緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/03/05

雌雄同株 有性生殖植物 No,395

 雌雄同株(しゆうどうしゅ)

単性花をつける植物で、雌花と雄花とを同一の個体につけることで、雄の生殖器官と雌の生殖器官が別々に存在し、機能する。


一つの株に雌花だけ、雄花だけと別々に咲かせる性質の事で、雌雄同株はウリ科などの植物の特徴の1つですが、珍しいことではありません。

マツやスギ、クリなど多くの植物がこの性質を持っています。

シダ類の多くは、造卵器と造精器を同じ全葉体につけるため、その場合も雌雄同株という。

一般に植物の花の中には雄しべと雌しべの両方があります。

ところが、多くの植物はその方法でタネを作ることを望んでいません。

それは自分と同じ性質の子孫ができるだけだからです。

これは、ある種の病気に弱いと言う性質を持っていたら、子孫のすべてがその病気に弱くなってしまうからです。

その事から、雌雄同株の植物たちは、自分の花粉が自分の雌しべに付かないように、雄花と雌花を別々に咲かせているのです。

雌雄同株の植物は「有性生殖」の意義をよくわきまえた植物であると言えるでしょう。

✭有性生殖とは
2つの個体間、細胞間でDNAの交換を行うことにより、両親と異なる遺伝子型個体を生産することをいう。

雌雄の配偶子によって新個体が形成される生殖法を指す言葉である。

なぜ有性生殖が生まれ存続しているのか、様々な説があるが明確な答えは見つかっていない。

植物によっては一部の個体で両性花をつけるものもある。

両性花は一つの花の中に機能する、雄しべと雌しべがある花、被子植物の多くが両性花をつける。

❆両性花
サクラ、アブラナ、キク、タンポポ
ラン、スミレ、ナノハナ、フヨウ
ユリ、アサガオ、モクレン、ハス
アカマツ、ヒノキ、ブナなど他多数

全ての個体が雌花と雄花をつける。
裸子植物の殆んどと被子植物の5%ていどがこの性型を示す。



2021/03/04

古代の種子から目覚めた植物 No,394

三万2千年前の種子から目覚めたスガワラビランジ

ナデシコ科マンテマ属

2012年、三万2千年前の種子から植物体を再生して開花される事に成功したと言う発表がなされた。

ロシア科学アカデミー、土壌学の物理化学生物学問題研究所が行った、種子発根再生である。

この種子はロシアのシベリア北東部の、コリマ川沿岸部のマイナス7℃の✫更新世末期の永久凍土の地下38㍍にあった、リスの巣穴から見つかったもので、氷河期のリスがこの種子を拾って貯蔵したまま巣穴ごと氷河に埋まっていた。

✫更新世(こうしんせい)とは
地質の時代区分の一つで、約200万年前から1万年前までの時期の事。


この種子は、北海道の東大雪と網走に自生する「マンテマ」の仲間の「スガワラビランジ」

見つかった種子には、成熟したものと、未熟なものとがあり、成熟した種子は貯蔵のために発芽しないようにリスが傷をつけたと見られ、損傷している為だめになっていました。


未熟な種子は開花まで成功しましたが、通常の種子まき方法で発芽させたものではなく、クローン技術を使って未熟な種子の中の❆胎座細胞を取り出して培養し、植物体まで再生させ開花させました。

❆胎座細胞(たいざさいぼう)とは
将来植物体になるもととなる細胞のこと。




✭培養されて開花したスガワラビランジ。
(写真提供:米科学アカデミー紀要、AFP=時事)

この花は「スガワラ」と言う和名を持っているように、北海道の石狩地方をはじめサハリン、シベリアにも分布する植物です。

花を咲かせた3万2千年前の花と形態を比較して見ると、現在のものよりも花弁が細く広がっていて、少し見た目が異なっていることが分かります。


      (現代種のスガワラビランジ)

進化の過程で形態が変化したのでしょう。

この種子は年代測定によって判定され、今まで見つかった細胞が生きている古い種子の中で「最も古い種子」の発見となりました。

永久凍土は、貯蔵庫のような古い時代の様々なものを冷蔵保存していると考えられ、今後も色々な古代の生物が発見され中には生きた細胞が残っていて、再生されるものもあるかもしれません。

