緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/09/27

樹を枯死させる病気④=かわらたけ病 No,554

 かわらたけ病

枝幹に発生し、傷口や枯れ損傷部から病原菌が侵入し、樹幹を枯死、腐敗させる。

腐朽部は白化してもろくなり乾燥すると粉状となる。

腐朽部の表面にはキノコ(子実体)が重層状に形成される。

病原菌は担子菌類に属する糸状菌の一種で、栗のほかナラ類、樹木ではクヌギ、コナラなどに寄生する。

また、ポプラ類、ヤナギ類、ハンノキ類、ブナ類、カシ類、シイノキ類、サクラ類、ナナカマド、キリ、スギ、スモモなど多くの樹木や果樹に寄生することが知られている。

病原菌は樹上で越冬し、カワラタケから噴出、飛散する担子胞子が第一次伝染源となって風媒伝播を行なう。

担子胞子は幹や枝に生じた傷口から侵入感染するが、他の胴枯性病害などによる衰弱、枯死枝、幹に生じた病患部の古い樹皮から感染発病に至る。


防除法

被害樹の根の周囲の土を掘り上げ、病患部及び病根をすべて切除する。


切り口にはチオファネートメチル塗布剤を塗り、掘り上げた土壌にバーク堆肥と土壌殺菌剤を加えて、よく混ぜ込んで埋め戻す方法がある。


処置は樹勢が回復し根が発達し終えるまで支柱を添えておく。

枯死樹の跡地には、クロルピクリン剤、ダゾメット剤などのガスくん蒸剤による土壌消毒を行う。


✬同様の病気として知られる「ナラタケ病」については、ブログNo,549『庭木の突然枯死の原因』の項目の中で記載していますので参照ください。





2021/09/26

樹を枯死させる病気=胴枯病、枝枯病③ No,553

胴枯病 (病原体はカビ) 枝枯病

枝枯病は、枝が枯れる病気を指すのに対して、胴枯病は幹が枯れる病気の総称です。

胴枯れ、枝枯れ性病害は2つの型に大別される。

病気の初期段階では症状が現れないが、病気が進行すると樹皮に暗褐色の病斑が現れます。


病斑部はやわらかくなり指で摘むと簡単に剥がれる。


更に、病気が進むと病斑が褐色に変わり、小さな突起物が現れます。

この突起物は病菌の繁殖器官です。
発生時期は6月から10月

病菌は害虫による傷口、せん定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

この病気は樹が若いうちは少なく、樹齢が進んだものほどかかりやすくなります。

感染経路は、繁殖器官で作られた胞子が、風や雨、虫の体などに付着して運ばれ感染します。

また、樹の手入れに使うノコギリの歯から感染することもあります。

この病気に対しての薬剤などを使った直接的な治療法は見つかっていません。

病斑部は出来るだけ深く削り取り、せん定による切り口、傷口などにトップジンMや石灰硫黄合剤を塗りましょう。

乾いたら墨汁や接ぎロウなどを塗って予防します。

せん定のし過ぎなどによって幹を傷つけないように注意し、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたら駆除しましょう。


サクラ胴枯病

大、中径木の樹幹や太枝で特に枝の分岐した部分で発生します。

はじめ樹皮の一部が突起し、内部は褐変腐敗するが、のちには乾燥して陥没する。

樹勢が旺盛な場合は、夏に患部周囲に融合組織を生じて癌腫状になるが、衰弱した樹や小枝では患部が枝幹を一周して上位部がしぼんで枯死に至る。


やや大きいイボ状の突起物が形成されたものは子のう殻の状態で越冬して、伝染源となって春から秋にかけての降雨の後に、子のう殻内の胞子を放出して風媒伝播を行う。


病原菌は糸状菌の一種で、サクラ類の他にモモ、ウメの癌腫病やヤナギ、ハンノキの腐らん病を起こす病原菌でもある。


防除法

晩秋から早春にかけて被害による枯死枝を切除、焼却処分する。

患部が幹や枝の一部であれば、少し大きめに健全部を含めて患部樹皮を削り取り、切り口からの材質腐朽菌の侵入防止と癒合促進のために、硫酸オキシキノリン剤、チオファネートメチル塗布剤を塗布する。


