緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/06/23

シナヒイラギ No,505

 シナヒイラギ モチノキ科

英名=チャイニーズ·ホーリー
別名=クリスマス·ホーリー、ヒイラギモチ、ヒイラギモドキ

常緑小高木「 支那柊」

原産は中国で、日本では本州、四国、九州で植栽できます。

株立ちになり、樹高は5㍍ぐらいまで生長する。

庭木としては2㍍前後までが適します。

葉には鋭く尖るトゲ状の鋸歯があり、ヒイラギ同様、老木になるに連れてトゲが少なくなる傾向がある。

雌雄異株で、春に前年枝の葉腋に黄緑色の小さい花を咲かせます。

果実は球形で1cm程の大きさで、秋になると赤く熟します。





主な類似種

名前が似ているヒイラギは、モクセイ科で葉が対生だがシナヒイラギの葉は互生である。

斑入りの品種として「オースプリング」などがあります。

また、クリスマスの飾りとして利用されるホーリー類は同じ科に属し、紅い果実が実ります。


葉のトゲに触れると痛いので、観賞用に用いる場合は、手足などが触れにくい場所を選びます。

生け垣に利用することもありますが、通路との間に他の低木を植えると直接触れない効果があります。


           「 斑入り品種のオースプリング」


生育環境

半日陰程度の日当たりの場所が適します。

土壌は肥沃なことに越した事はありませが、余り土質を選びません。

自然樹形は半球形状になります。

生け垣は刈り込みやすい1.5前後までが適してます。


病害虫

病害では、葉に褐色の斑点状の病斑が出斑点病が発生します。

ベンレートなどを散布して予防します。

虫害ではハダニ類、カイガラムシ類の被害に気をつけます。

ハダニ類には専用の殺ダニ剤を葉の裏を中心に散布します。

カイガラムシ類は幼虫の時期はスミチオンを散布しますが、成虫になると薬剤が浸透しにくくなるため、効果が余り出ないので捕殺します。

冬期にマシン油乳剤を使って成虫を駆除できます。

殖やし方は実生、園芸品種は挿し木で殖やします。







2021/06/22

植物の生理、生態 No,504

 春植物

春、まだ他の樹木が葉を展開する前に生育活動を開始して開花し、他の樹木が葉を広げて本格的に活動を始める時には、すでに結実して年間の生活の殆どを終え休眠する植物があります。


この様な植物は「春植物」と呼ばれ、その可憐な美しさから「春の妖精」とも呼ばれます。

その仲間にはキンポウゲ科のキクザキイチゲ、ニリンソウ、イチリンソウ、ケシ科のエンゴサク類、ユリ科のカタクリ、アマナ、ヒメニラなどが知られています。


これらの種は、冷温帯落葉広葉樹林の明るい林床を中心に生育しますが、上方を覆う樹木に先駆けて早期に活動を始めることで、生育に必要な光を十分に得て、効率よく光合成を行うことができます。


他種との競合を避けて光を得ていることは、特殊な生育形態と言える。

河野昭一氏(1988年)によれば、6500年前から始まる第三紀の温暖期にはブナ科、カバノキ科、カエデ科、ニレ科などの落葉樹の植物群(フロラ)が高緯度地方(南極や北極に近い)に侵入していた。

✫河野昭一(かわのしょういち)
植物学者(京都大名誉教授)2016年没

✪第三紀とは、地質時代区分の一つで、6500年前から第四紀に入る164〜170年前までの期間。

国際地質科学連合は「非公式用語」に位置づけている。

「三記層」と呼んでいたこともある。

この時期にはすでに落葉樹と春植物との結びつきは形成されていたと言われている。

これらの種は、生活形区分では地中植物、半地中植物と呼ばれ、地上部に比べて地下部に、遥かに大きな貯蔵器官を持っている。

これにより早春に急激に光合成器官を発達させることができるのである。

春先に可憐な花を咲かせる「カタクリ」は、種子発芽後毎年一年間の増加分を地下部の貯蔵器官に蓄積し、8年目にやっと開花、結実する。 





春植物は低木が殆ど無い海外の落葉広葉樹林では、林床面に花のじゅうたんを形成するが、常緑性の笹が林床を覆うことの多い日本の落葉広葉樹林では、林縁部に生育場所を移して生育することが多い。