✻日本でも古い種子の発芽に成功
日本では約2千年前の種子が発芽した「大賀ハス」が有名です。

この種子の発芽は培養ではなく、本来の種子まき方法で発芽しました。

2千年前の種子が普通に発芽するとは凄い事です。

大賀ハス(古代ハス)は1951年(昭和26年)千葉市検見川、現東京大学検見川総合運動場内の落合遺跡の泥炭地で種子3個が見つかりました。


大賀一郎博士がこの種子3個を自宅で発芽処理し、その内の1個が見事に発芽したということです。

種子は種皮の皮が厚く硬いので、発芽させるには傷をつける必要があります。

硬実などは、発芽させる為に傷をつける必要がある。

この種子が二千年もの長い間を生き続ける事ができたのは、硬い皮に守られた事や様々な偶然の条件が重なった事にあるだろう。


                  大賀ハス(古代ハス)


長い眠りを経て奇跡的に発芽した植物たちにとっては、目覚めた時代の気候や環境はどのように見えたのだろう。

古代よりもタイムスリップしたような感覚だったに違いありません。


          ✫ハス種子の発芽のさせ方

✿主な硬実植物

発芽に処理が必要な植物
スイートピー、アサガオ、ルピナス
カンナ、ペラルゴニウム
ストレリチアなど

✻硬実の処理①

硬実では、そのまま播種しても種子が水分を吸収出来ないか、吸収しにくいためになかなか発芽しません。

硬実は種皮が硬いためにそのまま播種しても、発芽しなかったり、発芽するまでの日数が長く、ひどい場合には発芽するのに数年も要することがあります。

簡単な処理としては、種子と砂を混ぜてすり合わせる方法です。

ムクゲ、ハゼノキ、フヨウなどはこのような処理でも発芽を促進することができる。


✻硬実の処理②

硫酸による処理では、種子を一定の時間硫酸に浸し、その後水洗いをしてから播種します。

種子の量が多い時、あるいは粒の小さな硬実の場合には、このような効率のよい処理方法を採用するようにします。

多くの種子は1~2昼夜水に浸して吸水させてから、播種すると発芽を促進させる事ができます。

✫濃硫酸の処理時間例

樹種               濃硫酸の 処理時間    
アカシア類                   60分
ネムノキ                       60分
ハゼノキ                       60分
フヨウ                           30分
ムクゲ                           10分
ヤシ類                           10分








2021/03/03

ゴーヤの実はなぜ苦いの? No,393

 ゴーヤ ー  ウリ科

ゴーヤーは一般的にはニガウリ(苦瓜)と呼ばれる「ツルレイシ」のことである。

苦味を持ったウリと言う意味で、ゴーヤーと呼ばれる。

主に未熟な緑色の果実を野菜として利用する。

ゴーヤーは英語で「ビターメロン」と言われ、苦いウリ科の植物を意味します。




この苦味が料理の味になっているのが「ゴーヤーチャンプルー」で、チャンプルーとは沖縄の方言で「まぜこぜにしたもの」と言う意味です。

今では全国的に知られるようになった「ゴーヤーチャンプルー」ですが、元々はゴーヤーの産地である沖縄県の、いろんな野菜や豆腐などを炒めた郷土料理です。


             (ゴーヤーチャンプルー)


「パパイヤチャンプルー」やヘチマ、沖縄では「ナーベラー」と言うチャンプルーなどがあります。

一般的に食べているゴーヤーは成熟する前のもので苦味があります。

実が熟すまでは中のタネが成熟していないので、動物に食べられないように苦味でタネを守っているのです。

タネが完全に熟すと甘く美味しくなります。

熟した頃に、動物が食べてタネを糞と一緒にどこかに、撒き散らしてくれることを期待しているのでしょう。

生育地がどんどん広がることも期待しているのかも知れません。

ゴーヤーの主な苦味成分は「モモルデシン」と「チャランチン」と言う物質です。

ゴーヤーの学名は「モモルディカ·チャランチア」ですが、学名はその植物が属する属名と、その植物の特徴を表す種小名が並べられて成り立ちます。

ゴーヤーの場合は、モモルデシンが属名のモモルディカでチャランチンが種小名のチヤランチアに因んで名付けられているのです。

ゴーヤーのように、属名にも種小名にも因んだ2つの物質が、知られているのは珍しい例です。

✿苦味成分の「モモルデシン」は数種類のサポニンと、20種類のアミノ酸で構成されている栄養成分です。

「モモルデシン」が胃液の分泌を促し、食欲を増進させ、肝機能を高め、食欲不振、疲労回復も期待できる。


✿苦味成分の「チャランチン」は抗酸化作用を持ち、血中のコレステロールを下げる働きや「植物インスリン」とも呼ばれるほど、インスリンの分泌を促します。

更に「チャランチン」は血糖値を上げるホルモンである「グルカゴン」にも作用するので、血糖値を上げ過ぎず、下げ過ぎず、丁度よい状態にとどめる事が出来る。








2021/03/02

南アフリカ 砂漠の植物たち No,392

 サキュレントカルーの植物たち

南アフリカ 砂漠植生地

南アフリカの広大な国土は、降水量、雨量、標高、地質などが変化に富み、様々な植生を育んでいる。

中でもとりわけ美しい花々と多肉植物が集中しているのが、サキュレントカルーと呼ばれる砂漠植生地です。


サキュレントカルー植生は、南アフリカの西部からナビミアの南部に広がる砂漠及び半砂漠気候の植生で、降水量の少なさと冬季に雨が降るという気候に適応した、世界でも類を見ない多肉植物を中心とした、特殊な植物相が発達している植生地です。


