンカズラ マツブサ科 常緑蔓性

 原産地=日本  別名=サネガヅラ

学名も日本産の「蔓(ツル)性植物」を意味する。

「カズラ·ジャポニカ」と名付けられています。

日本では、関東地方以西の本州、四国九州に幅広く分布していますが、台湾、朝鮮半島南部にかけて、20種程の仲間が自生していることが、確認されています。

7月から8月にかけて、葉腋から長い花柄を出し、淡い黄白色の花を下向きに咲かせます。

雌雄異株で、雌花の花柄は4~5㎝と雄花の倍以上の長さがあるのが特徴ですが、雌雄同株で両性花が咲くものもあります。

これは、自生地の環境によって繁殖戦略を変化させてきた事の名残りと考えられます。

ツルは長さ7~8㍍程に伸び、生長すると直径2㎝程の太さになり、古くなるとコルク層が発達する。

褐色で柔らかく厚い樹皮をつけます。

この樹皮は粘液を多く含んでいて、樹液を水に溶かして煮出したものを、整髪料として用いていました。

男女ともに利用していたようですが、中世以降に男性(武士)の整髪に多く用いられた事から、ビナンカズラ(美男葛)と呼ばれるようになりました。

葉は先端が尖った楕円形で、互生しまばらな鋸歯があり、やや肉厚で表面は濃緑色で光沢がある。

葉の裏面は紫色を帯びている。

雌株は10月~12月にかけて、直径2~3㎝程の球状の果実が集まって結実する集合果で、晩秋から冬にかけて赤く熟す果実は、よく目立つ事からサネガヅラ(実葛)と言う名がある。

古代では、こちらの呼称の方が一般的で、万葉集や古今集などの歌集にもサナカズラ、サネガヅラな名で詠まれた歌が多数あります。

熟した果実を細かく崩し、天日で乾燥させたものを南五味子(なんごみ)といい鎮咳、滋養強壮の生薬として用いられています。

樹勢が強く、大気汚染にも強い事から、庭木以外に公園樹や環境緑化樹として利用されるほか、木質化する茎を使って盆栽や鉢植えでも幅広く親しまれています。


         (ビナンカズラ)

◆品種
類似種として
果実が黄白色に熟す、「スイショウカズラ」

紫黒色の実が成る「マツブサ」

葉に斑が入る「ニシキカズラ(フイリビナンカズラ)」などがあります。

◉生育環境
水はけのよい、腐植質に富んだ半日陰の土地を好みます。

自生種はやや湿潤気味の場所に多く分布しますが、実際は乾燥にも強く土質はほとんど選びません。

ただし、株元が乾燥すると実つきが悪くなりやすいので、乾燥が酷い場合は、ピートモスや敷きワラなどで、マルチングする必要があります。

◉植え付け、植え替え
根が粗いので植え付け、植え替えは地上部を切り詰め、根の負担を軽くして行います。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んでから植え、植え付け後は支柱を立ててツルを誘引します。

よほどの痩せ地でない限り、肥料は必要ありませんが、必要に応じて鶏ふん、骨粉、油粕などを混ぜた有機肥料を、秋と冬に少量株元に蒔きます。

◆病害虫
神戸地域だけに棲息する、帰化昆虫のキベリハムシがビナンカズラの葉のみを、食べる事が知られていますが、基本的に病害虫の心配はほとんどありません。

◉せん定
強いせん定や刈り込みにもよく耐えます。

放任するとツルが伸び過ぎて、暗くうっそうとした雰囲気になるので随時、不要なツルは切り取ります。

棚に絡ませて仕立てる場合は、株元が雑然としないように最初は、根元から2~3本の茎を出させて他は整理します。

適当な高さに誘引してから分枝させます。

花芽は短枝の先に分化するので、この枝は残すようにします。

◆殖やし方
充実した新梢を15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土小粒にさします。

半日陰で乾燥に注意し管理、翌春定植します。

取り木は春に2~3年の枝を環状剥皮します。







カクレミノ No,292

 カクレミノ ウコギ科 常緑中低木

別名=ミツデ 「隠れ蓑」

葉の形が雨具の★ミノに似ていることからカクレミノと呼ばれる。

★蓑(ミノ)とは=藁や茅や菅(スゲ)などを編んで、体を覆う様に作った雨具。雨傘も作られた。

若木では葉が3裂するものが多く、ミノに似た形をしているが、花が咲くような成木では楕円形や卵形になるものが多く、縁は全縁となる。

同じ科のヤツデと比べて葉葉それほど大きくなく、3つに分かれることが多い事から「ミツデ」と言う別名もあります。


          (ヤツデ)


