緑のお医者の徒然植物記

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2020/04/04

桜の樹に付く代表的な害虫 No.186

桜の樹に加害する害虫

◉アメリカシロヒトリ(fall  webworm)
(麟翅目·りんしもく)ヒトリガ科

葉上に灰白色の吐糸で巣を作り、中に毛虫が群生して葉を食う。

被害は6月から8月にみられ、ときに大発生してきわめて大きな被害となる。

通常、年2回の発生であるが、近年3回発生する系統が発生し、近畿地方以西の地域でも発生が続いている。

樹皮の割れ目や根際でサナギで越冬し、第1回成虫は4月下旬から5月に発生して葉上に700~800粒の卵の塊を産み付けます。

幼虫は卵塊ごとにまとまった巣を作り群生するので、発生の多いときには枝の先々に多数の巣が見られる様になり、一目で本種の被害とわかる。

          (アメリカシロヒトリ幼虫)

第2回成虫は7月中下旬、この幼虫は8月中下旬に発生する。

2世代のものは9月に蛹化(ようか)して越冬に入るが、3回発生のものでは更に9月~10月に幼虫が現れて食害を続け、11月に越冬に入る。

卵は葉裏に産みつけられ成虫の体毛で覆われている。

老熟幼虫は約30㎜、活発に行動し巣付近の葉を食いつくすと移動して新しい枝に移り、食害を続ける。

※1945年頃東京都と神奈川県で発見されたが、太平洋戦争直後の混乱にまぎれてアメリカ軍の貨物について北アメリカから侵入したと推定された。

たちまち首都圏の庭園樹、街路樹、公園樹の大害虫になった。

その後各地に分布を拡大して定着したが、西日本では散発的な発生が確認されたものの定着せず、関東から中部地方にかけての様な発生を見る事はありませんでした。

ところが1980年頃から定着するものが見られる様になり、これが3回発生する系統である。

          (アメリカシロヒトリ成虫)

侵入後30年を経て、新たに3回発生する系統が生まれ、これが関東以西の各地に定着するようになった。

きわめて雑食性の害虫で、100種類以上の加害植物が記録されている。

★被害の甚大なものとして
サクラ、プラタナス、ヤナギ、トウカエデなどがあり、ミズキ、クワ、キリ、ハンノキ、ニセアカシア、フジ、シンジュ、トネリユ、シラカンバ、ケヤキ、ナシ、リンゴなどの被害も大きい。

◆防除法として
被害の進展が速いので、樹上の巣を見つけたら早急に切除して処分する。

薬剤防除では、スミチオン、ディプテレックス、DDVP(劇物)、オルトラン、カルホスなどの効果が高いが、高い木では防除が困難で特殊な防除器具を必要とする。

また、都市部での化学殺虫剤の散布は問題が起きやすいので、微生物殺虫剤として開発されたBT剤(バチルス·チューリンギエンシスを製剤化したもの、ダイポール、トアローCT、チュウリサイドなどがある)を利用するとよい。

害虫量が多い時は火をつけた棒で焼くか、薬剤散布。

幼虫は樹皮の隙間などで、サナギ状態で越冬するので、秋に樹の幹にムシロを巻いておき、冬場にこれを焼却(2月頃)


◉オビカレハ(tent  caterpillar)
麟翅目カレハガ科 別名テンマクケムシ
樹幹や枝の分岐部に巣網が張られ、内部に幼虫が群生してすむ。

昼間は巣の中に隠れていて夜間になると集団で外に出て葉や新芽を食害する。

幼虫は老熟すると昼夜の区別なく樹上にいて食害を続け、大きな被害となる。
発生は春から初夏

※天敵はクモ類
年1回の発生、小枝に産みつけられたリング状の卵塊で越冬し、3月下旬頃ふ化して枝の分岐部に天幕状の巣網を張る。



      (オビカレハの卵) 

灰白色楕円形の卵が200~300粒くらい集まって小枝を巻いて産卵する。


幼虫は巣内部で休息するが、付近の葉を食いつくすと巣網を移動させて新たな葉を食害、成長につれて巣網も大きくなるのでよく目立つ。

老熟幼虫は巣から分散し、付近の葉上にマユを作って蛹化(ようか)、成虫は暖地では6月、寒地では7月~8月に発生する。



※花が咲いている頃に、枝先付近の花柄が密集した部分に、巣を作っているので、よく観察することで早く駆除できる。


      (オビカレハ幼虫)

