緑のお医者の徒然植物記

Translate

緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2020/04/12

さし木後の管理について No.189

さし木の管理

◉水やり
さし床はやや多めに灌水し、さし穂の切り口と床土の密着を促します。

ただし、水やりが多すぎるとさし穂を腐らせたり、土中の酸素不足の原因となるので注意が必要です。

基本的には、さし穂とさし床が乾かないように水やりを続けます。

風雨よけ
ビニールハウスの場合
通気が悪いと湿度が上がりやすいので一部を開けて通気を保つなどの工夫が必要です。

夏期はビニール内の温度が40℃以上に高まるため腐るなどの危険がある。




常緑樹の春ざしと秋ざしに主として適用し、8月の土用ざしは行わない方が安全です。

6月~7月の梅雨ざしでは、ビニールの上からヨシズやカンレイシャを2枚くらい重ねて遮光することで、高温になるのを防ぐことが大切です。




◉直射日光を避けるに日除けをする。
活着率を高めるためには、さし床が乾燥しないように灌水することはもちろん、噴霧器や霧吹きを用いて、1日に数回葉水をかけてやるのが効果的です。

グリンナーなどの蒸散抑制剤をさし穂に散布しておくのも効果的です。


◉さし木の施肥
さし木後は入念に、生長の様子を観察し、適宜肥料を与えます。適宜(てきぎ=その時々の状況に応じて行う)

さし木して新芽が出たら(およそ1ヶ月程度)ハイポネクス2000倍などの薄い液体肥料を施します。

芽がしっかりしてきたらエキヒの希釈を1000倍に高めて、根づくまでの間月に2回~3回与えるようにする。

樹種により生長度合いに差がありますが、枝同士がぶつかり合うようになったら、別の容器か、通常の鉢に植え替えます。

用土はさし床と同様で構いませんが、これを機に施肥は化成肥料や油粕などに切り替えます。

その後は冬期を除いて1ヶ月おきに1000倍に希釈した液体肥料、油粕6:骨粉2:魚粉2の混合肥料などを、さし木をしたがって年の秋から翌年の春の植え替え時期まで与え続けます。

◉ポイント
小さなさし穂はとても敏感です。
湿気が多すぎると、さし穂が炭疽(たんそ)病に冒され黒くなることがあります。

そんな場合はさし床を乾燥させるとともに、病変ができたさし穂を取り除き、さし床の用土をベンレートなどの殺菌剤で消毒します。

逆に乾燥し過ぎたり、温度が高すぎるとさし穂の葉が落ち、新しい芽が垂れ下がるという情状酌量が現れます。

さし穂に根が生えている場合は、根元にたっぷり水を与え、温度を20℃~25℃に調節するとうまく育てられます。

根がよく生えていない場合は、さし木をやり直した方がよいでしょう。

◉発根の状態
さし木をして発根するまでの日数は、樹種や同じ種類でもさし木をする時期、さし木後の管理のしかたなどによっても違いがあります。

レンギョウ、タニウツギ、サンゴジュなど早いもので15~20日

カイズカイブキ、スギ、イチイ、キンモクセイ、ツバキなど遅いもので40~60日くらい、条件が悪いと翌春まで発根しないこともある。

針葉樹では葉が緑色を呈して精気があっても、発根しているとは限らず、ひどい場合には新芽が伸びてきても発根していないことがある。

常緑広葉樹や落葉広葉樹では、新芽が伸びてきたものはすでに発根していると判断してほぼ間違いないでしょう。

古葉が葉柄(ようへい)からポロリと落ちてしまうものは、発根の見込みがあると判断されます。

葉がさし穂についた状態で枯れ、葉柄と茎がしっかりと付着して、手で触れても落ちないものは、発根の見込みがないと判断されます。

◆日覆い等の除去
常緑樹のさし木においてはもちろん、落葉樹でも緑枝ざしをする場合には、さし床に直射日光が当たらないように日覆いを行います。

この日覆いは、さし穂の蒸散作用を抑制するために設けられるものですから、発根してからは日光が当たるよう取り除いて光合成を促進させ、苗の生長を促してやらなければいけません。

多くの針葉樹など、発根するまでの日数が長いものや陰樹では、取り除く時期が遅れてもあまり影響はありません。

陽樹では、活着を確認したら早めに取り除く。

日覆いを取り除く際は、昼間はそのままにし午前中と午後だけとり除くなど、あるいは葉水をたびたび散布するなどしながら徐々に外気に慣らすことが大切です。

◉ビニール等の除去 取り除く時期

春ざしでは、3~4ヶ月後
梅雨ざしでは、さし木して3ヶ月後
秋ざしでは、翌春とするのを標準にします。

※ビニールを取り除く際は、ビニールに穴をあけるなどして徐々に外気に慣らすようにします。

◆移植
さし木をして発根するまでの日数が短く、活着後の生長が特によいものはその年の秋9月~10月頃に苗と苗の間隔をあけて移植法します。

普通は、翌春3月に移植しますが、秋ざしを行った場合、あるいは針葉樹など発根するまでの日数が長いものでは翌秋9月~10月、または翌々年の春3月頃に移植を行う方が安全です。