日本原産の暖地性植物で、自生地は九州、四国、本州南部ですが、石川県、ふ福島県以南、関東以西で栽培可能です。

日陰にもよく耐えて育つので、家の北側や日当たりのよくない玄関脇、窓の目隠しなどによく利用されます。

カクレミノは葉の変化が大きいのも特徴で、幼苗の頃は切れ込みがありません。

生長するにつれて3~5つ程の切れ込みが入った、独特の掌状葉(しょうじょうよう)になります。

特に、古木になると再び切れ込みがなくなり、卵形の楕円形の葉が増えます。

これは日照と関係があるようです。

一般に林の中のような暗い場所では、下の葉にも日が当たりやすいように、切れ込みのある葉が形成した方が有利であり、充分に光が当たる状況になると、厚くて面積の狭い葉を付ける事が、有利であると言われています。

日陰、半日陰に植えられる事の多いカクレミノは、効率よく光を吸収するために、葉形を変えているようです。


         (カクレミノ)


近年の研究によると、相対照度が30%以下になると掌状に分かれる葉が増えることが分かっています。

品種は少なく、通常のカクレミノの他に葉に黄色い斑点の入る、フイリカクレミノがありますが、一般の園芸店ではなかなか入手が難しいようです。

◆病害虫
まれにカイガラムシが発生します。

成虫になる前の5月から6月頃に、葉や幹を中心に薬剤散布をします。

カイガラムシの排出する分泌物は、葉や茎の部分に「スス病」を発生させます。

同じくスス病も葉の全体に薬剤を散布します。

◉黒斑病、スス病
日当たりと風通しをよくする事が大切です。

茂った枝のせん定をして、木全体の風通しをよくしてあげます。

周囲の大木などで覆われている場合は、その大木の枝を切り落とし、日光が当たるように改善します。

スス病も日当たりや通風の悪い所、高温多湿を好むのでせん定をして予防しましょう。

◉生育管理、環境
環境適応力が高く、日陰でも日当たりのよい場所でも元気に育ちます。

特に日陰に強く、大気汚染にも強いにで、都市近郊の庭木としては理想的な樹木と言えるでしょう。

ただし、カクレミノにとって最も好ましい環境は、やや湿潤性がある半日陰の場所です。

耐寒性は強い方ですが、最低気温が0℃以下になることがある地方では、日当たりがよい場所の方がよく育ちます。

立ち性で枝分かれが比較的少ない樹種なので、2~3本を寄せ植えにするとよいでしょう。

◉せん定
生長は早くありませんが、放任しておくと3~4㍍の高さに、なかにはそれ以上になるものもあります。

樹高くなるにつれて下葉が落ちてくるので、2~3年に一度、思いきって強いせん定で刈り込み、低木(2㍍前後)として仕立てるとよいでしょう。


萌芽力が強いので、切り戻した所から芽が吹いて樹高を適度に保つ事ができます。

枝が密生すると細いものは枯れるので、早めに枝透かしをして、風通しをよくすることが大切です。

整姿、せん定は3月下旬から10月まで可能です。

秋に刈り込んでも芽吹きますが、新梢は冬に寒害で枯れ込む恐れがあるので、暖かい地方以外では刈り込みは、秋口までに済ませるのがよいでしょう。

若木のうちは、よく枝が伸びますので葉が多く茂ります。

他の木の邪魔になる程になったら、カクレミノのような広葉樹類は、春から秋の間にせん定を行います。

せん定では、それぞれの枝の2~3芽を残してせん定し、木のふところの込み過ぎる枝は、間引きをするように切り取り風通しをよくします。

根元にひこばえが出るようであれば、早めに切り取ります。






2020/09/30

タケ、ササ類 No,291

