緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/04/11

ムクノキ No.432

 ムクノキ ニレ科 ムクノキ属

別名=ムクエノキ、モクエノキ 落葉高木
椋の木、樸樹

原産地=日本(関東以西)韓国、済州島
中国、台湾に分布

山地や川岸などに自生するが、人家周辺にもよく植えられている落葉高木で、大きいものは20㍍程になり、よく枝分かれして丸みのある樹形になる。

神社の境内などには、大木が枝を張り日陰を作る。

花は春に葉が出だすのと同時に咲き、果実は球形で紫黒色に熟す。

種子のまわりの果肉が甘く食べられる。

ムクドリの大好物で、よく飛来することからムクドリと呼ばれるようになった。

葉を触るとザラザラする。

それは、植物の表面がケイ酸質の物質で覆われているからです。

ケイ酸は石英やガラスの主成分であるので、葉の表面はガラスで覆われている状態であることになりますが、このようなケイ酸によるものはイネ科やカヤツリグサ科の植物などであるが、木本植物では珍しいことです。

葉は乾燥させ、磨くのに使われる事から、自然界が作ったサンドペーパーと言えるでしょう。

生育環境

大木になるので、公園木、日陰樹として最適である。
日当たりがよく肥沃な土壌を好む。

肥料

根の周りに有機質の寒肥を与える。
植え付け移植は1月から3月
せん定は11月から12月、2月から3月


✿ムクノキの天然記念物

伊奈町の大ムクノキ
伊奈町指定天然記念物 昭和48年
(1973年)指定


埼玉県北足立郡伊奈町西小針1-2(桂全寺内)


✿矢野の大ムクノキ
県指定天然記念物 昭和58年3月29日指定



樹齢推定600年以上
兵庫県相生市矢野町森
西播丘陵県立自然公園


✿椋本(むくもと)の大椋
国指定天然記念物 
1934年、昭和9年1月22日指定



樹齢1500年とも言われる大ムクノキ
樹高約25㍍、かつては12㍍以上もあった幹周りは、明治3年の台風被害で損傷し幹の一部が失われ、現在に至っている。

三重県津市芸濃町椋本






2021/04/10

ムクロジ No,431

 ムクロジ ムクロジ科

無患子、天患子、木患子

原産地=インド、台湾、中国
日本(本州中南部、四国、九州、沖縄)

神社や寺院の庭などに緑陰樹として植えられる。

寺社に植えられたものなどは果実がびっしりとつくが、山地のものは実つきがあまりよくない。

果皮にサポニンを含み水を泡立てるので、昔は、石鹸のようにして使われた。

これは、果皮に油類を✫懸濁される働きのあるサポニンが含まれているためです。

✫懸濁(けんだく)溶解
液体中に個体の微粒子が分散した状態のことを言う。

ムクロジの種子は、羽根突きの羽根に付ける黒い玉や数珠に使われ、樹皮は薬用に利用された。

有用樹として大切にされたが、現在ではあまり利用されていない。

山地に生え、高さ20㍍以上、樹径70cmに達する落葉高木です。





インドの石鹸

ムクロジ属はラテン語でsapoindusというが、これはsapo(セッケン)とindicus(インドの)の2語から成り立っている。

インドで石鹸に使われる木と言う意味であるだろう。

日本でも果皮の乾燥したものを石鹸に使っていた事がある。

生育環境

日当たりのよい肥沃な土地を好み、移植はやや難しいが中木なら一年前に根回しして、細根を出してから葉が展開する前に行える。

植え付け、移植時期は1月から3月

肥料

寒肥として鶏ふん、油かすを与える。

殖やし方

実生で殖やせる。
果皮を取り、乾燥しないように貯蔵して翌春3月から4月頃に播く。

✫種類
熱帯地方に15 種あり、そのうち数種は温帯に広がる。

✿宇芸神社のムクロジ
富岡市指定天然記念物
平成22年4月28日指定


群馬県富岡市神成1178(宇芸神社境内)

群馬県内には市、町指定天然記念物が他にもある。
大胡神社のムクロジ、高橋家のムクロジ






2021/04/09

ブナ No,430

 ブナ ブナ科 落葉高木

別名=シロブナ、ソバグリ、イヌブナ

原産地=日本(北海道南部から九州)

