緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/02/15

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑶ No,376

 スイセン ヒガンバナ科

観賞用に栽培される多年草で、園芸種も多数ありますが、野生化したものもあり、日当たりの良い所に自生します。


                      (猛毒草、スイセン)

「ノビル」の✫鱗茎と間違えたり、「ニラ」の葉と間違えて誤食する事がある。

✫鱗茎=りんけい
地下茎の一種で、ユリ根、タマネギのように、養分を蓄えて厚くなった葉が茎の周りに多数重なって球状になったもので、球根とも言う。


                           (食用ニラの葉)
✻葉はスイセンとそっくりだが、強烈なニラの臭いがあるので判別が付く。



    左がニラの鱗茎、右がスイセンの鱗茎


                      (食用ノビルの葉)
✺葉が丸っこく、断面が三日月形。
ちぎるとネギのような芳香がする。


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間違えやすい猛毒草と山菜⑴
No,374

間違えやすい猛毒草と山菜⑵
No,375


誤食した場合、おう吐、胃腸炎、下痢、頭痛などの中毒症状が出る。

食べてお腹をこわすぐらいならいいのですが、救急搬送される程苦しむので要注意である。


全草が有毒で、特に球根に毒成分が多く、リコリン、タゼチンなどのアルカロイド類の毒成分が含まれ、致死量は10gとされる。







2021/02/14

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑵ No,375

 ハシリドコロ ナス科

別名=キチガイイモ、キチガイナスビ、オニヒルグサヤ

北海道を除く各地の山間の湿地、谷間、薄暗い林内などに自生する。

草丈30〜60cm程度の日本固有種の多年草で、草は長円形で先が尖っています。


       (猛毒草、ハシリドコロの花)


春、紅紫色の鐘の形をした花が下向きに咲きます。

ハシリドコロの若芽が、フキノトウやオオバギボウシなどの山菜と間違えられたり、葉が展開した姿が美味しそうな山菜に思われ、お浸しで食べられてしまう猛毒草です。


              (猛毒草、ハシリドコロ)
✻暗い赤紫色で強い光沢を帯びる。若芽の奥に花穂はない。


中毒を起こすと、ひどい苦痛に襲われ、幻覚を生じて走り回ることから、その名がついたと言われる。

致死量を摂取することは少ないようですが、発症するともんどり打って苦しむので用心しなければいけません。

ハシリドコロに触った手で目をこすると、瞳孔が開き眩しく感じられる。

全草が有毒で根茎と根が特に毒性が強い。

ヒョスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどのアルカロイド類の毒成分がある。

中毒症状は、おう吐、下痢、血便、瞳孔散大、めまい、幻覚、異常興奮などを起こし、最悪の場合には死に至る。

これは、同じナス科の「ベラドンナ」などと同様の症状である。

また、薬品として利用され、目薬や胃腸薬の成分として用いられている。


(    (猛毒草、フクジュソウの若芽)
✭暗い赤紫色で強い光沢を帯びる。
若芽の奥には幼い葉が詰まっている。


フクジュソウもフキノトウによく似ていますが、フクジュソウは全草に強心配糖体を含んでおり、心臓の働きや神経系に強い悪影響を与えます。

特に、お年寄りや子どもが居る家庭では、フキと一緒に植えない方がよいでしょう。



                       (山菜、フキノトウ)
✻美味しい山菜
植物名はフキ。

つぼみが春の味覚として有名で、皮をめくるとつぼみが顔を出すので、識別に悩んだ時は皮をめくる。

フキノトウの苦味主成分「ペタシン」がガン転移、増殖を強く抑制する効果があることが、岐阜大学の研究によって発見された。

「ペタシン」はフキ属に見られる天然の化合物で、化学的にはアンゲリカ酸のペタソールエステルで、セスキテルペンに分類される。


「ペタシン」は、★ETCCI阻害と言う方法での抗がん剤への実用化自体は元から存在していたが、通常細胞の代謝も阻害し、副作用が強く出るため実用的とされていなかった。

だが、「ペタシン」は選択的にガン細胞を阻害するため、通常細胞への影響は少なく、ガン細胞には強い阻害作用を発揮する。


★ETCCI阻害
ミトコンドリア(細胞小器官)の呼吸鎖複合体i(電子伝達系)への阻害のこと。


抗がん剤は、悪性腫瘍の増殖を抑えることを目的とした薬剤で、効果が有りそうなものをごちゃ混ぜにしてると言うのが、抗がん剤であるだろう。


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間違えやすい猛毒草と山菜⑴
No,374






2021/02/13

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑴ No,374

 バイケイソウ ユリ科多年草

シュロソウ属

草丈60〜150cmにもなる多年草で、初夏に緑白色の臭気のある花を咲かせます。


              (猛毒草、バイケイソウ)
✻ギボウシに葉姿がよく似ている。
葉脈が隆起し、全ての脈が葉の付け根から並行して走る。


やや小型の仲間に「コバイケイソウ」がありますが、同じく有毒植物です。


           (猛毒草、コバイケイソウ)