モミジ、カエデ類の胴枯病

樹幹や枝梢に発生し、はじめ小枝に暗褐色の病斑を生じるが、次第に太枝に拡がってやがて幹全体が枯死に至ることがある。


枯死した樹幹の表面には多数の小さな突起物を生じる。

この突起物から白色または淡黄色のヒモ状粘塊物を噴出する。

患部の樹皮を剥がすと、材の表面には白色不定形の斑紋が確認できる。

病原菌は3種の胴枯病菌が関与しているが、主にヤマモミジ系の栽培品種に多く発生する傾向があります。

いずれの病原菌も患部に形成された子のう殻、柄子殻(へいしかく)の状態で越冬して、翌年の伝染源となる。

患部は被害が大きくならないうちに健全部も含めて大きく削り取り、傷口にはチオファネートメチル塗布剤を塗って拡大防止を図る。

重症被害樹は放置しないで、早期に伐採処分を行って、伝染源を排除する事が重要です。


イチジク胴枯病

枝、幹に発生し、はじめは樹皮の表面に淡紅色のくぼんだ小さな病斑が生じる。

病斑は次第に大きくなり縦、横の亀裂を生じる。

太枝や幹は衰弱するだけですが、細い枝では枯死するものもある。

翌年の春に小さな黒い粒を生じ、夏になると胞子の塊を噴出して感染源となる。


オウトウ胴枯病

枝、幹に発生し、幹の途中から樹脂がにじみ出て、その部分とその上の部分の樹皮が暗褐色または赤色になります。

次第に水分が被害部から先に行き渡らなくなり、水分不足の状態になって枯れてしまう。

古い樹によく発生し、若い樹にはあまり発生しない。

防除法

病斑部を出来るだけ深く削り取り、せん定の切り口や傷口なども含め、トップジンMや石灰硫黄合剤を塗り、乾いたら墨汁や接ぎロウなどを塗って予防します。

幹に傷をつける害虫を見つけたらすぐに捕殺します。

せん定のし過ぎによって樹幹に傷をつけないよう注意します。


★まとめ

胴枯、枝枯病
樹体の衰退を招かないよう、土壌改良や肥培管理、防寒及び乾燥害対策によって樹勢を維持することが基本です。

病患部の削り取りが困難な場合はそのまま塗布剤を塗ります。

また、チオファネートメチル剤、ベノミル剤、銅製剤などを初期ら秋にかけて、降雨後を重点に樹幹や枝梢が充分に濡れるくらい散布する。

萌芽前に石灰硫黄合剤10倍液を散布し、越冬菌による感染防止を図ることも重要です。








2021/09/25

樹を枯死させる病気=立枯病② No,552

 ボタン立枯病

病気になった株は生育が次第に悪くなり衰弱して行く。

症状が進むと黒く枯れて立枯れ状になります。

この病気は青枯病や萎凋病(いちょうびょう)の症状と似ていて、見分けにくい場合が多いので注意が必要です。

発生時期は5月から9月

病原体は発生する植物によって、カビの場合とバクテリアの場合があります。

病原体は根の傷口から侵入しますが、根を傷つける原因は虫による傷口か、作業中にスコップなどで傷つけることによるなどが考えられます。


葉、茎、花が侵され、葉でははじめ紫褐色を帯びた類円形の病斑を生じ、激しくなると病斑が互いに融合して大型不整形となり、病葉は褐変して枯死する。

茎でははじめ、暗緑色水浸状の不規則な病斑が現れるが、次第に暗褐色のくぼんだ病斑となり茎が腐敗する。

激しい時には、茎葉全体に腐敗病斑が広がって地際から立枯れ症状となる。


花はつぼみのうちに褐色になって枯死する事が多い。

病原菌は不完全菌類に属する糸状菌の一種で、ボタンのほかシャクヤクにも寄生して立枯病を起こす。

病原菌は被害患部組織内の菌糸や表面に形成された菌核の状態で、あるいは被害植物遺体とともに土壌中で越冬し、翌春菌核の発芽によって生じた分生子または遺体上に生じた分生子が飛散して、第一次伝播を行う。


