緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/02/23

マラリアに効く植物 クソニンジン No,385

クソニンジン キク科ヨモギ属

中国名= オウカコウ

別名=ホソバニンジン、バカニンジン、ヤマニンジン

和名(糞人参)は異臭を持つこと、葉が人参の葉に似ていることからこの名がある。

中国から薬用として渡来し、野生化したものと考えられている。

原産地は東南アジアを除くアジアから東欧


                    (クソニンジン)


抗マラリア原虫薬の製造原料とされ、寄生性皮膚病、インキンタムシの治療薬に用いられる。

約1600年前の古い書物に書かれていた、この植物の薬効に気づいたトウ·ユーユー氏が、その成分を取り出しマラリアの治療薬として確立したのである。
(1930年12月30日)

✭トウ·ユーユー
中国の医学者、医薬品化学者
ノーベル生理学、医学賞受賞者

WHOでは、薬の原料としてこの植物の栽培を奨励しています。


人類が誕生してから現在までどれ程の人が生まれ、亡くなったことだろう。

その原因の多くは戦争と思われがちだが、これまでに生まれた人間の最も多い死亡原因は、ある病気とされています。

その病気は世界三大感染症の一つである「マラリア」である。

✻世界三大感染症
エイズ、結核、マラリア

クレオパトラも平清盛も苦しんだとされるマラリア

この病気は4000年以上前から知られている。

マラリアと言う名称はイタリア語の悪い空気」に由来しているとも言われている。

「ハマダラカ」と言う蚊によって感染し、高熱を発して酷くなると死に至る病気である。

ハマダラカは世界におよそ460種が知られ、そのうち約100種が人にマラリアを媒介できるが、一般にマラリア原虫を人に媒介しているのは、その内の30〜40種とされる。


(ハマダラカ)


病気を媒介して人や家畜に対して、疾病の原因となるなど、衛生上の損害を与える昆虫やダニ類の事を衛生害虫と言う。

衛生害虫は「媒介害虫」「有害害虫」「不快害虫」等に分ける事ができます。

ハマダラカ類のように吸血する害虫には、日本脳炎を媒介する「コガタアカイエカ」や眠り病を媒介する「ツェツェバエ」など多くの衛生害虫がいる。


世界保健機構(WHO)によると、現在でも世界中で毎年約4億人がマラリアに感染し、約200万人が亡くなっていると言うことです。

この病気の治療薬として知られるのがアルテスネイト(アーテスネート)です。

薬名は、原料となる物質「アルテミシニン」で、植物の学名「アルテミシア·アニュア」に因んで名付けられました。

これがキク科ヨモギ属の「クソニンジン」と言う和名の植物です。

英語名は「スイート·ウォームウッド」スイートは甘いと言う意味ですから、欧米では臭い香りではなく、甘い香りと感じられているようです。

香りの感じ方は人により違うものなのだと思うが、実に香りとはそういうものです。









2021/02/22

日本の春を彩る野草カタクリ No,384

 カタクリ ユリ科カタクリ属

別名=カタコ
古語で堅香子(かたかご)と呼ばれていた。

北米、北東アジア、朝鮮半島
サハリン、ロシアに分布する。

日本では北海道、本州、四国、九州の平野部から山地の林内にかけて分布する。

九州では熊本県のみに分布し、日本の南限とされている。

分布数が多いのは北米で、15種類以上あると言われていて、花色が黄色や白色のものがある。


                         (カタクリの群生)


