緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/04/04

桜の樹に付く代表的な害虫 No.186

桜の樹に加害する害虫

◉アメリカシロヒトリ(fall  webworm)
(麟翅目·りんしもく)ヒトリガ科

葉上に灰白色の吐糸で巣を作り、中に毛虫が群生して葉を食う。

被害は6月から8月にみられ、ときに大発生してきわめて大きな被害となる。

通常、年2回の発生であるが、近年3回発生する系統が発生し、近畿地方以西の地域でも発生が続いている。

樹皮の割れ目や根際でサナギで越冬し、第1回成虫は4月下旬から5月に発生して葉上に700~800粒の卵の塊を産み付けます。

幼虫は卵塊ごとにまとまった巣を作り群生するので、発生の多いときには枝の先々に多数の巣が見られる様になり、一目で本種の被害とわかる。

          (アメリカシロヒトリ幼虫)

第2回成虫は7月中下旬、この幼虫は8月中下旬に発生する。

2世代のものは9月に蛹化(ようか)して越冬に入るが、3回発生のものでは更に9月~10月に幼虫が現れて食害を続け、11月に越冬に入る。

卵は葉裏に産みつけられ成虫の体毛で覆われている。

老熟幼虫は約30㎜、活発に行動し巣付近の葉を食いつくすと移動して新しい枝に移り、食害を続ける。

※1945年頃東京都と神奈川県で発見されたが、太平洋戦争直後の混乱にまぎれてアメリカ軍の貨物について北アメリカから侵入したと推定された。

たちまち首都圏の庭園樹、街路樹、公園樹の大害虫になった。

その後各地に分布を拡大して定着したが、西日本では散発的な発生が確認されたものの定着せず、関東から中部地方にかけての様な発生を見る事はありませんでした。

ところが1980年頃から定着するものが見られる様になり、これが3回発生する系統である。

          (アメリカシロヒトリ成虫)

侵入後30年を経て、新たに3回発生する系統が生まれ、これが関東以西の各地に定着するようになった。

きわめて雑食性の害虫で、100種類以上の加害植物が記録されている。

★被害の甚大なものとして
サクラ、プラタナス、ヤナギ、トウカエデなどがあり、ミズキ、クワ、キリ、ハンノキ、ニセアカシア、フジ、シンジュ、トネリユ、シラカンバ、ケヤキ、ナシ、リンゴなどの被害も大きい。

◆防除法として
被害の進展が速いので、樹上の巣を見つけたら早急に切除して処分する。

薬剤防除では、スミチオン、ディプテレックス、DDVP(劇物)、オルトラン、カルホスなどの効果が高いが、高い木では防除が困難で特殊な防除器具を必要とする。

また、都市部での化学殺虫剤の散布は問題が起きやすいので、微生物殺虫剤として開発されたBT剤(バチルス·チューリンギエンシスを製剤化したもの、ダイポール、トアローCT、チュウリサイドなどがある)を利用するとよい。

害虫量が多い時は火をつけた棒で焼くか、薬剤散布。

幼虫は樹皮の隙間などで、サナギ状態で越冬するので、秋に樹の幹にムシロを巻いておき、冬場にこれを焼却(2月頃)


◉オビカレハ(tent  caterpillar)
麟翅目カレハガ科 別名テンマクケムシ
樹幹や枝の分岐部に巣網が張られ、内部に幼虫が群生してすむ。

昼間は巣の中に隠れていて夜間になると集団で外に出て葉や新芽を食害する。

幼虫は老熟すると昼夜の区別なく樹上にいて食害を続け、大きな被害となる。
発生は春から初夏

※天敵はクモ類
年1回の発生、小枝に産みつけられたリング状の卵塊で越冬し、3月下旬頃ふ化して枝の分岐部に天幕状の巣網を張る。



      (オビカレハの卵) 

