緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2023/09/16

さつまいもの害虫(3) No,655

 ヨトウムシ ヤガ科

サツマイモの害虫ヨトウムシは、体長2~4㎝で若い幼虫は緑色、成長していくと褐色や黒色になっていきます。

ヨトウガと言う「蛾」の幼虫で、夜間は土の中に隠れていて夜になると活動するので「夜盗虫」と言われている。
葉や茎、実を食害します。








幼虫は成長すると食べる量も増えるので、葉全体を食べ尽くしてしまいます。


     「葉を食害された状態」


被害後、スミチオン乳剤1000倍液を散布、土壌に灌注


     「薬剤使用後葉が復活」


薬剤の効果によって害虫駆除ができたようです。

葉に散布するだけでは駆除できません。

土壌中に潜伏していることや卵がふ化することを考えて灌注が重要。

★灌注(かんちゅう)とは、注ぎかけること、そそぐこと
灌注だけの目的の場合は、希釈濃度は高くなる。


野菜によっては新芽を食べられてしまうと育たなくなって枯れてしまう。


若齢幼虫のうちは昼間も葉の裏にいて、土の中に隠れるのは成長してからです。


ヤガ科にはいくつかの種類の害虫がいるが、ヨトウムシは特に野菜類の害虫として知られています。


冬の期間、土中で越冬し4月~5月にかけてふ化します。

サツマイモの葉に卵を産み付け、1ヶ月ほどで蛹になり土の中でふ化し成虫になります。


一匹あたり1000~3000個の卵を産むとされ、ふ化すると大量発生します。


その他の害虫として、ナガジロシタバ、ハスモンヨトウがいる。



ナガジロシタバも同じくサツマイモのの害虫として知られ、大量発生すると葉の大部分を食害してしまいます。


早期から発生した場合、サツマイモの収穫量や品質低下に繋がることもあるので注意が必要です。


また、サツマイモの葉を食い尽くした後、餌を求めて移動、その際に民家等に侵入し、不快害虫として問題になることもある。


老齢幼虫になると葉柄だけを残して食い荒らすため、大発生した畑では丸坊主となって地表面が見えるようになることもある。

成熟した幼虫は土中に潜り、土マユ(繭)を作りその中でサナギになる。


薬剤の効果は幼虫の発育に伴い低下するので、若齢幼虫期に防除することが重要となる。

ツル先の若葉の被害発生が目安となる。

薬剤はカーバメート剤、ジアミド剤、スピノシン剤など

★ハスモンヨトウはヨトウガに似ているが、老齢幼虫の頭部の色がハスモンヨトウは黒であるのに対し、ヨトウガは黄褐色であるなど外見の違いがある。


広範囲に食害し、野菜や畑の作物、花き、果樹まで被害を起こす。


薬剤はジアミド剤やマクロライド剤など

防除効果を上げるたためには若齢期の薬剤防除が重要です。








2023/09/12

さつまいもの害虫(2) No,654

 コガネムシ コガネムシ科ジムシ類

ジムシ類 (コガネムシの幼虫)