❆バイケイソウと見分け方は同じ。
草丈50〜100cmでバイケイソウより小ぶり。

深山、高山の湿地に自生し、若葉が山菜として食用にされる、オオバギボウシ(ウルイ)やギョウジャニンニクなどの若芽と類似するため、誤食する事がある。

誤食すると、おう吐、下痢、血圧降下、けいれんなどの症状がでる。

全草が有毒でプロトベラトリン、ジェルビン、ベラトラミなどのアルカロイド類の毒成分がある。


               (山菜、オオバギボウシ)
✻美味しい山菜
葉の中心に太い主脈が通っていて、他の脈はそこから派生して伸びている。


          (山菜、ギョウジャニンニク)

❆美味しい山菜
強烈なニンニクの風味が特徴。
スズラン(有毒)とも間違えられる。

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モミジガサ 山菜 No,373

 モミジガサ キク科

コウモリソウ属 (紅葉笠)
別名=シドケ、キノシタ、シトギ
モミジソウ

春、茎が20〜30cmに伸び、茎先の葉が展開しないものは、山菜として食用される。

日本の山野には数多くの山菜が生育しているが、その中で「山菜の女王」と言われる「モミジガサ」がある。


                                (モミジガサ)


春先の若芽の味わいは、フキノトウ、セリ、ヨモギなど、いくつもの山菜の旨味をいっぺんに楽しめると言う、不思議で優れた山菜。

有名なわりに、食べる習慣がない地域も多く、身近に群生地が隠れていたりする。

葉の形がモミジを思わせ、傘のように開くのでその名があります。

キノシタと言う別名も木立の下、渓流沿いの斜面など、湿った場所を好む性質に由来します。


山菜として楽しむなら、歯ごたえを残すように軽く塩ゆでし、ワサビしょう油、酢味噌などでシンプルに食べたり、磯巻きで風情を味わったりと言うのがおすすめの様です。






2021/02/12

ヤマトリカブト No,372

 ヤマトリカブト 猛毒草

世界的にも類を見ない猛毒草、ヒト経口致死量の推定値は1~2mg
(LD=50値、50%が死亡すると推定される値)

mgは1gの千分の1で摂食すると、猛毒の成分は速やかに血へと浸透し、体内を駆け巡るため、解毒は困難である。

花の姿は有名であるが、若芽を実際に見たことがある人は、なかなかいない。

長年山地の集落に住んでいる人でも、間違えるほど形態の違いは微妙である。


               (ヤマトリカブトの花)

花期は9月から11月

1992年、岩手県でトリカブトを訪花したと思われる、ハチの蜜で中毒事故が起きた事例がある。

トリカブトは深山に育つとは限らず、地域によっては低山や丘陵周辺に生育します。

園芸店で販売されている改良品種も、依然高い毒性があるので注意が必要である。

識別法のひとつに「毛」があります。

主なトリカブト類は、茎に毛がなく、ツルっとして触るとヌメリのような感触があり、葉にも微細な毛以外は殆ど見られません。

他の類似した山菜は、柔らかなうぶ毛や長毛が目立ちますが、どれくらいに毛が生えているのかなど、実際に見てみないと分からないものです。

日本産のトリカブトは約30種と22変種が知られていて、地域や生育環境で微妙な違いが出るため、肉眼での判定はほぼ無理です。


                    (トリカブトの若芽)

研究者の中には、一般図鑑やハンドブックに書かれた識別法について、警鐘を鳴らしています。

特に「ニリンソウ」や「モミジガサ」などはよく似ているので、見分けが難しいため、誤って食べてしまう事故が絶えません。


                     (ニリンソウの花)

✭花の似た有毒植物のイチリンシウ、サンリンソウもあるので要注。


花が見分けるポイントでもあるので、花のない時期に絶対採ってはいけないと、識別法に書くべきです。

写真で見るとまるで違うが、同じ場所に混生すると厄介です。

その様な場所での山菜採りは避けることです。


✺毒性が強いとされるエゾトリカブト

関東にもヤマトリカブトなどが咲きますが、北海道に自生する「エゾトリカブト」の毒性が最も際立ちます。


                 (エゾトリカブトの花)


全草が猛毒であるが、特に根に毒が多く含まれ、この地に住んでいたアイヌ民族は、これを矢の毒に利用してヒグマを捕らえ、生態系の頂点に君臨して来たのだと言う。

戦乱の時代には盛んに用いられ、矢毒や毒殺にも使用された猛毒である。

日本三大毒草であるドクウツギ、ドクゼリ、そしてトリカブトは食用になる野山の山菜によく似ているのです。










2021/02/11

アンズ バラ科 No,371

 アンズ (杏子、杏)

別名=カラモモ 英名=アプリコット

中国東北部が原産地で、多くの品種が作り出され、東洋系品種群と呼ばれています。

これに対して、地中海地方へ運ばれ、現地の気候に適するように改良されたものを、欧州系品種群と呼びます。

東洋系のアンズの果実は、梅が交雑したものが多いため酸味が強く、生食には適さないため、加工用が主ですが、酸味が少なく甘みが強くて、そのまま生食できる欧州系の品種は、加工用にも適している。

