緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2023/10/28

植物に対する温度と湿度 No,666

 植物の生育には温度と湿度が大きく影響しています。

特に冬の寒さ、夏の暑さを生き延びために植物は色々な工夫をしています。


気温と植物の関係

寒さに強い樹、弱い樹
植物の耐寒性は種によって大変な差があり、冬の厳しい寒さにあうと枯れてしまう熱帯起源の植物がある一方、マイナス60度という超低温の中でも生存できる北極地方のワタスゲ、スゲ、矮性低木(チョウノスケソウ)などの植物もあります。


一般に植物は、冬の低温にあって組織が凍ってしまっても、氷が解けるとまた機能を回復するものが多い。

低温に強いかどうかは氷が解けるとときに、機能が回復する力の程度によって決まるようです。

また、低温への適応としては、寒さに強い形で越冬するという植物もあります。

乾燥した種子や、芽、地下茎などの形で越冬するのがその例である。


植物の地理的な分布は、その土地の冬の気温に大きく影響されます。

どのような地域にどのような群系が繁殖しているかを示したものを、植物の生態分布と言いますが、この生態分布は植物同士の相互の関係によっても影響されます。

主な影響を与えるのは、気温や降水量といった気候条件です。

気温は地球の赤道と極からの距離、つまり緯度差による変化が大きい為、降水量は大陸の海岸から内陸へ向かうに連れて変化します。

一般に寒さに強いのは針葉樹と落葉樹で、常緑樹は冬、暖かく年間降水量も多い土地に向いている傾向があります。

落葉樹は冬を生き抜く手段として、葉を落としますが、これは一種の「冬眠」とも言えるでしょう。


暑さに強い樹、弱い樹

植物の高温に対する耐暑性は、耐寒性と同様で種によってたいへん差があります。

高山に育つ陰生植物(日陰を好む植物)や極地に分布する海藻などは、高温に弱く呼吸が光合成を上回ってしまうことで、消耗が激しくなり枯れてしまいます。

植物は光合成によって作られた糖と気孔から吸った酸素を結びつけてエネルギーに変え、二酸化炭素を放出します。

これを「植物の呼吸」といい、光合成と全く逆の反応をしています。

呼吸は光と関係なく1日中行われています。

もっと高温の場合は、葉などの原形質(細胞の生きている部分、核と細胞質)が固まってしまい、枯れることもあります。

同種の植物でも、育つ環境によって耐熱性が向上することもあります。

砂漠や海辺の植物が耐熱性を持っているのは、生育条件と関係があると見られています。

また、ヨーロッパのように涼しい気候のところで育った樹は、暑さに弱いものが多く、高温多湿の土地でうまく育ちません。


湿度と植物の関係

気温とともに植物の生育に関係が深いのが湿度です。

植物は葉の裏にある気孔を通して、蒸散作用を行います。

蒸散は植物の表皮の外側からも行われていますが、ほとんどは葉の気孔を通して行われています。


蒸散により水分が放出されて、葉が水不足になることで、植物が根から水を吸い上げる力となっています。

しかし、あまり高温で水蒸気要求度が高く、水分の蒸散が激し過ぎてしまうと、根からの吸水が追いつかずに植物は消耗してしまいます。

また、冬は根の働きが鈍っているのに、空気が乾燥することで水不足になる傾向があります。


温度、湿度と病原菌の関係

《温度》
一般に胞子の形成に適する温度は、菌糸の生長に適した温度とほぼ一致しています。

イネのいもち病菌では、菌糸の生育適温は28℃で、胞子形成の適温も28℃で両方が一致しています。

また、野菜類の灰色カビ病菌もそれぞれ25℃であり、トマトの萎縮病では28℃である。


《湿度》
多数の病菌では、胞子の形成には低湿度よりも高湿度の方が適しています。

しかし、ウドン粉病菌では、分生子及び子のう殼の形成とも空気湿度が低いときに盛んである。

病原菌の性質を明らかにするため、あるいは殺菌剤の効果を検定するなどのために接種試験を行う場合には、条件を組み合わせて培養すると、接種源として多量の胞子を得ることができる。

湿度は空気に含まれる水蒸気量を表す尺度で、相対湿度(RH)と絶対湿度があるが、単に湿度という場合は相対湿度を指す場合が多い。

相対湿度は観測された水蒸気圧を、観測された気温に対する飽和水蒸気圧で割ったものであり、体感的な空気の湿り具合とよく対応する量である。

絶対湿度は、単位体積の空気中に含まれる水蒸気の質量として定義される。

空気中の水蒸気量を表す概念として、他に露点、比湿、混合比などがある。

露点とは観測された水蒸気圧を、飽和水蒸気圧とする温度である。

気温と露点の差は湿数と呼ばれ、湿度がゼロに近いほど空気が湿っていることを表します。

比湿とは、空気密度に対する水蒸気密度の比であり、混合比は、空気の水蒸気以外の成分の密度に対する水蒸気密度の比である。









2023/10/27

ウイルスによって起こる病気 No,665

 植物ウイルス

植物には500種以上の植物ウイルスが知られています。
ウイルスはとても小さく単純な構造をしています。

ウイルスは基本的に核酸がキャプシドというタンパク質を被って、棒状、ひも状、球状などの形になっています。


     「ウイルスのいろいろな形」


核酸は、体を作る元となる細胞に存在する、新しい細胞を作り出すために必要不可欠な成分で、細胞を作り出す情報を持っDNAと、情報をもとに細胞の材料となるタンパク質を合成するRNAがある。