大多数のコガネムシの幼虫は、落葉や堆肥などの有機物を食べるだけで無害な虫です。


しかし、一部のコガネムシ類は生きた木の根までも食糧にします。

種類により異なりますが、だいたい春から秋にかけて被害を起こす。


春先の植え付け時期や土を耕した時、見つけた幼虫を捕殺します。

土中の有機物を食べるので、有機肥料を使い過ぎると呼び寄せることになり被害が増えます。


有機肥料の使い過ぎに気を付ける必要があります。



コガネムシ類によるさつまいも被害

土中の幼虫が塊根(かいこん)の表面を食害するため、サツマイモでは品質が著しく低下することになります。

一般的に1齢幼虫は土壌中の腐植、堆肥など有機物を食糧とし、2齢幼虫以降に塊根を摂食するようになる。


3齢幼虫は摂食量が増えるため被害も大きくなります。

被害を受けた食害痕の表面には土が付着しやすい。


早い時期に栽培する作物では、越冬後の幼虫による被害を受け、普通栽培では8月下旬以降に新しく産まれた幼虫による被害を受ける。


サツマイモを加害するコガネムシは、数種類が知られているが複数種が混ざり合って加害している場合が多い。


ほとんどが年一回の発生とされ、幼虫のまま土中で越冬する。


アカビロウドコガネを除く他の成虫は、サツマイモの葉をあまり摂食しない。

羽化した成虫は餌となる植物へ移動する。

餌となる植物で摂食、交尾を行い生殖機能を発達させた後にサツマイモの栽培地へ移動し、土中に潜って産卵する。

産卵後生まれ幼虫は、畦内の層に多く存在し、栽培地内に均一に見られない場合が多いとされる。


♣防除

越冬後の幼虫には、土壌くん蒸剤によるセンチュウ類との同時防除が有効とされている。


新しく生まれた幼虫には、植え付け前か植え付け時の殺虫剤処理による、予防の被害軽減効果が高いとされる。

ただし、薬剤処理を行った後の土壌混合が不十分な場合や効果の短い薬剤を選んだ場合には、薬剤効果が不十分となります。

また、薬剤処理時に土壌が乾燥している場合では薬剤効果が劣る。


サツマイモに加害するコガネムシの種類

ドウガネブイブイ、アオドウガネ、ヒメコガネ

アカビロウドコガネ、オオクロコガネ


◉ドウガネブイブイ

成虫、幼虫ともに重要な農業害虫として知られている。

幼虫の時期は地中の作物の根を食害し、成虫になると葉を食害する夜行性の害虫で、銅金色(青から緑に銅を混ぜたような色)をしていることからドウガネと呼ばれる。

ブイブイとは飛ぶときの音を表し、ぶんぶんがなまったものとされる。

体の色と羽音を合わせて「ドウガネブイブイ」と言う名前になったとされる。



     「ドウガネブイブイ」


幼虫は産卵から15日くらいが発生時期とされ、これが1齢幼虫で更に、14日経つと2齢幼虫の発生時期となる。

土中の有機物、腐葉土を食べる1齢幼虫はその後、草の根を食べて成長する2齢幼虫となる。


3齢の老齢幼虫になると食欲旺盛となり、行動範囲を広げ、サツマイモやサトイモ、落花生などの地中の作物を越冬する頃まで食害し続けます。


年一回の発生で成虫は6月上旬から9月下旬に発生する。

成虫は夜行性で19~20時頃を中心に飛来し、夜間は活発に飛行する。

雌成虫は交尾後地中に潜って産卵する。


防除剤はスミチオン乳剤、ダブルトリガー液剤など

幼虫発生初期に殺虫剤を散布する。








2023/09/09

さつまいもの害虫(1) No,653

ネコブセンチュウ

センチュウ類は、動物の体に寄生する回虫などと同じ 種類の生物です。

作物以外の植物に寄生するものにも多くの種類がいます。

体長は大きくても1㎜程度で、肉眼では見えません。

寄生する場所は種類によって異なりますが、寄生されると植物の成長が衰え、やがて枯死してしまいます。


      「ネコブセンチュウ」



★ヒトの体内に寄生する回虫と同じ種類の生物であるため、植物にもヒトと同じように寄生虫がつくことを覚えておく必要があります。


さつまいもの連作では、根にネコブセンチュウが発生しやすい。

ネコブセンチュウは土壌中に存在するセンチュウ類の一種で、一般的な土壌には数百から数千種類のセンチュウ類が存在しています。


その内、農作物に被害をもたらすのは主に、ネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウの仲間等の仲間に限られます。

さつまいも栽培で最も注意するのがサツマイモネコブセンチュウで、このセンチュウは北海道南部から沖縄まで広く分布し、特に温暖な気候を好みます。


ネコブセンチュウでは、栄養不足などの悪環境下で雌が性転換し、雄の比率が高まる。


サツマイモネコブセンチュウの寄生範囲は700種を超え、サツマイモ、ニンジン、キュウリ、トマト、ナスなどに加害する。


ネコブセンチュウ類は土壌中に卵があるため、一度発生した栽培地では、土壌中のセンチュウ密度を減らす対策として土壌消毒が効果的となります。

太陽熱による土壌消毒も高い効果がありますが、土壌が高温になりにくい時期や栽培地域では効果が望めないので、農薬による土壌消毒が主になります。

有効な農薬として、バスアミド微粒剤、土壌くん蒸剤のダブルストッパー、テロンなどがあり、どちらもかなり多くの作物に適しています。


また、土壌消毒後、播種前には土壌へ殺虫剤を混ぜ合わせると更に効果です。

有効な農薬を播種や定植前の作物ごとに、決められた時期に全面土壌に散布して混ぜ合わせます。

薬剤は栽培する作物に適用登録がなされているのかの確認が必要です。


ネコブセンチュウ類の対抗植物

作物の収穫後、次の作付けまでに対抗植物を植えることでネコブセンチュウ類の土壌中密度を下げ、被害を抑える事ができます。

栽培地の環境に適した対抗植物を選ぶことも大切です。

センチュウに効果を発揮する植物は

イネ科のギニアグラス、ソルゴー

マメ科のクロタラリア、コブトリソウ

キク科のマリーゴールド


      「ギニアグラス」

★ギニアグラス
暖地型牧草のギニアグラス(ナツカゼ)は、土壌中のネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ等の抑制効果の高いことが立証されている植物です。