しかし、欧州系は夏に雨が多い気候では裂果や灰星病、胴枯れ病などの発生が多く、育てにくいのが難点である。





日本の主産地は、長野県千曲市が日本一の「あんずの里」として知られる。

愛媛、広島など、瀬戸内地方、青森県津軽地方が古い産地である。

米国カリフォルニア州が世界一の産地。

日本に渡来したとされる期日は
不明であるが、平安時代にはすでに
唐桃(からもも)の名で呼ばれていたと言う説がある。

弥生時代以降の遺跡から出土している。

✿生育環境

庭植え、鉢植えで育てられますが、日本に多い東洋系の品種は、耐寒性が強く、雨の少ない気候に適しています。

4月の開花期に雨が少なく、6月から7月の果実生育期に、空気が乾燥している場所が適地です。

甲信越や東北地方など、リンゴの産地と同じような気候が、栽培に向いています。




✿花、冬芽

アンズは花の美しい果樹の1つで、3月から4月の葉が展開する前に、淡紅色の花を咲かせます。

花芽は長さ約4㍉の広卵形
葉芽は花芽より小さい
外側の2個が花芽でその真ん中に葉芽がつく。


             (左右花芽で真ん中が葉芽)


❆果実
直径約3cmの球形で6月に橙黄色(とうこうしょく)に熟す。

縦に溝が入り表面にはビロード状の毛が密生する。




✿収穫の目安

庭植えなら樹高2.5〜3㍍で80〜100果鉢植えなら7〜8号鉢で5〜10果

果実は発育の良いものを残すようにし、摘果を行うと良いでしょう。

✿栽培場所

庭植えは土層が深く、水はけの良い有機物の多い土質で、日当たりの良い場所が適しています。

土質は軽いものより、やや粘土質の方が適しています。

鉢植えは、赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、風通しや日当たりの良い場所に置きます。

アンズと言う名がはじめて現れる文献は林道春の(多知識編、1612年)

✿肥料

栄養状態が悪いと、翌年、耐寒性の弱い花が咲きます。

雌しべが褐色に変色したら、不完全花が多くなり、結実が悪くなります。

1月〜2月、株の周囲に溝を掘り、配合肥料を与えます。

9月頃にも追肥として同様に施肥します。

鉢植えは、植え付け1ヶ月後の3月に玉肥を3〜4個根回りに置き肥します。

これを毎年繰り返し、収穫できるようになったら、9月の落葉前に追肥を同様に施します。

✿せん定

放置すると、5〜8㍍の高木になってしまうので、主幹は3㍍ぐらいで芯を止め、小柄な樹形に仕上げます。

幹の上部は毎年伸びますが、新梢は冬に3分の1ぐらいに切り詰めて、誘引して真っ直ぐな主幹に育てます。

側枝葉大きくなり過ぎないように更新し、結果枝(けっかし)の基部まで切り詰めます。

結果枝も3年ぐらいすると長くなり、弱ってくるので切り取り、主幹や側枝に近い結果枝を育てて更新するようにします。

落葉期の冬に樹形を確かめ、主幹の周囲に平均して新しい側枝や結果を配し、枯れ枝や不要枝を間引くせん定を行います。

✿病害虫

発芽直前の3月に、石灰硫黄合剤の20倍液を予防散布します。

また、開花終了後、アブラムシと黒星病の防除に、殺菌剤と殺虫剤を混合し散布します。

✺アンズの用途

果実をシロップ漬け、ジャムなどにする。
ジャム、生食には十分に着色、完熟してから収穫する。

着色の早い果実から2〜3回に分けて収穫するとよい。

干しアンズや瓶詰め用には、全体が黄色に着色し、果実がやわらかくなる前に収穫する。

種子は杏仁(きょうにん)と呼ばれ、咳止めなどの薬用に用いられる。

✻果実酒

アンズ酒
アンズ(果実)1kg
砂糖250㌘
原酒(焼酎35度ホワイトリカー)
3ヶ月から飲用できますが、6ヶ月以上熟成させる方が、味も香りも良くなります。

❆桃源郷と言われるアンズの郷

パキスタンの首都イスラマバードから北へ約700キロ、標高7000m級のカラコルム山脈に桃源郷と言われる、秘境地のフンザ渓谷がある。

奇跡の様に広がる緑豊かな果樹園や、田園風景から「桃源郷」と呼ばれている。

登山家なら一度は訪れたい山々に恵まれ、フンザは登山隊の多くが拠点としている人気の場所である。

毎年3月下旬〜4月上旬にかけて、アンズ、桜、リンゴ、アーモンドがフンザの谷一帯に咲き、この姿はまさに桃源郷のようだと言われ、特に日本人の間で人気がある。

平均寿命は90歳以上と言う長寿の村としても知られ、病気で亡くなる人も少ないと言う。

それは、フンザの人々の食生活が関係すると言われている。

質素な食生活の中で、アンズなどの果実を利用した食文化が、長く続きいている結果であるだろう。

アンズを常食しているフンザの人々には、殆どガンがみられない。

古い時代からアンズの効能を理解し、食生活にとり入れてきたのでしょう。

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