緑のお医者の徒然植物記

Translate

緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2024/11/01

お茶の歴史 No,737

 お茶の歴史

お茶の歴史は、中国で薬として発見されたのが始まりとされています。

紀元前2700年頃、神農が薬としてお茶を発見したとされています。

当時のお茶は、葉を食べんもので薬として用いられていました。

神農は紀元前2740年頃に活躍した皇帝とされ、炎帝神農とも呼ばれた、古代中国の伝承に登場する三皇五帝の中の三皇(伏犠=ふっき、女媧=じょか、神農=しんのう)の一人。

五帝については配列や人名に諸説があるとされています。

神農は人々に医療と農耕の術を教えました。

神農神話

神農は毎日無数の草を食べる中で、毒気に当たることはなかったのかと言う話があるが、実際には1日に70回まで毒気に当たったそうです。

しかし、あらゆる毒素を解毒する葉を見つけていました。

それが茶です。

120歳まで生きたとされる神農は、「断腸草」と言う薬草を試した時、解毒剤に間に合わず亡くなったとされています。

常にお茶があるわけではなかったのです。



お茶の伝来

お茶は奈良、平安時代に遣唐使や留学僧によって日本に広まりました。

記録では、延暦24年(805年)に最澄(さいちょう)が唐からお茶の木を持ってきて近江の坂本にうえたとあり、これは今での日吉茶園として残っています。

最澄(767〜822年)は平安時代初期の日本の仏教僧=伝教大師

奈良時代から、日本人の暮らしとは切っても切り離せないお茶が緑茶です。

日本茶とも呼ばれることから日本文化のお茶と言えます。

鎌倉時代になると、臨済宗の開祖、明菴栄西(みょうあんえいさい、1141〜1215年)が宋に2度渡り、帰国の際にお茶を持ち帰ったのがきっかけで普及しました。

江戸時代のはじめまで緑茶は茶葉ごと飲むものでした。

今でも抹茶は粉にして葉を丸ごといただいています。

江戸時代には、幕府の儀礼に正式に用いられ、武家と茶の湯は切っても切れない関係となっていきました。

中国南部やタイなどでは、発酵させた茶葉を漬物として食べています。

1738年、宇治田原郷の永谷宗円(ながたにそうえん)は、製茶方法を丁寧な方法に改めて、優れた煎茶の製法を編み出した「煎茶の祖」と呼ばれています。

宗円が生み出した製法は「宇治製法」と呼ばれ、18世紀後半以降全国の茶園に広がり、日本茶の主流となっていきました。


また、より高級な煎茶を開発しようと「覆下栽培」を煎茶に応用する試みが行われ、1835年山本嘉兵衛(やまもとかへえ)により「玉露=ぎょくろ」の製法が生み出されたとされています。