植物病原ウイルスの大部分はRNA(デオキシリボ核酸)ウイルスであるため、ウイルス核酸を直接解析することは困難である。

しかし、RNAウイルスをDNAシベルで解析、操作することが可能となっている。

RNA(核酸)は、リボースを糖成分とする核酸で五炭糖のひとつで、遺伝情報の伝達やタンパク質の合成を行う。

一番小さな球状ウイルスは直接100万分の20㍉、一番長いひも状のウイルスは直接100万分の11㍉、長さ1000分の2㍉くらいです。

ウイルスは生きている細胞の中だけで増殖できるという点が、カビやバクテリアと一番違うところだろう。

ウイルスは宿主に感染して自分の複製をたくさん作りますが、それに必要なエネルギーやアミノ酸などの原料を、宿主細胞から借用しています。

伝染には昆虫の媒介者が必要な場合が多い。


このため、ウイルスを殺そうとする薬剤は、宿主にも有害な影響を与えてしまうことになるので、ウイルス病を薬剤で治療することは困難です。

従って、ウイルス病は予防が大切であると言えるだろう。

ウイルス病の病徴には多くの形があるが、大別するとウイルスが葉肉細胞などの柔組織で増殖するものと、維管束組織のみで増殖するものとの2つに分けることができます。

柔組織で増殖するウイルスは、モザイク、斑点、輪紋などウイルス病に特徴的な病徴をはっきり現すものが多い。

維管束のみで増殖するウイルスは、黄化、萎縮、葉巻などの比較的はっきりしない病徴を現す。

病徴(びょうちょう)とは、樹木が病原菌に侵されると外部に様々な異常(葉枯、枝枯など)が現れて肉眼でも確認できる、これを病徴という。

これは、養分欠乏症などの生理的障害との区別が難しい場合も多い。

外部病徴
病徴は通常は全身的に現れるが、実験的な接種では接種部位にだけ現れることもある。

病徴はウイルスの増殖の結果であるが、植物体内のウイルスの分布と病徴とは必ずしも一致しない。

無病徴感染
ウイルスに感染していても明らかな病徴が認められない場合は、無病徴感染(潜在感染)という。


植物ウイルスの分類

植物ウイルスは世界では約700種、日本でも少なくとも225種以上が報告されている。

これらについて性質が近い者同士を集めて分類する試みは、1970年代以降、国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって集められてきました。

ICTVでは、植物ウイルスもヒトや動物などのウイルスと同様に、科、属、種という階級分類によって統一的に分類しようとしてきました。


しかし、ウイルスについては種という概念が曖昧で、どのような基準で種を設定すべきかについての議論は絶えない。


そこで現在では、一部のウイルスについては動物ウイルス、昆虫ウイルス、菌類ウイルスとも共通な科が設けられている。

1つのウイルスでも性質の違い、系統や血清型などによって更に分類されることもある。


ウイルスによって起こる病気

モザイク病気
時々白いレースのような模様の入った、チューリップの花(斑入り)が咲くことがあります。

斑入りは昔から愛好家の間で珍重されてきました。

しかし、20世紀になってからこの模様が、モザイク病というウイルスによる病気の症状であることが分かりました。


モザイク病は、ウイルスによる病気の代表的なもので、タバコモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルスなどが有名です。

近年では、遺伝的に斑入りの品種を作ったりしていますが、普通のチューリップに混じっているようなものは、ウイルスの感染によるものです。

モザイク模様のチューリップは、葉や茎がねじれたり生育が悪くなったりします。

現在、球根の生産農家では花を咲かせて、モザイク病のチューリップを見つけると抜き取って捨てています。

それはチューリップの球根によって病気が伝染するからです。


ウイルスの伝え方

植物ウイルスは昆虫によって伝搬されるのが一般的です。

アブラムシ(アリマキ)、ウンカ(稲の害虫)、ヨコバイ(セミ類に近い一群)などの虫たちによって運ばれますが、一番重要なのはアブラムシで、160種以上の植物ウイルスを運びます。