日本では古くから様々な形で、森林に人手が入り、伐採、薪採取を繰り返しきました。

更に、里山では肥料とするための落ち葉の掻き取りが行われたことで、笹の生育を阻止してきました。

長い年月をかけて行われてきた作業は、林内を明るく保ち、春植物に対しては良好な生活環境を与えていました。


しかし、燃料や肥料供給源としての森林利用が停止し、人手不足による管理放棄が重なった低地の里山では、ササ類とシラカシ、シロダモ、アオキなどの常緑樹が成長して暗い林床を作る事になった。

その結果、年間を通して暗い林床環境となって、春植物は生活の場所を失うことになったのです。


絶滅危惧植物を載せた「レッドデータブック」によれば、日本に生育する顕花植物(花を咲かせ、実を結び、種子ができる高等植物、種子植物)が絶滅したか、絶滅危惧あるいは危急植物に指定されているが、春植物のほとんどがそれに指定されている。

植物保護のあり方について、真剣に検討する必要がある時に来ている。

それは必要とされる薬効植物を保護する事でもあるのです。

日本列島には、樹木や草花など約7000種もの種子植物、シダ植物が自然の中で生育していると言われています。

この内の約4割、2900種は日本にしかない植物であるとされている事から、どんなに自然豊かなのかがよく分かります。

しかし、環境破壊が進み、自然環境は悪化の一途を辿っているのです。


植物Ⅰ

野生絶滅 レッドリスト
ヒュウガシケシダ=メシダ(イワデンダ)科
コブシモドキ=モクレン科
エッチュウミセバヤ=ベンケイソウ科
リュウキュウベンケイ=ベンケイソウ科
オオカナメモチ=バラ科
ナルトオウギ=マメ科
オリヅルスミレ=スミレ科
リュウキュウアセビ=ツツジ科
タモトユリ=ユリ科
サツマオモト=ユリ科
タイワンアオイラン=ラン科
キバナコクラン=ラン科









2021/06/21

ハナイカダ No,503

 ハナイカダ 「花筏」ミズキ科

別名=ママッコ、ヨメノナミダ

花の咲く様子を花が乗った筏に例えた名前である。

北海道から九州にかけて山地の主に谷間に自生している。

落葉低木で樹高は大きいものでは3㍍前後に生長する。

数ある植物の中でもこのような形に花を咲かせるものはない。

沖縄には葉に光沢がある「リュウキュウハナイカダ」が分布する。

株立ち性になることが多く枝が横に広がります。

若芽は「ママッコ」と呼ばれ、お浸しや天ぷらにして食べることができます。




花と果実

5月から6月頃、葉の主脈の上に径5㍉程の小さな淡緑色の花が咲きます。

花は葉っぱの真ん中あたりに咲きます。

雄花は数個ずつ、雌花は1〜3個開きます。

果実は液果で、径1cm足らずの平べったい球形になり、緑色から成熟すると黒っぽくなります。

類似種

変種として、葉を始め全体が小型の「コバノハナイカダ」が近畿地方以西に分布します。

ハナイカダとの中間型もありますが、園芸品種は知られていません。

生育環境

自生地では、湿り気がある沢沿いで日陰になるような所に生えています。

木漏れ日が少しあるような明るさの場所に適しています。

土壌は湿り気があり排水の良いことが大切です。

植栽

庭木としての利用はあまりありませんが、葉の上に花や実が生えるものは限られますので、自然な植栽に利用すると効果的です。

病害虫

少ない方ですが、アブラムシ類やスス病に気をつけます。

混み合った枝を取り除くなどし、風通しを良くすることが予防になります。

リュウキュウハナイカダは亜熱帯の産地林縁に生える。

奄美大島から沖縄にかけて分布し、琉球固有の亜種とされ、準絶滅危惧種に指定されている。

                   「リュウキュウハナイカダ」






2021/06/20

生命体がいないと見られる土壌が見つかる No,502-1

 南極の山上で発見された生命体がいない土壌


研究者たちは、これまで最も標高が高く過酷な場所でも、土壌には数種類の微生物がひっそりと生息していると想定していました。

だが、生命体が全くいないと見られる土壌が、南極大陸で見つかった。

南極点から約480㌔の山上、そこは火星に似た環境だった。

地球の表面では初めてとなる報告である。

土壌採取場所は吹きさらしの険しい2つの山の尾根である。

シュローダ·ヒルとロバーツ·マシクと呼ばれる山である。




単細胞生物は、93℃を超える熱水噴出孔でも、南極の厚さ800㍍もの氷の下にある湖でも、更に高度3万7000㍍の地球の成層圏でも生きているのが見つかっています。

だが、南極の険しい山から採取した土壌の中には、米コロラド大学ボルダー校の微生物生態学者「ノア·フィアラー」氏と氏が指導する博士課程の学生「ニコラス·ドラゴネ」氏が1年を費やし、氷河のあちこちの山から集めた204点のサンプルを対象に、試験を行ったが生命がいる証拠が見つからないものがあったと言う。