灰白色楕円形の卵が200~300粒くらい集まって小枝を巻いて産卵する。


幼虫は巣内部で休息するが、付近の葉を食いつくすと巣網を移動させて新たな葉を食害、成長につれて巣網も大きくなるのでよく目立つ。

老熟幼虫は巣から分散し、付近の葉上にマユを作って蛹化(ようか)、成虫は暖地では6月、寒地では7月~8月に発生する。



※花が咲いている頃に、枝先付近の花柄が密集した部分に、巣を作っているので、よく観察することで早く駆除できる。


      (オビカレハ幼虫)

成虫は黄褐色で夜間に活動して灯火にもよく飛来する。


        (オビカレハ成虫)

バラ科植物をはじめ、ヤナギ、ニレ、クヌギなどかなり雑食性である。被害はサクラ、ウメに最も多く見られる。

★防除法として
樹上の巣網を発見して除去する。
薬剤散布では幼虫の発生期にスミチオン、ディプテレックス、カルホス、オルトランなどが有効であるが、サクラはサトザクラなど品種によって薬害が発生しやすくなるので注意が必要である。

冬期落葉後は樹枝の卵塊がよく目立つので、剪定の時または見つけ次第処分しておく。


◉モンクロシャチホコ(cherry   caterpillar)
麟翅目シャチホコガ科

このケムシは9月頃に発生し、葉裏に赤褐色(若齢期)で光沢ある幼虫が群生して葉を食害する。

その後葉上に紫黒色(しこくしょく、老熟幼虫)に変わって黄白色の長毛がはえます。

葉を暴食し、大きな被害を見るようになる。

敵が近づくと、頭と尾を上げて反らす習性があり、この姿からフナガタケムシとかシリアゲムシと呼ばれ、この格好からすぐに判別出来ます。

(モンクロシャチホコ老熟幼虫)

老熟幼虫は体長50㎜内外、樹を降りて浅い土中でマユを作って蛹化し越冬に入る。


幼虫の食害によって全葉が食いつくされることも珍しくありません。

こうした場合には花芽も食害されて翌年の花数を減らすほか、葉が無くなって秋の時返り咲きの原因となる。

サクラ、ウメの被害が特に大きい。

◆防除法として
発生が多い時は、薬剤を散布します。

薬剤はスミチオン、ディプテレックス、MEP、エルサンなどが適しています。

年に1回、7月頃に成虫が発生し、その次の世代が被害を起こします。

そこで7月に発生する成虫の量が多い時は、予防剤を散布します。

成虫の量は、灯火に集まる量で判断します。

◉ゴマダラカミキリムシ(whitespotted  longicorn beetle)
甲虫目(こうちゅうもく)カミキリムシ科

樹幹内に幼虫(別名テッポウムシ)が侵入し、樹皮下、材部を食害し、枯死をまねく。

被害樹からは細かいおが屑状の虫ふんが排出され、地ぎわ部の上に積もっている。


           (ゴマダラカミキリムシ成虫)


成虫は体長25㎜~35㎜
発生は年1回または2年に1回、寄主植物によって成長に遅速があるようである。

5月下旬頃から成虫が現れ、カエデ、モミジ、ユキヤナギ、バラ、ミカン類などの被害も緑枝をかじって剥皮し、このため枝枯れが続出してこの被害も軽視できない。

成虫発生の最盛期は7月中旬であるが、発生は9月頃まで見られ、遅い場合では10月に成虫を見ることがあるから、かなりダラついた発生をしているようだ。

成虫は7月中下旬頃、樹皮下に産卵する。

産卵する部位としては、地ぎわ部が多く、幼虫も地ぎわ部から根にかけて食害する。

老熟幼虫は体長約60㎜、幼虫で越冬し、翌春蛹化して続いて成虫が羽化する。

ミカン類の重要害虫として知られるが、かなりの雑食性で庭園樹での被害も大きい。

◆防除法として
成虫は見つけ次第捕殺します。

また、成虫が産卵するときに幹に傷をつけるので、傷跡を探して、その部分を切り出すか、たたいて圧殺する。

食入口(虫ふん排出孔)を見つけた場合は、穴にスミチオンなどを注入して穴をふさぎます。

しかし、根部まで入った幼虫は発見しにくいので手遅れになることが多い。


4月の発生時期に、サッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。

成虫の発生最盛期には、エルサン、パプチオン、スプラサイドなどを散布すればよいが、産卵防止のため、樹幹にサッチューコートSやトラサイドなど樹幹塗布剤を地ぎわ部から20~30㎝くらいの高さまで塗布しておく。