苗木を養成する場合には、以後1年おきに移植を繰り返し、苗と苗の間隔をあけると同時に細根の発生を促すようにします。



◉参考ブログ
※挿し木 (春さし) No.188
※樹種別さし木の適期、植え替え時期 No.190







挿し木 (春さし)  NO.188

挿し木

親木となる樹木の枝、葉、茎などの一部を切り取って発根されたものを植え付けて殖やすこと。

実生と比べて生長が早く、花木などでも短期間で開花、結実させることが出来るのが特徴です。

※実生よりも2年くらい早く開花する。

他の繁殖方法よりも実施期間に幅があり、一般に春に行う場合を「春さし」といいますが、梅雨時や秋口も適期です。

挿し木は気温が暖かく(15℃~20℃)温度が十分に保たれている時期が適しています。

発根の元となる養分を多く蓄えているのは冬ですが、この時期は気温が低いので、暖かくなり根の活動を始めた頃の「春さし」が最もよい時期と言えるでしょう。

春伸びた柔らかい枝が固まり、2回目の伸長を始める6月頃に行う「梅雨さし」も養分、水分の状態がよいので挿し木の時期に適しています。

◉挿し木のいろいろ
①さし穂に樹木の枝を用いる場合は(枝挿し)
②根を用いる場合は(根挿し、根伏せ)
③ベゴニア、イワタバコなど草木の葉を用いる場合は(葉挿し)
④カーネーション、キクなど草木の茎を用いる場合は(芽挿し)

★挿し木の時期による分け方
2月~4月に萌芽前に行う場合は「春ざし、彼岸ざし」

6月~7月の梅雨期に行う場合は「つゆざし、夏ざし」

8月に行う場合を「土用ざし、夏ざし」

9月~10月に行う場合を「秋ざし」(針葉樹と常緑広葉樹)


◆さし穂の熟度による分け方。
(枝ざしの場合)

2月~4月の萌芽前に行う春ざしでは、休眠中の枝をさし穂にするので「休眠枝ざし、熟枝ざし」という。

6月~8月の生長期間中に行う夏ざしでは、その年に伸びた新梢をさし穂にするため「緑枝ざし」という。

◉さし穂が枝のどの部分かによる分け方。

✻枝をさし穂とする場合を「天ざし」

枝の先と基部を除いた部分からさし穂を取る場合を「くだざし」

枝の先と基部に1芽だけつけてさし穂とする場合を「葉芽ざし」

★さし穂の切り口による分け方。
(切り口の種類)



★穂木を取る時は、養分を摂取する根の元となる切り口の細胞を傷めないように、よく切れる鋭利な刃物を使うことが大切。

切断した穂木は、挿し木するまで水に浸けておきます。

数時間から一昼夜
(休眠枝ざしは水上げしない)

長時間置いた場合は、切り口を切断しなおしてから使う。

切り直した穂木は、メネデールやルートンなどの発根促進剤を溶かした水に1~2時間程度浸けておく。


✿穂木の長さの目安は
✣常緑樹で10~15㎝(緑枝ざし)
          
✣落葉樹は10~20㎝(休眠枝挿し)

日当たりのよい部分に成熟している枝を選びます。

古い枝よりも生長力が強く養分も豊富な若い枝がよく根づく。

挿し木の時期によって異なるが、栄養が多く与えられている本年枝、または前年枝を選ぶ。

穂木を取る時間帯は、植物の活動が盛んな日中は避け、朝(午前7時~9時)または夕方(午後5時~6時)に取る。

◆さし穂に用いる枝の採取
※マツ類
カラマツ、ヤマモモなどの挿し木の活着率が低い樹種では、なるべく樹勢が強い若木からさし穂を採取することが大切です。

※ヒバ類
コウヨウザン、ヒマラヤスギ、メタセコイアなどのように枝が横に長く伸長する性質のものは、出来るだけ上向きの枝または樹芯に近い上向きの枝からさし穂を採取しないと、苗がまっすぐに伸長しにくい性質がある。


落葉樹のうち、生育活動を開始するのが早い樹種を春ざしにする場合、1月下旬から2月頃に枝を切り取って貯蔵しておいたものを、挿し木の最適期である3月から4月上旬に取り出して挿し木することがある。