防除法

葉、枝、花などの病気になったものは摘除し、落下したものも処分する。

発生期にはベノミル剤、チオファネートメチル剤、イプロジオン剤、ビンクロゾリン剤などを用いて、月に2回から3回程度降雨前後を重点に散布し防除する。

特に開花期は、咲き終わった花柄をできるだけ早めに摘除する事が重要です。



センリョウ立枯病

株全体に症状が出て、5月から6月に発病を始めます。

病気の進行が非常に早く、地際部の茎は灰褐色になって枯れ、葉は落ちてしまいます。


根では細い根が黒変して腐ってしまいます。

病気が重い程、根の腐敗も激しく株は抜けやすくなります。

病気になった株の新梢は生育が悪くなり2年から3年で枯れてしまいます。

土の中に住む病菌が根から侵入するこの病気は、発病してからでは薬剤による治療はできません。

病気になった株は抜き取って処分しましょう。

病気が発生した土壌は消毒し、土壌に薬剤が残らないように十分にガス抜きをします。

また、なるべく連作することは避けます。

✪立枯病が発生する主な植物
カーネーション、センリョウ、ケイトウ、シャクヤク、ナデシコ、エンドウ、ジャガイモ、ニンジン、アスパラガスなど




2021/09/24

樹を枯死させる病気=樹脂病① No,551

 樹脂病(じゅしびょう)ゴム病

糸状菌による病害で原因となる菌はさまざま。

モモ、ウメ、アンズなどに広く発生する病気で、胴枯病や癌腫病、害虫の食害などによって発病する。


枝幹の一部に、はじめ暗褐色油浸状(松ヤニのような樹液)の病斑が現れるが、次第に内部に侵入して形成層が黄褐色になり、木質部も変色する。

病気の進行につれて病斑は融合して大型となり、黄褐色半透明の樹脂を出液して異臭を放つ。

のちに、病患部は乾燥して陥没(かんぼつ)し、表面に多数の黒色小粒点(柄子殻)を生じる。

✪柄子殻=へいしかくとは、葉、茎、枝幹、果実の病斑または枯死部に形成される。

はじめ表皮下に形成されるが、のちに孔口が表皮上に開口し、柄子殻内に柄胞子を形成し、内部に油球を含むものもある。




病患部は、古くなると亀裂を生じて剥がれ落ち、枝幹を一周するとそこから上位部は衰えてしぼみ枯死する。


果実にも稀に発生し、はじめ果梗(果実の柄になっている部分)が侵され次第に果実に及び、暗褐色となって軟化腐敗する。

果実面にも多数の柄子殻を生じる。


発生する条件と環境

病原菌は不完全菌類の一種で、柑橘類を侵して樹脂病を起こす。

病原菌は菌糸や柄子殻の形で病患部で越冬し、気温の上昇とともに柄子殻から出液する柄胞子が、雨滴によって伝播する。

寒害や風害などによる傷害部から侵入するが、病原菌の宿主体侵入や病症の進行は主として、梅雨期と秋期に盛んになる。


防除対策処置

樹勢を衰弱させないことが大切で、冬の寒害や夏の乾燥、風害などを防ぎ、適切な肥培管理を行って樹勢維持を強化する。


病患部に対しての処置は、5月から8月の間に行うと癒合が早いので、健全部も含めて削除し、チオファネートメチル塗布剤や接ぎロウなどを塗布する。

樹脂の出液は6月から8月に多く見られるが、この患部にはミカンナガタマムシが産卵、侵入加害して枯死を早めるのでスミチオン、EDB剤を塗布して予防する。


①冬期、発芽前に石灰硫黄合剤(冬期限定使用薬剤)10倍液を木全体に散布する。

②強剪定を行わない。

③土壌が強酸性のときには、石灰を多用し、排水の悪い場合は排水溝を作るなど水はけを良くする。

④極端に乾燥したときは十分に水やりを行う。

尚、樹脂病に侵されても元気よく枝を伸ばしている様なら、様子をしばらく見て良い状態です。








2021/09/23

ゼラニウムによくつく害虫 No,550

 ヨトウガ(ヨトウムシ)

鱗翅目=(りんしもく)ヤガ科

多数の草花類と野菜類に加害します。

昼間は土中に隠れていて、夜になると地上に出て葉を食害します。

夜になると被害を起こす事から“夜盗虫”と呼ばれます。

蛾(ガ)の仲間の食害性害虫で初夏と秋に年2回発生します。


       ヨトウムシ(ヨトウガ)