✻南アフリカ共和国の西ケープ州からナミビアまで、サキュレントカルーが広がる。


ケープタウンを北上して行くと、通り過ぎる町の規模が次第に小さくなり、風景からも緑が少なくなってゆく。

やがてサキュレントカルーの植生が始まる。

樹木のほとんどが見当たらない原野のあちこちに白い石英の礫野(れきや)が広がっている。

一見不毛の地のように見えるが、石ころに混じるようにして、国有の多肉植物が自生している。

多肉植物が自生する傍らには、アヤメ科を中心とした球根植物、ペラゴニウム、オキザリスなどに加え、キク科の一年草やマツバギクの仲間など、多種の植物があちこちの原野を染め、色鮮やかです。

こうした花々の殆どは、雨季の終盤である8~9月の早春に開花する。

また、寒気の終わりに当たる秋に
は、もうひとつの花が乾ききった原野を埋め尽くすように咲き誇る。

ヒガンバナ科の「ブルンスヴィギア·ボスマニアエ」と言う大きくて美しい花が咲く。


        ブルンスヴィギア·ボスマニアエ

花の直径は40cmになる。
濃淡、様々なピンクの花が乾いた大地に咲くのは不思議です。

サキュレントカルーの中で、最も乾燥が厳しいとされる南アフリカ、ナミビア国境周辺は、最も多肉植物が豊富な地域です。

樹木の一切無い岩山には、アロエ·ピランシー(ツルボラン科)と言った大型の多肉植物が点在している。


                      (アロエ·ピランシー)

これ程乾いた大地に何十年、何百年と生き延びてきた植物の生命力は、まさに「凄い」の一言である。

長く乾いた大地の歴史の中で、形作られたサキュレントカルーの植生、旅をするには厳しい土地、だがその分魅力も大きいと言えるだろう。










2021/03/01

ウメとサクラが同じ頃に咲く No,391

 ウメとサクラが同時期に咲くのはなぜ(?_?)

九州や四国の暖かい地域では、ウメの花は1月下旬に咲き始め、サクラの花は3月下旬に咲き始めます。




そのため、ウメとサクラの開花の時期は約2ヶ月離れています。

それに対し、関西地方ではウメは2月中旬から咲き始め、サクラは4月上旬に咲きます。

なので、ウメとサクラの開花の時期は約1ヶ月半離れています。

関東地方でもウメとサクラの開花期はほぼ1ヶ月少し離れています。


ところが、青森県や秋田県、北海道など寒い地方では、ウメの花は4月下旬に咲き、ほとんど間隔を置かずに桜が咲き始めます。


北海道では5月の初旬に、ウメとサクラが一緒に咲く事からあります。

日本列島を北に行くほど、ウメとサクラの開花時期は同じ頃になってくるのです。


なぜ?そのような現象が起こるのか。

ウメもサクラも春に暖かくなると花を咲かせると言われています。

しかし、ウメとサクラが暖かさに反応して花を咲かせるという性質には実は大きな違いがあるのです。


暖かい地域と寒い地域の中間として京都を選び、ウメとサクラが咲く頃の平均気温をおおまかに比較してみると、その性質の違いが見えてきます。



図、平年のウメとサクラの開花前線


ウメの花が咲き始める1月下旬の平均気温は6~9℃ですが、鹿児島、京都、北海道でほぼ同じ気温になると咲き始めます。


つまり、ウメの花は全国的にほぼ同じ気温で咲き始めるのです。


それに対し、桜の花が咲き始める3月下旬の平均気温は、鹿児島で13℃前後、京都で11~12℃、北海道では桜の花が咲き始める4月下旬の平均気温9~10℃です。


つまり、北に行くほどサクラが開花する時期の平均気温は低くなっているのです。


この現象には「冬の寒さ」が大きく関係しています。


サクラには「冬に厳しい寒さを感じるほど、春の暖かさに敏感に反応して開花する」と言う性質があるからです。


この事から、九州のサクラより北海道のサクラが先に咲くという現象が起きるがことがあるのです。


2月中旬までに北海道のサクラのほうが、厳しい寒さを受けているので、厳しい寒さを受けていない九州のサクラより、同じ温度に反応して早く咲くのです。


 
(日本三大桜、福島県三春の滝桜)


