緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/04/26

カラマツ No,447

 カラマツ マツ科 落葉針葉高木

別名=フジマツ、ニッコウマツ
「唐松、落葉松」
原産地=日本

日本の固有種だが、葉を唐絵に描かれた松に例えて名前がついた。

中国にも似たものがあり、ヨーロッパやアメリカにも種の仲間がある。

日本の針葉樹の中では唯一の落葉樹で、そのため落葉松の漢名がある。

植林されたものではスラリと伸びたカラマツを見る事が多いが、風当たりの強い場所に自生したものには、地面を這い、蛇がのたうつ様な凄まじい樹形のものがある。

自生は深山の尾根や崩壊地などの乾燥した場所に生える。

樹高は20〜30㍍程で、大きなものでは50㍍に達するものもある。

新緑の時期には鮮やかな緑に彩られ、秋の黄葉時期もまた見事で見栄えがある。

庭園樹、公園樹、防風防寒林、盆栽としても利用される。




生育環境

土質は弱酸性で、適度に湿気を含んでいると同時に、通気性がよく柔らかい肥沃な土壌が最も適している。

耐寒性が弱いので東京以南では育ちにくい傾向がある。

肥料

油かす、化成肥料などの寒肥を施す。

病害虫

落葉病
葉身表面に黄色の小斑点が現れる。
のちに裏面にも黒色楕円もしくは円形の菌体を生じる。

羅病が発生した葉は黄褐色になり落葉する。

病葉上で越冬した病原菌が伝染源となり、子のう胞子が風や雨滴とともに飛散して伝播する。

特に、空気湿度が高く、陰湿な環境下で多発する。

防除として、落下した病葉を集め処分するとともに、感染期には降雨の前後を重点に銅製剤(ボルドーなど)を散布して蔓延防止を図る。


葉さび病
4月から5月頃に発生する。
病原菌は担子菌類に属する糸状菌で、中間宿主を有する異種寄生菌である。

さび胞子が飛散して中間宿主であるキク科植物に感染、移住し、6月から7月に病葉裏面に黄白色の胞子層を生じる。

その後、胞子の発芽によって生じる小生子が飛散して再び寄生する。

葉さび病は中間宿主が存在しなければ発生しないので、中間宿主植物を除去することが最も簡単な防除法となる。

周辺に存在する雑草などを夏期に刈り取り、伝染源を断つことが重要である。

薬剤による防除は9月頃を重点に、ジネブ剤、メプロニル剤、ビテルタノール剤、トリフルミゾール剤、マンゼブ剤、トリホリン剤などを2週間おきに2回〜3回、樹全体に散布し感染を防止する。


すす病
主に針葉や枝梢に発生する。
病状が進むと針葉の一部または全身を覆うようになる。

針葉や枝梢に煤煙が付着したようになって、光沢がなくなるため美観を損ない、樹勢の衰弱を引き起こす。

吸汁性害虫であるカイガラムシ、アブラムシ類の寄生が主な誘因で発生するので、殺虫剤を散布し、駆除する事が最も重要となる。

すす病と害虫を同時に防除する場合には、マンゼブ剤、ベノミル剤、チオファネートメチル剤などのいずれかを、殺虫剤と混合散布すると効果的です。

風通しや日当たりをよくし、極端な肥料不足やチッ素質過多にならないように注意が必要です。

病枝梢をできるだけ取り除き処分し、伝染源を残さないようにする。


害虫はマツノオオキクイムシなどが発生する。
スミチオンなどを散布し、駆除する。

殖やし方

実生で殖やす。
秋に採種したものを低温貯蔵しておき、翌年3月頃に播く。

種類

フイリカラマツ、アカミノカラマツシダレカラマツなどの品種があり、類似種にグイマツがある。


主なカラマツの天然記念物、巨樹

権兵衛峠のカラマツ
市指定天然記念物で日本最大のカラマツとされる。
地元では、権兵衛峠のジャンボカラマツと呼ばれている。

所在地=長野県塩尻市奈良井字姥神沢


櫛形山(くしがたやま)のカラマツ
所在地=山梨県南アルプス市上市之瀬
裸山尾根




五霊神社の大カラマツ

所在地=福島県南会津郡下郷町高陦(たかしま)
五霊平地内


開進のカラマツ

所在地=北海道広尾郡大樹町開進






2021/04/25

モミ No,446

 モミ マツ科モミ属 常緑針葉高木

原産地=日本(福島県南部以西)朝鮮  「樅」

山麓などに多く自生する常緑高木で、樹高は40㍍に達する。

クリスマスツリーの木としても親しまれているが、大気汚染に弱く、車の排気ガスによって枯れてしまうこともあるので、都会地には向かない。

樹皮は灰色から暗灰色で皮目が目立ち、大木では鱗片状に浅く剥がれる。

                                       「モミ」

生育環境

適度に湿気を含んだ肥沃な土壌が適している。

やせ地に移植する場合は元肥を入れることが必要である。

生長ははじめ遅いが10〜60年の間は早くなる。


肥料

油かす、鶏ふん、化成肥料などの寒肥を施す。

殖やし方

実生で殖やす。
秋に採取した種を低温貯蔵して翌年3月から4月にまく。

種類

変種としてアオオオシラビソモドキ
品種としてコモミ、フイリモミ
国の天然記念物のシダレモミなどがある。

類似種として、高山に自生するシラビソ、オオシラビソがある。

オオシラビソ(大白檜曽)