比較的標高が低く寒さが厳しくない山の土壌サンプルからは、多くのDNAが検出された。


最も標高が高く、寒さが厳しい2つの山の土壌から採取したサンプルの2割からは、全く生命がいる証拠を見つけることができなかった。

検査結果の一部を見たフィアラー氏は、何かの間違いじゃないかと感じたと言う。

そこで生命の証拠を探すためにドラゴネ氏は、複数の追加実験を行いました。

土にグルコース(ブドウ糖)を含ませ、生きた生物によって二酸化炭素に変換されないかを調べました。

地球上の生命がエネルギー源として使う、アデノシン三リン酸(ATP.検査)の検出も試してみました。

アデノシン三リン酸とは、すべての植物、動物及び微生物の細胞内に存在するエネルギー分子のこと(微粒子、微生物測定器)

何ヶ月にも渡って様々な栄養素を与え、微生物にコロニー(生物集団)を形成させようとしました。

それでも一部の土壌からは何も検出されませんでした。

無菌状態とは言い切れないが、生きた細胞がごく僅かな数しかなければ、検出できない可能性はある。

しかし、この土壌には微生物が全く生息していなかった。

本当に生命体はいないのか

カナダ、ゲルフ大学の環境微生物学者「ジャクリーン·ゴーディアル」氏は、この調査結果に興味をそそられると評し、中でも生命が見つからない条件を究明しようとする、ドラゴネ氏の取り組みに注目している。


高い標高と高濃度の塩素酸塩で、生命体が検出されない可能性が高くなる2大因子で有る事を突き止めたことに対し、こうした土壌に生命体が全くいないという説に、完全に納得しているわけではない。

ゴーディアル氏は数年前、南極横断山脈の同様の環境で土壌調査を行った事がある。

それはシャクルトン氷河の北西約800㌔の地点にあるコニバーシティ·バレーで、おそらく12万年間湿度が低いまま保たれ、氷点以上の気温になったことがない場所である。

✫シャクルトン氷河は南極大陸の氷河で、イギリスの南極探検家、アーネスト・シャクルトンに因んで名付けられた。

この場所の土壌サンプルをマイナス5℃で20ヶ月間保温しても生命の兆候は見られなかったが、サンプルを氷点から数度高い温度まで温めてみると、一部のサンプルで細菌の成長を確認できたのである。