若齢幼虫のうちは昼間も葉の裏にいて、土の中に隠れるのは成長してからです。

卵は葉裏に産卵し、孵化した幼虫は集団で葉の表面を残しながら食害するため、被害を受けた葉はかすり状になります。


幼虫は成長するに従って分散し、体色が褐色になり、大きいと体長4㎝にもなって食べる量も多くなるので、放っておくと植物の葉が丸裸になり、葉芯だけが残ることもある。

幼虫は主として夜行性で被害が進んでも、葉の裏や土の中に隠れているので、発見できない事が多く厄介な害虫です。

また、土の中でサナギになって越冬する。


予防対策

かすり状になった葉の裏に群生する幼虫を見つけたら葉ごと取り除く。

被害に気付くのは幼虫が大きくなってからのことが多いので、株元の土の中や葉の裏を注意深く探して見つけ次第捕殺します。

また、雑草地で育ち被害をもたらす場合があるので、近くに雑草地がある時は手入れをして雑草を除去することが予防に繋がります。

✪ヨトウムシの天敵
カエルやヤモリ、小鳥、クモなど食虫性の生き物全般。

薬剤による防除

若齢幼虫には薬剤がよく効くので、発生初期にオルトラン粒剤を株元にまくか、オルトラン水和剤を植物全体に散布します。

オルトラン粒剤を土に混ぜて駆除する事も良いとされるが、余り効果が見られない。

毛虫を含め蛾の仲間の幼虫は、成長して大きくなると薬剤が効きにくくなります。

✪木、竹酢液の散布利用で駆除する。

ヨトウガが発生しやすい主な草花類

アイリス、アスター、オダマキ、カスミソウ
カーネーション、ガーベラ、キク
キンギョソウ、キンセンカ、グラジオラス
クレマチス、ケイトウ、コスモス
スイートアリッサム、スイートピー
ストック、ダリア、デージー、ハボタン
バラ、パンジー、プリムラ
マリーゴールドなど


✪ゼラニウム関連ブログ
ゼラニウムNo,43
ゼラニウムの植え替えNo,148





2021/09/21

庭木の突然枯死の原因  No,549

 庭木が突然枯れる原因

元気の良かった庭木が突然枯れてしまうと言う現象は多く見られることですが、その原因をいち早く突き止め、適切な処置を行うことが大切です。

植物の生育や枯死に影響を及ぼす要因として考えられるのは、害虫と病気の二つが主に考えられます。


新梢や葉、枝、幹に発症するものであれば、日頃の観察で把握できるので適切な処置を行うことで、初期の段階で防ぐことが可能ですが、根元や目に見えない土の中の根、幹の中のものは注意をしていても良く分かりません。

気がついたら葉が萎れ始めているなど、被害が進行してからその状況が分かってきます。

また、害虫や病気以外にも原因とされるものがあります。

生育環境の悪化など、自然環境の変化によっても生育障害が起きてしまいます。


なかなか見つけにくい土中害虫の被害

コガネムシ幼虫による被害

代表的な害虫としてコガネムシの幼虫による根の食害がありますが、多くの昆虫の幼虫は新芽や若葉、枝などを食害するのに対し、コガネムシ類の幼虫は土中でも生活し、土壌に含まれる有機質や植物の根を食べて生活しているので、特に数が多いと、木がぐらぐらになってしまう状態になるまで根を食べてしまいます。


