緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2023/10/10

樹木の五大病気②うどんこ病 No,658

 うどんこ病

うどんこ病は春や秋に様々な植物で、白いカビが新芽や若葉、茎などの表面や裏面にうどん粉をまぶしたようにびっしり生える病気の総称です。






病気が進むと、葉が変形、ねじれたり小さく萎縮したりします。

植物によって病原菌が異なりますが、似たような症状がでます。

病原菌の種類や感染した植物の違いによって、カビが葉の表面だけにつくもの、厚くて褐色の絨毛状(じゅうもうじょう=微細な突起)のもの、厚くて紫褐色(しかつしょく)の膜がつくものなどがあります。


胞子の発生する適温は17~25度で時期的には5月~7月と9月~11月が発生しやすい時期と言えます。

植物によっては違いますが、高温(20度前後)多湿を好み、4月から10月に発生することが多い。


日陰になった株に発生が多く、病気にかかった葉(羅病葉)は、比較的長く樹上に着生する。

病葉上の無性胞子(分生子)がそのまま越冬して、翌春の伝染源となる。

◉分生子(ぶんせいし)とは、菌糸の一部が伸び、その先がくびれてできる特別な胞子で分生胞子とも言う。

その形成の過程は体細胞分裂による。

また、分生子のみで繁殖する菌類を不完全菌と言う。

常緑樹のうどんこ病では「子のう果=子実体」を作らずに、白い菌糸のままで越冬するマサキやウバメガシなどがあります。

★子実体(しじつたい)とは、菌類が胞子形成のために作る複合的な構造のこと。


病原体の種類はたくさんあり、そのほとんどがカビですが、カビの種類によって寄生する樹種が決まっている。

そのカビは特定の植物にしか感染しないものと、ジニアの病原菌のように様々な種類の植物に感染するものがあります。

どの植物につくカビも「活物寄生菌=かつぶつきせいきん」と言って、生きている植物しか寄生しない。

うどんこ病菌は植物体の表面でしか繁殖できないので、枯れた植物の上では生きられません。


感染経路は空気による感染がほとんどで、一部は虫媒感染による場合もある。


発生しやすい植物

ほとんどすべての庭木、花木、草花、山野草。

家庭果樹ではカキ、クリ、ブドウ、モモなど。

鉢植えではキク、シャクヤク、スイートピー、ダリア、ベゴニア類など。

野菜類のエンドウ、オクラ、カボチャ、キュウリ、トマトなど多数。


基本的対策

落葉樹では病気の葉が落葉したら集めて焼却処分することで、翌年の伝染源を断つ。

常緑樹は子のう果が越冬している病葉を摘んで焼却処分します。

薬剤処理ではチオファネートメチル剤、ベノミル剤、キノキサリン系剤、TPN剤、水和イオウ剤などを散布します。


予防

チッソ分が多くカリ分が欠乏すると発生しやすいので、チッソ肥料を少なめにカリ肥料を多めに与えます。

樹木では冬期の1月から2月に石灰硫黄合剤を1~2回散布し予防する。








2023/10/07

樹木の五大病気①コウヤク病 No,657

 コウヤク病

コウヤク病は厚いフェルト状のカビの膜

庭の梅の木や桜の街路樹の枝や幹に、膏薬を張り付けたようにびっしりと膜状のカビが生えていたら、コウヤク病だと思われます。




コウヤク病は、糸状菌(カビ)の仲間のコウヤク病菌属(セプトバシジウム)の病原菌類によって起こされる、枝幹に生じる病気を言う。

膜はカビの菌糸で厚い灰白色フェルト状になっていて、はじめはほぼ円形をし、膏薬を貼り付けたような外観になる。


周りが薄くなっていて枝、幹をひと巻きすると段々上下に広がり、他の膜と繋がって縦形の大きな膜になります。


菌糸層が古くなると病斑の周辺部に白い斑紋が浮かんできて、やがて全体的に灰褐色となり、亀裂を生じて樹皮が剥げ落ちたりする。


膜に被われた枝は徐々に勢いが衰え、最後には枯れてしまいます。