こうした土壌に生命体がいないと判断するかどうかは、その定義によって異なるが、例えば氷河の氷に数千年間閉じ込められたまま、生き延びた細菌が発見されたことがある。

氷に閉じ込められている間、これらの細胞はその代謝の速さを百万分の1にまで下げている可能性があるとされる。

コニバーシティ·バレーで見つかったのはこのような「スローな生存者」だったと、ゴーディアル氏は推測している。


ドラゴネ氏とフィアラー氏が10倍量の土壌を分析すれば、海抜2100㍍を超える2つの山、ロバーツ·マシフやシュローダ·ヒルでも見つかるかも知れないと考えている。






夏に負けないバラ栽培 ③ No,502

 花びらが茶色く傷む

花びらの縁などが部分的に茶色くなって傷んでいるのは、スリップスでアザミウマとも呼ばれる害虫による食害された痕です。


                                「スリップス」


ヒラズハナアザミウマとミカンキイロアザミウマなど6種が知られており、体長はいずれも1〜2㍉で色は暗褐色。

野菜、草花類、果樹などに広く寄生して吸汁する。

寄生する部位は花、新芽、葉ですが、バラでは特に花弁に寄生して、シミを作るので花が汚くなります。

気温が高くなる5月の開花頃から発生して、気温が高くなるに従い多発し、秋まで被害は続きます。

花では生育が悪くなったり、蕾は吸汁されたことにより開花しないなどの被害が出ます。

蕾のままで枯れ、開花しません。

スリップスは繁殖力が強く、産卵後20日程で成虫になると言われています。

多い時では一花に数百匹に及ぶこともあります。

また、食害された痕から灰色かび病の原因になることもあります。

被害が出たら、ベストガード、モスピラン、カスケードなどを定期的に散布します。

スリップスは葉裏にいることが多いので、葉裏まで薬剤がかかるように散布しましょう。


花が終わった後に花柄をすべて切り取るようにして、地面に落ちた花びらもすべて拾い集め、ビニールに入れて密閉処理をする事で、数を減らすことができるでしょう。

         「スリップスの被害で傷んだ花」

屋根のない場所で育てる

スリップスは雨を嫌うので、雨の当たらない乾燥しやすい場所で増殖しやすい傾向があります。

特に白花、黄花、薄ピンク色のバラに引き寄せられる傾向があるので、なるべく屋根のない場所で育てるようにします。

また、スリップスが嫌いな「ミント」を近くに植えるなど、寄せ鉢にして置くのも予防になります。

夏場に傷んで弱ってしまった場合でも、よほど弱体化していない限り、秋までに回復させることができます。

株元に落ちた葉は、病気の原因になりやすいので全て取り除く事を心掛けましょう。

乾燥なで黄変し落葉したものでも、地面に落ちると被害にあった花と同様に、灰色かび病の引き金になりやすくなります。


環境を改善する

バラが傷んでしまう原因は色々ありますが、夏頃に傷んでしまった場合には、植えた場所の環境改善が重要です。

鉢植えは風通しを良くして、日差しが半日ほど当たる場所に移動します。

地植えの場合は、株元にマルチングや草花を植えるなどして暑さを和らげるようにします。


病害虫に対応する

病気や害虫を放置したままでは、回復にも時間がかかります。

病気の発生初期に予防散布をするとその後の発生が減ります。

また、害虫は発生初期に薬剤散布することで、蔓延を抑えることができます。

あまり薬剤に頼りたくない場合は、最初の散布をきちんと行いましょう。

散布の際には「葉焼け」を起こさないように、事前にたっぷり水を与えるようにします。

花や蕾を摘み取っておく

株が弱っているのに花を咲かせると、栄養が奪われてしまい、株の回復が遅れるので花や蕾を摘み取っておきます。

最低でも1か月程は、花や蕾を摘み取って株の充実を図りましょう。


活力剤(液)の利用

若葉が茂るまで一週間に一回、規定量に薄めた活力液を与えます。

生育が弱っている原因が根の傷みによるもので、まず根をよく張らせて元気にします。

株が弱っているから肥料という考えはよくありません。

活力液はバイオゴールドバイタル、リキダス、メネデールなどを与えます。

肥料は株を大きくするために大切

液体肥料と暖効性肥料を定期的に与える。

枝葉がしっかり茂ってきたら、一週間に1回、ハイポネックス、ハイブレードなどを株周りに与えます。

また、生育が順調で茂り出したら、今度は暖効性の固形肥料を与えます。






2021/06/19

植物のアレロパシーとは No,501

 アレロパシー


アレロパシーは、自然界の生物総合関係における化学生態学、生態化学のうちの、植物間の関係であり、ある植物が生成し環境中に放出した物質が、異類もしくは同種の他の植物の生長や発達に影響を与える作用である。

自己の生育地域へ他の植物種の侵入を妨げて、自種群落を拡大させる生態的仕組みになっている。

これらの場合、根から初芽阻害物質や生育阻害物質を分泌しています。

また落ち葉や果皮の浸出液に阻害物質が含まれる事もあります。

アレロパシー現象は古くから知られ、✫テオフラスタスはすでに紀元前3世紀に「ヒヨコマメ」の雑草制圧力について、また✫熊沢蕃山は「アカマツ」から滴り落ちる雨滴が作物の生育に有害である事を記しています。

✫テオフラスタスとは、古代ギリシアの哲学及び科学者でレスボス島エレソスの生まれ。

植物学の「祖」とされるなど、観察や調査に基づく実証的研究に本領を発揮した人で、ギリシアの学問の成立と発展に果たした功績は絶大である。

200に余る著作が有ったとされるが、現存する物は植物誌=9巻、植物発生学=6巻、自然学的小論=数編など他

特に有名なのは「性格論」であったが、後世の文学者はこれをしばしば真似ていた。

✫熊沢蕃山(くまざわばんざん)
(1619〜1691)
江戸時代初期の陽明学者(儒者)


