緑のお医者の徒然植物記

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2019/02/10

土壌の惑星=地球 No,125

土壌の惑星


地球はこれまで知られている限りでは、太陽系の中で唯一生物の住む惑星である。


その生物は、もとは水のある範囲にいましたが、光合成を営む生物が出現し、酸素が他とかけ離れて大気の組成分となるに及んで、成層圏(大気の上層で気温がだいたい一定した部分、地上10キロ前後から始まる。⇎対流圏)にできたオゾン層は地表へ降り注ぐ強い紫外線を遮り、陸上での生物の生活を可能にした。


最初に上陸したのは、プシロフィトンと呼ばれる植物の先祖で、それはおよそ四億年前のシルリア紀のことであったとされる。


生物が進出する前にも、陸地を形成していた岩石は、原始大気の中に含まれていた。

強い酸性物質を溶かし込んだ雨に打たれ、風に吹かれて風化し、粘土や砂のような細粒の物質レゴリス(regolith)とか砕屑(clastic materials)といわれるものを、地表に形成していたと思われる。

しかし、ここには生命はなく、有機物も含まれていなかった。

陸地に生物が出現して初めて、レゴリスは土壌に転化する契機を得たのである。


レゴリスから、土壌への変化の過程をこうではないかと考えさせるのは、火山噴火物の上に土壌が形づくられていく様子であろう。

伊豆大島で、過去いろいろな年代に噴き出した溶岩の上で、土壌が形成され、植生が発達していく過程を噴出年次に従って追跡した研究(1961年)がある。

それによると、溶岩の上に風化した砂質の砕屑物がたまって砂漠的な景観を作り出すまでに、ほぼ200年かかっているが、一度そこにイタドリやスゲのような植物が取り付くと、枯れた植物遺体が砂に入り、有機物が溜まり始め、それを利用する動物や微生物が住み着き、少しずつ生物の住処として、より好適な倍地に作り変えていく。

その結果、次の段階では、新しい倍地によりよく適応した生物種が優先的に占領するようになる。

そして、1000年以上もの時間の中で、植物の遷移(せんい=他所へ移る)に伴って、レゴリスはより深くまで土壌に変わり、その中に有機物や養分を蓄えることによって、伊豆大島の気候に適応した常緑広葉樹(ツバキ、シイ、タブなど)主体の森林を育てるまでになるのである。

レゴリスが土壌に転化するためには、生物の働きが不可欠なのである。

生物はいったい何をするのだろうか?

まずは有機物を与えて、生物に必須であるにも関わらず、一般に岩石の風化物中には、乏しい窒素(生物が大気中から固定する)と、植物に吸収可能なリン(生物が体内に濃縮する)を倍地中にふやす。

また、有機物自体の存在によって起こる物理的、科学的の生活が活発になり、これが更に岩石の風化を促進して、土壌はますます深くまで発達してゆくことになる。

生物が地球にしか生息しないと云うのであれば、生物の存在によって条件付けられる土壌も、地球に個有の資源であるということになる。

地球が水の惑星であるという言い方を借りれば、地球は土壌の惑星でもあると言えるだろう。