この現象は日本一早い「ソメイヨシノの開花宣言」に現れています。


普通なら九州や四国の暖かい地域から日本一早い開花宣言が発表されるはずです。


        (日本三大桜、山梨県 神代桜)


ところが東京のソメイヨシノが日本一早く開花することがあります。


それは九州や四国の暖かい地域で、冬の気温が高い事が原因です。


九州や四国では、冬の気温が高いために、ソメイヨシノは春の暖かさに敏感に反応せずに開花が遅れてしまうのです。


       (日本三大桜、岐阜県 淡墨桜)



                                      (吉野桜)


サクラは冬の寒さが厳しい程、花芽の目覚めが良いと言う事と、冬の寒さが厳しい程、開花期の気温が低くても花を咲かせるのです。


この事から、青森や北海道ではウメとサクラがほとんど間隔を置かずに咲くことになるのです。







2021/02/28

薬の開発に役に立つ植物たち No,390

 毒は変じて薬となる


ブログNo,358で「クソニンジン」と言う植物のことを紹介しましたが、身近に役立つ植物は昔から存在し、今までに多くの薬が作られてきました。

「薬の王様」と言われるのは、鎮痛や解熱剤として、世界的に利用されている「アスピリン」と言う薬です。

この薬はヤナギの成分から作られました。


                             (柳の木)

ヤナギには、抗菌、鎮痛、解熱の作用を持つ「サリシン」と言う物質が含まれています。

しかしこの「サリシン」は副作用が強いので、「サリシン」から「サルチル酸」が作られました。

これは一時、防腐剤として使用されましたが、更に副作用のない「アスピリン」が作られたのです。


樟脳(しょうのう)と言う防虫剤はクスノキから生まれたものです。


                        (クスノキ)

この木の葉は、木に付いている時には殆ど香りを出しませんが、摘み取った葉を手で揉んで葉に傷をつける事で、強い香りが出ます。

それはなぜかと言うと、虫に食べられて傷がついた時に虫を、退治する為に放出される香りだからです。

タミフル」は新型インフルエンザに効く薬ですが、シキミ科のトウシキミの実である八角(はっかく)の成分で作られています。

                      (トウシキミの実)

真夏の暑さにもめげず、毎日のように花が咲く事から、名前の由来となっているニチニチソウ(日々草)と言う植物は、「ビンブラスチン」や「ビンクリスチン」と言う有毒物質が含まれています。

これらの物質から、抗がん剤が作られています。


                         (ニチニチソウ)

肝臓の機能を高めると言われる「八味地黄丸」と言う漢方薬が古くからありますが、「八味」とは八つの味と言う意味で、その一つは「トリカブト」に含まれる有毒物質のアコニチンです。

                        (トリカブト)

東北地方の代表的な春の山菜であるギョウジャニンニクはイヌサフランと間違って食べられて、中毒事件を起こします。


                         (イヌサフラン) 

「イヌ」と言う語の付く名前は、役立たないが姿、形がよく似ている植物の事を表しています。

「イヌ」とつく事で食べれない植物と思われます。

サフランは高価な生薬や香辛料に使われますが、イヌサフランは生薬に使えないので「イヌ」が付けられたのでしょう。

ところがイヌサフランは「コロヒチン」と言う痛風の治療薬の原料として役立っています。


「毒は変じて薬となる」

有毒物質を持つ植物というと、特別な植物と思われやすいですが、しかし、毒性が強いか弱いかは別として、多くの植物は有毒物質を持っています。

虫に食べられることから身を守り、また病原菌を感染させない為でもあります。

これらの有毒物質は、毒は変じて薬となると言われるように、有毒物質を持つ多くの植物の成分が薬として利用されているのです。

時代とともに役に立つ植物も変わってきます。

それは古くから使われてきた薬が効かなくなって、新しく薬の開発が求められる事と、役立つ植物もその時代の生活と技術を背景に、変化し続けているからです。

この時代(21世紀)に生きる人々は、植物の多様性を守り、植物たちと共存、共生しなければなりません。

その為に、植物たちをこの時代に絶滅させてはいけないのです。

地球環境、温暖化など人類化学が発展する一方で、地球規模で全ての環境を壊している事を自覚しなければならない。

思っている以上に地球環境破壊は進んでいると思います。


これからも多種多様な植物たちが、人々に恵みや豊かさをもたらしてくれるはずです。