2020/04/02

桜の病気 バラ科 No.185

桜の病気

サクラの根は浅く広く張る(残根性·ざっこんせい)ため、人や車による踏圧(とうあつ)で根詰まりをおこしやすい。

日照量の不足や病害虫など、複数の原因がありますが、特に根詰まりする事で花つきが悪くなります。

対処法として、まず根元の土を丁寧に掘り起こして、堆肥をすき込み土壌を改良します。

そして根が踏まれないように囲いを作ります。

◉成木になってからの植え付けは困難です。
3月に移植は可能  1月~2月に植え替え、植え付け


サクラの病気

◉天狗巣病(てんぐすびょう)
薬剤散布よりも、異常な枝を切り取ってしまい、切り口にはユゴウ剤などを塗布して切り口を保護します。

切り口は、雨水がたまらないように垂直にする。

病気の発生する時期は5月から12月

天狗巣病には原因不明の感染しない種類もありますが、ほとんどがカビを病原として感染します。

病菌は患部の枝の中で冬を越し、花が咲いた後に葉の裏側に胞子をつけ、空気に運ばれて感染します。

病気にかかった枝は年々大きくなり、花芽を形成しません。
葉も小さくなります。

病気にかかった枝は次第に弱り、枯れたり、折れたりします。
被害の激しい樹木では樹勢が著しく衰えてしまいます。


                             「天狗巣病」


★天狗巣病は病菌にいろいろな種類があり、防除の方法も異なりますがどの種類も薬での治療は困難です。

しかしこの菌は感染力が弱いので、病気にかかった枝を切り取って焼却処分することでほとんど治すことができます。


また、1月から2月頃にダイセンや銅水和剤(ボルドー)、石灰硫黄合剤などを散布

3月上旬頃、石灰硫黄合剤の10倍液を木全体に散布することにより、越冬菌の駆除が望めます。

✿タフリナ病

タフリナ属の菌は高等植物の寄生菌で、寄生した植物の枝や葉に、天狗巣病など様々な症状を起こす原因となる。

天狗巣病はカビの一種のタフリナ菌が原因で起こる伝染病です。

ソメイヨシノはこの病気にとても罹りやすく、発病した枝を放置しておくと花が咲かなくなり、やがて樹全体に広がり枯れてしまいます。

多くのソメイヨシノはこの病気によって寿命が短いという原因になっている。


◆サクラコウヤク病
枝、幹に発生し、黒褐色から灰色の膏薬状のカビがびっしり生えます。

特に幹と枝の別れるところによく生えます。

病菌とカイガラムシが共存し、病菌はカイガラムシの排泄物を栄養として繁殖します。
同時に菌糸でカイガラムシを覆います。 

膏薬状のカビは古くなると剥がれ落ちます。

発生時期は4月から10月に多発し、一年を通して発生します。


                          「コウヤク病」


コウヤク病そのものは、石灰硫黄合剤を塗りつけて治療します。

カイガラムシを駆除することが重要です。
1月から2月に石灰硫黄合剤やマシン油乳剤(商品名.機械油乳剤)を月に2回から3回、枝や幹を中心に散布します。

カイガラムシの発生時期てある5月からは、スミチオンやオルトランなどを月に2回から3回、枝や幹を中心に散布します。

散布する液の倍率は1000倍液とする。

日当たりや風通しが悪いと発生しやすくなるので、剪定などをして枝の量を調節し、日当たりや風通しをよくする事が予防になります。

枝の切り口にには塗布剤を忘れずに塗りましょう。


                                        「吉野桜」


◉胴枯れ病
樹木の幹や枝梢の樹皮を侵す病気です。
病原体はカビです。

病菌は害虫による傷口、剪定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

年間を通して発生しますが特に夏に多く発生(6月から10月)

