緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2025/01/20

マツの害虫① No,750

 マツの害虫

カミキリムシの幼虫(テッポウムシ)が媒介する、マツノザイセンチュウによる被害

樹幹に穿孔した穴が見つかったら、テッポウムシが潜入した穴です。

穴の中の木くずや虫糞を取り除いて、注射器や油差し、スポイドなどで穴から薬剤が溢れるまで注入します。

その後、穴はパテやビニールテープ、土などで塞いでおきます。

テッポウムシの隠れた穴に注入する薬剤と濃度

DDVP乳剤(劇物)
スミチオン乳剤(普通)
エルサン乳剤(劇物)

注入する薬剤濃度は500倍〜1000倍液


マツノザイセンチュウ

マツノザイセンチュウは北米大陸に分布するセンチュウで、輸入丸太にくっついて日本に侵入したと言われています。

それまでは、マツノマダラカミキリムシが好んで産卵する衰弱したマツはわずかで、このカミキリムシの個体数も低いものでした。

ところが、カミキリムシがセンチュウを媒介するようになると、衰弱したマツの数も激増し、カミキリムシの好産卵条件が整って個体数も増え、マツに被害が集中したのです。

マツに急激な枯死を招く原因としては、センチュウによる木材細胞の破壊という説と、センチュウの感染で生じる毒素の仕業という2つの説があります。


マツの葉が突然赤褐色に変わり、枯死する被害が出たらマツノザイセンチュウの発生が考えられます。


この線虫は体長が0.6〜1㍉と小さく、急激に増殖して葉が変色したらすでに手遅れで、樹を切り倒して焼却処分するしかありません。

この線虫はカミキリムシがマツについた傷口から樹の中に侵入し、それにカミキリムシが羽化する時に、その体に侵入して移動します。

この密接な関連からカミキリムシの防除を前提として、各地で薬剤の薬剤の空中散布が行われてきましたが、効果があったとは言えない地域もあります。

環境の面からも、薬剤の空中散布には慎重な実施が望まれます。

中には、雨の日に地上散布を行ってる自治体もありました。

マツノザイセンチュウ専用の樹幹注入剤も市販されていますが、薬害が発生して樹が枯れたという報告もあり、使用するときは専門業者に依頼することが重要です。

薬剤だけに頼らない防除方法として、線虫に対して抵抗性を持つマツの子孫を、接ぎ木で増やすなどの研究が進められています。

マツノザイセンチュウ抵抗性のマツ

新潟県で開発されたアカマツの品種で、松くい虫に強いことで知られる新潟千年松

岩手県や宮城県と連携して開発されたアカマツの品種

新潟県で開発されたクロマツの品種


その他、秋田、新潟で連帯して新たな品種のマツが開発されています。









2025/01/18

バチルス菌の役割(有効菌) No,749

 バチルス菌

病原菌の殺菌(桿菌)

