緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2023/10/24

薬剤の形と分類 薬剤について No,663

 薬剤の形と分類と役割


植物を病害虫から守る重要な事は、植物を丈夫に育てることです。

特に樹木の場合は、農作物の栽培などとは違って、薬剤の積極的な使用はなるべく避けたいところであり、薬剤に頼らない防除を基本にしながら、薬剤は合理的に使用したいものです。


薬剤防除が必要なケースとしては、害虫の異常発生が起こり、大きな被害が予想されるときや実害がそれほどなくても、著しく時間を損なうときや観賞価値を落としてしまうとき、また幼苗期から育成期にかけての防除として使用する場合などがあげられます。

薬剤には乳剤や液剤、水和剤などの様々な形態のものがあります。

同じ種類の薬剤でも形態によって使い方が違ってきますので、十分な注意が必要となります。





《乳剤》
有効成分を石油類などの有機溶媒に溶かし、そこに乳化剤が加えられています。

使用方法として、有効成分は高濃度であるため、水で薄めて使用します。

水を加えると白く濁るのが特徴です。


《液剤》
有効成分を水に馴染みやすい溶液に溶かしてあります。
使用方法として、水で溶かして使用します。

水に溶かしても白く濁りません。


《水和剤》
有効成分は石の細かい粉(タルク)などに吸着させてあります。

使用方法として、水で薄めて使います。
有効成分は高濃度で粒状ですので粒剤と間違わないようにします。


《水溶剤》
薬剤そのものが水に溶けやすい性質です。

使用方法として、そのまま水に薄めて使います。

《粉剤》
薬剤はタルクなどの粉末で増量しています。

使用方法として、そのまま散布します。

有効成分は低くなっています。

《粒剤》
有効成分は鉱物粉末に吸着させて粒状にしてあります。
使用方法として、土壌に与えるものに多く見られる薬剤です。

《油剤》
有効成分を油性溶媒に溶かしてあります。

使用方法として、そのまま使います。

薬剤は使用目的により大きく4つに分けられる

①殺菌剤
病原菌の殺菌や予防、病気の治療に使います。

②殺虫剤
害虫の駆除に使います。

③除草剤
農家が除草を目的に使う強い薬剤です。
薬剤の乱用によって、環境への影響が危惧されている。

④生理活性剤
ケミカルコントロールに使う薬剤です。

薬剤で植物の生理作用をコントロールすることをケミカルコントロールという。

植物の成長過程で重要な働きをする植物ホルモンは、植物が自分で作り出すもので、これとよく似た作用を持つ植物成長調整剤を使うと、植物の生理作用を人工的に進ませたり、抑えたりできます。