これは、挿し木適期に採取するとすでに生育活動が開始しているため、枝の養分が消費されつつあり、その為に発根力が弱まるという理由によります。

1月下旬から2月頃に切り取る枝は、30~40㎝の長さにして束ね、土中に埋めておくか、ビニールに包んで冷蔵庫15℃で保存。


◉土中に埋めて保存貯蔵の仕方。



◉さし穂の葉数
さし穂に蓄えらている養分によって発根することを考えると、葉は多いほど活着率が高まると考えられます。

しかし、葉数(あるいは葉の面積)が多いとそれだけ蒸散作用が活発になり、さし穂が乾燥しやすくなりますので、御互いにバランスを保てるように調整する必要があります。


※アジサイ類のように、特に大きな葉をつけるものでは、2枚残してさらに葉を半分に切ります。

※サンゴジュ、ツバキ、カクレミノ程度の葉のものは2枚から3枚が目安です。

※サツキ、ツツジ類のように小さい葉をつけるものでは8枚から10枚が目安です。

※マツ類、スギ、イチイ、キャラボクなどの針葉樹では、さし穂の基部3分の1くらいの葉を取り除く。

針葉樹以外の広葉樹においても基部3分の1くらいの葉を取り除く。

◉挿し木の時期②

2月から4月の萌芽前に休眠枝を用いて挿し木する方法
常緑広葉樹、落葉樹広葉樹、針葉樹のいずれも適用。

6月から7月の梅雨ざし、8月の土用ざしは原則として常緑広葉樹に適用されますが、落葉樹、針葉樹でも行われることがあります。

9月から10月の秋ざしは原則として針葉樹と常緑広葉樹に適用されます。

最も安全なのは2月から4月に行う春ざしです。

ツバキ、サザンカ類、サンゴジュ、モッコク、ゲッケイジュなどの常緑広葉樹は一般に6月から7月の梅雨ざしを行うのが最も安全です。

★注意⚠️
冬期に霜柱が生じてさし穂が動くとか、耐寒性の弱い樹種では、ビニールで防寒しなければならないことなどを考えると、特に露地で大量に挿し木する場合などは、この時期には行わない方がよいでしょう。

◉発根促進剤
植物ホルモンと同様の働きをします。

※さし穂の切り口にまぶして使用するもの(タルク剤)
ルートン、オキシベロン、ルチエース

※希釈液に浸して使用するもの
メネデール、ハイフレッシュ

※砂糖水の1000倍液を代用
★挿し木が比較的難しい樹種では、これらの薬品で処理してから挿し木するようにする。

◆さし床を作る
さし床を作るときは、保水性、排水性、通気性をよくすること。

切り口が腐らないように清潔な土であることが大切です。

樹種によって若干異なりますが、一般には赤玉土を使い、サツキなどの酸性土壌を好む樹種には、鹿沼土を用います。

小粒と中粒を用い、箱の底に中粒を敷いて上部に小粒を入れます。

赤玉土に砂土など混ぜた混合土にすると、通気性は更に向上します。

赤玉土に砂やピートモスを2割くらい混入したもの、あるいはバーミキュライトを単用する。

挿し木する本数が比較的少ない場合は、木箱表焼き鉢などに用土を入れて床を作る。

挿し木する本数が多いときは、畑や庭に直接床を作りますが、この場合は砂壌土の土地とし、排水性が悪い場所では、砂などを混入してから床を作る。

★穂木には、肥料を吸収する根がありませんから、施肥の必要はありません。

発根後は水で薄めた液肥を少量ずつ与えるようにする。




◉さし方
さし床は、さし木を行う前に十分灌水して土を落ち着かせておく。

直接土に挿すと穂木の切り口が傷むことがあるので、あらかじめ割りばしなどでさし床に2~3㎝程の深さの穴を等間隔にあけておきます。

全体の3分の1くらいを目安にし、挿した後は手で押さえるなどして土をよく密着される。


さし穂の用土に挿す部分3㎝にある葉や芽を除去します。

葉の大きなものは、蒸散作用を抑えるため、さらに上部の2~3枚の葉の先端を切ります。

◆さし穂を痛めないようにピンセットを使用してさし床に挿します。表面に対して垂直に挿します。



◉さし穂が倒れないように穴の細かいジョウロなどで静かに水を与えます。


◆参考ブログ
挿し木後の管理について No.189
樹種別挿し木の適期、植え替え時期 No.190






2020/04/07

花のない植物 コケ 胞子隠花植物 No.187

シダ、コケ、藻類、菌類

胞子隠花植物(ほうしいんかしょくぶつ)