アブラムシは多くの植物にモザイク病を起こす、キュウリモザイクウイルスやルテオウイルスを運びます。

✪ルテオウイルス=アブラムシ永続伝搬性であり、植物の師管内部で増殖して、植物体を黄化、萎黄萎縮症などを引き起こすとされている。

衣服や手で触っただけで、接触伝染するタバコモザイクウイルスは昆虫では伝搬されない。

しかし、製品化されたタバコにしぶとく残っていて、農作業を通してトマトやナスに感染することもあります。

稲の萎縮病はヨコバイの卵を経て、次の世代に伝わります。


ウイルスが地中の線虫や菌類によって伝搬されることを、ウイルスの土壌伝搬という。


ウイルスフリー

近年、バイオテクノロジー研究の進展に伴い、種子を利用せず、さし木、株分け、分球などにより増殖される栄養繁殖性の作物の多くが、ウイルスに感染している。

ウイルスに感染した株でも生長点にはウイルスが存在しないため、生長点を培養することにより、ウイルスに感染していないウイルスフリー苗を作ることができる。

イチゴ、株ネギ(在来種)、ジャガイモ、サツマイモ、キク、カーネーションなどでウイルスフリー化された苗が栽培されている。

これらの作物のウイルス病は主に、アブラムシ類によって媒介されるため、ウイルスの再感染を防ぐことを目的として苗の増殖は網室で行われる。


しかし、通常の栽培では圃場(ほじょう=農作物を育てる場所)全体を網で覆うわけに行かず、再感染が大きな問題となる。

近年、種子繁殖性の作物のウイルス病対策も含めて、ウイルス媒介害虫の防除技術の開発や、強毒ウイルスに抵抗性を示す弱毒ウイルスの利用などの保護技術の開発が行われている。









2023/10/25

バクテリアによって起こる病気 No,664

 単細胞でも多様なバクテリア

バクテリアは、菌類(カビ)よりずっと小さい直径1000分の1㍉、長さ1000分の1〜3㍉の生物です。

ソーセージ形(桿菌=かんきん)や球状のものなど、形は色々あります。

細い糸状の放線菌は土壌中で抗生物質を生産します。







また、らせん状の形をしたバクテリアの「スピロヘータ」は、梅毒や回帰熱などの病原体です。

スピロヘータは、ヒトの病原細菌としてよく知られ、今から約100年前、野口英世博士が梅毒トレポネーマをはじめとして、様々な病原性スピロヘータの研究を精力的に行ったことでも有名である。


スピロヘータは感染した動物の便に、汚染した手や食品を介して口から感染します。


このため、家族や室内で飼育しているペットから感染する可能性があり、感染すると何ヶ月も長く続く下痢を引き起こします。


バクテリアは単細胞生物で分裂によって増殖できるので、本質的には性行動は必要ありませんが、バクテリア同士が結合してDNAの組み換えを行います。


これは遺伝子を混ぜ合わせて、多様性を高めているのだと考えられます。

バクテリアは環境の変化に適応して、生き残るために工夫しているのです。

バクテリアによって起こる病気

①野菜類軟腐(なんぷ)病
ハクサイやキャベツの真ん中の部分が変色して、腐ったり嫌な臭いがしたり、他にも色々な野菜や果物が腐ります。

これは野菜類軟腐病菌というバクテリアによって起こる病気で、アイリスやシクラメン、ランや観葉植物などにも発生します。


バクテリアは『ペクチン質』を分解しながら増殖しますが、このときペクチナーゼという酵素を出します。

この酵素は、植物の葉などの細胞を溶かしてバラバラにして腐らせます。

ペクチン質は、ガラクツロン酸を主とする多糖の一種で、セルロース繊維などとともに植物の細胞壁を構成しています。


このバクテリアは土壌によって伝染します。

土の中で雑草の根の表面や、病気になった植物の体の一部などに付いて、新しい植物が植え付けられるのを待っています。


バクテリアは菌類と違い、自分で植物たちの表面に孔を開けることができないので、農作業や風雨、害虫の食害などによってできた傷口を探して侵入するので、この病気は害虫の多い畑で多発する。

②フジコブ病
マツコブ病はカビによって起きますが、フジやサクラのコブ病はバクテリアが病原となります。

若い茎や枝の傷から侵入して発病し、小枝が枯れて花の数も少なくなります。


枯れないものは樹とともに成長して、コブのくぼみが害虫の産卵場所になります。

また、虫こぶはクリやブドウ及び一部の植木などでは問題になる。

クリタマバチはクリの芽に産卵する。

ブドウネアブラムシはブドウの根に生息し、ともに虫こぶを形成する。

これらは難防除害虫であるが、その他の作物では虫こぶの形成はあまり問題とされない。


③根粒バクテリア
植物の生育にとって悪い影響を与えるものではないので、病気とは考えられませんが、本来の植物の生理を考えると病気と言えます。

植物病理学からみた病気とは、一定時間以上何らかの刺激を受け続けた結果として、植物が元々持っていた機能や形が正常でなくなった状態のことを言う。

何らかの刺激というのは、例えば微生物の感染などによる刺激を言います。

病気の原因となるものが植物の体内に侵入して、植物から栄養を取るようになることを感染といい、感染した植物の形に異常が起きたときに発病したと言います。


④その他、
立ち枯れ病の一部やコウヤク病もバクテリアによる病気です。

この病気の症状は、青枯れ病や萎凋(いちょう)病の症状と似ていて見分けにくい場合が多い。


いずれの場合でも病原体は、根の傷口から侵入します。

根を傷つける原因は、虫による傷口か、作業用スコップなどで傷をつけることなどが考えられます。

✪コウヤク病については関連ブログ
樹木の五大病気①コウヤク病
No,657に記載しています。









2023/10/24

薬剤の形と分類 薬剤について No,663

 薬剤の形と分類と役割


植物を病害虫から守る重要な事は、植物を丈夫に育てることです。

特に樹木の場合は、農作物の栽培などとは違って、薬剤の積極的な使用はなるべく避けたいところであり、薬剤に頼らない防除を基本にしながら、薬剤は合理的に使用したいものです。