有機質肥料の使い過ぎにも気を付ける必要があります。

また、成虫になると葉や花に飛来し食害を続けるので、5月から7月頃に飛来する成虫を駆除する必要があります。

次々と飛来して被害を起こしては飛び去っていくので、見つけたら捕殺するようにします。

大多数のコガネムシの幼虫は、落葉や堆肥などの有機物を食べるだけで無害な虫ですが、しかし、一部のコガネムシ類は生きた木の根までも食糧にします。


その為、根の食害により苗木などが枯死することがあります。

幼虫はジムシ類(ドウガネブイブイ幼虫)と言われ、背中を丸めたイモムシで体色は乳白色です。

種類により異なるが、春から秋にかけて被害を起こし、冬は幼虫のまま土中で越冬します。

春先の植え付け時期に土を耕した時、見つけ次第幼虫を捕殺します。

根に被害を起こすものは一部の種類だけですが、苗木を育てるときには十分に注意が必要です。


幹に孔を開けて樹幹内を食害する害虫

コスカシバの幼虫
太い幹や太い枝の樹皮下に幼虫が入って食害し、樹皮の間から樹脂(ヤニ)や糞が出て多発すると枯死する。

侵入口から胴枯れ病菌などが入り樹が枯れることもある。

成虫は5月から10月に発生し、樹の割れ目などに卵を産みます。

蛾(が)の一種ですが、羽が透明で一見すると蜂のように見える。

侵入口には虫糞と樹脂が付いているので、見つけたら樹皮を少し削り、中の幼虫を捕殺し、樹皮を削ったあとは塗布剤で傷口を保護しておきます。

また、ハンマー等で入り口付近を叩き圧殺する方法もあります。

成虫が卵を産み付ける前に、割れ目や傷口を中心に塗布剤を塗っておきます。

塗布剤には、サッチューコート、スミバークなどがあります。


ゴマフボクトウガの幼虫
カエデやツバキ、サザンカ、ツツジ等にも被害があります。

空中を飛びながら産卵した卵が雑草の中に落ち、羽化した幼虫は雑草を食べて成長します。

やがて雑草から近くの木の細い枝に孔を開けて食入し、枝の先にトンネルを作り進み、食入孔から先を枯らして行きます。

このため樹勢は衰え、幼木が立ち枯れたり被害を受けた枝が強風で折れたりします。


被害は地表近くの枝や幹に多く、内部から孔を開けて、赤褐色の丸い虫糞を排出し、これが地表に積もります。

庭木の根元の雑草などは取り除いておき、丸い糞が見つかったら食入孔から、スミチオンなどの薬剤を注入して中の幼虫を駆除していきます。

薬剤注入後は、孔を土やコルクなどで密閉する方法を取る場合もあります。


カミキリムシの幼虫(別名テッポウムシ)

マツノマダラカミキリムシ
シロスジカミキリムシ
ゴマダラカミキリムシ

幼虫が樹の幹に侵入し内部を食い荒らします。

このため、樹勢が衰えて枯れたり強風などで折れたりします。

根と幹の境目から約50~100㎝の所に産卵し、幼虫は食害しながら樹幹内部に入っていき、食入孔から繊維状の木屑を出しながら二年間、樹幹内で被害を及ぼし樹勢を衰えさせます。


カミキリムシには、松枯れ病に関与するものや草花に加害するものもいます。

成虫は見つけやすいので捕殺します。

また、成虫は葉や小枝などを食害し、産卵するとき幹に傷をつけるので、傷跡を探してその部分を切り出すか叩いて圧殺します。


4月の発生時期にサッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。


しかし、大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

その他除去法として、振動を木に与える方法などがあります。


コウモリガの幼虫

クリ、クヌギ、ヤナギ、ブドウなど多数の樹木、草花に加害する。

孵化した幼虫は初め草の茎や樹木の新梢に食入します。

やがて成長すると樹木の幹に穿孔(せんこう)して、内部を食い荒らします。

侵入口は主に樹の下の方にあり、木屑と虫糞でフタがされています。

発生は1年から2年に一回で成虫は9月頃に発生し、幼虫は5月頃に孵化します。


侵入口についたフタが目印で、これは幼虫の成長とともに大きくなり目立つようになる。

侵入口を見つけたらフタを開け、中に針金を入れて刺殺。

また、スミチオンなどの薬剤を注入して密閉する方法で駆除する。

近くの草に食入してそこで成長してから樹木に穿孔することがある。

付近に幼虫が食入しそうな雑草がある場合は除去すると予防になる。


地中の根に被害を及ぼす病気

白絹病(しらきぬびょう)