桿菌(かんきん)とは、棒状、円筒状の細菌

土壌の物理学的特性を整える。

バチルス菌は高温に強いため、耐熱性のような病原菌だが殺菌されていきます。

バチルス菌の働きにより、団粒構造が形成され、土がフカフカになります。

糸状菌(カビ菌など)を抑える働きがあり、作物の病害対策に効果があります。

また、環境を改善した土壌中の糸状有害微生物の繁殖を抑えます。

関連ブログ
根頭癌腫病についてNo,524









2025/01/15

菌液の作り方 No,748

 乳酸菌酵母液

液体の発酵肥料が菌液です。

米の研ぎ汁1.5㍑に白砂糖100gを混ぜ、ペットボトルにいれます。




ペットボトルのフタを閉め、発酵させるために一晩お風呂のお湯に入れておきます。



翌朝、キャップを緩めた時に炭酸ガスが「シュッ」と出れば出来上がりです。

日当たりが良い場所に置いておくと発酵が進みます。

容器が膨張してしまう事があるので定期的にフタを開けてガスを抜きます。

1〜2週間に一度、500〜1000倍に薄めて葉面散布します。

病気の発生を抑え、果実の味を良くする効果があります。









2025/01/13

レイシ(ライチ) No,747

 レイシ 

レイシはムクロジ科の果樹でその果実は「ライチ」と呼ばれる。

常緑小高木

中国の嶺南(れいなん=現在の広東省)地方原産で、原産地の中国で特に愛される果樹です。

紀元前2000年頃から栽培されていたと言われています。

中国では縁起の良い果物とされ、夫婦円満や子孫の誕生などを象徴します。

楊貴妃(中国唐代の皇妃)がとても好んだ果実だと伝わっています。

ライチは中国国内から広まり始め、東南アジアを経由して17世紀にはインドなどの地域に広まったとされる。

その後、20世紀にはアフリカやアメリカにも広まり、現在では中国や台湾、インドを主産地とし、世界の熱帯から亜熱帯地域で栽培されています。




細長い葉が互生し、5月に咲く花は淡緑色で前年枝の先端に小花が群がるように咲きます。


果実は球形または倒卵形で、直径2〜3㌢の小果は成熟すると赤くなりますが、緑色の品種もあり、グリーンライチと呼ばれ、甘味は従来の赤いライチより強いとされます。

グリーンライチは大粒で種が小さく、食べられる部分が多いのが特徴です。

果肉は多汁で甘く、芳香があり生食が主ですが、乾果にもされます。

倒卵形(とうらんけい)とは、卵を逆さまにしたような形のもの


栽培場所

耐寒性が弱いので、越冬には10℃以上必要です。

庭植えできる地域は鹿児島県南部などに限定されます。

鉢植えは赤玉土6、ピートモス2、川砂2の混合土に植え、春から秋は屋外の直射日光に当て、冬は日当たりの良いと暖かい場所に置いて管理します。

植え替えは4月頃、鉢に根が廻ったら順次大鉢に植え替えます。

鉢底の穴から根が出始めたら植え替えの目安


肥料

生育期は2ヶ月に1回与え、5月、7月、9月に玉肥を2〜3個ずつ置き肥します。

果肉が肥大する6〜7月は特に水を好むので、1日3〜4回程度水を与えます。


せん定

収穫後、混み枝を間引きせん定して樹幹内部までよく日が当たるようにします。

鉢植えは3月下旬頃、大きくなり過ぎた枝は植え替え時に切り詰めて小柄にします。









2025/01/10

マタタビ No,746

 マタタビ マタタビ科

木天蓼 日本、中国、朝鮮半島に分布

アイヌ語の「マタタムブ」が語源とする牧野富太郎植物学者節が最も有力とされる他、旅に病んだ人がマタタビの実を食べて元気になり、「また旅」を続けられたからという薬効説がある。

アイヌ語のマタタムブとはマタは冬、タムブは亀の甲と言う意味

日本の山野に自生しているツル性落葉植物で、よく分枝して絡みつくものがないとヤブ状に茂ることもあります。

雄花しか咲かない雄株と、果実のつく両性花の株がある。

両性花と雌花は五弁花を1個つけ、雄花は1〜3個つけるので花をよく見れば雄雌の識別ができます。

梅の花に似ていることから「ナツウメ」とも呼ばれます。

花が咲く頃に枝の上部の葉が白くなるのが特徴で、花が終わると緑色に戻る習性があります。


花は葉の陰に隠れるように下向きに咲き、直径2㌢ほどで良い香りがする。

花が咲く頃に葉が白からピンクに変わるものは、「ミヤママタタビ」と言う別種で、花も小さく猫も喜ばない。

果実は秋に黄色く熟し、果肉には独特の辛味と芳香があり、塩漬けや果実酒などに利用されます。


  「マタタビの果実」

マタタビの効能

漢方薬に利用される果実は、子房にマタタビアブラムシが産卵し、異常発達して虫コブ状に変形したものを熱湯に入れて殺虫し、日干しして粉末にしたものです。

漢方薬は冷え症、利尿、強心、神経痛、鎮痛剤などに利用されている。

猫が「マタタビ反応」を示すのは、マタタビに含まれる「マタタビラクトン」「アクチニジン」「β-フェニルエチルアルコール」という成分が猫の上顎(うわあご)にある器官を通ることで、酔っ払ったかのような状態にするからです。