なお、植物はどの植物にも同じような作用をするわけではありません。

植物によって、目的が同じでも薬剤が違う場合もあり、また、薬剤が同じでも植物や使う時期によって様々な作用が現れます。


ケミカルコントロールで使う調整剤

《生育促進剤》植物ホルモン剤
植物を早く生育させたい、または、早く大きくしたいときに「ジベレリン」を使うと、生育促進、伸長促進などの効果があります。

ジベレリンは、ブドウの「タネなし化」などにも使われています。

ジベレリンは、植物細胞そのものを大きくするので、植物が軟弱に育ってしまう傾向があります。

使用するときは、施肥などの栽培管理に注意が必要です。


《伸長抑制剤》
植物を大きくしたくない、コンパクトに育てたいときに「アンチジベレリン」矮化(わいか)剤を使います。

植物の細胞が小さくなり、葉と葉の茎を短縮させるので、ボリューム感のある姿にします。

また、伸長が抑えられた結果、抵抗力が付く場合もあります。

シャクナゲやツツジに使うと花芽の数が増えます。


《発根促進剤》
挿し木やさや挿し芽の発根を促進させます。

挿し木や挿し芽の切り口に薬剤をつけ、さし床に挿すだけのことで、根の数が多くなるといった効果があります。

良い苗ができるので順調な生育が可能になります。


《着果促進剤》
落果を防止する効果があります。

イチゴやグミにはジベレリン、メロンやスイカにはベンジルアミノプリン剤が着果の促進剤となります。


《開花促進剤》
花を早く咲かせたい、多く咲かせたい、花を大きくしたいときに使います。

開花促進に使うときは、つぼみを確認してから使用するのがポイントです。

つぼみのできる直前に使ってしまうと、花芽が無くなる心配があります。

ツバキにジベレリンを使うと花を大きくすることができます。


✿殺菌剤はその効果により、予防薬(予防殺菌剤)と治療薬(直接殺菌剤)との2つに分けられます。

病気を予防、治療するための殺菌剤
《直接殺菌剤》
病原菌や菌糸に直接作用して殺してしまう薬剤です。

病害予防の要とも言われる薬剤で、発病後できる限り発病初期に使用します。

殺菌剤には両方の効果を持つものが多くありますが、予防と治療は分けて考え、計画的に薬剤を使用しなければならないのは当然のことです。

ベノミル剤、チオファネートメチル剤、オキシカルボキシン剤、トリホリン剤、ポリオキシン剤などはこれに属します。

病害に応じた適切な薬剤を選び、発病の初期に使うとかなりの効果が期待できます。


《予防殺菌剤》
病原菌の侵入や伝染を防ぐ薬剤です。

病気の多くは植物の気孔(きこう)や害虫がつけた傷口から侵入するので、発病前から散布しておけば予防効果が期待できます。


ジネブ剤、マンネブ剤、マンゼブ剤、銅水和剤、キャプタン剤などがこのグループになります。

予防を目的とする薬剤なので、発病後に散布を行ってもそれ以前に侵入した病原菌にはあまり効果がありません。

発病しやすい時期の少し前から散布することが重要です。


その他の殺菌剤
ガス化して土壌中の病害虫を殺すガス剤(くん蒸剤)、幹にできた傷口に塗って秒巣の進展を防止する塗布剤などがあります。

殺菌塗布剤=トップジンМペースト、トップジンМオイルペーストなど


《抗菌剤》(農業用抗生物質)
微生物の抗菌作用を利用して、菌で菌を防除する薬剤です。

ストレプトマイシン剤、ポリオキシン剤、バリダマイシン剤、カスガマイシン剤などがあります。

特定の病気には特効薬となる薬剤となります。

植物の病原の8割はカビの仲間です。
残りの2割はほぼバクテリア(細菌)とウイルスで占められています。

殺菌剤の大半はカビを病原の対象とするものであり、バクテリアやウイルスに有効なものはあまり多くありませんが、バクテリアを対象とする薬剤としては抗菌剤があります。

これは、人間の病気に用いられる抗生物質を植物用に応用したものです。

ウイルスに有効な治療薬は現在ありません。

予防薬としての抗ウイルス剤はあるが、昆虫による伝染を防ぐことはできません。


害虫を駆除するための殺虫剤

殺虫剤はその効果により、大きく3つに分けられます。

①食毒性殺虫剤=消化中毒剤
葉や茎に付着した薬剤により食毒死させる。

植物の茎や葉についた薬剤を害虫が食べると、食中毒を起こして死んでしまうという薬剤です。

表面に薬剤の付着した葉や茎を害虫がかじって、薬剤が体内に取り込まれると、消化管の中で効果を発揮します。

そのため、毛虫やイモムシなどのそしゃく性口器(こうき)を持つ害虫には有効です。

しかし、吸収性口器を持つ害虫、アブラムシ類、カメムシ、ハダニ類などには効果がありません。


②接触毒殺虫剤=虫の体に直接付着させて中毒死させます。

薬剤が虫の体に直接つかないと効果がないものに、除虫菊剤、硫酸ニコチン、DDVP剤(劇物)があります。

多くの有機リン剤(オルトラン)やカーバメート系(デナポン水和剤など)の殺虫剤は、茎や葉についた薬剤の上を害虫が這っても有効なので、飛来しては食害する害虫にも使えます。