樹が若いうちは病気は少なく、樹齢が進んだ樹木ほど病気にかかりやすくなる。

胴枯れ病に対しての、薬剤を使った直接的な治療法は見つかっていない。

病斑部をできるだけ深く削り取り、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたら、すぐに駆除する。

昆虫や小鳥などにも注意する。
また、剪定のし過ぎなどによって幹を傷つけないように注意。

傷口にはトップジンMや石灰硫黄合剤を塗る。

乾いたら、墨汁やツナギロウなどを塗って予防する。

寒害や日焼けの幹の傷などに注意して傷口を手入れする。

繁殖器官で作られた胞子が、風や雨、虫の体などに付着して運ばれて感染する。

樹木の手入れに使うノコギリの歯から感染することもある。

◉根頭がんしゅ病
根に発生し、苗木や若い樹の根や根冠に小さなコブが無数に発生する。

コブは次第に大きくなり、根冠や太い根の側面では半球形、細い根では球形のがんしゅになります。


                   「根頭がんしゅ病」


コブは暗黒色で、樹はコブを作るのに栄養を取られ、またコブによって樹液の流れが妨げられるので、被害が大きい樹木は次第に樹勢が衰えてしまう。最悪枯死する。

病気にかかった株は引き抜いて焼却処分する。

植え替えるときは、コブを削り取り、そのあとにアグリマイシン、アグレプト、ヒトマイシンなどを塗ると多少の効果は望めます。

有機質を主体にした肥料を与えて、樹木を丈夫に育てるようにする。

土を入れ替えるか、NCS剤で土壌消毒
植物を植える前に、バクテローズに浸してから植えると効果がある。

この病気の病原体は、挿し木や接ぎ木などの切り口から侵入します。


★土壌消毒剤(主な商品名)

普通毒物=※アースサイド 普通毒物=※タチガレン
劇物=※ドジョウピクリン 劇物=※ガスタード

◉コブ病
6月から8月、日当たりの悪いところに多く発生する。

枝に発生し、はじめは若い枝に小さなふくらみを生じ、枝が大きくなるにつれてコブも大きくなります。

コブは縦方向の亀裂を生じ樹脂を出します。

コブから先の枝は枯れて死んでしまいます。

また、栄養が行き渡らないので非常に弱くなり、風などで折れてしまいます。

被害の大きい樹木は、樹勢が衰え、樹木自体が枯れてしまう事もあります。

病菌の刺激により、細胞が異常に増殖するためコブができる。

この病気は、薬剤による防除は余り効きません。

コブの部分を削り取るだけでは再び発病する事が多いので
できるだけコブのできた枝は切り取って焼却処分する。

切り取ったあとはトップジンM、石灰硫黄合剤などを塗り乾いたあとで、墨汁などを塗り予防する。

日当たりをなるべくよくするため、剪定などをする。

できるだけコブのできた枝は取り除くこと。


◆ナラタケ病 カワラタケ病

(材質腐朽病害、樹幹腐朽(ふきゅう)
ナラタケ(食用になるキノコ)に侵される病気樹勢が弱まり葉は変形変色し、樹木全体の成育が悪くなる。

発生は一年を通して起こります。

病原体はカビの一種であるナラタケ菌病菌は地際部や根から侵入し根全体を腐らせます。

特徴的なのは、根元にナラタケが群生することです。


                             「ナラタケ病」

この病気は、病気であることがわかってからでは、治療は困難です。

病気が発生してからの薬剤などの治療は困難ですので枯れてしまった株は、できるだけ細かい根まで切り取って焼却処分しましょう。

◆回復が望める樹木の場合
病気にかかった土壌は消毒して予防し、十分に肥料を与えて樹勢を強く保つようにする。

樹勢が弱まったらベンレートやトップジンMを根元に散布するのも効果的です。

◉紫紋羽病(むらさきもんぱびょう)
葉の色や大きさに異常がみられ、枝の成育も悪くなる。

発生時期は4月から10月で、春と秋に症状が酷くなります。

病原体はカビです。

病原体は地際部の付近の土の上や地表に近い土の中に、菌核(菌糸のかたまり)を作り地際付近の茎に付着して発病する!