薬剤防除が必要なケースとしては、害虫の異常発生が起こり、大きな被害が予想されるときや実害がそれほどなくても、著しく時間を損なうときや観賞価値を落としてしまうとき、また幼苗期から育成期にかけての防除として使用する場合などがあげられます。

薬剤には乳剤や液剤、水和剤などの様々な形態のものがあります。

同じ種類の薬剤でも形態によって使い方が違ってきますので、十分な注意が必要となります。





《乳剤》
有効成分を石油類などの有機溶媒に溶かし、そこに乳化剤が加えられています。

使用方法として、有効成分は高濃度であるため、水で薄めて使用します。

水を加えると白く濁るのが特徴です。


《液剤》
有効成分を水に馴染みやすい溶液に溶かしてあります。
使用方法として、水で溶かして使用します。

水に溶かしても白く濁りません。


《水和剤》
有効成分は石の細かい粉(タルク)などに吸着させてあります。

使用方法として、水で薄めて使います。
有効成分は高濃度で粒状ですので粒剤と間違わないようにします。


《水溶剤》
薬剤そのものが水に溶けやすい性質です。

使用方法として、そのまま水に薄めて使います。

《粉剤》
薬剤はタルクなどの粉末で増量しています。

使用方法として、そのまま散布します。

有効成分は低くなっています。

《粒剤》
有効成分は鉱物粉末に吸着させて粒状にしてあります。
使用方法として、土壌に与えるものに多く見られる薬剤です。

《油剤》
有効成分を油性溶媒に溶かしてあります。

使用方法として、そのまま使います。

薬剤は使用目的により大きく4つに分けられる

①殺菌剤
病原菌の殺菌や予防、病気の治療に使います。

②殺虫剤
害虫の駆除に使います。

③除草剤
農家が除草を目的に使う強い薬剤です。
薬剤の乱用によって、環境への影響が危惧されている。

④生理活性剤
ケミカルコントロールに使う薬剤です。

薬剤で植物の生理作用をコントロールすることをケミカルコントロールという。

植物の成長過程で重要な働きをする植物ホルモンは、植物が自分で作り出すもので、これとよく似た作用を持つ植物成長調整剤を使うと、植物の生理作用を人工的に進ませたり、抑えたりできます。