しかし、この薬剤はハマキムシ類や虫こぶを作る害虫、穿孔性(せんこうせい)害虫にはほとんど効果がありません。


③浸透移行性殺虫剤=薬剤を植物体内に浸透させ食毒死させる。

薬剤な有効成分が葉や茎から植物体内に浸透し、植物全体に行き渡るので、食害する害虫を中毒死されます。

エストックス、キルバール、アンチオ、ジメトエートなどの薬剤があります。

小型の吸収性害虫に効果がありますが、食葉性害虫には孵化(ふか)直後のイモムシやケムシにしか効きません。

《ガス剤》
有効成分が散布後に揮発してガス化し、このガスを吸った害虫が中毒死します。

《その他の殺虫剤》
特定の害虫を対象とした専用剤の殺ダニ剤や殺ナメクジ剤等がある。

トリモチを応用したハエ取り紙のような粘着剤もある。

カミキリムシ類の産卵を防止する樹幹塗布剤(アルバリンなど)などがあります。


◉薬剤の使用濃度

薬剤の多くは取り扱いの都合上、高い濃度のままで市販されているので、そのまま使ってはいけません。

❉薬剤は決められた濃度になるように必ず水で薄めて使います。

その場合、風呂の残り水や洗濯のすすぎ水といった生活用水、海水、腐敗水などを使うことは薬害の原因となります。

必ず新しい水で薄めるようにしましょう。

使用濃度は薬剤の容器のラベルに記載されていますが、ほとんどの場合1000〜2000倍と広い範囲が示されています。

これは低い濃度、この場合なら2000倍が低い濃度になりますが、2000倍に合わせても十分に効果があり、高い濃度の1000倍でも薬害が出ないことを示しています。


殺菌剤は薄めにして、葉の裏まで満遍なく散布します。

殺虫剤は少し濃くして、害虫に集中的に散布することが理想的です。


薬剤の薄め方

『乳剤、液剤の場合』
①バケツや噴霧器のタンクなどに水を正確に計量して入れます。

容量がはっきりわかるもの、計量器がない場合などは、牛乳パックやビールびんなどを利用すると良いでしょう。


基本的には、注射器やメスシリンダーなどで計量したいものです。

②薬剤を計量したら水に加えて棒などでよくかき混ぜます。


『水和剤、水溶剤の場合』
水和剤や水溶剤は、水に溶けにくいので、少量の水を徐々に溶かしていきます。

最初から大量の水に入れるとよく混ぜたつもりでも、上側と下側では濃度がまるで違ったものになります。

混ざりが悪いと上側の溶液は効果がなく、下側の溶液では濃度が高くなって薬害を起こす原因となります。

水和剤はそのまま水の中に入れてかき混ぜても、なかなか溶けません。

①水を正確に計量し、バケツやカップに入れます。

②小さな容器に正確に計量した薬剤を入れ、少量の水を加えながらかき混ぜます。
このときに展着剤も加えます。

十分にかき混ぜながら水を加え、薬剤がよく混ざったら水に入れてよくかき混ぜます。


❉また、乳剤には展着剤は必要ありませんが、その他の薬剤には最後に加えるようにします。


❴薬剤の混用❵

病気と害虫は同時に発生することが多いので、2種類以上の薬剤を混ぜて使用することがあります。

この場合、相性の悪い薬剤を混ぜて使うと効果が落ちるだけではなく、薬害が出たり人肉毒性が高くなることがあります。

混ぜてはいけない組み合わせを、ラベル表示で確認する必要があります。

石灰硫黄合剤とマシン油乳剤(機械油乳剤)は単用した方が安全です。

なお、殺虫剤のスミチオンやマラソンと殺菌剤のジネブ剤、TPN剤(ダニコール)は混用しても差し支えありません。


また、混用の組み合わせは水和剤なら水和剤というように同じ形態の薬剤同士にします。


❴薬剤散布の基本❵

《乳剤、液剤、水和剤、水溶剤の散布》
薬液が細かい霧状になるように、噴霧器を使って散布します。

病原菌の多くは葉の裏にある気孔から侵入します。

アブラムシやハダニ、アザミウマなどは葉の裏で活動することが多い害虫です。

従って、薬液をうまく葉の裏に散布、付着されることが重要となります。

噴霧器の噴射口を上向きにして、下から霧を吹き上げるように散布します。

薬剤を散布したとき、葉先から薬液がポタポタ落ちるようではかけ過ぎで、かえって薬剤が付着しません。

噴射口を植物から30〜50㌢程度離して散布しましょう。

《粉剤、粒剤の散布》
粉剤をまく散粉剤器を使用して散布しますが、薬剤をガーゼで包み、棒で軽く叩くようにしても散布できます。

やりすぎると薬害を起こす原因となるので、薄っすらと霜が降りた程度を目安にします。

《散布の注意点》

日中の好天気に薬剤散布を行うと、物理的にも科学的にも薬害が起こりやすくなります。

できるだけ散布は曇りの日や夕方に行うようにします。

病原菌は雨が降ると拡散するものが多いので、雨のすぐ後に散布するか、翌日には雨の降りそうな日に行なうと良いでしょう。

風のない日なら最適です。

薬剤は散布後30分でだいたい乾いてしまうので、散布した夜に雨が降っても、散布をやり直す必要はありません。

散布を行うとときは、風向きをよくみて、常に風下に進むように、風上から散布を始めます。

また、散布中に器具が故障してもゴム手袋やマスクをしたままで、調整、修理を行うようにしましょう。

散布中の飲食や喫煙は厳禁です。

散布後の注意点

使った器具やゴム手袋、マスクなどはよく洗います。

桶などに水を汲んで洗い、水は土の中に流して処理し、また、残った薬液も穴を掘って流し込んで処理します。

薬液を下水溝や川に流すと、その流入によって魚が死ぬこともあります。

また、使い残しの薬液の保存はできません。

薬剤は冷暗所で保管し、低毒性の薬剤であっても鍵のかかる薬剤専用の保管箱で、きちんと管理する必要があります。

散布面積と薬液の分量 (1㎡当たりの分量)