カタクリは4月上旬に2枚の葉の間から細い花茎を伸ばして、先端に紅紫色の花を一輪、うつむく様に咲かせます。

群生して一面に咲くカタクリの姿は見事です。

「万葉集」の中でも歌として詠まれ、カタクリが古くから人々に親しまれていた事が推察されます。


花が美しいばかりでなく、山菜として若葉、茎、花など、茹でてお浸しなどで食べられるなど、とても有用な植物と言えるでしょう。

調理用の片栗粉はもともとカタクリの鱗茎(球根)から抽出したデンプンの事を言っていたものです。

しかし、精製量が僅かである為、ジャガイモやサツマイモから抽出したデンプン粉が用いられています。

カタクリのデンプンには、クズのデンプンのように腹痛や、体力が弱った人への下痢止め作用もあると言われています。

カタクリのデンプンに熱湯を注いでかき混ぜると、半透明にやわらかく固まります。


これに砂糖やハチミツを加えて、体力の弱った老人や幼児の腹痛の為に食べさせると下痢止めに役立つとされる。

子どもの頃食べた人も多い事だろう。

しかし、一般に市販されているジャガイモなどの片栗粉では、カタクリのような薬用はありません。

カタクリの球根はとても深い部分にあるため、簡単には抜けません。

引っ張るとすぐ切れて球根が土中に残りますが、これはカタクリの生き残る知恵とも言えるでしょう。

鉢植えで育てていると毎年球根は下へ下へと移動し、放っておくと鉢の底で平たくなってしまいます。

従って、毎年の植え替えが必要と言う話もあります。

種子をまくと、初めのうちは一枚葉で二枚葉になると花が咲きますが、花が咲くまでに7年もかかるそうです。

カタクリの葉は斑があるものだけと思われるようだが、斑がないものもある。


    関東エリアの主なカタクリの群生地







2021/02/21

ヨモギ 薬草 No,383

 ヨモギの効能   キク科

「よもぎ餅」でお馴染みのヨモギは別名「モチグサ」と呼ばれる薬草で、道端や空き地など日本列島の至る所にある、これ程珍しい薬草もありません。

 


春先に勢いよく伸び、その高さは1㍍近くになることもあります。

春の若葉は香りも良く、天ぷらにして食べても美味です。

約400年前の中国漢方薬のバイブである「本草綱目」にも記載されている程、薬効もずば抜けています。

❆本草綱目(ほんぞうこうもく)

中国の本草学史上において、分量が最も多く内容がもっとも充実した薬学著作である。

日本でも出版数年後に初版が輸入され、本草学の基本書として大きな影響を及ぼした。

作者は明朝の医師、李時珍(りじちん)(1518〜1593年)


                         (李時珍)