やがて樹皮の表面に紫褐色の菌の束を張り巡らします。

この病菌は色々な植物に寄生する事が出来るので、異種の植物の相互感染をよく起こします。

通気性と保水性に優れた肥沃な土地によく繁殖します。


病気の株は引き抜いて焼却処分にしましょう。

病気が発生したら土を入れ替え、土壌消毒しましょう。

株を植え替える前に、コブトール、コブナックスなどを土に混ぜておくと効果的です。

尚、被害の出た土壌にイネ科の植物を何年か栽培すると病菌は自然消滅します。









2020/03/31

サクラ  バラ科 No.184

さくら(落葉樹)

◉桜は日本の代表的花木です。

一般に大木性で、樹高が20㍍にもなるものから、しだれ性のものなど多くの品種がある。

高木になる事から、植え付けは広い場所を確保する必要があり狭い庭には向きません。

狭い庭には、小形の種類を選んで植えましょう。

サクラ切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿の言葉通りやたらに枝を切るとよくありません。

さくらは材質が柔らかく、傷口が塞がるまでの期間が長いため、その間に腐ってしまう事から必要以上に切らない事とされています。

枝の整理で切った場合は、切り口に腐食防止のため塗布剤を塗り保護する。

枝は基本的に枝元で切る。

枝の途中で切ると腐れやすくなる。

★桜の品種系
〇カンヒザクラ
サクラの花便りの一番がカンヒザクラ(別名ヒカンザクラ)です。

カンヒザクラ群のサクラは、中国からヒマラヤにかけて4種類が分布している。

オオカンザクラ カワヅザクラ カンザクラ リュウキュウカンヒザクラ

日本には野生種はないが、東京以南の暖かい地方でカンヒザクラが栽培されている。



この仲間のサクラは花の色がふつう濃い紅紫色です。

沖縄の石垣島や、久米島の一部に生えているものは、自生という説と自生ではなく台湾または、中国から導入されたものが野生化したという説があります。

沖縄では、各地に植えられており、1月下旬には満開になります。野生化したものも多く自生している。

◆エドヒガン系
エドヒガン系のソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラの雑種と考えられている。

江戸時代末期に江戸染井村(現在の東京都豊島区)で吉野桜の名前で売り出さた。

その後、1900年(明治33年)に出版された、雑誌の論文で染井吉野と言う和名が初めてつけられました。

江戸時代、植木屋が多い事が知られ、今や桜の代名詞となった染井吉野の発祥の地で、石碑がある。

★日本に自生するエドヒガン群の野生種は、エドヒガンだけだがソメイヨシノをはじめ、栽培品種の数は多い。

寿命の長いサクラで、天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。

春の彼岸の頃に咲き、東京に多く植えられていた事からエドヒガンの名がついた。


同じくエドヒガン系のシダレザクラは、別名イトザクラと言われ、しだれ性変種である。


                 (シダレザクラ) 

枝がしだれる原因について、これまでは枝の上側と下側の生長速度の違いによって起こるとされてきたが、研究によって枝や葉の生長速度がしだれない種類より速いために、自重によって枝が垂れ下がり、その後、木質化が起こりしだれが固定されると言う事がわかってきました。

花弁は、変異が多く個体によって形や色、大きさなどがかなり異なります。


★ヤマザクラ系
ヤマザクラはソメイヨシノより開花が遅い。

古くはサクラと言うとヤマザクラを指していた。

吉野のサクラもヤマザクラで、寿命が長く巨木も多く秋の紅葉も美しい。


                                 (吉野桜)