初夏の頃、菌糸層の表面には白色の粉状物が噴出したように現れる。


コウヤク病によって全国各地の公園や街路樹など、枯死した樹木も多く見られる。


発生しやすい植物

ウメ、エゾマツ、トドマツ、グミ、サクラ、サンショウ、モモ、クリ、ミカン類など


病気発生の原因

コウヤク病もスス病と同じように、カイガラムシの排泄物や死骸を栄養として繁殖するカビの一種で、特に古木によく見られます。


カイガラムシの吸汁痕は菌にとって植物の樹皮内部への侵入口となります。


この病気はほとんどの場合、直接樹木から栄養を取るのではないので、初期段階で樹全体をからすことはありませんが、カビが生えた部分は樹皮が締め付けられ、生育が著しく悪くなった場合には枯死に至る原因ともなる。

コウヤク病はいろんな樹木で発生しますが、樹種によって病原菌が少しずつ異なります。


また、病原菌は比較的限られた植物に感染するものと、広くさまざまな植物に感染するものがあります。

これは、カイガラムシの種類によって感染する植物の範囲が違うことによるものと思われます。


コウヤク病の種類

コウヤク病は菌糸膜の色と宿主(寄主)となった植物の種類によって、それぞれ名前が付けられています。


主な病名とそれに関係するカイガラムシと植物

①サクラ暗褐色コウヤク病
クワノカイガラムシ=ヤマザクラ

②サクラ黒色コウヤク病
サクラアカカイガラムシ=ソメイヨシノ、サトザクラ等のサクラ類

③グミ琥珀色コウヤク病
クワノカイガラムシ=ナワシログミ、カキ

④エゾマツ、トドマツコウヤク病
トドマツニセカキカイガラムシ=トドマツ、エゾマツなど

⑤原色コウヤク病
クワシロカイガラムシ=ソメイヨシノ、ヤマザクラ、コウゾなど


防除対策

カイガラムシを駆除することが重要です。

冬期間に石灰硫黄合剤や機械油乳剤を散布するとともに、春以降の生育期にはイソキサチオン剤、DMTP剤(スプラサイド)などを用いて駆除する。

コウヤク病菌に対しては、冬の間に患部へ石灰硫黄合剤10倍液、石灰乳などを塗布する。

なお、樹種によっては薬害を生じる恐れがあるので注意が必要であり、石灰硫黄合剤は冬期使用限定薬剤であるため、冬期間での使用のみを厳守する。

菌糸膜が広範囲に広がってしまっている場合は、樹皮をなるべく傷つけないようにワイヤーブラシでカビを削ぎ落としてから、防菌癒合促進剤を塗布する。

また、日当たりや風通しを良くしてやることも病気の予防となります。


灰色コウヤク病

病原菌は担子菌類に属する糸状菌の一種で、病原菌はクワシロカイガラムシと共生、或いは寄生関係にある。


      「灰色コウヤク病」

宿主植物
サクラ類、ポプラ類、ケヤキ、イタチハギ、サンショウ、アカメガシワ、マサキ、キリ、シイノキ、タブノキ、クロモジ、エゴノキ、カンキツ類、リンゴ、ナシ、モモ、スモモ、アンズ、ウメなど多くの広葉樹、果樹類に発生することが知られている。


防除法

被害が激しい場合は、病枝梢を含めて思いきった剪定を行って、日射、通風を良くするとともに伝染源の排除を図る。

また、薬剤防除としては、発芽前に石灰硫黄合剤を散布する他、カイガラムシに対しても発芽前までに機械油乳剤を散布して駆除する。

ただし、石灰硫黄合剤は機械油乳剤散布の7日から10日前に散布することが重要です。


褐色コウヤク病

枝に発生し、褐色から暗褐色で周縁が白味を帯びたフェルト状の菌糸膜が円形に広がり、やがて不整形となる。


     「褐色コウヤク病」

病原菌はカイガラムシと共存することが知られている。

宿主植物
ポプラ類、ヤナギ類、ナラ類、ヤマブキ、サクラ類、サンショウ、アオギリ、ツバキ、キンモクセイ、ギンモクセイ、キリ、モモ、スモモ、ウメ、クルミ


防除法

コウヤク病に準じて行う。

★関連ブログ記事
糸状菌とは何?No,557









2023/09/29

ヤエヤマヤシ ヤシ科 No,656

 ヤエヤマヤシ(八重山椰子)