なお、植物はどの植物にも同じような作用をするわけではありません。

植物によって、目的が同じでも薬剤が違う場合もあり、また、薬剤が同じでも植物や使う時期によって様々な作用が現れます。


ケミカルコントロールで使う調整剤

《生育促進剤》植物ホルモン剤
植物を早く生育させたい、または、早く大きくしたいときに「ジベレリン」を使うと、生育促進、伸長促進などの効果があります。

ジベレリンは、ブドウの「タネなし化」などにも使われています。

ジベレリンは、植物細胞そのものを大きくするので、植物が軟弱に育ってしまう傾向があります。

使用するときは、施肥などの栽培管理に注意が必要です。


《伸長抑制剤》
植物を大きくしたくない、コンパクトに育てたいときに「アンチジベレリン」矮化(わいか)剤を使います。

植物の細胞が小さくなり、葉と葉の茎を短縮させるので、ボリューム感のある姿にします。

また、伸長が抑えられた結果、抵抗力が付く場合もあります。

シャクナゲやツツジに使うと花芽の数が増えます。


《発根促進剤》
挿し木やさや挿し芽の発根を促進させます。

挿し木や挿し芽の切り口に薬剤をつけ、さし床に挿すだけのことで、根の数が多くなるといった効果があります。

良い苗ができるので順調な生育が可能になります。


《着果促進剤》
落果を防止する効果があります。

イチゴやグミにはジベレリン、メロンやスイカにはベンジルアミノプリン剤が着果の促進剤となります。


《開花促進剤》
花を早く咲かせたい、多く咲かせたい、花を大きくしたいときに使います。

開花促進に使うときは、つぼみを確認してから使用するのがポイントです。

つぼみのできる直前に使ってしまうと、花芽が無くなる心配があります。

ツバキにジベレリンを使うと花を大きくすることができます。


✿殺菌剤はその効果により、予防薬(予防殺菌剤)と治療薬(直接殺菌剤)との2つに分けられます。

病気を予防、治療するための殺菌剤
《直接殺菌剤》
病原菌や菌糸に直接作用して殺してしまう薬剤です。

病害予防の要とも言われる薬剤で、発病後できる限り発病初期に使用します。

殺菌剤には両方の効果を持つものが多くありますが、予防と治療は分けて考え、計画的に薬剤を使用しなければならないのは当然のことです。

ベノミル剤、チオファネートメチル剤、オキシカルボキシン剤、トリホリン剤、ポリオキシン剤などはこれに属します。

病害に応じた適切な薬剤を選び、発病の初期に使うとかなりの効果が期待できます。


《予防殺菌剤》
病原菌の侵入や伝染を防ぐ薬剤です。

病気の多くは植物の気孔(きこう)や害虫がつけた傷口から侵入するので、発病前から散布しておけば予防効果が期待できます。


ジネブ剤、マンネブ剤、マンゼブ剤、銅水和剤、キャプタン剤などがこのグループになります。

予防を目的とする薬剤なので、発病後に散布を行ってもそれ以前に侵入した病原菌にはあまり効果がありません。

発病しやすい時期の少し前から散布することが重要です。


その他の殺菌剤
ガス化して土壌中の病害虫を殺すガス剤(くん蒸剤)、幹にできた傷口に塗って秒巣の進展を防止する塗布剤などがあります。

殺菌塗布剤=トップジンМペースト、トップジンМオイルペーストなど


《抗菌剤》(農業用抗生物質)
微生物の抗菌作用を利用して、菌で菌を防除する薬剤です。

ストレプトマイシン剤、ポリオキシン剤、バリダマイシン剤、カスガマイシン剤などがあります。

特定の病気には特効薬となる薬剤となります。

植物の病原の8割はカビの仲間です。
残りの2割はほぼバクテリア(細菌)とウイルスで占められています。

殺菌剤の大半はカビを病原の対象とするものであり、バクテリアやウイルスに有効なものはあまり多くありませんが、バクテリアを対象とする薬剤としては抗菌剤があります。

これは、人間の病気に用いられる抗生物質を植物用に応用したものです。

ウイルスに有効な治療薬は現在ありません。

予防薬としての抗ウイルス剤はあるが、昆虫による伝染を防ぐことはできません。


害虫を駆除するための殺虫剤

殺虫剤はその効果により、大きく3つに分けられます。

①食毒性殺虫剤=消化中毒剤
葉や茎に付着した薬剤により食毒死させる。

植物の茎や葉についた薬剤を害虫が食べると、食中毒を起こして死んでしまうという薬剤です。

表面に薬剤の付着した葉や茎を害虫がかじって、薬剤が体内に取り込まれると、消化管の中で効果を発揮します。

そのため、毛虫やイモムシなどのそしゃく性口器(こうき)を持つ害虫には有効です。

しかし、吸収性口器を持つ害虫、アブラムシ類、カメムシ、ハダニ類などには効果がありません。


②接触毒殺虫剤=虫の体に直接付着させて中毒死させます。

薬剤が虫の体に直接つかないと効果がないものに、除虫菊剤、硫酸ニコチン、DDVP剤(劇物)があります。

多くの有機リン剤(オルトラン)やカーバメート系(デナポン水和剤など)の殺虫剤は、茎や葉についた薬剤の上を害虫が這っても有効なので、飛来しては食害する害虫にも使えます。