樹木の幹の土と接している部分や株の近くの地表に白い糸状の菌糸が発生し、水がにじんだようになって幹の組織が腐って枯死に至ります。


       「白絹病」


地際部やその近くの地表に小さな粒がたくさん発生します。

これは菌糸の塊で菌核といい、かなり厳しい環境でも地中に入って生きていて、次の年の発生源となります。

真夏の6月から8月に多く発生し、病気にかかった株は抜き取り処分します。

いったん発生した場合、土中に菌核を作って5年から6年間生存している可能性が高いので、5月から10月頃に土壌消毒や石灰を土に混ぜて中性からアルカリ性土壌にします。

この病気は酸性土壌で、夏期高温時の降雨の後などに発生が多い傾向があり、排水不良地、連作地で多発して激しい被害を及ぼす。

汚染土壌はクロルピクリン剤またはダゾメット剤などのガスくん蒸剤で土壌消毒を行う。

尚、PCNB剤、コブトール、ペンタゲンなどの灌注、または散布が病勢進展を阻止するとされ使用されていたが、現在では販売利用禁止農薬として指定されている。

菌核は土中の浅い所に潜伏しますので天地返しをしたり、太陽熱による殺菌をして予防します。

紋羽病(もんぱびょう)白紋羽、紫紋羽


根が侵されるとぼろぼろに腐ってしまい、あっと間に木が枯れてしまう恐ろしい病気です。


      「白紋羽病」


菌糸が繁殖するとやや厚みのある菌膜が根を覆います。

この菌膜の色によって白紋羽病、紫紋羽病に分けていますが、被害状況は全く同じです。

白絹病菌や紋羽病菌は多少なりとも庭土に潜伏しています。

庭木の剪定枝などを庭に戻してやろうと30〜50㎝の深さに掘って埋めると、せっかく眠っていた菌糸を起こしてしまうので、木の枝や落ち葉を庭木の間に埋める時には1m以上の深さが必要になります。

または、庭木の無い場所にビニールシートを敷き、この上に積んで置き、1年から2年かけて完全に腐熟させてから利用すると良いでしょう。

いずれにしても病気に侵され、菌糸膜形成時はすでに末期に近く、ほとんど治療の方法もなく回復は不可能です。


ナラタケ病(根朽病=ねくちびょう)

食用になるキノコ(ナラタケ)に侵される病気で、急に葉が萎れて枯死に至ります。


     「ナラタケ病」


樹勢が著しく弱った木、地上部を強く切り詰めた時などに発症します。

病気が進むと地際部分に白い菌糸がびっしり張り、秋に淡褐色の小さなキノコがたくさん発生します。

発症が分かってからでは治療の方法はなく、病気に侵された木は根まできれいに取り除き、4年から5年は植樹しないか、ナラタケ病にかからないイネ科の植物を植えておくことです。

枯死樹木の跡地は土壌消毒を行います。

樹勢が弱まったら、ベンレートやトップジンMを根元に散布するのも効果的です。

土壌中のナラタケ病菌を捕捉するには、4月から5月頃に直径約6㎝、長さ70㎝のコナラまたはカラマツの杭を地中に打ち込み、10月下旬に引き抜くとナラタケ菌が分布する場所では、杭の周囲に根状菌糸束が付着し、樹皮下に白色扇状の菌糸膜が形成されている。

この方法によって、ナラタケ病菌の生息場所を検診することができる。


強い切り詰めによる枯れ込み

すべての木に当てはまる訳ではありませんが、幹の太い部分で切り詰めていくと、新しい芽が出ずに枯れてしまう場合があります。

この場合、切り口の保護や幹巻きなどを行っておくことにより、ある程度防ぐことは可能です。

ただし、ハナミズキやナツツバキ、ヒメシャラなどは強い切り詰めを行うと年々太い部分が枯れ下がっていくので、細い枝の時から樹高を抑えていくようにします。


台風による枯死

根を多く出して深く地中に張っているものはまず心配ありませんが、根の粗いモクレン類や樹冠の大きくなるギンヨウアカシア、クサアカシアなどは強い風と雨で木が根元から大きく四方に揺すられて、細かい根がちぎれてしまうと風の後、木を支柱で固定しても枯死する事があります。


この場合、ちぎれた根に見合う枝葉の量を減らす為のせん定を行う事が大切です。


植え付け後3年から4年の樹はまだ根が十分に張っていない木も、雨と強風で根元が強く揉まれると細かい根が切れてしまいます。

植え付け後、ある程度の年数は支柱で固定する必要があります。


木の寿命による枯死

現在、観測されている世界一長寿の木は、北米ネバタ山脈の荒野に自生する「ブリッスルコンパイン」で、その樹齢は4787年と見られています。

★ブリッスルコンパイン関連ブログ
世界一の樹齢木ブリッスルコンパイン巨樹
No,253-1


樹木の寿命として柿や桃、栗は約50年
白樺約70年、ミズキやコナラ約80年
トチノキ150〜200年、松は500〜1000年と言われていますが、樹木が生息する自然環境によって、樹齢は個体差の違いがあります。

多くの植物は性質にあった土壌や自然環境下で生息する事で、樹齢の長さも違ってくる。

より良い環境下で育つ事が長く生きて行くための条件と言えるでしょう。