紅葉の鮮やかさは、昼夜の温度差が大きく影響し、自生地とかけ離れた、標高のやや高い所に植えられたものは、通常より美しく色づく。

材は赤褐色でいい香りがし、古くは浮世絵の版木(はんぎ)に使われた。

◉オオシマザクラ系
オオシマザクラは、房総半島にかけて分布し、伊豆諸島以外のものは、かつて生長が早い事から薪炭材に栽培されていたものが、野生化したものという説がある。

伊豆諸島の大島などに多くある事からオオシマザクラと言われる。

サクラの仲間では、花は大きい方で他のサクラに比べて潮風や大気汚染に強い。

葉は塩漬けにして桜餅を包むのに使われる。

伊豆大島の桜の株は、国の特別天然記念物になっている。

◉セイヨウミザクラ
セイヨウミザクラとは、いわゆる🍒サクランボの事で、ヨーロッパ東部では野生状態で生えている。

日本には明治時代初期に渡来し、山形、福島、長野、山梨県などで栽培されている。

佐藤錦はナポレオンと黄玉の交雑(品種改良の手段として行う交配)によって偶然にできた実生品である。

◆エゾノウワミズザクラ
日本では北海道にだけ自生するが、アジアからヨーロッパにかけて広く分布する。

エゾ(蝦夷)とは、古代、北海道、東北から北関東地方にかけて住んでいた人々(蝦夷、えみし)北海道の古い呼び名である。

★ウワミズザクラ
別名ハハカは、染料などに利用されるが、新潟ではつぼみを塩漬けにしものを杏仁香(あんにんご)と呼んで食用にしている。

山梨県の郡内地方では、ミヤマザクラ別名シロザクラの樹皮を郡内織の染料として利用し、材は重く硬いことから家具、器具、彫刻、運動具などに用いられている。

ミヤマザクラ群のサクラは葉がすっかり展開してから開花する。

ミヤマザクラ群の分布の中心は、中国南西部で雲南省から四川省にかけて、地域に5種類ほど知られている。

日本に自生するのは、ミヤマザクラの一種だけである。

群馬県鬼石町(おにし)の桜山公園に植えられているフユザクラ別名コバザクラは、「山波(さんば)川の冬桜」として国の天然記念物に指定されている。







2020/02/17

桃 No.183

桃🍑


バラ科サクラ属の落葉樹
同属のウメやサクラと並んで日本の春を代表する花木の一つですが、原産地は中国北部です。

日本に渡来したのは非常に古く、弥生時代の遺跡からモモの種子が発掘されています。

名前の由来には諸説ありますが、原生種の赤い実を例えた「燃え実」が転訛したたいう説が有力です。

◉3月から4月にかけて、淡紅色、白色、紅色の5弁の花を咲かせます。

葉の展開前に開花し、花は直径2.5~3.5で、芳香がある。
花柄はほとんど無い。



ウメの花によく似ていますが、ウメは節に一つだけ花芽がつき葉芽がないのに対し、モモは節の中央に葉芽がつき、その両脇に2つの花芽がつきます。

また、幹にはサクラのような横線が入ります。

一般に、関東地方以西では2月~4月にかけてウメ、モモ、サクラの順に花が咲き、東北地方では4月中旬頃に3種がほぼ同時に開花します。

北海道ではもっと遅れて、サクラ、モモ、ウメの順に開花するようです。

★モモは桃の節句の花として知られますが、これは旧暦3月の最初の巳の日にモモの枝で厄払いをする5節句のひとつ「上巳」(じょうし、じょうみ)と、女子が人形で遊ぶ「ひいな遊び」の風習が室町時代頃に融合したものと言われています。