海抜500〜1500㍍の地帯に多く分布するが、北海道と東北では平地でも見られる。

北半球の温帯に10種分布し、日本固有種はブナとイヌブナの2種があり、日本列島の冷温帯域に広く分布するため、樹形や葉の変異が大きい。

一般に日本海側の多雪山地のブナは、葉が大きくオオバブナと呼ばれ、幹はまっすぐに伸びてあまり枝分かれしない。

一方、太平洋側のブナハブラ葉が小形でコハブナと呼ばれ、よく枝分かれしてずんぐりした樹形になるものが多い。

保水力が大きく、日本海側の多雪地帯では✻「水源涵養林」として重要な役目を果たしている。

✻水源涵養林(すいげんかんようりん)とは

雨水を吸収して水源を保ち、あわせて河川の流量を調整するための森林のこと
水資源の確保や水害防止に役立ち、保安林に指定されている樹木など、人工林、天然林など様々な樹種がある。

ブナは5年から7年周期で豊作になるとされ、種子の生産の少ない年を作ることによって、食害する昆虫や小動物などの密度を少なくし、豊作年には動物が食べ切れないほどの種子を付け、子孫を残すようにする機能を持っている。

果実は食べられるが、熊やリスなど山の動物たちも果実は大好物である。



材が柔らかく材料としては細工しやすいが、腐りやすいので建築材などには役に立たないとされてきた事から「橅」と書いてブナと読む。

新緑が美しく、また黄葉の鮮やかさもひときわ目を引く。

山間部に住む人々や登山愛好家には馴染みが深い樹木である。


灰白色の樹皮も滑らかで木の美しさをひきたてている。

温帯の指標植物である。



✣類似種

よく似たイヌブナは、幹の周りにヒコバエをたくさん出し、葉はブナより薄い。

側脈がブナより多いことや果実がぶら下がって付くなどの特徴がある。

別名のシロブナは、イヌブナに比べめ樹皮が白っぽいことによる。
ソバグリとも呼ばれるのは、堅い実がそばの実に似ていることに由来する。

✿生育環境

適度に湿気を含んだ土壌が適している。

夏の直射日光に当てると葉焼けを起こすので、半日陰がよい。

盆栽の場合は3月から10月の間に月1回ずつ置き肥を施す。
ただし、真夏の8月は除く。
一年を通じ水やりも十分に行う。


✫備考
せん定は2月から3月頃
植え付け移植時期は12月
3月に実生で殖やす。






2021/04/08

シチョウゲ No,429

 シチョウゲ アカネ科 シチョウゲ属

別名=イワハギ、ムラサキチョウジ     紫丁花        落葉小低木

紀伊半島や四国四万十川流域など、暖かい地方の川岸の岩の上などの湿った場所に自生し、夏から秋にかけて紫色の小さな花が咲く。

典型的な渓流沿い植物で、増水時に水を被る範囲だけに生育する。





紫色の花が✫丁字に似ていることから「紫丁花」の名がある。

✫丁字(チョウジ)チョウジノキ

丁字の名前は花の中心部の筒状花(つつじょうか)が発達し、大きくなってはっきりと花びらに見えるようになったもので、フトモモ科のチョウジノキ(英名=スローブ)の実がなる木の花によく似ていることから由来する。