◉シダ、コケ、藻類、菌類などは胞子隠花植物と言って胞子で繁殖します。

※胞子とは、菌類や植物が無性生殖(むせいせいしょく)をするときにつくる生殖細胞のこと。



◆隠花植物とは

植物界を花の有無で2つに分けた時に、花のある植物を顕花(けんか)植物と言います。

これに対して、花を持たない植物のことを隠花植物と言います。

これは高等植物以外の植物を一括して指すのに用いられます。

★シダ植物の胞子は発芽するとまず前葉体·ぜんようたい(配偶体)をつくる。

これは生殖器官を持っていて、卵と精子をつくりこれが受精してシダの体が芽生えます。

※配偶体とは、シダ植物やコケ植物などの多くの植物は、有性生殖を行う世代と無性生殖を行う世代とが交代します。

有性生殖を行う世代は、配偶子を作るので配偶体と言います。

無性生殖を行う世代は、胞子を作るので胞子体と言います。

コケ植物では、胞子が発芽して原糸体と言うものになります。

原糸体(げんしたい)とは、胞子が発芽して糸状になった状態のことで糸状体(しじょうたい)とも呼ばれます。

これから更に生殖器官を持った、雌性(しせい)と雄性(ゆうせい)のコケの体が発芽します。



◉コケの栄養源

コケは同じ隠花植物であるシダと比べても、体のつくりが簡単にできています。

普通の植物が栄養の多くを吸収する根を持っていますが、コケは持っていません。

仮根と呼ばれる細長い細胞からできたものがあります。

しかし仮根は体を支える程度の役目しかありません。

コケはたくさんの葉緑体で朝夕のわずかな光や空気中の湿度、炭酸ガスで養分をつくって(光合成)育ちます。

仮根からはほとんど水分も栄養も吸収しないでコケは育つことができます。

このため少量の油粕でさえも、腐ったり蒸れたりすることで害する方が大きく、コケのための肥料は利がないと言えるでしょう。

◆肥料のかわりの栄養剤

肥料に含まれるチッソ、リン酸、カリ、マグネシウムなどを吸収できないものの、微量でも徐々に長期間溶出するミネラル(リン、カルシウム、マグネシウムなど)は、コケの生育に良いと言われ、葉の色が良くなるようです。

※ミネラル(灰分)を多く含有する炭が最適。

ただし、粗悪な炭には、植物の生育を害する炭化水素類の残留があるので、備長炭は灰分(ミネラル)が多く、揮発分がとても少ない灰で、植物の根腐れ防止、発根を促進し、コケの生育にも期待できる炭です。

アサヒビールが販売している培地資材(オーキッドベース)は備長炭と同等の含有ミネラルがきわめて豊富です。

コケ園芸でのミネラルを含んだ培地資材としては、オーキッドベースと備長炭がお勧めです。

★生育不良のコケに効果が期待できるもの。

木酢液、竹酢液、HB-101、オーキッドベース

苔玉に混合するには、つぶ備長炭や中粒のオーキッドベースが使いやすいでしょう。

どちらも重く水に沈むので苔玉の下の飾り砂として使っても生育に効果が期待できるでしょう。





◉参考ブログ
※木酢液について No.37
※苔玉盆栽 No.52
※コケ(苔)の話 No.81
※コケの胞子 No.90
※小さな盆栽、苔玉を暮らしの中に No.97
※苔玉、鉢植えのコケ管理 No.165






2020/04/04

桜の樹に付く代表的な害虫 No.186

桜の樹に加害する害虫

◉アメリカシロヒトリ(fall  webworm)
(麟翅目·りんしもく)ヒトリガ科

葉上に灰白色の吐糸で巣を作り、中に毛虫が群生して葉を食う。

被害は6月から8月にみられ、ときに大発生してきわめて大きな被害となる。

通常、年2回の発生であるが、近年3回発生する系統が発生し、近畿地方以西の地域でも発生が続いている。

樹皮の割れ目や根際でサナギで越冬し、第1回成虫は4月下旬から5月に発生して葉上に700~800粒の卵の塊を産み付けます。

幼虫は卵塊ごとにまとまった巣を作り群生するので、発生の多いときには枝の先々に多数の巣が見られる様になり、一目で本種の被害とわかる。

          (アメリカシロヒトリ幼虫)

第2回成虫は7月中下旬、この幼虫は8月中下旬に発生する。

2世代のものは9月に蛹化(ようか)して越冬に入るが、3回発生のものでは更に9月~10月に幼虫が現れて食害を続け、11月に越冬に入る。

卵は葉裏に産みつけられ成虫の体毛で覆われている。

老熟幼虫は約30㎜、活発に行動し巣付近の葉を食いつくすと移動して新しい枝に移り、食害を続ける。

※1945年頃東京都と神奈川県で発見されたが、太平洋戦争直後の混乱にまぎれてアメリカ軍の貨物について北アメリカから侵入したと推定された。

たちまち首都圏の庭園樹、街路樹、公園樹の大害虫になった。

その後各地に分布を拡大して定着したが、西日本では散発的な発生が確認されたものの定着せず、関東から中部地方にかけての様な発生を見る事はありませんでした。

ところが1980年頃から定着するものが見られる様になり、これが3回発生する系統である。

          (アメリカシロヒトリ成虫)

侵入後30年を経て、新たに3回発生する系統が生まれ、これが関東以西の各地に定着するようになった。

きわめて雑食性の害虫で、100種類以上の加害植物が記録されている。

★被害の甚大なものとして
サクラ、プラタナス、ヤナギ、トウカエデなどがあり、ミズキ、クワ、キリ、ハンノキ、ニセアカシア、フジ、シンジュ、トネリユ、シラカンバ、ケヤキ、ナシ、リンゴなどの被害も大きい。