日本でも「日本薬局方」に民間薬として記載され、公的にもその効能は認められている。

葉の裏の綿毛はお灸を据える時のモグサにし、干した葉は健胃整腸に効きます。

また、苦味があるので苦味健胃剤として使われます。

古来より薬湯として、腰痛、腹痛、痔などにも用いられてきました。

ヨモギほうじ茶は漢方のような芳香があり、漢方では「がいよう」と呼ばれ、身体を温める働きがある事から、冷え症に効果があるので昔から、婦人薬として使われてきました。

その他には止血効果があり、手を切ったりした時に、口の中でヨモギをクチャクチャと噛み砕き、傷口に付けて止血しました。

子どもの頃よく利用したものです。

漢方処方でも下血の止血に用いられます。

カルシウムも豊富に含まれ、カルシウム不足からくる自律神経失調症、不眠、イライラなどを沈静化させる効果も発揮します。


✿ヨモギ茶の効能

脂肪代謝を正常にして自然に痩せる。

韓国ではヨモギ茶は「痩せるお茶」として常用されています。

普通、ホルモンのバランスが崩れ、脂肪代謝が高まると太ります。

太ってくると漢方で言う血が滞る
瘀血(おけつ)と言う状態になります。

するとまた太ると言う悪循環に陥ります。

ヨモギ茶は瘀血をなくし、脂肪代謝を正常にするので自然に痩せることができると言います。

ヨモギ茶を与えたブタは脂肪が少ないと言う、データも説得力があります。

ヨモギは身体を温める働きがあるので、冷え症の人は日頃からお茶を飲めば身体も次第に温まってきます。

中国で1500年前から医草として、あらゆる婦人病に使われてきました。

生理不順、不正出血、貧血、流産防止などへの効能が知られていたのです。

✿ヨモギ風呂の効果

ヨモギをさらし袋に2〜3掴み入れて、風呂に入る1時間前から湯に入れておくと、湯がヨモギ色になります。

それからヨモギ風呂に入浴すると、身体がポカポカして1ヶ月も続けると、酷かった膝痛、腰痛が段々軽くなり、最後には痛みが消えてしまった。

肌もツルツルになり身体が温まる。

ヨモギは日干しよりも陰干しの方が精油を逃さない。

ヨモギのお湯は捨てずにまた、熱くして入浴すると一層効果的。

お湯自体はドロドロの緑色になりますが、入浴するとすぐに体中が温まる。


✿ヨモギ茶の作り方、使い方

最も葉の勢いのある5月〜6月の若葉を摘み取り、水洗いして水切りした後、細かく刻んでざるにいれ、風通しの良い場所で一週間程日干しする。

パリパリに乾いた物を乾燥剤などと一緒に、密閉容器で保管します。

一日分のヨモギ茶大さじ3~4杯を約600ccの水に入れ、1~2分沸騰させ、茶こしでこして飲みます。

そのままでは香りなども強く飲みづらいと思うので、その場合はハトムギを中に入れると飲みやすくなります。

いくつかの民間茶をブレンドして飲むのもよいでしょう。

ハチミツを入れるなど工夫して飲むのもオススメです。

✣関連ブログ

ヨモギ  No,465






2021/02/20

3月バラ🌹の手入れ No,382

 3月のバラの手入れ

まだまだ寒い日がありますが、気温は日増しに高くなり、バラはせん定した所から芽を伸ばして、月末には数cmになります。




⑴大苗の定植

上旬まではまだ適期と言えますが、なるべく早く行った方が無難です。

鉢植えの株を庭に下ろすのは、いつでも構わないのですが、冬に土替えした株はまだ根が十分に張ってないにで、土が落ちてしまいます。

新梢がかなり伸びてくるまで待ってから、行った方がよいでしょう。

⑵鉢植えの土替え、鉢替え

大苗の定植同様、上旬までが適期です。

⑶施肥

庭植えの株にはこの頃に「芽出し肥」と言って化成肥料などを株元に撒く人もいますが、冬に施した元肥が徐々に効いてくる頃ですので、やらなくて構いません。

鉢植えには置き肥と液肥をやり始めますが、遅くなってから土替え、鉢替えした株は、その後10日後位から
新しい根が伸び始めるので、それから与え始めましょう。


⑷せん定と誘引

上旬までにブッシュ系(HT.Fなど)やシュラブ系のせん定を終えるようにします。

❆HT=ハイブリッドティー
F=フロリバンダ

つるバラのせん定と誘引もまだ終えてない場合は、上旬には済ませるようにしましょう。

⑸病害虫の防除

せん定を終えたものには、石灰硫黄合剤を散布しますが、一回だけ丁寧に行うのが重要で、すでに2月中に済ませてる場合は不要です。

芽が動き出していても、上旬までなら薬害の心配はありません。

通常の薬剤定期散布は4月に入ってから始めましょう。


(6)🚰水やり

庭植えの株には雨が定期的に降り、土中の水分が不足することはないので、水やりは基本的に不要です。

鉢植えの株には、表土が乾いたらたっぷり与えます。


(7)繁殖

スタンダード仕立ての芽接ぎは、霜が殆ど降りなくなったお彼岸の頃に、冷蔵庫に保存してあった穂木から芽をとって用意した台木に接ぎます。

1芽だけだと失敗するおそれがあるので、2〜3芽を接ぎ、その後の生育を見て1つに絞ります。





2021/02/19

春の花 梅 No,381

 ウメ バラ科

春は一番多くの種類の花が咲く華やかな季節です。

彩りが少ない寒い時期に花を咲かせるウメは、香りも良く観賞用花木として親しまれています。

また、果実は食用や薬用としても利用され、古代より栽培されてきた利用価値の高い花木です。


                              (紅梅)

「ウメ」と言う語源には様々な諸説があります。

①「梅」の漢字はメイmeiまたはマイmuiと発音しますが、これを日本語的に読んだと言う説。

②中国から薬として渡来した白梅の実から作る、烏梅(うばい、梅のくんせい)の音読みとする説。

③朝鮮語の「マイ」に由来する説。

④ウメの「メ」は実で、熟れる実
熟実(うむみ)が転訛して「ウメ」になったと言うように様々な説があります。

学名では、アルメリアカ·ムメ
(Armeniaca.mume)で以前の属名は、プルヌス(Prunusサクラ属)でアンズ、スモモ、モモ、サクラも同じ属でした。

本来Prunusはスモモ属を意味し、そして✭APG分類体系ではサクラ属が細分化され、プルヌス属は本来のスモモ属とされた。

✭APG分類体系とは
1998年に公表された被子植物の新しい分類体系です。

被子植物系統グループはこの分類を実行する植物学者の団体です。

この部分は特に命名されておらず
「APG体系」や「APG分類体系」などと呼ばれます。

対象とする生物の系統関係、祖先と子孫の関係に基づいて分類を行う系統分類の一つ。
その後分類が大きく変わった研究グループもある。

ウメとアンズはアンズ属アルメリアカになり、モモはモモ属アミグダルスとなり、サクラの仲間はサクラ属ケラススCerasusに分けられました。

属名のアルメリアカはトルコの東側の国アルメリアの事で、アンズの原産地がアルメリアと思い違いをしたためです。

種小名の「ムメ」はシーボルトが初めて日本に来た際(1823~1830年)
江戸時代の呼び方に基づいて付けたものです。

✿アンズ属の仲間と原産地

アンズ属はバラ科に属し、ウメ、アンズ、マンシュウアンズ、モウコアンズなど8種程の野生種が中国を中心として分布している。

ウメは温暖帯に分布し、他の7種は冷湿帯に分布しています。

ウメの原産地はチベット東部と中国西南部雲南、四川省から広東省に至る地域と指定され、日本への渡来は弥生時代と言う説と、万葉集に初めて登場するので、奈良時代7世紀後半と言う説があります。

