アンズ (杏子、杏)
別名=カラモモ 英名=アプリコット
中国東北部が原産地で、多くの品種が作り出され、東洋系品種群と呼ばれています。
これに対して、地中海地方へ運ばれ、現地の気候に適するように改良されたものを、欧州系品種群と呼びます。
東洋系のアンズの果実は、梅が交雑したものが多いため酸味が強く、生食には適さないため、加工用が主ですが、酸味が少なく甘みが強くて、そのまま生食できる欧州系の品種は、加工用にも適している。
しかし、欧州系は夏に雨が多い気候では裂果や灰星病、胴枯れ病などの発生が多く、育てにくいのが難点である。
日本の主産地は、長野県千曲市が日本一の「あんずの里」として知られる。
愛媛、広島など、瀬戸内地方、青森県津軽地方が古い産地である。
米国カリフォルニア州が世界一の産地。
日本に渡来したとされる期日は
不明であるが、平安時代にはすでに
唐桃(からもも)の名で呼ばれていたと言う説がある。
弥生時代以降の遺跡から出土している。
✿生育環境
庭植え、鉢植えで育てられますが、日本に多い東洋系の品種は、耐寒性が強く、雨の少ない気候に適しています。
4月の開花期に雨が少なく、6月から7月の果実生育期に、空気が乾燥している場所が適地です。
甲信越や東北地方など、リンゴの産地と同じような気候が、栽培に向いています。
✿花、冬芽
アンズは花の美しい果樹の1つで、3月から4月の葉が展開する前に、淡紅色の花を咲かせます。
花芽は長さ約4㍉の広卵形
葉芽は花芽より小さい
外側の2個が花芽でその真ん中に葉芽がつく。
❆果実
直径約3cmの球形で6月に橙黄色(とうこうしょく)に熟す。
縦に溝が入り表面にはビロード状の毛が密生する。
✿収穫の目安
庭植えなら樹高2.5〜3㍍で80〜100果鉢植えなら7〜8号鉢で5〜10果
果実は発育の良いものを残すようにし、摘果を行うと良いでしょう。
✿栽培場所
庭植えは土層が深く、水はけの良い有機物の多い土質で、日当たりの良い場所が適しています。
土質は軽いものより、やや粘土質の方が適しています。
鉢植えは、赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、風通しや日当たりの良い場所に置きます。
アンズと言う名がはじめて現れる文献は林道春の(多知識編、1612年)
✿肥料
栄養状態が悪いと、翌年、耐寒性の弱い花が咲きます。
雌しべが褐色に変色したら、不完全花が多くなり、結実が悪くなります。
1月〜2月、株の周囲に溝を掘り、配合肥料を与えます。
9月頃にも追肥として同様に施肥します。
鉢植えは、植え付け1ヶ月後の3月に玉肥を3〜4個根回りに置き肥します。
これを毎年繰り返し、収穫できるようになったら、9月の落葉前に追肥を同様に施します。
✿せん定
放置すると、5〜8㍍の高木になってしまうので、主幹は3㍍ぐらいで芯を止め、小柄な樹形に仕上げます。
幹の上部は毎年伸びますが、新梢は冬に3分の1ぐらいに切り詰めて、誘引して真っ直ぐな主幹に育てます。
側枝葉大きくなり過ぎないように更新し、結果枝(けっかし)の基部まで切り詰めます。
結果枝も3年ぐらいすると長くなり、弱ってくるので切り取り、主幹や側枝に近い結果枝を育てて更新するようにします。
落葉期の冬に樹形を確かめ、主幹の周囲に平均して新しい側枝や結果を配し、枯れ枝や不要枝を間引くせん定を行います。
✿病害虫
発芽直前の3月に、石灰硫黄合剤の20倍液を予防散布します。
また、開花終了後、アブラムシと黒星病の防除に、殺菌剤と殺虫剤を混合し散布します。
✺アンズの用途
果実をシロップ漬け、ジャムなどにする。
ジャム、生食には十分に着色、完熟してから収穫する。
着色の早い果実から2〜3回に分けて収穫するとよい。
干しアンズや瓶詰め用には、全体が黄色に着色し、果実がやわらかくなる前に収穫する。
種子は杏仁(きょうにん)と呼ばれ、咳止めなどの薬用に用いられる。
✻果実酒
アンズ酒
アンズ(果実)1kg
砂糖250㌘
原酒(焼酎35度ホワイトリカー)
3ヶ月から飲用できますが、6ヶ月以上熟成させる方が、味も香りも良くなります。
❆桃源郷と言われるアンズの郷
パキスタンの首都イスラマバードから北へ約700キロ、標高7000m級のカラコルム山脈に桃源郷と言われる、秘境地のフンザ渓谷がある。
奇跡の様に広がる緑豊かな果樹園や、田園風景から「桃源郷」と呼ばれている。
登山家なら一度は訪れたい山々に恵まれ、フンザは登山隊の多くが拠点としている人気の場所である。
毎年3月下旬〜4月上旬にかけて、アンズ、桜、リンゴ、アーモンドがフンザの谷一帯に咲き、この姿はまさに桃源郷のようだと言われ、特に日本人の間で人気がある。
平均寿命は90歳以上と言う長寿の村としても知られ、病気で亡くなる人も少ないと言う。
それは、フンザの人々の食生活が関係すると言われている。
質素な食生活の中で、アンズなどの果実を利用した食文化が、長く続きいている結果であるだろう。
アンズを常食しているフンザの人々には、殆どガンがみられない。
古い時代からアンズの効能を理解し、食生活にとり入れてきたのでしょう。
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ビワ茶No,150
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