◆防除法として
被害の進展が速いので、樹上の巣を見つけたら早急に切除して処分する。

薬剤防除では、スミチオン、ディプテレックス、DDVP(劇物)、オルトラン、カルホスなどの効果が高いが、高い木では防除が困難で特殊な防除器具を必要とする。

また、都市部での化学殺虫剤の散布は問題が起きやすいので、微生物殺虫剤として開発されたBT剤(バチルス·チューリンギエンシスを製剤化したもの、ダイポール、トアローCT、チュウリサイドなどがある)を利用するとよい。

害虫量が多い時は火をつけた棒で焼くか、薬剤散布。

幼虫は樹皮の隙間などで、サナギ状態で越冬するので、秋に樹の幹にムシロを巻いておき、冬場にこれを焼却(2月頃)


◉オビカレハ(tent  caterpillar)
麟翅目カレハガ科 別名テンマクケムシ
樹幹や枝の分岐部に巣網が張られ、内部に幼虫が群生してすむ。

昼間は巣の中に隠れていて夜間になると集団で外に出て葉や新芽を食害する。

幼虫は老熟すると昼夜の区別なく樹上にいて食害を続け、大きな被害となる。
発生は春から初夏

※天敵はクモ類
年1回の発生、小枝に産みつけられたリング状の卵塊で越冬し、3月下旬頃ふ化して枝の分岐部に天幕状の巣網を張る。



      (オビカレハの卵) 

灰白色楕円形の卵が200~300粒くらい集まって小枝を巻いて産卵する。


幼虫は巣内部で休息するが、付近の葉を食いつくすと巣網を移動させて新たな葉を食害、成長につれて巣網も大きくなるのでよく目立つ。

老熟幼虫は巣から分散し、付近の葉上にマユを作って蛹化(ようか)、成虫は暖地では6月、寒地では7月~8月に発生する。



※花が咲いている頃に、枝先付近の花柄が密集した部分に、巣を作っているので、よく観察することで早く駆除できる。


      (オビカレハ幼虫)

成虫は黄褐色で夜間に活動して灯火にもよく飛来する。


        (オビカレハ成虫)

バラ科植物をはじめ、ヤナギ、ニレ、クヌギなどかなり雑食性である。被害はサクラ、ウメに最も多く見られる。

★防除法として
樹上の巣網を発見して除去する。
薬剤散布では幼虫の発生期にスミチオン、ディプテレックス、カルホス、オルトランなどが有効であるが、サクラはサトザクラなど品種によって薬害が発生しやすくなるので注意が必要である。

冬期落葉後は樹枝の卵塊がよく目立つので、剪定の時または見つけ次第処分しておく。


◉モンクロシャチホコ(cherry   caterpillar)
麟翅目シャチホコガ科

このケムシは9月頃に発生し、葉裏に赤褐色(若齢期)で光沢ある幼虫が群生して葉を食害する。

その後葉上に紫黒色(しこくしょく、老熟幼虫)に変わって黄白色の長毛がはえます。

葉を暴食し、大きな被害を見るようになる。

敵が近づくと、頭と尾を上げて反らす習性があり、この姿からフナガタケムシとかシリアゲムシと呼ばれ、この格好からすぐに判別出来ます。

(モンクロシャチホコ老熟幼虫)

老熟幼虫は体長50㎜内外、樹を降りて浅い土中でマユを作って蛹化し越冬に入る。


幼虫の食害によって全葉が食いつくされることも珍しくありません。

こうした場合には花芽も食害されて翌年の花数を減らすほか、葉が無くなって秋の時返り咲きの原因となる。

サクラ、ウメの被害が特に大きい。

◆防除法として
発生が多い時は、薬剤を散布します。

薬剤はスミチオン、ディプテレックス、MEP、エルサンなどが適しています。

年に1回、7月頃に成虫が発生し、その次の世代が被害を起こします。

そこで7月に発生する成虫の量が多い時は、予防剤を散布します。

成虫の量は、灯火に集まる量で判断します。

◉ゴマダラカミキリムシ(whitespotted  longicorn beetle)
甲虫目(こうちゅうもく)カミキリムシ科

樹幹内に幼虫(別名テッポウムシ)が侵入し、樹皮下、材部を食害し、枯死をまねく。

被害樹からは細かいおが屑状の虫ふんが排出され、地ぎわ部の上に積もっている。


           (ゴマダラカミキリムシ成虫)