また、残存肥料を吸収し、塩類濃度を下げる効果もあることから、野菜栽培地の連作障害回避植物として注目されている。


マメ科のサンヘンプ、クロタラリア、スペクタビリア


       「サンヘンプ」

★サンヘンプ
マメ科の熱帯アジアの植物で、一般的にはインドが発祥とされる。

麻の代用として紐などを作るため古くから栽培され
、木化繊維の供給源として利用されてきました。


道端に雑草のように生え、本州ではほとんど見かけることがない。


キク科のマリーゴールドなど


      「マリーゴールド」

★マリーゴールド
マリーゴールドの根からはネグサレセンチュウを殺す成分が出ています。

殺線虫物質の一部、糸状菌、細菌、昆虫等に対しても活性を有する。


ミナミネグサレセンチュウ

被害は成虫、幼虫が細根及び塊根に侵入し、加害する。

塊根(かいこん)とは、植物の根や幹に水分や栄養を蓄えるように進化したもの(貯蔵根、幹)

最初は淡褐色の小斑点になるが、次第に大きな褐色斑点となり、やがて根全体が褐変する。

関東以西ではミナミネグサレセンチュウによる加害が大きく、サツマイモやサトイモで被害が出る。

センチュウの多くは地温10~15℃で活動を始め、最適温度は20~30℃です。

最適条件下で1世代は30~40日程度とされ、暖地では年に3~4世代が繰り返されると考えられ、条件がよければ爆発的に増殖する。

更に、施設栽培やマルチ栽培のような加温条件下では世代交代も一層早くなります。


加温条件下では、初期密度が低い状態でも収穫終了時には高密度となり、被害も大きくなっています。


深さ10~30㎝の土層を中心に生息し、密度がかなり高くなるまで地上部には病状をあまり示さない。

気がついた時にはセンチュウが蔓延した状況であり、亀裂を伴う、奇形、収穫量の減少、品質の低下などすでに作物に影響を与えている。










2023/09/06

リコリス·インカルナータNo,652 

 リコリス·インカルナータ

ヒガンバナ科 タヌキノカミソリ

中国中部原産の桃花種

リコリスは多年草の球根植物で、秋の彼岸の頃に畦道などに群生して咲く彼岸花が有名ですが、日本を含む東南アジアに20種類ほどの原種が分布しています。


   「リコリス·インカルナータ」
     「9月6日撮影」


開花期の早い品種は7月から、遅い品種は10月から開花し始める。

赤、白、ピンク、オレンジ、黄色などの色の品種があります。

2つのタイプの花型があり、ヒガンバナのような花弁が反転(反り返る)するものと、ユリ(ナツズイセン)に似たラッパ状のものがある。


品種によって葉が出る時期は異なっている。

早春に葉が出るものと秋に葉が出るものがあるが、いずれも初夏になると葉は全て枯れしまう。


★有毒植物

全草が有毒で特に「鱗茎」にアルカロイドを多く含みます。

植物毒の多くは、アルカロイドと言う天然の有機化合物です。

毒草であるため、絶対に食してはいけません。

◉鱗茎(りんけい)とは、地下茎さで、ユリ根、玉ねぎのように養分を蓄えた厚くなった葉が、茎の回りに多数重なって球状になっているもの。



♣有毒性の利用
ネズミやモグラ、虫除けのために水田の畦に植えたり、虫除けに墓場に植えられています。


また、雑草の成長を抑制する作用もあり、イネ科に影響を与えることがないことから、水田の畦に植えられたと言われている。

★畦(あぜ)は水田と水田の境に水田の中の泥土を盛り上げて、水が外に漏れないようにしたものです。

また、モグラやケラが開けた穴から水が漏れるのも防ぎます。


ヒガンバナ



別名マンジュシャゲ(曼珠沙華)

学名ではリコリス·ラジアータとも呼ぶ。

原産地は中国大陸、日本においては帰化植物に分類される。









2023/08/28

花柄から殖やすウチワサボテンの成長記録 No,651

花柄から殖やすウチワサボテン

       「7月8日撮影」

       「7月18日撮影」

🌵サボテンの子株が咲き終わった花柄の上に出てきました。


土に花柄を植え込んだ場合、このような状態で成長するのではないかと思う。




普段、花が咲き終わった花柄の上からサボテンが出てくるのか?

