緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2022/09/22

グレープフルーツ No,614

 グレープフルーツ ミカン科

原産地=西インド諸島のバルバドス島

別名=ポメロ、トローニャ、パンプルムース

黄色い実がブドウの房のように鈴なりにつくのでこの名がある。

果肉は白色、薄い紅色、赤色、レモンイエローなど


       「グレープフルーツ」


グレープフルーツはマレー原産のザボンもしくはブンタンが中国を経て、西インド諸島に渡り、1750年代に西インド諸島のカリブ海のバルバドスで発見されたものが最初とされ、自然に交配した変種と言われています。


         「ブンタン」



ザボンとオレンジの雑種とする説もある。


          「ザボン」


グレープフルーツの名が初めて用いられたのは1814年のジャマイカとされ、その後、1830年頃にアメリカのフロリダに伝わり、テキサス、カルフォルニア等に伝わって大規模な生産が始まったとされている。

グレープフルーツの起源には、はっきりしない部分があると思います。


          「オレンジ」

栽培地

日当たりや水はけのよい深い土層が敵地ですが、ミカン類の中では寒さに弱い種類であるため、日本国内で庭植えできる地方は限られることになります。


九州、四国などの温かい地方で、冬に風の当たらない陽だまりになるような場所であれば、育てることも可能でしょう。



鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、
日当たりの良い場所に置き管理します。

冬の温度管理が大切なので、暖かい室内で保温し、夜間でも5℃以下にならないように注意します。

暖房設備のある家庭でも夜間は暖房を停止する事が多いので、必要とする温度を保てず失敗することがあります。


場所によっては簡単な温室が必要になります。

11月から3月末まで暖かい部屋に取り込んで冬越しさせます。


肥料

庭植えは2月に根周りに溝を掘って、配合肥料を200〜300g程度埋め込みます。

鉢植えは毎年4月に玉肥を3〜4個根周りに置き肥します。

鉢植えは水やりも大切ですので、表面が乾いたらたっぷりと与えます。

せん定

庭植えは主幹形仕立てにします。

花芽は枝先につくので基本樹形ができたら間引きせん定を主に行います。


混み合った枝を根元から切除して内部まで日当たりをよくしてやり、主枝は定期的に更新して新しい結果枝を発生させます。


鉢植えは模様木したてにして、鉢の高さの2.5〜3倍の樹形にします。

年数が経つうちに根が肥大して根詰まりしてくるので、5年目には植え替えが必要です。

5年後は1年おきに植え替えを行い、根の状態を良好に保ちます。

また、2年目の6月には、主幹と主枝に針金をかけて樹形を整えます。


果実の管理

人工受粉を行う必要があります。

多くの花が開花しますが、自然落花も多く、鉢植えで結実するのは一株で3〜4果です。

この中で形がよく大きいものを1〜2果選んで残し、他は摘果して養分を残した果実に集中させ、肥大させるようにします。


嗅ぐだけで痩せる香り

アメリカの医学博士アランハーシュが、様々な年齢の人の体にいろいろな香りを振りかけて、何歳に見えるのかを答えてもらう実験をしました。

すると、ほとんどの香りは振りかけても年齢相応に見えた中で、「グレープフルーツ」の香りをかけた中年女性は6歳若く見えるという結果が出たと言う。


グレープフルーツの香りについては、2005年に大阪大学の研究グループが「嗅ぐだけでダイエット効果がある」と発表しています。

しかし、実際にその効果がどれくらい大きいかは不明ですが、香りの成分から一応理論的に裏付けをすることはできます。


グレープフルーツの香りの1つは「ムートカン」という成分で、これは交感神経を刺激します。

刺激された交感神経は、興奮と緊張状態をもたらすので、エネルギー消費され、それを補うために脂肪が燃焼します。

グレープフルーツの香りを嗅ぐと痩せると言われるのはそのためです。








2022/09/20

日本の胡椒(こしょう) No,613

 山椒(さんしょう)