散布する植物 /薬液の目安 
1m以下の草花類、野菜類 /100cc程度

1m以上の草花類、野菜類 /200cc程度

丈の低い庭木類 /100〜200cc程度

2m程度までの庭木類 /3〜5リットル程度

長さ1m程度の垣根 /5リットル程度

どんな植物でも粉剤は2〜3㌘

どんな植物でも粒剤は4〜6㌘

鉢物なら粒剤は1株当たり1〜2㌘


知っておきたい薬剤の毒性

薬剤は法律(農薬取締法)によって、特定毒物、毒物、劇物、普通物の4種類に分けられます。

毒物はは劇物より強い毒性

普通物以外は自由な売買が制限されていて、毒物と劇物は鍵のかかる保管場所に入れることが義務付けられている。


特定毒物は個人で使うことはできない薬剤です。


殺菌剤のトリアジン(普通物)などが皮膚につくと、酷くかぶれることがあります。

ジネブ剤(普通物)やマンネブ剤(普通物)でもかぶれることがあります。

原液や原体を扱うときや、また薬剤の保管にあたっても細心の注意を払うようにすることが重要です。

《薬害》

薬剤散布をしたあと数日して、葉が赤く枯れたり、ひどい場合には全部葉が落ちてしまうことがあります。

この症状が薬害ですが、薬剤散布が無駄になるだけではなく、植物を傷めてしまう結果となります。

薬害は濃度調整のミスなどの人為的原因で起きますが、因果関係がよくわからない場合もたくさんあります。

その大部分は植物の生理状態、天候、温度などに原因があるとされています。

樹木の薬害については、野菜類に比べると解明が進んでいないと言うのが現状です。

長雨なあとや高温のときには、薬剤の規定濃度の上限で散布したほうが安全です。

規定濃度が1000〜1500倍なら、1500倍に薄めて散布しましょう。









2023/10/22

カビ(菌類)によって起こる樹木の病気 No,662

 カビは植物の最大の敵

カビはPH2.0~8.5の広い範囲で生育し、細菌は大部分が中性付近のPHで最も生育する。

また、腐敗菌はPH5.5以下では生育が殆ど抑制される。


カビは人間の病原菌となることはあまりありませんが、植物の病原としては一番多いものです。

カビは酵素と言う強力な武器を持っているため、植物細胞の頑丈な細胞壁を溶かして侵入することができます。

カビは担子菌類と★子のう菌類に分けられますが、子のう菌と言うのはキノコの仲間で、★有性生殖によって担子胞子と言う胞子を作って増殖します。


★子(し)のう菌類とは、有性生殖によって子のうと言う袋の中に子のう胞子と言う胞子が作られるものの仲間です。

★有性生殖(ゆうせいせいしょく)とは、二つの異なる個体の生殖細胞が結合することによって、新しい遺伝子の組み合わせを作り出し、多様性を生み出す方法のこと。


カビによる病気は種類が多く、症状も斑点のできるもの、カビが生えるもの、枯れたり萎れたりするものと様々です。


♣斑点の形による病名


角斑病(かくはんびょう)
葉脈に区切られて多角形になる
ハナズオウ、ユウカリ

円星病(まるほしびょう)
円状の小さな斑点が多数できる
ナラ類、ソウジュ

褐色円星病
斑点が褐色のもの
クチナシ、カエデ

円斑病(えんはんびょう)
斑点が大きい円状のもの
アラカシ、コナラ

輪紋病(りんもんびょう)
病斑や子実体が同心円状
シンジュ、ポプラ類、ニセアカシア

斑紋病(はんもんびょう)
斑点の形や色が不鮮明なもの
クロバイ、ネズミモチ、シャシャンポ

葉枯病(ようこびょう)
セプトチス、ペスタロチア
葉先や葉の縁に大きくできるもの
クヌギ


穿孔(せんこう)病、穿孔褐斑病
斑点に穴のあくもの
サクラ、サクラ属樹木

斑点病
グミ、アオキ、ヒュウガミズキなど

葉斑病(ようはんびょう)
ツツジ、シャクナゲ


★斑点の色による病名

褐斑病=マサキ、カナメモチ、ケヤキなど

白斑病(はくはんびょう)=シャリンバイ、アラカシ

灰斑病=マサキ、ハコネウツギ

黄斑病(おうはんびょう)=ヤツデ

紅斑病(こうはんびょう)=ナンテン