アンズはウメより葉の葉柄が長く区別できる。


✿花芽と葉芽

枝の先端につく小さな芽(頂芽)が葉芽で、脇の方の葉腋につく大きな芽が花芽です。

原則として1箇所に1つ付くが、どちらかが複数つくなど変異もある。

ウメは1つの花芽に1つの花しか咲きませんが、サクラの仲間は1つの花芽で複数の花が咲きます。


花芽の形成は日長や温度変化が関係していますが、ウメは高温で花芽が分化します。

そのため、7月〜8月頃春から伸びた枝、主に長さ30cm以下の短枝に花芽をつけます。

花芽を形成した翌年の1月〜3月に開花し、葉は花後に展開します。

アンズの花と似ていますがアンズは、ガク裂片が反り返っているので区別できます。

                       (アンズのガク片)

ウメは殆ど花柄がなく、ガク片は反り返らない。

                          (ウメのガク片)

花弁の基本数は5枚ですが、一重咲きでも6〜8枚の花弁を持つ花や、八重咲きもあります。

雄しべは多数で、一本ずつ同心状の環状に配列されていますが、八重咲きは雄しべが花弁化したものです。

雌しべは一本ですが、複数ある座論梅(ざろんばい)と言う品種もある。

子房には密毛があり、スモモの子房は無毛で花柄が1.5cm程あることで区別できる。


                (ウメの花の縦断面図)

✿花の色々

ウメの園芸品種は長い栽培歴史の中で、江戸時代にたくさんの品種改良が進められ、今では300品種以上あると言われています。

園芸品種の分類では、花を鑑賞する「花梅」果実を収穫する「実梅」に分けられ、更に花の色で「白梅」と「紅梅」の二大別されます。

更に、花や茎葉の形や性質によって、細かく分類されます。


      (ウメの花色、花形のいろいろ)

ウメの花は花色、花形、花弁の状態で複雑に組み合わされ、変化に富んでいます。

✻ウメの関連ブログ
盆栽ウメNo,13
ウメの盆栽の分類No,60
ウメ(梅)No,112


✫一般的な梅酒の作り方
青梅(果実)1kg
砂糖 500g

原酒1.8㍑
(焼酎35度ホワイトリカー)

傷のない果実を選び水洗いしたら、完全に水気を拭き取ります。

容器に果実と砂糖を入れ、静かに原酒を注ぎ入れて密封します。

3ヶ月から飲用できますが、一年待つと風味が良くなります。

果実は一年で取り出します。









2021/02/18

ドイツトウヒ マツ科 No,380

 ドイツトウヒ 「唐檜」

Picea.abies
別名=オウショウトウヒ
ヨーロッパトウヒ

原産地=ヨーロッパ北、中部
日本=本州中部地方、紀伊半島に分布

唐風(中国風)の檜(ヒノキ)に見立てた名前だとされる。

ヨーロッパからシベリアにかけて広く分布し、低地から森林限界付近まで生育している。

植林も昔から広く行われている。

ヨーロッパでは主要な造林樹種となっていて、建材として幅広く用いられる。




深山に生え、高さが25㍍程になる常緑高木

樹皮は暗赤褐色で、やや灰色を帯びるが、✻地衣類が付着して白っぽく見える木も多い。

✻地衣類(ちいるい)とは
共生菌、地衣体地衣類は菌類のうちで、藻類を共生させることで、自活できるようになったもので、一見するとコケ類などに似て見えるが、構造は全く違うもので、植物ではありません。

菌類の仲間が藻類と共生して1つの体を作っている。

菌類のみで生活する事は極めて困難である。

特殊な生物群として分類され、400属2万種が記載されています。

大木になると樹皮は鱗片状に剥がれる。

エゾマツと同種と考える学者もいるが、葉が短く、球果が小さいなどの違いがある。

トウヒ属にはエゾマツ、アカエゾマツがある。

      葉の先端は尖らないのが特徴


葉の裏に白い気孔帯が2本あり、表裏の差がはっきりしています。
形態学では白い方が葉の表面である。


モミの木の仲間で、モミの木同様
クリスマスツリーに使われる定番の木で、日本へ渡来したのは明治時代の中期頃とされる。

松ぼっくりは長さが20cmにも達する大きな物で、種子はリスの好物。

✻ドイツトウヒの品種
背丈が大きくならない矮性の
園芸品種ニディフォルミス