古来、桃には邪気を払う霊気あると信じられ、イザナギノミコトがモモで雷神を追い払う古事記の逸話や桃太郎の鬼退治伝説もこれに由来しています。

また、多産、繁栄を表す女性のシンボルとも考えられていたようです。

尚、新暦3月にモモはまだ開花していないため、現代のひな祭りで使われるのは温室で促成栽培したものです。

◆観賞用、食用として本格的な栽培、品種改良が始まったのは明治時代に入ってからです。

食用は岡山県など、各地で風土にあった品種が多数開発された他、園芸種も八重咲きのものや、ピンク、紅、白など多彩な花色のもの、鉢植えに向くものや枝垂れ性のものなど、多くの品種が作られています。

園芸用語では、食用のモモに対し、特に観賞用に栽培する品種をハナモモと呼んで区別しています。

◉生育管理

日当たり、水はけの良い腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

日陰ではほとんど育ちません。

耐寒性は強く、ほぼ全国で庭植えが可能です。

乾燥には比較的つよく、逆に過湿に弱い傾向があります。

植え付けには大きめに植え穴をとり、堆肥、腐葉土を十分にすき込み、やや高植えします。

3月~4月、10月~11月が植え付けの適期です。

移植にはあまり強くないので、植え替えは慎重に行うようにします。

生長が速く、苗木を植え付けて2年~3年で開花、結実します。

ただし、寿命は短く20年~25年で老木となり衰えます。

◉肥料

冬期に元肥として、有機質を主体にした堆肥にけい糞、油粕、骨粉を混ぜ、少量の化成肥料を加え、根元まわりに溝を掘り埋め込みます。

花後にお礼肥を与え、秋口に追肥とした、リン酸カリ分の多い化成肥料を成木で500㌘~1㎏ばら蒔きます。

早生種では、少し早めに5月中旬頃に行い、また晩年種では、6月~7月初旬が作業時期です。

同じ種類の肥料を与えるよりも、有機肥料と化成肥料を交互に与えるようにすると、花つきがよくなるようです。


◆病害虫

代表的な病気は縮葉病、黒星病や、果実に出る灰星病などがあります。

縮葉病
新葉に発生し、病気にかかった葉は縮れてウェーブをかけたようになり、葉の色も悪くなるので、葉をよく観察し発見します。

灰星病
果実が大きくなり、収穫が間もなくという時期に発生し、表皮が変色し果実が腐ってきます。

もちろん、果実は食べられなくなります。

★害虫は特にコスカシバ、カイガラムシ、アブラムシ、モモシンクイガ、モモゴマダラノメイガなど発生しやすい。

全体の防除として、花後に殺虫剤や殺菌剤を3~4週間おきに2~3回、さらに冬期に石灰硫黄合剤(冬期にしか使ってはいけない薬剤)を2~3回散布すると効果的です。

★剪定

樹勢が強く、徒長枝がよく発生します。

込み合ったふところ枝などの不要枝やひこばえと共に早めに切り取るようにします。

剪定の適期は、落葉期の1月~2月か花後にすぐです。

夏期も伸びすぎた枝は随時切るようにします。

ただし、老木になるのが早いので、年と共に強い剪定は控えめにしていきます。

※モモの殖やし方
実生、接ぎ木で殖やします。

実生は夏に取りまきにするか、低温湿砂で貯蔵し、翌春に赤玉土、川砂などの用土にまきます。

種子は完熟した実が腐りかける頃によく水洗いして取り出します。

接ぎ木は、充実した前年生枝をつぎ穂として春に2~3年台木に切り接ぎするか、新梢を夏に芽つぎして殖やします。

参考ブログNo.157
桃の幼果が落果するのは?