白葉枯病(はくようこびょう)=マツ、クスノキ、イヌマキ

♣子実体の特徴による病名

◈子実体(しじつたい)とは、菌類において胞子が形成される部分が集合して塊状となったもの。

いわゆるキノコは大型でよく目立つ子実体である。

葉スス病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
マツ

裏スス病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
ヒメユズリハ

スス葉枯(ようこ)病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
マツ、ナラ類、アラカシ

スス紋病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
ブナ、イヌシデ

黒やに病
黒い光沢のある扁平な円状のものができる
ビロウ、ササ類

黒紋(こくもん)病
黒い光沢のある扁平な円状のものができる
カエデ、ヤナギ、モチノキ

白カビ葉枯病
斑点の表面に白い胞子の塊(かたまり)をつくる
クルミ

ゴマ色斑点病
黒いゴマ粒状の塊を密生する
ナシ科樹木


◉カビによるいろんな病気

病名  /発生箇所  /症状  /発生樹木

炭素病 /葉、枝に発生 /葉に灰白色の病斑、枝に黒い病斑、果実に黒い斑点ができ、広がって腐る /アオキ、アジサイ、コデマリ、サザンカなど

ソウカ病 /新葉や新梢、新芽に発生/はじめに円形の小斑点を生じ、やがて灰褐色になり、盛り上がってくる。
病斑が破れて葉に穴が開いたり、葉が変形したりすが枯れてしまうことはない。
/ヤツデ、ザクロ、アケビ、イチジク、クルミ、ウメ、ニンジンなど

トウソウ病 /新梢や葉に発生 /葉の中央に穴があく。白色の小斑点を密生したり、褐色や灰褐色のカサブタ状斑点をつくるもの、黒い斑点をつくるものなどある。 /ケヤキ、マサキ、コウゾ、ポプラ類、ヤツデなど

サビ病 /葉の表面、裏面、葉柄、幼茎、枝幹に発生 /黄橙色、またはサビ色の粉のようなものを多量に生ずる。
2つの宿主の間を往復して生活するものが多い。
/ビャクシンとナシ、クロマツとサンショウなど


モチ病 /新葉、花、芽に発生 /花や若葉の一部または全体が大きく膨らむ。
はじめ淡い緑色で光沢があるが、すぐに表面が白い粉に包まれる。
/ツバキ、サザンカ、ツツジ、シャクナゲ、クロキ


天狗巣病(てんぐすびょう) /幹、枝に発生 /幹や枝の一部からたくさんの不定芽をだす。
次に小枝が茂って小枝の塊ができる。
ウイルスによるものや、非伝染性の遺伝的突然変異によるものがある。
/サクラ、カンバ、ハンノキ


マツコブ病 /枝、幹に発生 /枝や幹の一部にはじめ豆粒くらいの膨らみができ、年毎に大きくなってコブになる。
コブの部分はもろく、害虫等が侵入しやすくなる。
サビ病菌の仲間により起こる。
/マツとブナ科の樹木のナラ、クヌギ、カシワなどを往復して生活する。


タフリナ病 /新葉、新梢、幼果に発生 /局部が肥大し、天狗巣ができたり、葉が縮んだりする。
患部の表面に白色または灰色の粉がつく。
鮮紅色(せんこうしょく)や黄色の場合もある。
やがて患部は褐色になり落ちたり、枯れたりする。
/ゼンマイ、ハシバミ、ハンノキ、スダジイ、モモなど

サクラ天狗巣病
タフリナ属の菌は高等植物の寄生菌で、寄生した植物の枝や葉に天狗巣病など様々な症状を起こす原因となる。

サクラ天狗巣病はカビの一種のタフリナ菌が原因で起こる伝染病で、ソメイヨシノはこの病気にとても罹りやすく、発病した枝を放置したままにしておくと花が咲かなくなり、やがて樹全体に広がり枯れてしまいます。

多くのソメイヨシノは、この病気によって寿命が短いという原因となっています。


葉ふるい病 /葉に発生 /針葉樹の葉に褐色の斑点ができ、酷いときは、葉の色が一見して悪いとわかる。
病気が進むと、病気の葉は枯れて落葉することから別名落葉病とも言う。
/アカマツ、クロマツ、モミ、ヒノキ、サワラ、アスナロ