植え付け場所

耐寒性が強く日陰でも丈夫に育つ、全国で庭植えができます。

やや湿り気のある土壌が適しています。

鉢植えは赤玉土5、川砂3、腐葉土2の混合土に植え、春と秋は屋外で日に当て、夏は風通しの良い場所を選んで置きます。

冬も水やりを注意すれば屋外で越冬できます。


肥料

2月頃に根の回りを掘って堆肥を100〜200g程度埋め込みます。

鉢植えは3月に玉肥を株回りに置き肥します。


せん定

庭植えは支柱仕立て、棚仕立てなどにしますが、発育が早く放置しておくと近くの木にツルを絡ませてしまうので、ツルの先端を切り詰めるようにします。

新梢も30㌢ぐらい切り詰め、花芽のつく短枝を発生させます。

鉢植えはあんどん仕立てが一般的に好まれています。

あんどんは鉢高の2.5〜3倍の高さに仕立て、あんどんの上部から果実が吊り下がるように育てるとよいでしょう。


病虫害

病虫害はほとんどありませんが、猫に荒らされて枯死することが少なくありません。









2025/01/08

スグリ(酸塊) No,745

 スグリ 

スグリ科スグリ属 落葉低木

ヨーロッパが原産で、北半球の温帯地域に広く生息する落葉性の小高木から大木です。

日本では青森県が有数の生産地

以前はユキノシタ科のスグリ属に分類されていた24属350種以上だったが、「クロンキスト体系分類」によってユキノシタ科からスグリ科が分類され、スグリ属の1属なりスグリ科スグリ属となった。

1990年(平成2年)の出版書では、ユキノシタ科と表記されているものもある。


    「スグリ」


クロンキスト体系とは

アメリカのアーサー·クロンキスト博士が1980年代に提唱した被子植物の分類体系で、ストロビロイド説に基づいている。

ストロビロイド節とは、モクレン科などの花のように花被や雄しべ、雌しべなどの構造が螺旋状(らせんじょう)に並ぶ花が最も原始的であると言う考え方に基づいています。

ストロビロイドとは、マツ科などの花、松ぼっくりのような形のものと言う意味です。

クロンキスト体系は、あまり日本では普及しなかった分類体系でしたが、海外では「新エングラー体系」に代わって広く採用されていました。

しかし、1990年代にAPG体系が登場すると、クロンキスト体系は旧分類となった。

APG体系は、20世紀来に直接生物のDNAを取り出す手段が開発され、物理的な証拠に基づいた分類体系として1998年に発表され、その後改訂が繰り返され、2017年に第4版が発表されています。

APG体系は、被子植物系統研究グループが構築した分類体系である。

新エングラー体系は、花の形態を基に植物を分類する体系で、科の特徴が解りやすく覚えやすいのが特徴です。


スグリの種類

セイヨウスグリ(グーズベリー)

フサスグリ(アカスグリ、シロスグリ、レッドカラント、グロゼイユ)

クロスグリ(ブラックカラント、カシス)などがある。

古代ローマ時代から薬用として用いられており、果実酒やリキュール、ジャムの製造(原料)にも利用されています。


特徴

枝にはトゲがありますが、キイチゴほど鋭くはありません。

マイナス30℃に耐えるほど寒いに強いが、夏の高温や直射日光には弱い樹木です。


植え付け場所

水はけがよく西日の当たらない明るい日陰で、風通しの良い場所が適しています。

庭植えは、生育が良ければ2年で開花結実し、樹高1メートル以内で100〜120果、鉢植えは5〜6号鉢で8〜10果程度の収穫が望めます。


鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、夏は強い直射日光を避けた通風の良い場所に置きます。

庭植えは、寒冷紗(かんれいしゃ)などを樹上に張って遮光する。


せん定

庭植えは株立あんどん仕立てにし、新梢がよく出ますが混み合わないように間引きせん定します。

常に枝数を10本程にします。

2年目の生育期にあんどんを作り、枝を誘引して広げます。

2年枝に開花結実しますが、2〜3年経つと枝先しか花芽が着かなくなるので、根元から切り取って新しい枝に更新していきます。

鉢植えはあんどん仕立てにしますが、枝が垂れ下がらないように誘引し、結実し終わった枝や弱い枝は、収穫後に間引き剪定を行います。

2年目に鉢高と同じくらいの高さであんどんを作り、落葉期に混み合った枝や伸びの悪い枝を切り取ります。


肥料

3月に配合肥料を一握り程度根回りにばらまき、浅くすき込んでおきます。

鉢植えは3月に玉肥を3〜4個株の周囲に置き肥します。


スグリの効能

ビタミンCが豊富で、風邪の予防や疲労回復、肌荒れなどに効果が期待できます。

疲れ目改善効果のあるカシスポリフェノールやアントシアニンが含まれ、美肌に効果的なビタミンCはレモンの6倍

疲労回復や美容にいいクエン酸、繊維質のペクチンやカリウム、鉄分、カリウムなども他の果実に比べ豊富に含まれている。

黒スグリとカシスは似ているが別々の果実です。

黒スグリは甘酸っぱい味わいで、主にジャムやデザートに使われ、カシスは酸味が強くリキュールやカクテルの材料として人気がある。