群生地のサボテンを観察しながら調べて見たいと思う。


   「7月24日子株を切り取った花柄」


      (A)「7月24日」
★花柄から切り取った子株の挿し木


     (A)「8月9日撮影」

♣挿し木した子株が少しずつ大きくなって来ました。


     (A)「8月28日撮影」



 「切り取りった花柄から再び子株」


      「8月28日撮影」

咲き終わった花柄の上には8箇所の芽があるので、切り取らずにそのままだと子株が全て出てくるのかも知れない。

そうなると、かなり密集した状態になるのではないかと思う。


   「2023年8月16日撮影」

◉ウチワサボテンの殖やし方として、花が咲き終わった花柄から殖やす事ができる。



     (A)「2024.05.13撮影」

長く伸びた部分を切断した後、新たに伸びてきたサボテン

切断するとこのように成長していく


       「裏側?」

表と裏があるように見える?


     「2024.05.13撮影」

そのまま成長するとどうなるの?



★関連ブログ記事
ウチワサボテンNo,634









2023/07/13

ベトナム王朝時代の名残をとどめる古都「フエ」No,650

ベトナム、フエのガーデンハウス

ベトナム最後の王朝グエン朝時代から受け継がれた庭


世界遺産の古都、フエの街並みに緑を添えるのが王朝時代から受け継がれた、広い庭付きのガーデンハウスである。




 
ガーデンハウスはベトナム中部、フエ市内を流れるフォーン川の畔に広がる。

フエの街には、ベトナム最後の王朝グエン朝(1802~1945年)の都として発展し、首都が置かれていました。

この街は堀と分厚い石の壁に囲まれた19世紀の城塞
で有名です。


     「ベトナムフエ」


ベトナムの京都とも言われる世界遺産古都


  「フエ市内を流れるフォーン川」


フォーン(フォン)川とはベトナム語で「薫る川」を意味する。


旧市街地には壮大な王宮が占め、郊外には天女伝説の伝わる有名なティエンムー寺の八角塔や、歴代皇帝の墓所である広大な社(やしろ)が点在します。

ユネスコは1993年に、こうした歴史的建造物を世界遺産に指定しています。


    「旧市街地にある王宮」

日本では考えられないと思うが、2月でも堀に蓮の花が咲く。


フエの街には昔、王族や宮臣たちが住んだガーデンハウスと呼ばれる広い、庭付きの家が多く残っています。

建設当時の面影はないものの、そこには自然を身近に取り込んで楽しむ生活が受け継がれています。


ベトナム帝国の滅亡

1945年8月17日「ベトナム8月革命」が起こり、ベトナム帝国は滅亡しました。

崩壊した後、ベトナム民主共和国が誕生。

ベトナム民主共和国になり、新しい時代が始まったベトナムですが、1955年からベトナム戦争が始まり、南部ベトナムに対するテト攻勢が1968年に勃発し、フエで戦闘が繰り広げられました。

やがて北ベトナム軍に支配されたフエは分断し、約300人の人々が生き埋めにされたり、銃で撃たれたりした。


アメリカ軍はフエの攻撃を始め、フエは焼け野原になった。


グエン王朝時代に建てられた建物も多く犠牲となった。

その爪痕は現在も残っている。


戦争終息直前の1975年3月、アメリカ軍は主要な街としてフエを解放しました。

その後、フエは再建され、ベトナムで初の世界遺産に登録されました。


伝統的なフエの庭に共通しているのが石造りの「風よけ」とその前に作られたロックガーデンと池です。


庭全体が風水思想に基づいて設計され、日本でも馴染みのある松や梅、竹、椿などが植えられ、池にはスイレンが咲いています。


    「熱帯性スイレン」


水面に浮かんだように咲く温帯性スイレンに対し、水面から茎を伸ばして咲くのが熱帯性スイレンで、温帯性に比べて花上がりがよく、4回から10回も花を咲かせる。


ベトナムでは蓮の花をHoasen(ホアセン)と言い、日本の桜のようにベトナム国民から愛されている国花である。


家の周囲には大小の盆栽や吊り鉢のランで飾られています。


家族や先祖を大切にするベトナムの人々にとっても、庭は代々の祖先の魂が宿る場所なのです。


屋敷内には大きな祭壇、庭に先祖を祭る祠を持つ家もあり、祭礼の度に家族や親戚が集う。


ベトナム戦争で破壊を受け、フォーン川の氾濫による洪水の被害も深刻です。

そのため修復、維持経費を賄うために観光客への一般公開が始められました。


平和であることの大切さ、戦争がいかに愚かな事なのかを伝えて行くためにも、伝統とともに長く保有される必要があります。


       
「1930年代当時の姿を残す家屋」
「日本式の池」

庭は家族のプライベートな空間だが、訪れる者に門戸を閉ざすことはないと言う。


  「オクナ·インテゲーリマの花」


フエではこの黄色い花が旧正月を飾る。

一般に黄色い花でマイフラワーと呼ばれる。

野生では小さい木、低木種の熱帯植物でオクナ科は、全世界の熱帯に分布する常緑木本で一部は草本である。