リゾクトニア病 /多様だが主に地下部に発生 /植物の幼弱な時期や老衰期に侵す多犯。
地際部に茎腐れ、葉に病斑、根がしらや根の中央部が腐る。
茎が腐ったり芽が枯れたりする、その他、菌糸が絡みついたりする。
/広範で多様な植物、ラジノクローバー、ダイズ、トウモロコシ、イネ、サトウダイコン、ニンジン、ジャガイモ、樹木の苗、牧草類など

リゾクトニア属菌は、野菜類だけでなく普通作物、花木、牧草、材木などを侵します。

また、病原菌自身にも多くの系統があり、被害を受ける種類や病徴は複雑です。

野菜類では苗立ち枯れ病として、代表される病気です。

病原菌はカビで日本国内での問題の菌は、リゾクトニア·ソラーと呼ばれています。

リゾクトニア菌は、黒褐色化した古い有機物から栄養を取り、増殖することはほとんどできません。


新しい有機物のみから栄養を取って繁殖しています。








2023/10/21

樹木の五大病気⑤スス病 No,661

スス病

スス病は、アブラムシ類やカイガラムシ類などの吸汁性害虫の、排泄物を栄養として繁殖する病気です。





従って、アブラムシ類、カイガラムシ類のつく植物のほとんどに発生します。


主として葉に発生しますが、枝や幹に発生することもあります。

葉の表や裏、枝、幹の表面が煤(すす)を被ったように真っ黒になった植物を見たら、スス病だと考えてよいでしょう。

黒い煤のようなものは病原となるカビの菌糸です。

このカビに覆われると酷く汚れるので、美観が損なわれてしまいます。


スス病の発生している植物には、必ずアブラムシやカイガラムシ、キジラミ、コナジラミ等が寄生しています。


葉の裏や枝、幹を観察するとこれらの害虫が見つかるはずです。

一旦発生したスス病は、虫が寄生している間は症状が消えることはありません。


★発生しやすい植物

サツキ、ツツジ、シャクナゲ、ツバキ、サザンカ、カエデ類、ケヤキ、マツ類、カキ、ミカン、キク、ベゴニア類

その他、アブラムシ、カイガラムシのつく樹にはすべて発生します。


♣特徴

スス病は大変多くの植物に発生しますが、このカビは植物に直接寄生するものと、その植物に寄生しているアブラムシやカイガラムシなどの、害虫の排泄物を栄養として生活するものがあります。


ほとんどは害虫の排泄物を栄養として生活するものです。

4月~10月の害虫繁殖期に最も多く発生します。

また、温室などでは一年中害虫が活動できるため、冬でもスス病が発生する事になります。


虫についたスス病の場合、カビは植物体の表面を覆っていますが、布で拭いたり剥がしたりすると植物体は全く傷ついていません。


直接植物に悪影響を与えるとは言えませんが、あまり酷いと呼吸作用が妨げられる事になるので、薬剤による治療が必要となります。



◉予防対策

スス病そのものにはジネブ剤やチオファネートメチル剤、ダイセン、ダイファー、トップジンM等を散布すると効果がありますが、しかし効果は一時的でまたすぐに発生してしまいます。


根本的にスス病の原因となる害虫を駆除することが重要です。

害虫を退治しないと再発の恐れがあります。

害虫の排泄物を無くしてしまえば、スス病は自然に消滅して行きます。

害虫にはスミチオン、オルトラン、マラソン等を散布して害虫を駆除します。

冬の間には、冬期限定薬剤の石灰硫黄合剤を1~2回散布すると効果的です。


日陰で風通しが悪く、湿気の多い環境では害虫が発生しやすくなるので、混み入った枝を切り取ったり、落葉を集めて焼却したりして環境を良好にする。








2023/10/18

樹木の五大病気④褐斑病 No,660

 褐斑病(かっぱんびょう)

植物の葉に発生する病気のうちで、斑点性病害の中で最も代表的な褐色斑点性の病気です。

褐斑病は葉に褐色から黒褐色の班紋ができる病気の総称です。




斑点性の病気は病原菌の種類も多く、症状も様々なので病斑の色調や形によってたくさんの名前が付けられています。


褐斑病以外に、角斑(かくはん)病、黒点(こくてん)病、白星(しらほし)病、赤星(あかほし)病などがあり、葉に茶色から黒褐色の班紋ができていたら褐斑病と考えられます。