ヤシ科ヤエヤマヤシ属

ヤエヤマヤシは八重山諸島の中でも、石垣島と西表島だけに生える日本の「固有種」で非常に珍しいヤシで名前も八重山の名から付けられている。

樹高は20~25㍍にも達する常緑高木で、大きな波状複葉の葉をつけるのが特徴


       「ヤエヤマヤシ」


幹は直立し単一で分枝せず、葉の落ちた跡が環状に残る。

基部は無数の太い根が地上に露出して盛り上がり、直立した幹をしっかりと支えている。


葉は長さ5㍍程で小葉は90対ほどあり、先は浅く2裂する。

雌雄同株で花は10月~12月頃に咲き、淡黄色、果実は楕円形で長さ1.3㎝ほどで黒く熟す。

この種は一種のみで「ヤエヤマヤシ属」となるほど植物学においても貴重な種類となっている。

ヤエヤマヤシは植物学者の初島住彦により、1963年に新種として初めて学術誌に「Glubia·liukiuensis」の学名で記載しました。

その6年後、植物研究家のアメリカ人、ハロルド·エメリー·ムーアによって新属の「ヤエヤマヤシ属」を立て、本種として認められます。

その後、ヤシ博士と称される佐竹利彦によって「ヤエヤマヤシ」と命名されました。


♣初島住彦は植物学者、農学博士、鹿児島大学名誉教授(1906~2008年没)
著書には「琉球植物誌」1971年

「日本の樹木、日本に見られる木本類の外部形態に基づく総検索誌」1976年

「九州植物目録」2004年等があり、合著も多く出版されている。

★ハロルド·エメリー·ムーアは植物研究家
(1917~1980年没)

ヤシ科の植物分類研究で知られるアメリカの植物学者


★佐竹利彦は農学博士、東京農業大学名誉博士、広島大学名誉博士
(1910~1998年没)
日本の技術者、実業家の二代目であるが、ヤシ、ソテツ類の魅力にとりつかれ、趣味が高じて収集、分類を続け、ヤシ研究の権威となったヤシ博士。


石垣島には米原ヤエヤマヤシ群落があり、国定天然記念物や環境省のレッドデータ、沖縄県では準絶滅危惧種にも指定されている。




まるでジャングルのようなヤシ群生である。

株周りには特徴的な「筍根」が見られる。




米原ヤエヤマヤシ群落の近くには八重山椰子記念館
、佐竹利彦椰子記念館がある。

◉サタケ八重山ヤシ記念館



★筍根(じゅんこん)とは、細かいタケノコが地面からたくさん生えているように見える根のことで、直立通気根、通気根、筍根等と呼ばれる。


ヤシ科は英語でパルマエと言うラテン語の「palma」の複数形に由来するとされ、パームツリー(palm.Tree)と呼ばれる。

palmは手のひら、またはそのようなものと言った意味がある。

ヤシ類は単子葉植物中もっとも発達した高等植物で、世界中の熱帯から亜熱帯を中心に189属約3000種が分布しているとされ、テーブルヤシなど小型の種類からココヤシなど大型になる種類など、鉢植えにして高さ2㍍程度のものが観葉植物として流通している。

ヤシ科にはココヤシ属、アレカヤシ属、テーブルヤシ属、ナツメヤシ属などがあり、和風観葉植物として古くから栽培されたいるカンノンチクやシュロチクもヤシ類で多く属する品種もある。