山椒は日本原産、ミカン科の植物と言われ、縄文時代の遺跡の中から山椒の入った土器が出土したことから、古くより利用されていと考えられ、そのため日本最古のスパイスとも呼ばれています。


しかし、現在のように香辛料として使われていたかは定かではないとされている。

山椒の原産地は2説あるとされ、中国でトウザンショウの果実を花椒と称し、香辛料として使われているのでそこから来たものであるとする説と、中国の花椒は山椒と別種であり日本が原産であるとする説がある。



     「サンショウの若葉」



若芽や葉、花や実なども香辛料として使われ、捨てるところがない。

太平洋戦争後に、香辛料や薬品原料として山椒の需要が急増したことで、畑での本格的な栽培が始まり、栽培面積も広がっていった。

サンショウはコショウと同じように香辛料として使われ、実は小粒でピリリと辛い。

また、実が弾けることから「はじける実」「はじけた実」という意味で、古くは「はじかみ」と呼んでいた。


    「山椒の実、4月18日」


葉っぱは強い香りがありますが、この香りは病原菌に感染しないためであり、また、虫や動物にかじられないためにも役立っています。

香りの成分はリモネン、ゲランオール、シトロネラールなどで、葉っぱは日本料理の食材にも使用されます。


「木の芽」とは山椒の若い葉を指し、木の芽和えとしても食される。

また、木材はすりこぎ棒に使われます。

食べすぎると腹痛や下痢などを引き起こすことがあるので注意が必要です。

山椒の適正な摂取量は定められていませんが、一回分の適量として、0.2〜0.3g程度が目安とされている。


❉関連ブログ記事
サンショウ(山椒) No,201








2022/09/18

根の光屈性と重力屈性 No,612

 光と反対方向に伸びる

植物の根は地中に向かって、茎は空に向かって成長します。

これは植物が重力の方向を感じとって行う「動力屈性」と呼ばれる反応です。


重力屈性は1985年頃までは「屈地性」と呼ばれていました。

動力屈性には、オーキシンという植物ホルモンが関与しています。

❉オーキシンはほとんど茎に対して根の方向にしか移動しない。

天然オーキシンと合成オーキシンに分類される。


種子が初芽すると根は必ず下に向かって伸びます。

芽の代わりに地上に根が出てくることはありません。

「なぜ根は下に向かって伸びるのか」というその理由の1つは、根には光と反対方向に伸びる性質があるからです。

芽が光に向かって伸びる「光屈性」に対して、これを「負の光屈性」と言います。

しかし、真っ暗な地中でも根は下へ伸びて行きます。

なので、根が下に伸びるのは「負の光屈性」という性質だけによるものではありません。

根には重力を感じ、その方向に伸びるという性質があります。

光のない真っ暗な中で発芽したものを、土中から抜き取って水平に置いておくと、根の先端はやがて下向きに曲がり、下に向かって伸び出します。

これは根の重力に対する反応であり「重力屈性」と呼ばれる性質によるものです。


根が下に向かって伸びる現象は、負の光屈性と重力屈性が支配さているということになります。

植物が、刺激の方向に支配されて運動する性質がある「屈性」には色々ありますが、実際、根が下に向かって伸びることに関しては、負の光屈性と重力屈性であるとされてきました。