アオモリトドマツともいう。
亜高山帯に生える常緑高木で、冬には樹氷の姿で越冬する。

                               「オオシラビソ」

シラビソ(白檜曽)

シラベともいう。
深山に生える常緑高木で、群生することが多く亜高山帯に黒々とした針葉樹の森をつくる。


垂洞(たるばら)のシダレモミ

国指定天然記念物
岐阜県中津川市付知町垂洞


                            「垂洞のシダレモミ」






2021/04/24

アスナロ No,445

 アスナロ ヒノキ科 常緑針葉高木

「翌檜」

別名=ヒバ、アテ

原産地=日本(本州、四国、九州の山地)

通説では「明日は檜になろう」の意味とされているが、古くは阿須檜(あすひ)または当檜(あてひ)と呼ばれていた。

「ヒ」はヒノキの意味である。
葉の厚い檜、気品の高い檜という意味だとも言われる。

学名の「ショプシス」はクロベ属に似ているという意味だともいわれている。

樹幹は直立し、大きいものは高さ40㍍直径1㍍にもなる。
針葉樹の中では最も耐陰性が高いとされる。

葉裏には幅の広い白い気孔帯があり、針葉樹の中では一番目立つ。

花は5月頃に咲き、球果は10月頃に褐色に熟す。


                             「馬曲七曲のアスナロ」

生育環境

適度に湿気を含んだ肥沃な土壌が適している。
陰樹なのであまり日当たりの良い場所は適さない。

肥料

油かす、鶏ふん、化成肥料などの寒肥を施す。

病害

てんぐ巣病が発生する。
病枝をせん定除去し、風を通しをよくする。

殖やし方

挿し木が最も一般的です。
実生や接ぎ木でも殖やせます。
接ぎ木ではクロベ属の台木を使う。


種類

変種に大形で球形の球果を持つヒノキアスナロ

品種に極細の葉で球果の小さいホソバアスナロ

園芸品種には多幹性の低木のヒメアスナロなどがある。


主なアスナロの天然記念物、巨樹

芝原轟口(しばはらとどろぐち)のアスナロ
県指定天然記念物
宮崎県西臼杵郡高千穂町

馬曲七曲(まぐせななまがり)のアスナロ
十島平村指定天然記念物
長野県下高井郡十島平村往郷(馬曲)


岩野辺の大アスナロ
県、市指定天然記念物
兵庫県粟市千種町岩野辺(西播磨)

津軽の名木「十二本ヤス」
市指定天然記念物
青森県五所川原市喜良市字相野山

天照寺のアスナロ
三重県伊賀市霧生2559番地

岩角山のアスナロ
県指定天然記念物
福島県木宮市和田東屋口






2021/04/23

クヌギ No,444

 クヌギ ブナ科  落葉高木

別名=ツルバミ 椚、櫟、橡

原産地=日本(岩手、秋田県以南) 朝鮮半島
東南アジア、中国、ヒマラヤ、台湾

丘陵地や里山に生え高さ15㍍程になる落葉高木で、雑木林を構成する代表的な品種の1つ。

伐採された木材は薪炭材料として、落ち葉は肥料や燃料に使われていた。

現在では椎茸栽培のほだ木(原木)として利用されている。

国木から転訛した名前だとされる。

古名を「ツルバミ」といい、古代には樹皮を染料にしたり、また薬用としても利用された。

切り倒しても株からすぐに萌芽してくるので、常に維持更新されてきた。

よく手入れされた雑木林は、明るく見通しもよく林床には、スミレ類やリンドウなど多くの草本植物が可憐な花を咲かせる。

薪や炭が使われなくなってからは、雑木林は手入れがされなくなり、笹などが生い茂り、場所によってはゴミ捨て場となっている。

生長は早く、大きくなると高さ30㍍、直径2㍍近くにもなるものがある。

葉は栗の葉に似た細長い楕円形で長さ7〜15cm、葉の先端は鋭く尖る。

実はドングリで球形、翌年10月頃に熟す。




生育環境

陽樹であるので日陰は適さない。
普通の土壌で十分育つが、適湿な肥沃地なら生育は良好となる。

肥料はほとんど必要ない。

クヌギ、コナラの仲間

アベマキ (木靑)

本州以南に自生し、葉はクヌギに似ているが葉裏に毛が密生しているので、クヌギと区別ができる。

西日本では雑木林の代表的な木で、かつては樹皮からコルクを取るめに栽培された。


                                                「アベマキ」

ミズナラ (水楢)