しかし、この薬剤はハマキムシ類や虫こぶを作る害虫、穿孔性(せんこうせい)害虫にはほとんど効果がありません。


③浸透移行性殺虫剤=薬剤を植物体内に浸透させ食毒死させる。

薬剤な有効成分が葉や茎から植物体内に浸透し、植物全体に行き渡るので、食害する害虫を中毒死されます。

エストックス、キルバール、アンチオ、ジメトエートなどの薬剤があります。

小型の吸収性害虫に効果がありますが、食葉性害虫には孵化(ふか)直後のイモムシやケムシにしか効きません。

《ガス剤》
有効成分が散布後に揮発してガス化し、このガスを吸った害虫が中毒死します。

《その他の殺虫剤》
特定の害虫を対象とした専用剤の殺ダニ剤や殺ナメクジ剤等がある。

トリモチを応用したハエ取り紙のような粘着剤もある。

カミキリムシ類の産卵を防止する樹幹塗布剤(アルバリンなど)などがあります。


◉薬剤の使用濃度

薬剤の多くは取り扱いの都合上、高い濃度のままで市販されているので、そのまま使ってはいけません。

❉薬剤は決められた濃度になるように必ず水で薄めて使います。

その場合、風呂の残り水や洗濯のすすぎ水といった生活用水、海水、腐敗水などを使うことは薬害の原因となります。

必ず新しい水で薄めるようにしましょう。

使用濃度は薬剤の容器のラベルに記載されていますが、ほとんどの場合1000〜2000倍と広い範囲が示されています。

これは低い濃度、この場合なら2000倍が低い濃度になりますが、2000倍に合わせても十分に効果があり、高い濃度の1000倍でも薬害が出ないことを示しています。


殺菌剤は薄めにして、葉の裏まで満遍なく散布します。

殺虫剤は少し濃くして、害虫に集中的に散布することが理想的です。


薬剤の薄め方

『乳剤、液剤の場合』
①バケツや噴霧器のタンクなどに水を正確に計量して入れます。

容量がはっきりわかるもの、計量器がない場合などは、牛乳パックやビールびんなどを利用すると良いでしょう。


基本的には、注射器やメスシリンダーなどで計量したいものです。

②薬剤を計量したら水に加えて棒などでよくかき混ぜます。


『水和剤、水溶剤の場合』
水和剤や水溶剤は、水に溶けにくいので、少量の水を徐々に溶かしていきます。

最初から大量の水に入れるとよく混ぜたつもりでも、上側と下側では濃度がまるで違ったものになります。

混ざりが悪いと上側の溶液は効果がなく、下側の溶液では濃度が高くなって薬害を起こす原因となります。

水和剤はそのまま水の中に入れてかき混ぜても、なかなか溶けません。

①水を正確に計量し、バケツやカップに入れます。

②小さな容器に正確に計量した薬剤を入れ、少量の水を加えながらかき混ぜます。
このときに展着剤も加えます。

十分にかき混ぜながら水を加え、薬剤がよく混ざったら水に入れてよくかき混ぜます。


❉また、乳剤には展着剤は必要ありませんが、その他の薬剤には最後に加えるようにします。


❴薬剤の混用❵

病気と害虫は同時に発生することが多いので、2種類以上の薬剤を混ぜて使用することがあります。

この場合、相性の悪い薬剤を混ぜて使うと効果が落ちるだけではなく、薬害が出たり人肉毒性が高くなることがあります。

混ぜてはいけない組み合わせを、ラベル表示で確認する必要があります。

石灰硫黄合剤とマシン油乳剤(機械油乳剤)は単用した方が安全です。

なお、殺虫剤のスミチオンやマラソンと殺菌剤のジネブ剤、TPN剤(ダニコール)は混用しても差し支えありません。


また、混用の組み合わせは水和剤なら水和剤というように同じ形態の薬剤同士にします。


❴薬剤散布の基本❵

《乳剤、液剤、水和剤、水溶剤の散布》
薬液が細かい霧状になるように、噴霧器を使って散布します。

病原菌の多くは葉の裏にある気孔から侵入します。

アブラムシやハダニ、アザミウマなどは葉の裏で活動することが多い害虫です。

従って、薬液をうまく葉の裏に散布、付着されることが重要となります。

噴霧器の噴射口を上向きにして、下から霧を吹き上げるように散布します。

薬剤を散布したとき、葉先から薬液がポタポタ落ちるようではかけ過ぎで、かえって薬剤が付着しません。

噴射口を植物から30〜50㌢程度離して散布しましょう。

《粉剤、粒剤の散布》
粉剤をまく散粉剤器を使用して散布しますが、薬剤をガーゼで包み、棒で軽く叩くようにしても散布できます。

やりすぎると薬害を起こす原因となるので、薄っすらと霜が降りた程度を目安にします。

《散布の注意点》

日中の好天気に薬剤散布を行うと、物理的にも科学的にも薬害が起こりやすくなります。

できるだけ散布は曇りの日や夕方に行うようにします。

病原菌は雨が降ると拡散するものが多いので、雨のすぐ後に散布するか、翌日には雨の降りそうな日に行なうと良いでしょう。

風のない日なら最適です。

薬剤は散布後30分でだいたい乾いてしまうので、散布した夜に雨が降っても、散布をやり直す必要はありません。

散布を行うとときは、風向きをよくみて、常に風下に進むように、風上から散布を始めます。

また、散布中に器具が故障してもゴム手袋やマスクをしたままで、調整、修理を行うようにしましょう。

散布中の飲食や喫煙は厳禁です。

散布後の注意点

使った器具やゴム手袋、マスクなどはよく洗います。

桶などに水を汲んで洗い、水は土の中に流して処理し、また、残った薬液も穴を掘って流し込んで処理します。

薬液を下水溝や川に流すと、その流入によって魚が死ぬこともあります。

また、使い残しの薬液の保存はできません。

薬剤は冷暗所で保管し、低毒性の薬剤であっても鍵のかかる薬剤専用の保管箱で、きちんと管理する必要があります。

散布面積と薬液の分量 (1㎡当たりの分量)