成虫は体長25㎜~35㎜
発生は年1回または2年に1回、寄主植物によって成長に遅速があるようである。

5月下旬頃から成虫が現れ、カエデ、モミジ、ユキヤナギ、バラ、ミカン類などの被害も緑枝をかじって剥皮し、このため枝枯れが続出してこの被害も軽視できない。

成虫発生の最盛期は7月中旬であるが、発生は9月頃まで見られ、遅い場合では10月に成虫を見ることがあるから、かなりダラついた発生をしているようだ。

成虫は7月中下旬頃、樹皮下に産卵する。

産卵する部位としては、地ぎわ部が多く、幼虫も地ぎわ部から根にかけて食害する。

老熟幼虫は体長約60㎜、幼虫で越冬し、翌春蛹化して続いて成虫が羽化する。

ミカン類の重要害虫として知られるが、かなりの雑食性で庭園樹での被害も大きい。

◆防除法として
成虫は見つけ次第捕殺します。

また、成虫が産卵するときに幹に傷をつけるので、傷跡を探して、その部分を切り出すか、たたいて圧殺する。

食入口(虫ふん排出孔)を見つけた場合は、穴にスミチオンなどを注入して穴をふさぎます。

しかし、根部まで入った幼虫は発見しにくいので手遅れになることが多い。


4月の発生時期に、サッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。

成虫の発生最盛期には、エルサン、パプチオン、スプラサイドなどを散布すればよいが、産卵防止のため、樹幹にサッチューコートSやトラサイドなど樹幹塗布剤を地ぎわ部から20~30㎝くらいの高さまで塗布しておく。






2020/04/02

桜の病気 バラ科 No.185

桜の病気

サクラの根は浅く広く張る(残根性·ざっこんせい)ため、人や車による踏圧(とうあつ)で根詰まりをおこしやすい。

日照量の不足や病害虫など、複数の原因がありますが、特に根詰まりする事で花つきが悪くなります。

対処法として、まず根元の土を丁寧に掘り起こして、堆肥をすき込み土壌を改良します。

そして根が踏まれないように囲いを作ります。

◉成木になってからの植え付けは困難です。
3月に移植は可能  1月~2月に植え替え、植え付け


サクラの病気

◉天狗巣病(てんぐすびょう)
薬剤散布よりも、異常な枝を切り取ってしまい、切り口にはユゴウ剤などを塗布して切り口を保護します。

切り口は、雨水がたまらないように垂直にする。

病気の発生する時期は5月から12月

天狗巣病には原因不明の感染しない種類もありますが、ほとんどがカビを病原として感染します。

病菌は患部の枝の中で冬を越し、花が咲いた後に葉の裏側に胞子をつけ、空気に運ばれて感染します。

病気にかかった枝は年々大きくなり、花芽を形成しません。
葉も小さくなります。

病気にかかった枝は次第に弱り、枯れたり、折れたりします。
被害の激しい樹木では樹勢が著しく衰えてしまいます。


                             「天狗巣病」


★天狗巣病は病菌にいろいろな種類があり、防除の方法も異なりますがどの種類も薬での治療は困難です。

しかしこの菌は感染力が弱いので、病気にかかった枝を切り取って焼却処分することでほとんど治すことができます。


また、1月から2月頃にダイセンや銅水和剤(ボルドー)、石灰硫黄合剤などを散布

3月上旬頃、石灰硫黄合剤の10倍液を木全体に散布することにより、越冬菌の駆除が望めます。

✿タフリナ病

タフリナ属の菌は高等植物の寄生菌で、寄生した植物の枝や葉に、天狗巣病など様々な症状を起こす原因となる。

天狗巣病はカビの一種のタフリナ菌が原因で起こる伝染病です。

ソメイヨシノはこの病気にとても罹りやすく、発病した枝を放置しておくと花が咲かなくなり、やがて樹全体に広がり枯れてしまいます。

多くのソメイヨシノはこの病気によって寿命が短いという原因になっている。


◆サクラコウヤク病
枝、幹に発生し、黒褐色から灰色の膏薬状のカビがびっしり生えます。

特に幹と枝の別れるところによく生えます。

病菌とカイガラムシが共存し、病菌はカイガラムシの排泄物を栄養として繁殖します。
同時に菌糸でカイガラムシを覆います。 

膏薬状のカビは古くなると剥がれ落ちます。

発生時期は4月から10月に多発し、一年を通して発生します。


                          「コウヤク病」


コウヤク病そのものは、石灰硫黄合剤を塗りつけて治療します。

カイガラムシを駆除することが重要です。
1月から2月に石灰硫黄合剤やマシン油乳剤(商品名.機械油乳剤)を月に2回から3回、枝や幹を中心に散布します。

カイガラムシの発生時期てある5月からは、スミチオンやオルトランなどを月に2回から3回、枝や幹を中心に散布します。

散布する液の倍率は1000倍液とする。

日当たりや風通しが悪いと発生しやすくなるので、剪定などをして枝の量を調節し、日当たりや風通しをよくする事が予防になります。

枝の切り口にには塗布剤を忘れずに塗りましょう。


                                        「吉野桜」


◉胴枯れ病
樹木の幹や枝梢の樹皮を侵す病気です。
病原体はカビです。

病菌は害虫による傷口、剪定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

年間を通して発生しますが特に夏に多く発生(6月から10月)