成虫は黄褐色で夜間に活動して灯火にもよく飛来する。


        (オビカレハ成虫)

バラ科植物をはじめ、ヤナギ、ニレ、クヌギなどかなり雑食性である。被害はサクラ、ウメに最も多く見られる。

★防除法として
樹上の巣網を発見して除去する。
薬剤散布では幼虫の発生期にスミチオン、ディプテレックス、カルホス、オルトランなどが有効であるが、サクラはサトザクラなど品種によって薬害が発生しやすくなるので注意が必要である。

冬期落葉後は樹枝の卵塊がよく目立つので、剪定の時または見つけ次第処分しておく。


◉モンクロシャチホコ(cherry   caterpillar)
麟翅目シャチホコガ科

このケムシは9月頃に発生し、葉裏に赤褐色(若齢期)で光沢ある幼虫が群生して葉を食害する。

その後葉上に紫黒色(しこくしょく、老熟幼虫)に変わって黄白色の長毛がはえます。

葉を暴食し、大きな被害を見るようになる。

敵が近づくと、頭と尾を上げて反らす習性があり、この姿からフナガタケムシとかシリアゲムシと呼ばれ、この格好からすぐに判別出来ます。

(モンクロシャチホコ老熟幼虫)

老熟幼虫は体長50㎜内外、樹を降りて浅い土中でマユを作って蛹化し越冬に入る。


幼虫の食害によって全葉が食いつくされることも珍しくありません。

こうした場合には花芽も食害されて翌年の花数を減らすほか、葉が無くなって秋の時返り咲きの原因となる。

サクラ、ウメの被害が特に大きい。

◆防除法として
発生が多い時は、薬剤を散布します。

薬剤はスミチオン、ディプテレックス、MEP、エルサンなどが適しています。

年に1回、7月頃に成虫が発生し、その次の世代が被害を起こします。

そこで7月に発生する成虫の量が多い時は、予防剤を散布します。

成虫の量は、灯火に集まる量で判断します。

◉ゴマダラカミキリムシ(whitespotted  longicorn beetle)
甲虫目(こうちゅうもく)カミキリムシ科

樹幹内に幼虫(別名テッポウムシ)が侵入し、樹皮下、材部を食害し、枯死をまねく。

被害樹からは細かいおが屑状の虫ふんが排出され、地ぎわ部の上に積もっている。


           (ゴマダラカミキリムシ成虫)


成虫は体長25㎜~35㎜
発生は年1回または2年に1回、寄主植物によって成長に遅速があるようである。

5月下旬頃から成虫が現れ、カエデ、モミジ、ユキヤナギ、バラ、ミカン類などの被害も緑枝をかじって剥皮し、このため枝枯れが続出してこの被害も軽視できない。

成虫発生の最盛期は7月中旬であるが、発生は9月頃まで見られ、遅い場合では10月に成虫を見ることがあるから、かなりダラついた発生をしているようだ。

成虫は7月中下旬頃、樹皮下に産卵する。

産卵する部位としては、地ぎわ部が多く、幼虫も地ぎわ部から根にかけて食害する。

老熟幼虫は体長約60㎜、幼虫で越冬し、翌春蛹化して続いて成虫が羽化する。

ミカン類の重要害虫として知られるが、かなりの雑食性で庭園樹での被害も大きい。

◆防除法として
成虫は見つけ次第捕殺します。

また、成虫が産卵するときに幹に傷をつけるので、傷跡を探して、その部分を切り出すか、たたいて圧殺する。

食入口(虫ふん排出孔)を見つけた場合は、穴にスミチオンなどを注入して穴をふさぎます。

しかし、根部まで入った幼虫は発見しにくいので手遅れになることが多い。


4月の発生時期に、サッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。

成虫の発生最盛期には、エルサン、パプチオン、スプラサイドなどを散布すればよいが、産卵防止のため、樹幹にサッチューコートSやトラサイドなど樹幹塗布剤を地ぎわ部から20~30㎝くらいの高さまで塗布しておく。