しかし、それだけではないことが分かってきました。

そこで考えられるのが「根は水分を求めて伸びるのではないか」という可能性とする、水分が刺激となる「水分屈性」である。

根は水分を求めて伸びる性質がある


土の表面近くが乾いていても、地中深くには水分が存在し、その水分を求めて根は下に向かって伸びて行くのではないかと考えられます。

しかし、地球上には重力があるので、根が水分屈性で下に伸びていることを、重力屈性と切り離して証明する事は難しい。


そのため、水分屈性の関与についてはこれまで言及されてきませんでした。

しかし、近年、主に3つの事実を根拠として、水分屈性の関与がはっきりと認められています。

1つ目は、根が水を求めて伸びる現象で、例えば土の中の排水管などの割れ目から水が漏れていると、根が割れ目に向かって伸びる現象が観察されています。


2つ目は、重力を感じることがない突然変異体が「シロイヌナズナ」という植物で作られたことです。

❉シロイヌナズナとは、アブラナ科の植物で、遺伝子数が少なく、植物として初めてゲノム(遺伝子と染色体)情報が明らかにされているため、現在ではモデル植物(研究用植物)として様々な研究に利用されている。


       「シロイヌナズナ」


この突然変異体の根は、重力を感じることはないが、土の中深くに多くの水を求めて、下に伸びて行くということです。


3つ目は、宇宙ステーションでの実験です。

重力のない宇宙ステーションの中でも、シロイヌナズナの種子は発芽し、根が下に伸びたということです。

この時、発芽した芽生えの下には、岩石を加工して水を含むようにしたロックウール(保温材等として使用される)という物が置かれていましたが、無重力にも関わらず、根はロックウールに含まれた水を求めて伸びたのです。

地球上では重力があるため、水分屈性という性質が見えにくいが、無重力の宇宙でははっきりと水分屈性が示されたということです。







2022/09/17

槿花一朝の栄と言われる花 No,611

 ムクゲ アオイ科 木槿

別名=ハチス

原産地=インドや中国

花は同じアオイ科のフヨウ、ハイビスカス、オクラ、タチアオイの花によく似ています。

サルスベリ、キョウチクトウとともに「夏の三大花」
と言われるほど美しい花で、朝には大きく花を開くが夕方には萎れてしまう「一日花」である。


          「ムクゲ」

そのためムクゲの花は「槿花=きんか」と書かれ「この世の栄華のはかなさ」に例えられ、「槿花一朝の栄」「槿花一朝の夢」「槿花一日の夢」などとつかわれます。


一つひとつの花の寿命は短いが、次々と咲き花が咲く期間はかなり長く、夏の初めから秋まで咲き続ける。

一本の木で一日に50個の花を咲かせることは珍しいことではない。

1シーズンに千個以上の花が咲くこともある。


そのため韓国では「窮することがない花」という字を当てて、無窮花(ムグンファまたはムキュウゲ)と呼ばれ、国花となっている。


✪窮(きゅう)するとは、行き詰まる、困るの意味


      「アオイ科タチアオイ」


❉関連ブログ記事
ムクゲ(木槿)No,163







2022/09/16

森のバターと言われる果物(アボカド) No,610

 アボカド クスノキ科ワニナシ属

原産地は熱帯アメリカで英語名の別名は「アリゲータ·ペア」果皮が動物のワニの肌に似ていることから「ワニのようなナシ」と名付けられました。



        「アボカドの花」


アボカドは熱帯コロンビア、エクアドル、メキシコ南部に野生していたもので、メキシコでは13〜14世紀にアステカ族(ネイティブアメリカン)によって栽培されていたとされています。

1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見した際には、既にアメリカ一帯で栽培されていたとされ、新大陸発見後、西インド諸島へ伝わって、その後、熱帯亜熱帯地域の各国に伝わったと言われています。


13世紀末のインカ王の墓から多くの歴史的発見物とともに、アボカドの種も発見されました。

アステカ文明は、1428年頃から1521年までの約95年間メキシコ中部で栄えた。

メソアメリカ文明の最後に現れた文明国家で、メシカ、アコルワ、テパネカの3集団の同盟によって支配され、時とともにメシカがその中心となった。

アステカ人はメシカ人とも言い、メキシコという国名は、アステカの言語であるナワトル語でメシトリの地を意味するメシコに由来するとされるが、諸説あるようだ。


日本に導入されたのは、大正時代末期から昭和初期、戦後にかけてとされるが、当時は人気があったわけではないようです。

メキシコ系、グァテマラ系、西インド系があり、日本にはフエルテ、ハスなどの品種の実が輸入されています。




ギネスブックには「最も栄養価の高い果物」と記載されている。

「森のバター」「果物のバター」とも言われるほど脂肪が多いが、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸が主体なので、健康に良いものです。