散布する植物 /薬液の目安 
1m以下の草花類、野菜類 /100cc程度

1m以上の草花類、野菜類 /200cc程度

丈の低い庭木類 /100〜200cc程度

2m程度までの庭木類 /3〜5リットル程度

長さ1m程度の垣根 /5リットル程度

どんな植物でも粉剤は2〜3㌘

どんな植物でも粒剤は4〜6㌘

鉢物なら粒剤は1株当たり1〜2㌘


知っておきたい薬剤の毒性

薬剤は法律(農薬取締法)によって、特定毒物、毒物、劇物、普通物の4種類に分けられます。

毒物はは劇物より強い毒性

普通物以外は自由な売買が制限されていて、毒物と劇物は鍵のかかる保管場所に入れることが義務付けられている。


特定毒物は個人で使うことはできない薬剤です。


殺菌剤のトリアジン(普通物)などが皮膚につくと、酷くかぶれることがあります。

ジネブ剤(普通物)やマンネブ剤(普通物)でもかぶれることがあります。

原液や原体を扱うときや、また薬剤の保管にあたっても細心の注意を払うようにすることが重要です。

《薬害》

薬剤散布をしたあと数日して、葉が赤く枯れたり、ひどい場合には全部葉が落ちてしまうことがあります。

この症状が薬害ですが、薬剤散布が無駄になるだけではなく、植物を傷めてしまう結果となります。

薬害は濃度調整のミスなどの人為的原因で起きますが、因果関係がよくわからない場合もたくさんあります。

その大部分は植物の生理状態、天候、温度などに原因があるとされています。

樹木の薬害については、野菜類に比べると解明が進んでいないと言うのが現状です。

長雨なあとや高温のときには、薬剤の規定濃度の上限で散布したほうが安全です。

規定濃度が1000〜1500倍なら、1500倍に薄めて散布しましょう。









2023/10/22

カビ(菌類)によって起こる樹木の病気 No,662

 カビは植物の最大の敵

カビはPH2.0~8.5の広い範囲で生育し、細菌は大部分が中性付近のPHで最も生育する。

また、腐敗菌はPH5.5以下では生育が殆ど抑制される。


カビは人間の病原菌となることはあまりありませんが、植物の病原としては一番多いものです。

カビは酵素と言う強力な武器を持っているため、植物細胞の頑丈な細胞壁を溶かして侵入することができます。

カビは担子菌類と★子のう菌類に分けられますが、子のう菌と言うのはキノコの仲間で、★有性生殖によって担子胞子と言う胞子を作って増殖します。


★子(し)のう菌類とは、有性生殖によって子のうと言う袋の中に子のう胞子と言う胞子が作られるものの仲間です。

★有性生殖(ゆうせいせいしょく)とは、二つの異なる個体の生殖細胞が結合することによって、新しい遺伝子の組み合わせを作り出し、多様性を生み出す方法のこと。


カビによる病気は種類が多く、症状も斑点のできるもの、カビが生えるもの、枯れたり萎れたりするものと様々です。


♣斑点の形による病名


角斑病(かくはんびょう)
葉脈に区切られて多角形になる
ハナズオウ、ユウカリ

円星病(まるほしびょう)
円状の小さな斑点が多数できる
ナラ類、ソウジュ

褐色円星病
斑点が褐色のもの
クチナシ、カエデ

円斑病(えんはんびょう)
斑点が大きい円状のもの
アラカシ、コナラ

輪紋病(りんもんびょう)
病斑や子実体が同心円状
シンジュ、ポプラ類、ニセアカシア

斑紋病(はんもんびょう)
斑点の形や色が不鮮明なもの
クロバイ、ネズミモチ、シャシャンポ

葉枯病(ようこびょう)
セプトチス、ペスタロチア
葉先や葉の縁に大きくできるもの
クヌギ


穿孔(せんこう)病、穿孔褐斑病
斑点に穴のあくもの
サクラ、サクラ属樹木

斑点病
グミ、アオキ、ヒュウガミズキなど

葉斑病(ようはんびょう)
ツツジ、シャクナゲ


★斑点の色による病名

褐斑病=マサキ、カナメモチ、ケヤキなど

白斑病(はくはんびょう)=シャリンバイ、アラカシ

灰斑病=マサキ、ハコネウツギ

黄斑病(おうはんびょう)=ヤツデ

紅斑病(こうはんびょう)=ナンテン

白葉枯病(はくようこびょう)=マツ、クスノキ、イヌマキ

♣子実体の特徴による病名

◈子実体(しじつたい)とは、菌類において胞子が形成される部分が集合して塊状となったもの。

いわゆるキノコは大型でよく目立つ子実体である。

葉スス病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
マツ

裏スス病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
ヒメユズリハ

スス葉枯(ようこ)病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
マツ、ナラ類、アラカシ

スス紋病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
ブナ、イヌシデ

黒やに病
黒い光沢のある扁平な円状のものができる
ビロウ、ササ類

黒紋(こくもん)病
黒い光沢のある扁平な円状のものができる
カエデ、ヤナギ、モチノキ

白カビ葉枯病
斑点の表面に白い胞子の塊(かたまり)をつくる
クルミ

ゴマ色斑点病
黒いゴマ粒状の塊を密生する
ナシ科樹木


◉カビによるいろんな病気

病名  /発生箇所  /症状  /発生樹木

炭素病 /葉、枝に発生 /葉に灰白色の病斑、枝に黒い病斑、果実に黒い斑点ができ、広がって腐る /アオキ、アジサイ、コデマリ、サザンカなど

ソウカ病 /新葉や新梢、新芽に発生/はじめに円形の小斑点を生じ、やがて灰褐色になり、盛り上がってくる。
病斑が破れて葉に穴が開いたり、葉が変形したりすが枯れてしまうことはない。
/ヤツデ、ザクロ、アケビ、イチジク、クルミ、ウメ、ニンジンなど

トウソウ病 /新梢や葉に発生 /葉の中央に穴があく。白色の小斑点を密生したり、褐色や灰褐色のカサブタ状斑点をつくるもの、黒い斑点をつくるものなどある。 /ケヤキ、マサキ、コウゾ、ポプラ類、ヤツデなど

サビ病 /葉の表面、裏面、葉柄、幼茎、枝幹に発生 /黄橙色、またはサビ色の粉のようなものを多量に生ずる。
2つの宿主の間を往復して生活するものが多い。
/ビャクシンとナシ、クロマツとサンショウなど


モチ病 /新葉、花、芽に発生 /花や若葉の一部または全体が大きく膨らむ。
はじめ淡い緑色で光沢があるが、すぐに表面が白い粉に包まれる。
/ツバキ、サザンカ、ツツジ、シャクナゲ、クロキ


天狗巣病(てんぐすびょう) /幹、枝に発生 /幹や枝の一部からたくさんの不定芽をだす。
次に小枝が茂って小枝の塊ができる。
ウイルスによるものや、非伝染性の遺伝的突然変異によるものがある。
/サクラ、カンバ、ハンノキ