 タケ、ササ類

原生種は熱帯植物ですが、自生種も多く古くから人類の生活に欠かせない存在となっています。

タケは日本から東南アジア、インドにかけて幅広く分布し、アフリカ中南米にも見られる「イネ科タケ亜科」の植物です。

世界中で千百種類以上あり、日本に自生しているものだけでも、タケ、ササを合わせて240種にもなります。

タケは様々な竹製品をはじめ、食用、鑑賞用、治水、防災のための植栽と幅広く、活用されてきました。

最古の小説と云われる竹取物語から始まり、数多くの文学作品や美術作品に多く描かれています。

広い庭では「モウソウチク」のような大型のタケを鑑賞出来ますが、一般家庭ではあまり大きくない、クロチク、ホテイチク、キンメイチクなどが人気です。

タケとササを分けて呼んでいますが、植物学的にはもう少しそれぞれの特徴によって、分類されていますが両者の違いはありません。

樹高の高いものがタケ、低いものがササと言うのが一般的なイメージですが、タケノコが生長していく過程で節間に付いている皮が、剥がれて脱落するものをタケ、脱落せずに皮が残っているものをササとする分け方もあります。

この分け方だと、背の低いオカメザサはタケ、背の高いメダケはササと言うことになります。

地上茎が広がらずに株立ちタイプで増えていく、熱帯原産のタケを「バンブー」と呼びタケ、ササと区別しています。

日本に自生している「ホウライチク」はこの仲間になります。


 (タケとササが混植されていることも多い)


◆代表品種
※タケ類として
モウソウチク、クロチク、シカクダケ、ナリヒラダケ、ホテイチク、オカメザサなど

※ササ類として
クマザサ、カンチク、ヤダケなど

※バンブー類として
ホーオーダケ、スホーダケ、ホウライダケなど

◉病害虫
テングス病、スス病などが発生することがある。

テングス病は病変した枝を切り取り、伝染防止のため処分します。

スス病は、元になるアブラムシ、カイガラムシなどを駆除すれば問題ありません。

大量発生した場合は、発生初期の5月から9月に10日おきに2~3回、葉の部分を中心に薬剤を散布します。

枝葉が混んで日当たりや風通しが悪いと、発生するので生育環境を改善することが大切です。

特に混んだ古株を間引いたり、葉の茂り過ぎている所の葉を、葉刈りして風通しをよくします。


◉生育管理、環境
元々荒れ地に生息していた植物なので、土質はあまり選びません。

半日陰でもよく育ちますが、日当たりがよい枝葉の方が色艶が増します。

品種が豊富なので適した種類を選べば、北海道から沖縄まで日本全国で栽培可能です。

全般的に水を好むので、乾燥に注意しましょう。


◆肥料
有機質を主体に少量の化成肥料を混ぜるか、または油粕7に骨粉3の割合で混ぜたものに、リン酸を含む化成肥料を少し加え溝を掘って与えます。

時期は春先か8月から9月頃です。

◉植え付け、植え替え
タケ類の植え付け時期はタケノコの出る1ヶ月前頃で、植え穴を大きく掘り堆肥や腐葉土を多めにすき込み、元肥に鶏ふん、牛ふんを主体に少量の油粕などを混ぜるとよいでしょう。

また、植え付け後は支柱を立てます。

十分に水を与え、根元に敷きワラなどを施し、乾燥させないようにします。

品種により、春にタケノコが生えるものと、秋に生えるものとがあるので、植え付け、植え替え時期はそれぞれ異なります。

モウソウチクは3月から4月、シカクダケ、カンチクなどは秋から冬にかけてタケノコを出しますので、8月から10月が植え付けの適期になるので、季節に注意しましょう。


          (ササ)

