三万2千年前の種子から目覚めたスガワラビランジ
ナデシコ科マンテマ属
2012年、三万2千年前の種子から植物体を再生して開花される事に成功したと言う発表がなされた。
ロシア科学アカデミー、土壌学の物理化学生物学問題研究所が行った、種子発根再生である。
この種子はロシアのシベリア北東部の、コリマ川沿岸部のマイナス7℃の✫更新世末期の永久凍土の地下38㍍にあった、リスの巣穴から見つかったもので、氷河期のリスがこの種子を拾って貯蔵したまま巣穴ごと氷河に埋まっていた。
✫更新世(こうしんせい)とは
地質の時代区分の一つで、約200万年前から1万年前までの時期の事。
この種子は、北海道の東大雪と網走に自生する「マンテマ」の仲間の「スガワラビランジ」
見つかった種子には、成熟したものと、未熟なものとがあり、成熟した種子は貯蔵のために発芽しないようにリスが傷をつけたと見られ、損傷している為だめになっていました。
未熟な種子は開花まで成功しましたが、通常の種子まき方法で発芽させたものではなく、クローン技術を使って未熟な種子の中の❆胎座細胞を取り出して培養し、植物体まで再生させ開花させました。
❆胎座細胞(たいざさいぼう)とは
将来植物体になるもととなる細胞のこと。
(写真提供:米科学アカデミー紀要、AFP=時事)
(現代種のスガワラビランジ)
大賀ハス(古代ハス)
✫ハス種子の発芽のさせ方
この花は「スガワラ」と言う和名を持っているように、北海道の石狩地方をはじめサハリン、シベリアにも分布する植物です。
花を咲かせた3万2千年前の花と形態を比較して見ると、現在のものよりも花弁が細く広がっていて、少し見た目が異なっていることが分かります。
進化の過程で形態が変化したのでしょう。
この種子は年代測定によって判定され、今まで見つかった細胞が生きている古い種子の中で「最も古い種子」の発見となりました。
永久凍土は、貯蔵庫のような古い時代の様々なものを冷蔵保存していると考えられ、今後も色々な古代の生物が発見され中には生きた細胞が残っていて、再生されるものもあるかもしれません。
✻日本でも古い種子の発芽に成功
日本では約2千年前の種子が発芽した「大賀ハス」が有名です。
この種子の発芽は培養ではなく、本来の種子まき方法で発芽しました。
2千年前の種子が普通に発芽するとは凄い事です。
大賀ハス(古代ハス)は1951年(昭和26年)千葉市検見川、現東京大学検見川総合運動場内の落合遺跡の泥炭地で種子3個が見つかりました。
大賀一郎博士がこの種子3個を自宅で発芽処理し、その内の1個が見事に発芽したということです。
種子は種皮の皮が厚く硬いので、発芽させるには傷をつける必要があります。
硬実などは、発芽させる為に傷をつける必要がある。
この種子が二千年もの長い間を生き続ける事ができたのは、硬い皮に守られた事や様々な偶然の条件が重なった事にあるだろう。
長い眠りを経て奇跡的に発芽した植物たちにとっては、目覚めた時代の気候や環境はどのように見えたのだろう。
古代よりもタイムスリップしたような感覚だったに違いありません。
✿主な硬実植物
発芽に処理が必要な植物
スイートピー、アサガオ、ルピナス
カンナ、ペラルゴニウム
ストレリチアなど
✻硬実の処理①
硬実では、そのまま播種しても種子が水分を吸収出来ないか、吸収しにくいためになかなか発芽しません。
硬実は種皮が硬いためにそのまま播種しても、発芽しなかったり、発芽するまでの日数が長く、ひどい場合には発芽するのに数年も要することがあります。
簡単な処理としては、種子と砂を混ぜてすり合わせる方法です。
ムクゲ、ハゼノキ、フヨウなどはこのような処理でも発芽を促進することができる。
✻硬実の処理②
硫酸による処理では、種子を一定の時間硫酸に浸し、その後水洗いをしてから播種します。
種子の量が多い時、あるいは粒の小さな硬実の場合には、このような効率のよい処理方法を採用するようにします。
多くの種子は1~2昼夜水に浸して吸水させてから、播種すると発芽を促進させる事ができます。
✫濃硫酸の処理時間例
樹種 濃硫酸の 処理時間
アカシア類 60分
ネムノキ 60分
ハゼノキ 60分
フヨウ 30分
ムクゲ 10分
ヤシ類 10分
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