樹が若いうちは病気は少なく、樹齢が進んだ樹木ほど病気にかかりやすくなる。

胴枯れ病に対しての、薬剤を使った直接的な治療法は見つかっていない。

病斑部をできるだけ深く削り取り、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたら、すぐに駆除する。

昆虫や小鳥などにも注意する。
また、剪定のし過ぎなどによって幹を傷つけないように注意。

傷口にはトップジンMや石灰硫黄合剤を塗る。

乾いたら、墨汁やツナギロウなどを塗って予防する。

寒害や日焼けの幹の傷などに注意して傷口を手入れする。

繁殖器官で作られた胞子が、風や雨、虫の体などに付着して運ばれて感染する。

樹木の手入れに使うノコギリの歯から感染することもある。

◉根頭がんしゅ病
根に発生し、苗木や若い樹の根や根冠に小さなコブが無数に発生する。

コブは次第に大きくなり、根冠や太い根の側面では半球形、細い根では球形のがんしゅになります。


                   「根頭がんしゅ病」


コブは暗黒色で、樹はコブを作るのに栄養を取られ、またコブによって樹液の流れが妨げられるので、被害が大きい樹木は次第に樹勢が衰えてしまう。最悪枯死する。

病気にかかった株は引き抜いて焼却処分する。

植え替えるときは、コブを削り取り、そのあとにアグリマイシン、アグレプト、ヒトマイシンなどを塗ると多少の効果は望めます。

有機質を主体にした肥料を与えて、樹木を丈夫に育てるようにする。

土を入れ替えるか、NCS剤で土壌消毒
植物を植える前に、バクテローズに浸してから植えると効果がある。

この病気の病原体は、挿し木や接ぎ木などの切り口から侵入します。


★土壌消毒剤(主な商品名)

普通毒物=※アースサイド 普通毒物=※タチガレン
劇物=※ドジョウピクリン 劇物=※ガスタード

◉コブ病
6月から8月、日当たりの悪いところに多く発生する。

枝に発生し、はじめは若い枝に小さなふくらみを生じ、枝が大きくなるにつれてコブも大きくなります。

コブは縦方向の亀裂を生じ樹脂を出します。

コブから先の枝は枯れて死んでしまいます。

また、栄養が行き渡らないので非常に弱くなり、風などで折れてしまいます。

被害の大きい樹木は、樹勢が衰え、樹木自体が枯れてしまう事もあります。

病菌の刺激により、細胞が異常に増殖するためコブができる。

この病気は、薬剤による防除は余り効きません。

コブの部分を削り取るだけでは再び発病する事が多いので
できるだけコブのできた枝は切り取って焼却処分する。

切り取ったあとはトップジンM、石灰硫黄合剤などを塗り乾いたあとで、墨汁などを塗り予防する。

日当たりをなるべくよくするため、剪定などをする。

できるだけコブのできた枝は取り除くこと。


◆ナラタケ病 カワラタケ病

(材質腐朽病害、樹幹腐朽(ふきゅう)
ナラタケ(食用になるキノコ)に侵される病気樹勢が弱まり葉は変形変色し、樹木全体の成育が悪くなる。

発生は一年を通して起こります。

病原体はカビの一種であるナラタケ菌病菌は地際部や根から侵入し根全体を腐らせます。

特徴的なのは、根元にナラタケが群生することです。


                             「ナラタケ病」

この病気は、病気であることがわかってからでは、治療は困難です。

病気が発生してからの薬剤などの治療は困難ですので枯れてしまった株は、できるだけ細かい根まで切り取って焼却処分しましょう。

◆回復が望める樹木の場合
病気にかかった土壌は消毒して予防し、十分に肥料を与えて樹勢を強く保つようにする。

樹勢が弱まったらベンレートやトップジンMを根元に散布するのも効果的です。

◉紫紋羽病(むらさきもんぱびょう)
葉の色や大きさに異常がみられ、枝の成育も悪くなる。

発生時期は4月から10月で、春と秋に症状が酷くなります。

病原体はカビです。

病原体は地際部の付近の土の上や地表に近い土の中に、菌核(菌糸のかたまり)を作り地際付近の茎に付着して発病する!

やがて樹皮の表面に紫褐色の菌の束を張り巡らします。

この病菌は色々な植物に寄生する事が出来るので、異種の植物の相互感染をよく起こします。

通気性と保水性に優れた肥沃な土地によく繁殖します。


病気の株は引き抜いて焼却処分にしましょう。

病気が発生したら土を入れ替え、土壌消毒しましょう。

株を植え替える前に、コブトール、コブナックスなどを土に混ぜておくと効果的です。

尚、被害の出た土壌にイネ科の植物を何年か栽培すると病菌は自然消滅します。









2020/03/31

サクラ  バラ科 No.184

さくら(落葉樹)