◉せん定
若々しいタケの状態を保つためには、4年から5年以上経った古い悍(かん=一般の樹木の幹)を根元から切り取り、若い悍に更新する必要があります。

タケの年齢の見分け方は、小枝の落ちた跡を数えて判断します。

タケは一般の樹木のように、幹が生長して年々太くなったり、伸びたり枝葉が張り過ぎると言う事はまずありません。

悍の更新以外は大きな整姿、せん定は行わず自然形を鑑賞するのが一般的です。

ただし、モウソウチクなどの大型種は、伸び過ぎないように「先止め」をします。

タケが希望の高さまで生長したら、枝の出る節をいくつか残してその上を切ります。

「先止め」すると丈が伸びる代わりに枝葉が充実します。

また、枝葉が茂り過ぎてしまった場合は、重なり合う枝を整理して、小枝も短めにきり戻す枝透かしを行うとすっきりします。

中型のナリヒラダケは2~2,5㍍で先止めし、上から5~6節の枝は残して、他は切り落とします。

残した枝は半分程に切り詰めて仕立てます。

せん定な時期は3月~4月と9月~11月に行います。品種により、せん定時期が異なるので注意が必要です。

◉殖やし方
株分けは、大型のものは悍を1本、中型は3本
小型は5本を1株とし、掘り取り悍と枝をバランスよく切り詰めます。

細い根が乾燥しないように注意しながら植え付けます。
タケは根付いてしまえば丈夫でよく育ちますが、移植はわりと難しい性質があるので、細心の注意が必要です。

移植、繁殖の時期は3月~4月と8月~9月と品種により、タケノコが生える時期の違いで異なる。






2020/09/29

モクセイ No,290

 モクセイ モクセイ科「木犀」

別名=ギンモクセイ、千里香 常緑広葉花木

原産地=中国中南部の暖地性植物ですが、日本でも東北南部くらいまでは植栽可能です。

庭などに植えられ、各地で幅広く親しまれている花木です。

日本で多く見かけるのは橙黄色(とうこうしょく、とうおうしょく)の花を付ける「キンモクセイ」ですが、香りがやわらかい白い花を咲かせる「ギンモクセイ」がキンモクセイ原形種です。

香りが強く、甘い芳香が遠くまで漂う事から「千里香」と言う別名があります。

★その他の品種として
※キンモクセイよりも淡い黄色の花を付けるウスギモクセイ

※同じモクセイ科のヒイラギとの雑種と言われ、生け垣などに用いられる、ヒイラギモクセイなどが園芸種として知られています。

これらが広く親しまれる様になったのは、江戸時代以降の事です。

最も広く知られている、キンモクセイとウスギモクセイを混同する人が少なくありませんが、キンモクセイは日本では結実しないので、庭のモクセイが実を付けた場合は、ウスギモクセイだと分かります。

中国名は「桂花=けいか」と言い、単に木犀と言う場合は、ギンモクセイ(銀木犀)を指す事が多い。

よい香りを漂わせる花木の中でも特に、香りの強いジンチョウゲ、クチナシ、キンモクセイの三種は、三大香木(芳香花)と呼ばれています。





◉生育管理、環境
モクセイの仲間はどれも強い香りを放つ花を付け、樹勢も強い事から栽培は比較的容易です。

本来、日なたを好む陽樹ですが、日陰によく耐え、土質もあまり選びません。

しかし、花つきを良くし芳香を楽しむには、日照、排水のよい腐植質に富んだ肥沃な場所が最適です。

モクセイは排気ガスなどの公害にはあまり強くありません。

車の往来が激しい場所への植え付けは、避けた方がよいでしよう。

枝葉が元気な様でも、花つきが悪くなってしまいます。

◆肥料
本来モクセイは丈夫な樹木です。

肥料は春先の3月上旬に油粕と、粒状化成肥料を等量混ぜたものを、根元の大きさに応じて与えればよいでしょう。
(目安として1~3握り)

むしろ肥料は控えめにし、与え過ぎないようにしますが、特にチッソ過多にならないように注意しましょう。

◉せん定
モクセイは放任していても、丸い樹形に整いますが、大きくなるので狭い場所では、整姿が必要です。

大きくなり過ぎた木を小さくする場合は、秋の花後に花を咲かせた小枝を、1~2節残してその上の太い枝を切り、全体を詰めます。

仕立て物の場合は円筒形や球形に刈り込みます。

花芽分化期は8月で春に伸びた枝に花芽が付きます

新梢が充実していないと、花が付かないので春のせん定は、3月下旬頃までに樹形を乱す飛び枝を刈り込みます。

6月~7月に入ってから、せん定すると新梢が充実せず、花芽が付かないので注意しましょう。

◆殖やし方
今年伸びた枝を使い、葉を3~4節残してさし穂にします。

6月下旬から7月に小粒の赤玉土か鹿沼土にさし、乾燥に気をつけて管理します。

◉植え付け、移植
植え付けは4月中旬から6月中旬が適期で、植え穴に堆肥をよくすき込み、高めに植え支柱で苗木を固定します。

移植は9月から10月が適期です。






2020/09/28

アメリカデイゴ No,289

 アメリカデイゴ マメ科

「亜米利加悌梧」落葉中高木

原産地は、南アメリカでアルゼンチンとウルグアイ両国の、国花として知られています。

夏に丸みのある蝶形の★鮮紅色(せんこうしょく)の花を咲かせます。

★鮮紅色は猩々緋色=(しょうじょうひいろ)と言われ、やや黒みを帯びた鮮やかな色です。

室町時代後期(西暦1336年~1573年)以降に流行した、ポルトガル、スペインとの南蛮貿易の舶来品で知られる色で、特に戦国時代に武士は貿易で入手した猩々緋色の羅紗、(らしゃ、セルビアの首都ラサ産でこの名称)の生地で、陣羽織などを仕立て珍重された色である。