丁字咲きと呼ばれるが、欧米ではアネモネ咲きとも呼ばれる。

チョウジノキ(クローブ)は世界四大スパイスの一つとされている。

✫世界四大スパイス
コショウ、ナツメグ、クローブ、シナモン


                              「チョウジノキ」

シチョウゲは全株に独特の臭いがある。

花は枝先や上部の葉の腋に数個ずつ咲き、最盛期は7月から8月だが、6月頃から10月頃までポツポツと咲き続ける。

楕円形の果実は中から小さな種子を出す。


✿生育環境

半日陰地でも育つが、日当たりの方が花つきが良い。

露地で冬を越せるのは関東南部より西で、越冬温度は4.4℃ぐらいなので必要なら防寒をする。


砂質土壌を最も好み、植え付け、移植は12月から3月。

✫肥料

油かす、鶏ふん、化成肥料などを施す。

殖やし方

挿し木は4月に緑枝を挿し木する。
実生と株分けは3月が適している。

✻種類

同属のものにヒマラヤ、中国原産のものが100種ぐらいあるが、園芸品種はない。






2021/04/07

エノキ No,428

 エノキ ニレ科 エノキ属

原産地=(日本本州、四国、九州)朝鮮            落葉高木

丘陵から山地の日当たりの良い適度に湿り気のある所や、沿海地や雑木林、人里近くにも多く自生する。

樹高は20㍍、直径1㍍程になり、よく枝分かれして横に広がる。

昔は街道の一里塚や村境、橋のたもとなどによく植えられ、各地に謂れのある大木がある。



果実は10月頃に赤褐色に熟す。
昔は子どものおやつにされていました。

葉は日本の国蝶に指定されている「オオムラサキ」の幼虫の餌になることから、オオムラサキの保護のため、エノキを植林している地域もある。



                                    (ヤドリギ)

✣枝にはヤドリギがよく寄生している。

(宿り木、寄生木)

ヤドリギはヤドリギ類の総称的通称で、日本に自生する和名であり、英語では「ミスルトウ」と呼ばれる。


エノキの名前の由来として、器具の柄に利用されることから「柄の木」の名前が付いたとする説と、よく燃えることから「燃え木」の名が付き、それが転訛して「エノキ」になったとする説などいろいろな説がある。




「縁切木」と書いて不吉な木とされたり、「吉の木」と書いて有難がったり、昔から人々に馴染みの深い木でもある。


✫生育環境

乾燥地であってもよく生育し、土質は特に選ばない。

枝が横に広がるので広い場所に植栽する。

✣肥料

やせ地の場合に限って化成肥料を施す。

❆殖やし方

実生が適している。

秋に採り播きするか、貯蔵しておいたものを翌春に播く。

✣種類
長い楕円の葉を持つナガバエノキ、本州中部に稀に見られるシダレエノキ、葉がゆがみ葉先の尖ったマルバエノキがる。

花期は4月から5月頃で淡黄色の小さな花をつける。
植え付け、移植は3月頃でせん定は4月から5月頃。


✿長野県上田市丸子町のシダレエノキ
国指定天然記念物
樹齢およそ300年と言われたシダレエノキは1977年(昭和52年)に老衰のため枯死してしまった。


                                 (シダレエノキ)

現在では実生や接ぎ木された子木が残され、大切に保護されている。

✿赤羽根大師のエノキ
国指定天然記念物 2004年指定
樹齢推定800年



徳島県美馬郡つるぎ町一宇


✿宮野八幡神社の大エノキ
市指定天然記念物 1977年指定

カワラタケキノコ菌により、腐食が進行している樹木で危機的状況にある天然記念物。



折れた部分にカワラタケが生え、樹勢が衰え、枯死する可能性もある。

広島市安佐北区安佐町(宮野八幡神社)







2021/04/06

クルミ No,427

 クルミ クルミ科  胡桃 呉桃

原産地=日本(本州、東海地方以西、四国、九州)
朝鮮半島、中国、台湾、ヨーロッパ

北半球の熱帯から温帯に8属60種程があり、日本には3属3種が自生する。

クルミは、太古の時代から貴重な食料や材料資源として栽培されてきた。

日本原産の「オニグルミ」や「ヒメグルミ」は殻が堅く、食べる部分が少ないのでほとんど栽培されていないが、江戸時代以降に渡来し「テウチグルミ」や「ペルシャグルミ」及びその変種である「シナノグルミ」やこれらの改良種が栽培されている。




✫生育環境

雌花と雄花の咲く時期が異なるので、数種類混植する必要がある。

花期は9月から10月
また、冷涼で土壌の深い所を好む。

✣害虫
クルミミガ、カミキリムシなどが発生するので、カルホス乳剤、ダイセンなどを時々散布する。

✻殖やし方

実生苗に接ぎ木が一般的で5月から6月頃が適期です。
実生は3月、10月から11月に播きます。

植え付け、移植は11月から3月
せん定は11月から12月

✿肥料

油かす、鶏ふん、堆肥等の有機質肥料を十分施す。





✿広徳寺クルミ

韓国最初のクルミの木として知られる。
天然記念物第(398号)



天安市高徳面、海抜699㍍の広徳山麓にある広徳寺に、樹齢400年のクルミの木がある。

広徳寺は季節を問わず、多くの参詣者が訪れ、天安名物の「くるみ饅頭」の原材料となるクルミの原産地でもある。

✻所在地
忠清南道天安市東南区広徳面広徳寺ギル30