❉不飽和脂肪酸=(ふほうわしぼうさん)とは、脂肪の構成要素である脂肪酸のうち、植物や魚の脂に多く含まれるもので、常温では液状で植物油に多く含まれています。

老化防止効果のあるビタミンEが多く含まれ、カリウムも豊富なので血圧を低下させる効果もあります。

そのため「果物の王様」「生命の源」とも言われる。


ワサビ醤油をつけると、マグロのトロの味がすると言われています。


脂肪の燃焼にもよく、ダイエットにもおすすめの食べ物ですが、果物の中でもカロリーが高い部類であるので、食べすぎるとニキビの原因にもなります。

腹痛や下痢、胃痛、胃もたれなどの原因になることがあるので注意が必要です。


1日二分の一から一個程度を目安に食べると良いとされています。


アボカド一個はごはん(150g)一杯分のカロリー(234kcal)に相当します。


アボカドのカロリーは一個150gで263kcal








2022/09/14

植物の細胞が持つ能力 No,609

 新たに芽生える植物細胞の能力

樹木は材木として利用されたり、間引き(間伐)のために地上部を幹の根元(基部)で伐採されることがあります。

しかし多くの場合、伐採されたとしても樹木の切り株はそのまま生涯を終えることはありません。

地上部の幹を切られても土の中で根が生きているので、水や養分が運ばれ、残された切り株から芽が再び出てきます。


再び切り株の幹から出てくる芽生えは「ひこばえまたはやご」と呼びます。

「ひこ」とは孫のことでひこばえは「孫が生えてきた」という意味になります。

このひこばえには、そのまま樹木として成長できる能力があります。

しかし、なぜ芽のない切り株からひこばえがでてくるのか?

これには、幹を作っている細胞が持っている能力によるものです。

植物の細胞はそれぞれ、部位にふさわしい形や働きをしていますが、更にそれぞれの個体が1つの個体を作る能力を持っているのです。

その能力を『分化全能性』という。

植物の細胞が分化全能性を持つことは、1958年にアメリカの植物学者F.C.スチュワード等によって示されました。

スチュワードは、人参の食用部である根を構成する1個の細胞を取り出して、人工的に用意した適切な条件のもとで育てました。


すると、細胞が増殖して細胞の塊(かたまり)になりました。

これは、根や茎の一部になっていた細胞が分化していない状態に戻ったもので「カルス」と呼ばれます。


  「樹木のカルス形成、切り口を塞ぎ始める」


更にこのカルスを適当な条件でそだてると、カルスから根、茎、葉などが作られてきて、完全なニンジンの植物体が出来上がったのです。

こうして、一個の細胞からでも植物の体は再び作り上げられることが分かりました。

これが細胞の持つ分化全能性と言われる能力です。


つまりひこばえは、切り株の断面にある細胞が分化全能性によって芽を出したものなのである。

このひこばえは、切り株の中央部分からはほとんど生まれず、切り株の周囲から多く出ます。


それは切り株の周囲には若い元気な細胞があり、切り株の中央部分は歳を重ねた古い細胞でできているからです。

    「切り口の周りから出る新しい芽」


植物の細胞の分化全能性は、茎や枝を切っても水の入った容器に挿しておくだけで、発生を見ることができます。

日が経つと、茎や枝の切り口から根が生え出てくる植物は多くありません。

本来なら根を出すはずのない茎の切り口から、新しい根が、生まれてくるのです。

この力を利用したのか「挿し木」です。

分化全能性という能力が挿し木を可能にしているのです。


✪関連ブログ記事
植物はなぜ立っていられるの?
No,604