ヤシの木は何百万年も前から存在しており、化石としての記録は白亜記(約1億4500万年前から6600年前)まで遡ります。


記録を保持しているメトセラヤシの樹齢は、2000年以上と推定されています。

もっとも背の高い種は、アンデス山脈原産のコロンビア、ココラ渓谷のワックスヤシとされ、高さは最大で60~70㍍にも達する。


四国や九州で見られるヤシの木はほとんどシュロの木で、古代から日本に自生している貴重な在来種のヤシです。


シュロはヤシ科の中でも最も北に分布を広げた種で耐寒性があり、雪の多い東北地方でも野外で越冬できる。

自然分布は九州の南部とされるが、種子を野鳥が食べるために本州の山々にも野生化している。

高さは7㍍ほどになり、幹は直立して上部に枯れた葉が残り、その上に冬でも青々した葉を茂らせます。

葉柄は1㍍ほどになり、その先に扇形の葉を広げる。

雌雄異株で雄花は垂れ下がり、雌花は斜上して咲き、果実は藍黒色に熟す。



       「シュロノキ」


混同しやすいのがソテツの木だと言われていますが、ソテツはソテツ科の植物でヤシ科ではありません。

        「ソテツ」








2023/09/16

さつまいもの害虫(3) No,655

 ヨトウムシ ヤガ科

サツマイモの害虫ヨトウムシは、体長2~4㎝で若い幼虫は緑色、成長していくと褐色や黒色になっていきます。

ヨトウガと言う「蛾」の幼虫で、夜間は土の中に隠れていて夜になると活動するので「夜盗虫」と言われている。
葉や茎、実を食害します。








幼虫は成長すると食べる量も増えるので、葉全体を食べ尽くしてしまいます。


     「葉を食害された状態」


被害後、スミチオン乳剤1000倍液を散布、土壌に灌注


     「薬剤使用後葉が復活」


薬剤の効果によって害虫駆除ができたようです。

葉に散布するだけでは駆除できません。

土壌中に潜伏していることや卵がふ化することを考えて灌注が重要。

★灌注(かんちゅう)とは、注ぎかけること、そそぐこと
灌注だけの目的の場合は、希釈濃度は高くなる。


野菜によっては新芽を食べられてしまうと育たなくなって枯れてしまう。


若齢幼虫のうちは昼間も葉の裏にいて、土の中に隠れるのは成長してからです。


ヤガ科にはいくつかの種類の害虫がいるが、ヨトウムシは特に野菜類の害虫として知られています。


冬の期間、土中で越冬し4月~5月にかけてふ化します。

サツマイモの葉に卵を産み付け、1ヶ月ほどで蛹になり土の中でふ化し成虫になります。


一匹あたり1000~3000個の卵を産むとされ、ふ化すると大量発生します。


その他の害虫として、ナガジロシタバ、ハスモンヨトウがいる。



ナガジロシタバも同じくサツマイモのの害虫として知られ、大量発生すると葉の大部分を食害してしまいます。


早期から発生した場合、サツマイモの収穫量や品質低下に繋がることもあるので注意が必要です。


また、サツマイモの葉を食い尽くした後、餌を求めて移動、その際に民家等に侵入し、不快害虫として問題になることもある。


老齢幼虫になると葉柄だけを残して食い荒らすため、大発生した畑では丸坊主となって地表面が見えるようになることもある。

成熟した幼虫は土中に潜り、土マユ(繭)を作りその中でサナギになる。


薬剤の効果は幼虫の発育に伴い低下するので、若齢幼虫期に防除することが重要となる。

ツル先の若葉の被害発生が目安となる。

薬剤はカーバメート剤、ジアミド剤、スピノシン剤など

★ハスモンヨトウはヨトウガに似ているが、老齢幼虫の頭部の色がハスモンヨトウは黒であるのに対し、ヨトウガは黄褐色であるなど外見の違いがある。


広範囲に食害し、野菜や畑の作物、花き、果樹まで被害を起こす。


薬剤はジアミド剤やマクロライド剤など

防除効果を上げるたためには若齢期の薬剤防除が重要です。








2023/09/12

さつまいもの害虫(2) No,654

 コガネムシ コガネムシ科ジムシ類

ジムシ類 (コガネムシの幼虫)