また、猩々緋色は★臙脂色(えんじいろ)と区別するために付けられた色名で、赤みの強い赤紫色である。

◆えんじ色=黒みを帯びた、深く艶やかな、濃い紅色のこと。

アメリカデイゴの花期は長く、6月頃から咲き始め、断続的に9月中旬頃まで咲き続けます。

葉柄や葉裏にトゲがあるのが特徴です。

花後はマメ科特有の偏平楕円形の種子が入った、15㎝程の長さのサヤを付ける。

日本には、江戸時代末期(1853年~1869年)に和歌山県の白浜周辺に伝えられたのが、最初と言われています。

南国の風情がある大型の花は、比較的に耐寒性もある事から、日本の四季でもよく育ち特に、暖地の庭の鑑賞木として親しまれてきました。

遥か遠い海を渡ってきた赤い花で、マメの様なサヤが成ることから、海紅豆(かいこうず)の別名があります。

鹿児島県では特に人気の高い樹種で、県の木として指定されています。

沖縄県の県花としても有名なデイゴは、同じデイゴ属ですが、台湾、沖縄、インドを原産とする近縁種で蝶形の花が、アメリカデイゴと比べると細く、若干異なった印象を受けます。


「放浪記」のベストセラー作家で知られる、林芙美子さんがアジサイの花と共に、愛した花としても知られる。

メキシコでは、生け垣に用いるほか、花はサラダや煮物などの食用にも用いられます。

潮害、公害にも強い事から、沿岸の防潮樹や街路樹などに利用されています。


        (アメリカデイゴ)

◆園芸品種
小葉の丸いマルバデイゴ

アメリカデイゴと近縁種のエリツリナ、ヘルバケアの交雑種で、花の色が濃く小葉が菱形の、サンゴシトウ(ヒシバデイゴ)などが多く栽培されています。

◉生育管理、環境
暖地性ですが、耐寒性は意外に強く、降雪が年2~3回程度の地方であれば、露地栽培が可能です。

栽培可能地としては、関東地方南部以西が目安です。

日当たり、水はけのよいやや乾いた場所が適しています。

土質は特に選びませんが、砂質土を好みます。

◉植え付け、植え替え、移植
生長が早く移植も容易ですが、植え付け、植え替えは十分暖かくなった4月中旬に行うようにします。

浅根性なので高植えにすることが重要です。

大きくなりやすいので、出来るだけ広い場所に植えましょう。

★肥料
生長が早いので十分に肥料を与えます。

チッソ分は控え、3月と9月頃の2回に、油粕、骨粉などの有機肥料を、株の大きさに応じて根元にすき込みます。
(目安として2~3握り)

※大変丈夫な樹種で、病害虫の心配はほとんどないでしょう。

◉せん定
東京以北の関東周辺や内陸部では、本年枝は冬の寒さで枯れてしまいます。

11月中旬~下旬に付け根で切り取り、幹や太枝をワラやコモで巻いて防寒します。

花は今年伸びた枝の先端に付きます。

花は終わったものから、花の少し下で切り戻すと、晩夏にもう一度花を咲かせます。

また、庭が狭い場合は、春に2㍍程の高さで樹芯を止め、将来枝にする部分を付け根から30㎝前後で切り戻し、不要な枝は付け根から切り取って整姿します。

◆殖やし方
★とり木は新梢の組織が固まる6月に行います。

親指程の太さの枝を選び、3㎝幅くらいに環状剥皮します。

水ゴケで包み、ビニール袋で乾燥を防いで、管理すると秋までに発根します。

▲挿し木は冬または春にせん定した枝を使います。

40~50㎝に切った枝を、通常の庭土に半分程植えると夏には発根します。

◉根伏せは3月から4月に行います。
根元付近の根を掘り、3~4㎝の太さの部分の根を30~40㎝の長さに切り取り、幹側に近い方を上向きにして斜めにした状態で、土中に植えます。

夏には発芽、発根するので、凍結に注意してそのまま越冬させ、暖かくなった3月に掘り上げて定植します。

およそ3~4年で開花します。