最初にこの種の現象に対して「アレロパシー」と言う語を与え、その概念を明確にしたのはハンス·モーリッシュ、オーストリアの植物学者(1856 ~1937)であるが、彼の定義によれば、アレロパシーの対象は高等植物から微生物まで、また阻害的なものから促進的なものまで含まれる。

しかし実際には、狭義に高等植物間の阻害的な作用だけを指している場合が多い。

アレロパシーとはギリシア語の「相互に」と「被る」と言う語を組み合わせたものだが、アレロパシーの和訳としては、千葉大学の沼田真名誉教授(植物生態学者)により、1977年に「他感作用」と言う語があてられている。

アレロパシーの原因となる物質はアレロケミカル、アレロケミック、他感作用物質などと呼ばれ、植物の種々の「二次代謝産物」がこれに相当する。

✫二次代謝産物とは、生物の細胞成長、発生、生殖には直接的には関与していない有機化合物のこと。

また酸素などの働きによる化合物の一連の変換反応を「代謝」と言う。

これらの化合物は、生物共通の生命維持に不可欠な「一次代謝産物」とは異なり、特定の分類群に固有の代謝系で生産される物質である。

✫一次代謝産物とは、生体を維持するのに必須の物質群であり、各分類群と属する生物にとっては共通に存在するものである。


高等植物に対してだけではなく、動物や病原菌などの周囲の生物に対する防護手段になっている事も多い。

この物質は、生きた植物体の茎葉、果実や種子から雨水や霧粒中に溶脱したり、根から滲み出して土壌に蓄積し、他の植物に吸収される。

植物に含まれる化学成分には、一次代謝産物と二次代謝産物がある。

植物には様々な化学成分が含まれるが、大別すると無機化合物と有機化合物に分けられる。


燃やした場合に灰となって残るものが無機物であり、ケイ酸塩、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などからなる。

植物成分としての無機物が注目される事はほとんどありませんが、人類は太古以来「灰汁」を食品のアク抜きや生薬の加工調製などに利用してきた事から、全く役に立たないわけではありません。

しかし、植物成分として圧倒的に利用されるのは有機化合物であるだろう。

植物に限らず、生物の創り出す有機化合物を「代謝産物」と言う。


ただし、モノテルペン、セスキテルペン類は揮発によって環境中に放出され、更に植物の遺体や落葉から溶脱する場合もある。

✪モノテルペンとは炭化水素類で、炭素と水素で出来た化合物のこと。
特に柑橘系や針葉樹の「精油」に多く含まれる成分である。

✪セスキテルペンとは生理活性物質のこと。

アレロケミカルの中には、体内では毒性の低い配糖体として存在しているが、土壌に入った後、微生物分解によって糖が離脱して、阻害活性が現れ出すものもある。

✭アレロケミカルとは、異なる生物種の個体に作用し、特定の行動を引き起こしたり、生理に何らかの影響を及ぼしたりする化学物質の総称である。

✭配糖体とはグリコシドとも言われ、糖と糖以外の有機化合物とが結合した物質のこと。
また、根粒菌などの微生物に作用し、作物などへの間接的な影響が示される場合もある。


植物保護から見たアレロパシーの重要な側面は①雑草害、防除すべき点②制圧作物、防除において利用すべき点③雑草群落遷移、防除において考慮すべき点の3つである。


アレロパシー活性が、何らかの方法で確認されている雑草は、数十種に及び、ムカシヨモギ属植物やセイタカアワダチソウ、シバムギ、セイバンモロコシ、ハマスゲなど、攻撃的な多年草で多く知られている。


キク科植物が放出するポリアセチレン化合物は、二次遷移(移り変わり)の初期段階において、種の交代に関わっていると考えられている。

尚、作物に対する雑草による干渉(雑草害)には、競合とアレロパシーが含まれるはずであるが、両者を識別してアレロパシーの関与を証明するのは難しい場合が多い。


アレロパシーに関して注意すべき点は、植物によるアレロケミカルの生成、放出された物質の変化してゆく状態、影響を受ける植物の生理状態いずれも環境要因によって、大きく影響されうるため、ある植物にアレロパシーの潜在する可能性があっても、それが生態系で現れ出したりしなかったりする点である。


主なアレロパシー活性植物

他の植物の成長を抑える働き(物質)

ホオノキ、オニグルミ、カルミア、イタドリ、コデマリ、サクラ、スズラン、ソバ、ニワウルシ、マツ、ムクゲアカシア、ムニンフトモモ、ユキヤナギ、ヨモギ、その他