日本各地の山地に自生する。
コナラとよく似ているが、コナラに比べて葉柄がごく短い。

材に多量の水分を含むのでこの名がある。


                                                  「ミズナラ」


カシワ( 柏、槲)

かしわ餅を包むのは柏の葉であるが、古くから食物を盛る炊葉として使われた。

日本各地の山地に自生し、波形の大きな深い鋸歯を持つ葉が特徴である。


                                                   「カシワ」


コナラ( 小楢)

コナラはクヌギと同じくブナ科の落葉高木で、雑木林の代表的な樹種で紅葉は特に美しい。


                                                      「コナラ」

病害虫

うどん粉病、すす病、黄さび病などの病気が発生するが致命的ではない。

害虫はドクガ、コガネムシ類、カミキリムシ類などの発生もあるが致命的な被害はない。


植え付け、移植、せん定時期は2月から3月頃
11月から12月


殖やし方

通常は実生で殖やします。
実は乾燥させないようにし、秋に採り播きをする。

主なクヌギの天然記念物、巨樹

小日向のクヌギ 市指定天然記念物
所在地=長野県安曇野市明科東川手3369

阿弥陀堂のクヌギ 市指定天然記念物
所在地=秋田県大仙市清水字下黒土1281

三之蔵のクヌギ
所在地=山梨県韮崎市穂坂町三之蔵
宮久保のクヌギ 市指定天然記念物
所在地=山梨県韮崎市穂坂町宮久保


大納言塚大クヌギ
奈良県大和郡山市箕山町

淡濃山の大椚
和歌山県広川町山本





2021/04/22

ニシキギ No,443

 ニシキギ ニシキギ科 落葉低木

別名=ヤハズニシキギ  「錦木」

原産地=日本各地、朝鮮半島、中国

紅葉の状態が錦のように色とりどりが美しいことから名付けられた。

山野に生える落葉低木で高さは2㍍ほどになる。
枝にコルク質の翼のようなものがつく特徴ある植物で、翼が出ないものを「コマユミ」と呼ぶ。

庭木や生垣、盆栽にされることが多い。
カミソリノキとも呼ばれるようだが、これは茨城県や栃木県の方言名であるとされる。

5月から6月頃に黄緑色の花をつけ、秋になると紅葉し小さな果実を1〜2個吊り下げ、裂開すると赤い仮種皮に包まれた種子が出る。

土壌を選ばず日陰地も強く生育する。

せん定にも耐えるので生垣や高木の下木等に用いられる。




生育環境

丈夫な木であるのでどこでもよく育つ。
移植は10月から11月と3月から4月が適している。

細根が多いので活着も良い。

肥料

あまり必要としませんが与える場合は、堆肥や油かすなどの有機質肥料を寒肥として与える。

病害虫

ハマキムシ、カイガラムシが発生しやすいのでカルホス乳剤や石灰硫黄合剤で駆除する。


せん定

せん定、整姿時期は11月から2月
あまり多く枝分かれしないので、3月下旬に間引きせん定をする程度で良い。

生垣にした場合は、落葉後に刈り込むがこの場合、花実は期待できません。

花実や紅葉を楽しむなら、日中よく日が当たり夜間冷涼な所であればよく紅葉する。






2021/04/21

ハゼノキ No,442

 ハゼノキ ウルシ科 落葉高木

別名=リュウキュウハゼ、ロウノキ「櫨の木」
原産地=中国、ヒマラヤ地方

日本 (関東以西)四国、九州、沖縄に分布

ハゼノキは中国から沖縄を経て渡来したので、リュウキュウハゼという別名がある。

日本で昔からハゼと呼んでいるのは、現在ヤマハゼと呼ばれるもので、日本原産のやや小形の木で葉や若葉に毛があることで区別される。

果実から蝋(ロウ)を採るのでロウノキともいう。

山の尾根や傾斜地、沿海の山野に生え高さは10㍍ほどになる。

本来の分布は四国、九州、沖縄だが蝋を採取するために各地で植えられ、それが野生化している。

ヤマハゼに大変よく似ているが、こちらは葉や枝が無毛なのが特徴である。

6月頃に黄緑色の小さな花を多数咲かせる。
葉は無毛なので触るとツルッとしている。

秋には美しく紅葉し、庭園や山野を彩る。



生育環境

水はけがよく日当たりのよい温暖地に植える。
丈夫な木なので栽培は容易である。

生育も早く3年から4年で結実し、特に土壌も選ばない。

病害虫はほとんど発生しない。

肥料

油かす、鶏ふん、堆肥などの有機質肥料に化成肥料を加えて寒肥として施す。

植え付け、移植時期は2月から3月頃と10月から11月
せん定の時期は11月から3月

殖やし方

実生と挿し木で殖やします。
実生は発芽処理を行ってから播く。