大多数のコガネムシの幼虫は、落葉や堆肥などの有機物を食べるだけで無害な虫です。


しかし、一部のコガネムシ類は生きた木の根までも食糧にします。

種類により異なりますが、だいたい春から秋にかけて被害を起こす。


春先の植え付け時期や土を耕した時、見つけた幼虫を捕殺します。

土中の有機物を食べるので、有機肥料を使い過ぎると呼び寄せることになり被害が増えます。


有機肥料の使い過ぎに気を付ける必要があります。



コガネムシ類によるさつまいも被害

土中の幼虫が塊根(かいこん)の表面を食害するため、サツマイモでは品質が著しく低下することになります。

一般的に1齢幼虫は土壌中の腐植、堆肥など有機物を食糧とし、2齢幼虫以降に塊根を摂食するようになる。


3齢幼虫は摂食量が増えるため被害も大きくなります。

被害を受けた食害痕の表面には土が付着しやすい。


早い時期に栽培する作物では、越冬後の幼虫による被害を受け、普通栽培では8月下旬以降に新しく産まれた幼虫による被害を受ける。


サツマイモを加害するコガネムシは、数種類が知られているが複数種が混ざり合って加害している場合が多い。


ほとんどが年一回の発生とされ、幼虫のまま土中で越冬する。


アカビロウドコガネを除く他の成虫は、サツマイモの葉をあまり摂食しない。

羽化した成虫は餌となる植物へ移動する。

餌となる植物で摂食、交尾を行い生殖機能を発達させた後にサツマイモの栽培地へ移動し、土中に潜って産卵する。

産卵後生まれ幼虫は、畦内の層に多く存在し、栽培地内に均一に見られない場合が多いとされる。


♣防除

越冬後の幼虫には、土壌くん蒸剤によるセンチュウ類との同時防除が有効とされている。


新しく生まれた幼虫には、植え付け前か植え付け時の殺虫剤処理による、予防の被害軽減効果が高いとされる。

ただし、薬剤処理を行った後の土壌混合が不十分な場合や効果の短い薬剤を選んだ場合には、薬剤効果が不十分となります。

また、薬剤処理時に土壌が乾燥している場合では薬剤効果が劣る。


サツマイモに加害するコガネムシの種類

ドウガネブイブイ、アオドウガネ、ヒメコガネ

アカビロウドコガネ、オオクロコガネ


◉ドウガネブイブイ

成虫、幼虫ともに重要な農業害虫として知られている。

幼虫の時期は地中の作物の根を食害し、成虫になると葉を食害する夜行性の害虫で、銅金色(青から緑に銅を混ぜたような色)をしていることからドウガネと呼ばれる。

ブイブイとは飛ぶときの音を表し、ぶんぶんがなまったものとされる。

体の色と羽音を合わせて「ドウガネブイブイ」と言う名前になったとされる。



     「ドウガネブイブイ」


幼虫は産卵から15日くらいが発生時期とされ、これが1齢幼虫で更に、14日経つと2齢幼虫の発生時期となる。

土中の有機物、腐葉土を食べる1齢幼虫はその後、草の根を食べて成長する2齢幼虫となる。


3齢の老齢幼虫になると食欲旺盛となり、行動範囲を広げ、サツマイモやサトイモ、落花生などの地中の作物を越冬する頃まで食害し続けます。


年一回の発生で成虫は6月上旬から9月下旬に発生する。

成虫は夜行性で19~20時頃を中心に飛来し、夜間は活発に飛行する。

雌成虫は交尾後地中に潜って産卵する。


防除剤はスミチオン乳剤、ダブルトリガー液剤など

幼虫発生初期に殺虫剤を散布する。








2023/09/09

さつまいもの害虫(1) No,653

ネコブセンチュウ

センチュウ類は、動物の体に寄生する回虫などと同じ 種類の生物です。

作物以外の植物に寄生するものにも多くの種類がいます。

体長は大きくても1㎜程度で、肉眼では見えません。

寄生する場所は種類によって異なりますが、寄生されると植物の成長が衰え、やがて枯死してしまいます。


      「ネコブセンチュウ」



★ヒトの体内に寄生する回虫と同じ種類の生物であるため、植物にもヒトと同じように寄生虫がつくことを覚えておく必要があります。


さつまいもの連作では、根にネコブセンチュウが発生しやすい。

ネコブセンチュウは土壌中に存在するセンチュウ類の一種で、一般的な土壌には数百から数千種類のセンチュウ類が存在しています。


その内、農作物に被害をもたらすのは主に、ネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウの仲間等の仲間に限られます。