たくさんの植物に発生する褐斑病は、菌の種類も様々ですがほとんどの病原菌はカビです。


発生する時期は4月~10月で、特に6月くらいの温度の高い高温多湿時に多く発病します。


病状の進め方は、はじめは葉に褐色から黒褐色の小さな斑点が生じ、これが次第に大きくなり五ミリくらいの病斑に拡大します。

病気が進むと樹の下の方から葉が枯れ、落葉することもあります。


♣発生しやすい植物

アオキ、ツツジ類、バラ、ボタン、カイドウ、カキ、ナシ、リンゴ、キク、ケイトウ、コデマリ、シャクヤク、ハイビスカス、ホウセンカ、ライラック、アスパラガス、エンドウ、キュウリ、シソ、レタス、ノギク類など他多数

★特徴

黒斑病と症状が似ていますが、発生する時期も対策も一緒なので間違えても問題ありません。

どちらかと言えば、病斑の縁が曖昧なのが褐斑病で、はっきりしているのが黒斑病と覚えておけば間違いないでしょう。


病原菌は病葉(わくらば)の上で越冬し、雨で伝染します。

連作したり管理が悪く、不要なものを植えたままにすると発病しやすくなるので注意します。

また、湿度が高いと発病しやすくなります。



★予防対策

病葉を発見したらすぐに摘み取り焼却処分

古株でもう必要がないものは冬の間に処分し、鉢植えの用土は新しいものにします。


じめじめしていると発病しやすいので、剪定をして風通しを良くし、陽がよく当たるようにする。


感染の初期はダイセンやマンネブダイセン液等を10日おきに2~3回散布しておきます。


水媒感染を起こすので水やりのとき、葉に直接水をかけないようにきをつける。








2023/10/16

再開発が招く都市部高温化(神宮外苑問題) No,635

ヒートアイランド(都市部高温化)

神宮外苑問題 


人々が快適な生活を送る上で、樹木の果たす役割は大きなものがあります。

大気中の二酸化炭素を酸素に変えて、空気をきれいにしてくれるだけではなく、美しい景観で人々の目を楽しませ、心を豊かにし、生活に潤いと活力を与えてくれる存在です。

人々は樹木の重要性を昔から深く理解して、これまで樹木の生育にとって理想的な環境作りを進めて来ました。

しかし近年、公共施設開発などのために、自然環境を維持してきた森林帯まで切り拓く計画がなされ、豊かな自然が失われようとしています。



1000本近い樹木の伐採計画がある明治神宮外苑地区の再開発について、東京都知事(現、小池百合子)をはじめ東京都は、「新たな植樹などで緑は増える」と繰り返し説明している。

この地区の樹齢100年級の巨木が切られ、代わりに植えるのは若木のため、木の本数は増えてもボリュームは減り、緑の質(機能性)は大きく変わってしまいます。


地球温暖化が叫ばれる中、記録的な猛暑が続くと気温上昇は避けられません。


専門家からの反発する声が上がるのは当然です。



★引用、転載
中央大の石川幹子教授が調べた結果、伐採される可能性があるとされる樹木(上写真)

2022年4月13日
東京都新宿区霞ヶ丘町
大林太一撮影



大木を切り倒し、より多くの植樹をしたとしても、100年の大木と若木では樹木の冷却効果のレベルは全く違うものになり、緑の持つ効果は増えるどころか確実に損なわれることは間違いないことでしょう。

木陰は直射日光を防ぎ、夏場のアスファルトの路面温度は50度を超えることもあるが、木陰では20度程下がります。

さらに樹木は、表面が温められると葉から水蒸気を放出し、その際に周囲の熱を奪う特性があります。

このような樹木の性質がヒートアイランドの緩和に役立つのです。

木が大きい方がその効果も大きくなるのです。


★ヒートアイランドとは、都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて高温を示す現象で、都市化が進むほどヒートアイランドも強くなり、高温の長時間化や高温域の拡大が起こる。