◉桜は日本の代表的花木です。

一般に大木性で、樹高が20㍍にもなるものから、しだれ性のものなど多くの品種がある。

高木になる事から、植え付けは広い場所を確保する必要があり狭い庭には向きません。

狭い庭には、小形の種類を選んで植えましょう。

サクラ切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿の言葉通りやたらに枝を切るとよくありません。

さくらは材質が柔らかく、傷口が塞がるまでの期間が長いため、その間に腐ってしまう事から必要以上に切らない事とされています。

枝の整理で切った場合は、切り口に腐食防止のため塗布剤を塗り保護する。

枝は基本的に枝元で切る。

枝の途中で切ると腐れやすくなる。

★桜の品種系
〇カンヒザクラ
サクラの花便りの一番がカンヒザクラ(別名ヒカンザクラ)です。

カンヒザクラ群のサクラは、中国からヒマラヤにかけて4種類が分布している。

オオカンザクラ カワヅザクラ カンザクラ リュウキュウカンヒザクラ

日本には野生種はないが、東京以南の暖かい地方でカンヒザクラが栽培されている。



この仲間のサクラは花の色がふつう濃い紅紫色です。

沖縄の石垣島や、久米島の一部に生えているものは、自生という説と自生ではなく台湾または、中国から導入されたものが野生化したという説があります。

沖縄では、各地に植えられており、1月下旬には満開になります。野生化したものも多く自生している。

◆エドヒガン系
エドヒガン系のソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラの雑種と考えられている。

江戸時代末期に江戸染井村(現在の東京都豊島区)で吉野桜の名前で売り出さた。

その後、1900年(明治33年)に出版された、雑誌の論文で染井吉野と言う和名が初めてつけられました。

江戸時代、植木屋が多い事が知られ、今や桜の代名詞となった染井吉野の発祥の地で、石碑がある。

★日本に自生するエドヒガン群の野生種は、エドヒガンだけだがソメイヨシノをはじめ、栽培品種の数は多い。

寿命の長いサクラで、天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。

春の彼岸の頃に咲き、東京に多く植えられていた事からエドヒガンの名がついた。


同じくエドヒガン系のシダレザクラは、別名イトザクラと言われ、しだれ性変種である。


                 (シダレザクラ) 

枝がしだれる原因について、これまでは枝の上側と下側の生長速度の違いによって起こるとされてきたが、研究によって枝や葉の生長速度がしだれない種類より速いために、自重によって枝が垂れ下がり、その後、木質化が起こりしだれが固定されると言う事がわかってきました。

花弁は、変異が多く個体によって形や色、大きさなどがかなり異なります。


★ヤマザクラ系
ヤマザクラはソメイヨシノより開花が遅い。

古くはサクラと言うとヤマザクラを指していた。

吉野のサクラもヤマザクラで、寿命が長く巨木も多く秋の紅葉も美しい。


                                 (吉野桜)


紅葉の鮮やかさは、昼夜の温度差が大きく影響し、自生地とかけ離れた、標高のやや高い所に植えられたものは、通常より美しく色づく。

材は赤褐色でいい香りがし、古くは浮世絵の版木(はんぎ)に使われた。

◉オオシマザクラ系
オオシマザクラは、房総半島にかけて分布し、伊豆諸島以外のものは、かつて生長が早い事から薪炭材に栽培されていたものが、野生化したものという説がある。

伊豆諸島の大島などに多くある事からオオシマザクラと言われる。

サクラの仲間では、花は大きい方で他のサクラに比べて潮風や大気汚染に強い。

葉は塩漬けにして桜餅を包むのに使われる。

伊豆大島の桜の株は、国の特別天然記念物になっている。

◉セイヨウミザクラ
セイヨウミザクラとは、いわゆる🍒サクランボの事で、ヨーロッパ東部では野生状態で生えている。

日本には明治時代初期に渡来し、山形、福島、長野、山梨県などで栽培されている。

佐藤錦はナポレオンと黄玉の交雑(品種改良の手段として行う交配)によって偶然にできた実生品である。

◆エゾノウワミズザクラ
日本では北海道にだけ自生するが、アジアからヨーロッパにかけて広く分布する。

エゾ(蝦夷)とは、古代、北海道、東北から北関東地方にかけて住んでいた人々(蝦夷、えみし)北海道の古い呼び名である。

★ウワミズザクラ
別名ハハカは、染料などに利用されるが、新潟ではつぼみを塩漬けにしものを杏仁香(あんにんご)と呼んで食用にしている。

山梨県の郡内地方では、ミヤマザクラ別名シロザクラの樹皮を郡内織の染料として利用し、材は重く硬いことから家具、器具、彫刻、運動具などに用いられている。

ミヤマザクラ群のサクラは葉がすっかり展開してから開花する。

ミヤマザクラ群の分布の中心は、中国南西部で雲南省から四川省にかけて、地域に5種類ほど知られている。

日本に自生するのは、ミヤマザクラの一種だけである。

群馬県鬼石町(おにし)の桜山公園に植えられているフユザクラ別名コバザクラは、「山波(さんば)川の冬桜」として国の天然記念物に指定されている。