さつまいも栽培で最も注意するのがサツマイモネコブセンチュウで、このセンチュウは北海道南部から沖縄まで広く分布し、特に温暖な気候を好みます。


ネコブセンチュウでは、栄養不足などの悪環境下で雌が性転換し、雄の比率が高まる。


サツマイモネコブセンチュウの寄生範囲は700種を超え、サツマイモ、ニンジン、キュウリ、トマト、ナスなどに加害する。


ネコブセンチュウ類は土壌中に卵があるため、一度発生した栽培地では、土壌中のセンチュウ密度を減らす対策として土壌消毒が効果的となります。

太陽熱による土壌消毒も高い効果がありますが、土壌が高温になりにくい時期や栽培地域では効果が望めないので、農薬による土壌消毒が主になります。

有効な農薬として、バスアミド微粒剤、土壌くん蒸剤のダブルストッパー、テロンなどがあり、どちらもかなり多くの作物に適しています。


また、土壌消毒後、播種前には土壌へ殺虫剤を混ぜ合わせると更に効果です。

有効な農薬を播種や定植前の作物ごとに、決められた時期に全面土壌に散布して混ぜ合わせます。

薬剤は栽培する作物に適用登録がなされているのかの確認が必要です。


ネコブセンチュウ類の対抗植物

作物の収穫後、次の作付けまでに対抗植物を植えることでネコブセンチュウ類の土壌中密度を下げ、被害を抑える事ができます。

栽培地の環境に適した対抗植物を選ぶことも大切です。

センチュウに効果を発揮する植物は

イネ科のギニアグラス、ソルゴー

マメ科のクロタラリア、コブトリソウ

キク科のマリーゴールド


      「ギニアグラス」

★ギニアグラス
暖地型牧草のギニアグラス(ナツカゼ)は、土壌中のネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ等の抑制効果の高いことが立証されている植物です。

また、残存肥料を吸収し、塩類濃度を下げる効果もあることから、野菜栽培地の連作障害回避植物として注目されている。


マメ科のサンヘンプ、クロタラリア、スペクタビリア


       「サンヘンプ」

★サンヘンプ
マメ科の熱帯アジアの植物で、一般的にはインドが発祥とされる。

麻の代用として紐などを作るため古くから栽培され
、木化繊維の供給源として利用されてきました。


道端に雑草のように生え、本州ではほとんど見かけることがない。


キク科のマリーゴールドなど


      「マリーゴールド」

★マリーゴールド
マリーゴールドの根からはネグサレセンチュウを殺す成分が出ています。

殺線虫物質の一部、糸状菌、細菌、昆虫等に対しても活性を有する。


ミナミネグサレセンチュウ

被害は成虫、幼虫が細根及び塊根に侵入し、加害する。

塊根(かいこん)とは、植物の根や幹に水分や栄養を蓄えるように進化したもの(貯蔵根、幹)

最初は淡褐色の小斑点になるが、次第に大きな褐色斑点となり、やがて根全体が褐変する。

関東以西ではミナミネグサレセンチュウによる加害が大きく、サツマイモやサトイモで被害が出る。

センチュウの多くは地温10~15℃で活動を始め、最適温度は20~30℃です。

最適条件下で1世代は30~40日程度とされ、暖地では年に3~4世代が繰り返されると考えられ、条件がよければ爆発的に増殖する。

更に、施設栽培やマルチ栽培のような加温条件下では世代交代も一層早くなります。


加温条件下では、初期密度が低い状態でも収穫終了時には高密度となり、被害も大きくなっています。


深さ10~30㎝の土層を中心に生息し、密度がかなり高くなるまで地上部には病状をあまり示さない。

気がついた時にはセンチュウが蔓延した状況であり、亀裂を伴う、奇形、収穫量の減少、品質の低下などすでに作物に影響を与えている。