   「ヒートアイランド現象」


新しく植えた若木が、現状の木と同じ冷却効果を発揮するのは100年後とされる。

神宮外苑の再開発では高層ビルを建てる計画で、コンクリートは熱をため込み、ビルの空調設備の排気熱などで都市部を温めるため、ヒートアイランドの一因となる。


これは天然のクーラーを減らし、ストーブを作るようなものであり、樹木の自然機能破壊の何物でもない。


植物の葉は二酸化炭素を原料として、糖と酸素を作り出していることは多く知られていることだろう。


人や動物は酸素を吸収して二酸化炭素を吐き出して生きています。

また、糖は全ての生命が活動するためのエネルギーになります。

植物の葉は、地球上で動物が生きて活動していくために最低限必要な条件を作り出すと言う、大変重要な働きをしているのです。

植物と動物の共存は必要不可欠なことなのです。



樹木の減少は自然界でも温暖化を招き、植物は衰退していく。

やがて荒野となる事にも繋がって行くのです。



多くの樹木を伐採するなどの問題がある、明治神宮外苑の再開発について、周辺住民ら59名が東京都に対し事業認可取り消しを求めるいる。


神宮外苑訴訟の第1回口頭弁論が6月29日、東京地裁で行われた。



「訴訟の報告集会で報告する原告ら」

原告らは小池百合子知事に対し、本当に適切な基準に従って認可したのかと問うている。


★明治神宮外苑の再開発では高さ3㍍以上の樹木1904本のうち、743本が伐採されるほか、256本が移植される計画です。


オンライン署名
https://chng.it/xh28gMHpQS


◉神宮外苑問題 ブログで発信
漫画家 ちばてつやさん




2023年10月16日しんぶん赤旗より抜粋


ちばてつやのブログ
『ぐずてつ日記』



♣サザンオールスターズ「Relay~杜の詩」




波紋が広がっている明治神宮外苑の再開発。

故·坂本龍一氏や村上春樹氏などの著名人が疑問を呈し、見直しを求める署名も多く集められている。

この動きに「サザンオールスターズ」も反応。

シングル「Relay~杜の詩」が話題を呼んでいる。




坂本龍一氏からインスパイアされたと明かした桑田佳祐さん。

未来を★憂う時代に 身近な場所で何が起こってるんだ?

★麗しいオアシスが

アスファルト·ジャングルに変わっちゃうの?

そんな内容の歌詞は痛烈と言えるだろう。




★憂う(うりょう)の意
思い悩んだり、心配すること、特に将来や行く末などのことが気掛かりである場合などに使われる言葉で、「愁う」とも書く。

★麗しい(うるわしい)の意
よく整って美しいこと








2023/10/15

樹木の五大病気③白絹病 No,659

 白絹病(しらきぬびょう)

病原菌学名=Corticium rolfsii Curzi

苗木や幼木の株の土と接している地際部や、株の近くの地表に白い糸状の菌糸が発生し、はじめ褐色の水浸状に変色する。




腐敗が進むにつれて黒褐色となる。

病気にかかった株の地上部の上部全身の枝葉は生気を失い、水が滲んだようになって腐って枯死する。

やがて、地際部やその近くの地表に小さな粒がたくさんできます。

これは菌糸の塊(かたまり)で菌核といい、地中に侵入して次の年の発生源となります。


病原菌は担子菌類に属する糸状菌(カビ)の一種で、極めて多くの木本、草木植物を宿主とする多犯性の病原菌である。

この病気の菌核は、発生適温が30~35度を示すように厳しい環境に耐えることができます。


菌核は土中で長期間潜伏し、新たな株が植えられると次々に感染を引き起こして行きます。


また、病患部に形成された子実層からは胞子を飛散させて、風媒伝播も行い、未分解有機物を栄養源として繁殖し、やがては健全植物に感染していく。


この病気は酸性土壌で、夏期高温時(6月~8月)の降雨の後などに発生が多い傾向があり、排水不良地や連作地で多発して激しい被害となる。


◉予防対策

病気になった株を発見したら、なるべく早く根の周りを土ごと抜き取って焼却処分する。

菌核が長く生存して伝染源となるので、菌核や被害残渣は残らず集めて焼却することが重要です。

病原菌核は地表面の比較的浅い部分に潜伏しているので、土壌の天地返しによって、地表面の菌核を土中深く埋没して死滅させます。

5月~10月に一回、PCNB剤(アースサイドなど)を土壌に混ぜたり、5月~6月から9日おきにメプロゾリン(バシタック水和剤)の水和剤等を10回ほど土壌に注入する。


病原菌に侵された土壌は、土壌消毒剤のクロルピクリン剤又はダゾメット剤などの、ガスくん蒸剤で土壌消毒を行う。

また、灌水(かんすい)可能な場合は、2~3週間灌水状態(水を注ぎ溜めた)に保つと、土中の病原菌はほとんど死滅に至り有効である。


なるべく連作を避け、鉢植えの植物は用土を7月~8月に太陽熱で消毒を行う。


★関連ブログ記事
糸状菌とは何?No,557