マツコブ病 /枝、幹に発生 /枝や幹の一部にはじめ豆粒くらいの膨らみができ、年毎に大きくなってコブになる。
コブの部分はもろく、害虫等が侵入しやすくなる。
サビ病菌の仲間により起こる。
/マツとブナ科の樹木のナラ、クヌギ、カシワなどを往復して生活する。


タフリナ病 /新葉、新梢、幼果に発生 /局部が肥大し、天狗巣ができたり、葉が縮んだりする。
患部の表面に白色または灰色の粉がつく。
鮮紅色(せんこうしょく)や黄色の場合もある。
やがて患部は褐色になり落ちたり、枯れたりする。
/ゼンマイ、ハシバミ、ハンノキ、スダジイ、モモなど

サクラ天狗巣病
タフリナ属の菌は高等植物の寄生菌で、寄生した植物の枝や葉に天狗巣病など様々な症状を起こす原因となる。

サクラ天狗巣病はカビの一種のタフリナ菌が原因で起こる伝染病で、ソメイヨシノはこの病気にとても罹りやすく、発病した枝を放置したままにしておくと花が咲かなくなり、やがて樹全体に広がり枯れてしまいます。

多くのソメイヨシノは、この病気によって寿命が短いという原因となっています。


葉ふるい病 /葉に発生 /針葉樹の葉に褐色の斑点ができ、酷いときは、葉の色が一見して悪いとわかる。
病気が進むと、病気の葉は枯れて落葉することから別名落葉病とも言う。
/アカマツ、クロマツ、モミ、ヒノキ、サワラ、アスナロ

リゾクトニア病 /多様だが主に地下部に発生 /植物の幼弱な時期や老衰期に侵す多犯。
地際部に茎腐れ、葉に病斑、根がしらや根の中央部が腐る。
茎が腐ったり芽が枯れたりする、その他、菌糸が絡みついたりする。
/広範で多様な植物、ラジノクローバー、ダイズ、トウモロコシ、イネ、サトウダイコン、ニンジン、ジャガイモ、樹木の苗、牧草類など

リゾクトニア属菌は、野菜類だけでなく普通作物、花木、牧草、材木などを侵します。

また、病原菌自身にも多くの系統があり、被害を受ける種類や病徴は複雑です。

野菜類では苗立ち枯れ病として、代表される病気です。

病原菌はカビで日本国内での問題の菌は、リゾクトニア·ソラーと呼ばれています。

リゾクトニア菌は、黒褐色化した古い有機物から栄養を取り、増殖することはほとんどできません。


新しい有機物のみから栄養を取って繁殖しています。








2023/10/21

樹木の五大病気⑤スス病 No,661

スス病

スス病は、アブラムシ類やカイガラムシ類などの吸汁性害虫の、排泄物を栄養として繁殖する病気です。





従って、アブラムシ類、カイガラムシ類のつく植物のほとんどに発生します。


主として葉に発生しますが、枝や幹に発生することもあります。

葉の表や裏、枝、幹の表面が煤(すす)を被ったように真っ黒になった植物を見たら、スス病だと考えてよいでしょう。

黒い煤のようなものは病原となるカビの菌糸です。

このカビに覆われると酷く汚れるので、美観が損なわれてしまいます。


スス病の発生している植物には、必ずアブラムシやカイガラムシ、キジラミ、コナジラミ等が寄生しています。


葉の裏や枝、幹を観察するとこれらの害虫が見つかるはずです。

一旦発生したスス病は、虫が寄生している間は症状が消えることはありません。


★発生しやすい植物

サツキ、ツツジ、シャクナゲ、ツバキ、サザンカ、カエデ類、ケヤキ、マツ類、カキ、ミカン、キク、ベゴニア類

その他、アブラムシ、カイガラムシのつく樹にはすべて発生します。


♣特徴

スス病は大変多くの植物に発生しますが、このカビは植物に直接寄生するものと、その植物に寄生しているアブラムシやカイガラムシなどの、害虫の排泄物を栄養として生活するものがあります。


ほとんどは害虫の排泄物を栄養として生活するものです。

4月~10月の害虫繁殖期に最も多く発生します。

また、温室などでは一年中害虫が活動できるため、冬でもスス病が発生する事になります。


虫についたスス病の場合、カビは植物体の表面を覆っていますが、布で拭いたり剥がしたりすると植物体は全く傷ついていません。


直接植物に悪影響を与えるとは言えませんが、あまり酷いと呼吸作用が妨げられる事になるので、薬剤による治療が必要となります。



◉予防対策

スス病そのものにはジネブ剤やチオファネートメチル剤、ダイセン、ダイファー、トップジンM等を散布すると効果がありますが、しかし効果は一時的でまたすぐに発生してしまいます。


根本的にスス病の原因となる害虫を駆除することが重要です。

害虫を退治しないと再発の恐れがあります。

害虫の排泄物を無くしてしまえば、スス病は自然に消滅して行きます。

害虫にはスミチオン、オルトラン、マラソン等を散布して害虫を駆除します。

冬の間には、冬期限定薬剤の石灰硫黄合剤を1~2回散布すると効果的です。


日陰で風通しが悪く、湿気の多い環境では害虫が発生しやすくなるので、混み入った枝を切り取ったり、落葉を集めて焼却したりして環境を良好にする。