苔の風景 No.182


 昨年の台風15号🍃🌀☔により、何処からか我が家に飛んできたマキノキの原木を利用して制作。



キャラボク(イチイの変種)沈丁花、万両を寄生させ苔を這わせました。

今後どのように育ち、風景が変化していくのか楽しみです。







2019/12/23

セイヨウヒイラギ No.181

セイヨウヒイラギ

セイヨウヒイラギは園芸用に栽培される、モチノキ科モチノキ属の常緑樹

別名 セイヨウヒイラギモチ

ヨーロッパ西部、南部 アフリカ北西部、アジア南西部の原産


            「セイヨウヒイラギ」

若い枝や下の枝では、葉の縁が数ヵ所鋭く尖るが古い枝や上の枝では刺の数が少なく葉先が尖る。

縁はしばしば全縁になる。

モクセイ科のヒイラギは実が黒紫色に熟し、古株になると全縁になる全く別の植物である。

セイヨウヒイラギの果実は晩秋に熟すが、非常に苦いので冬の間も鳥に食べられることは少ない。

クリスマスの装飾の定番として使われる。

英語名からホーリー(Holly)とも呼ばれるが、(Holly)はモチノキ属の総称としても使われるので、区別するために(European holly  English holly)ともいう。

ドルイド(ドゥルイド)
ドルイド(Druid)は、ケルト人社会における祭司のこと。

日本語ではドゥルイドと表記する
女性形はドルイダス(Druidas)

ケルト人
中央アジアの民族のひとつ。

中央アジアの草原から馬と戦車、馬車を持ってヨーロッパに渡来した、インド、ヨーロッパ語族ケルト語派の言語を用いていた民族。

古代ローマでは、サトゥルヌスので、木とされサートゥルナーリア祭(農神祭)で知り合いへの贈り物と一緒にセイヨウヒイラギの枝を添えて渡していたものを、その直後に当たる12月25日の冬至祭でキリスト教徒が真似たため、後にクリスマスにつきものの装飾となっていったと云われている。



  (セイヨウヒイラギ斑入り)


キリスト教では、キリストの足元から初めて生えた植物とされている。

トゲトゲの葉や赤い実はキリストの流した、血と苦悩を表すとされている。

また、セイヨウヒイラギは魔力があると信じられていて、キリスト教にもその事が取り入れられ、同じように魔力を持つと信じられていてた。

アイビーとともにクリスマスの飾り付けに用いられる。

悪魔や妖精がクリスマスの期間に悪いことをしないように民家やお店、教会や墓地などに飾り付けられたと云われている。

◉セイヨウヒイラギは、ヨーロッパ以外でもアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドで栽培されたものが野生化している。

◆類似種にはアメリカ原産のアメリカヒイラギモチ(アメリカヒイラギ)中国原産のヒイラギモチ(シナヒイラギ、ヤバネヒイラギモチ)があり、これらも園芸、装飾用に用いられる。

日本では特にヒイラギモチを用いる事が多い。


◉生育場所
半日以上は日が当たり、風通しのよい場所に植える。

日光が足りないと、花が少くなり実が少くなる。

実の色づきも悪くなる。

ただし、夏の直射日光が強すぎると葉焼けしてしまうので注意。

鉢植えでも育てられないことはありませんが、どちらかと言うと地植えに適した木です。

◆用土
極端な乾燥を嫌いますが、湿った土を好みます。

水はけ、水もちの両方がよい土が適しています。

鉢植えの場合は、乾燥に弱いので特に夏場の水切れに注意。

★肥料
肥料が足りないと樹の勢いが衰えます。

寒肥として油粕、堆肥などを株から少し離れた所に与えます。

※病害虫
病害虫には強い方ですが、カイガラムシがつくことがあります。

◆剪定
生長は遅くあまり剪定をしないで育てます。

風通しが悪くなったり、混みあった枝などの剪定にとどめます。

花芽は10月~3月にかけて形成され、4月から5月に白い花が開花します。

その後秋に実が赤く色づきます。

花後11月頃に実がなるので、どの時期に剪定したとしても花芽(実)を落としてしまうことになります。

生け垣の場合は年に2回、3月~4月と9月に刈り込んで、生け垣が乱れないように管理していきます。


★植え替え、鉢替え

鉢植えは2~3年に一回植え替えをします。