覆下栽培(おおいしたさいばい)とは、お茶の栽培方法のひとつで、茶の木をわらやむしろなどで覆って育てる栽培方法で、被覆栽培とも言われています。

茶葉を食べる

緑茶はスーパー健康食品であり、「日本茶を食べる会」と言う団体もあります。

無農薬、有機栽培のお茶を扱う業者が参加して「食べる」お茶文化を広げています。

お湯に溶け出すお茶の有効成分は、ビタミンCやタンニンの一種のカテキン、アミノ酸、カフェインなどが含まれています。

これらの成分は、1回出した茶がらには約40%、2回出した茶がらには約20%残っています。

また、不溶成分の食物繊維、ビタミンA.E、ミネラル、脂質などの栄養素がまだ含まれており、捨てるのはもったいないことです。










2024/10/26

ヨモギ No,736

 ヨモギ キク科多年植物

蓬、艾

ヨモギは古い時代から薬草として利用されていた植物です。

中国では古くから薬用とされ、約400年前の中国漢方生薬「本草網目」や「名医別録3〜4世紀」にも記載されているほど薬効も優れています。

日本でも、平安時代の歴史書「日本文徳(もんとく)天皇実録」(850〜853年)に薬草として使ったと記されています。

昔の人々はヨモギの優れた効能を取り入れるため、食べたり煎じて飲んだりして利用しました。

アイヌ民族では、この世に最初に生えた草と言われ、霊力の強い草として考えられていました。

韓国の民間療法は、産後のケアとしてヨモギを煎じた蒸気を下半身に浴びる「ヨモギ蒸し」が愛用されています。

近年では老廃物の排出効果の高さにも注目されています。


       「ヨモギ」

ヨモギの効能

昔から春ヨモギ、秋ヨモギと言う言葉があり、食用として使う場合は新春や少し寒気が出てきた秋の新芽が向いています。

初夏の頃は葉が硬くなり、タンニンなどの苦味成分が多くなるので食用には向かないので、ハーブや入浴剤、外用薬的に使用します。

ヨモギは毒性はありませんが、キク科の植物のため、キク科のアレルギーのある方は食べるのを控える必要があります。

厚生省告示の「日本薬局方」にも民間薬として記載されており、公的にもその効能は認められています。

ヨモギの葉や枝先を原料とした漢方薬では、ガイヨウ(艾葉)と呼ばれ、止血、抗菌、抗炎症などの作用の他、体を温める働きがあります。

薬効の基本は、葉緑素(クロロフィル)にあり、殺菌作用、体の免疫を強くするインターフェロン増強作用があります。

インターフェロンとは、ウイルスや腫瘍細胞などの異物が侵入した際に生体内で生産されるタンパク質で、免疫系や炎症の調節に作用して効果を発揮します。

更に、皮膚疾患、火傷などの回復促進作用、悪臭を防ぐ働きなどもあります。

カルシウムも豊富で、カルシウム不足からくる自律神経失調症、不眠、イライラなどを沈静化される効果も出てきます。


脂肪代謝を正常にする

韓国では、ヨモギ茶は「痩せるお茶」として常用され、ふつうホルモンのバランスが崩れて、脂肪代謝が高くなると太ります。

太ってくると、漢方で言う血が滞る「瘀血=おけつ」という状態になり、更にまた太ると言う悪循環に陥ります。

ヨモギ茶は瘀血をなくし、脂肪代謝を正常にするので、自然に痩せることができるとされています。

ヨモギ茶を与えたブタは、脂肪が少ないと言うデータも説得力があります。


     「乾燥中のヨモギ葉」

体を温める

ヨモギは中国で、1500年前から医草としてあらゆる婦人病に使われてきました。

冷え症に効くので昔から婦人薬として使われてきました。

生理不順、不正出血、貧血、流産防止などへの効能が知られています。


腰痛、ひざ痛

ヨモギには血行を良くする作用があるので、長期間飲用の他、外用として使うと様々な痛みを改善してくれます。

ヨモギ風呂は血流の循環をよくし、汗もよく出て体も温まり、腰痛や関節痛、肩こりによく効くとされています。

一ヶ月も続けると酷かったひざ痛、腰痛が段々軽くなり、最後には痛みが消えてしまったと言う体験談もあります。

乾燥ヨモギをあらかじめ鍋などで煮出してから、お風呂に入れる方法が簡単かと思います。

煮出しするヨモギや水の量は様々です。

お風呂に入れるので濃いめに準備するのが良いかと思います。


ヨモギ風呂に入ることで、葉緑素などの成分が皮膚に働き、皮膚炎が改善したり、更にヨモギの殺菌、消毒消炎などの作用が相乗的に働いて、アトピー性皮膚炎が改善するとされています。

また、ヨモギ茶を飲んだり、料理にヨモギ食を用いるとより早く改善すると言われています。


葉緑素は血液を浄化し、若返らせる作用もあると言われています。

葉緑素の摂取により冠状動脈の血行も改善され、内側に溜まった脂肪も取り去られ、その結果心臓の負担も軽くなります。

過酸化脂質は「脂肪のサビ」とも呼ばれ、脂肪が酸化したもので動脈硬化の犯人でもあります。

過酸化脂質が溜まってタンパク質と結合すると、異常なリポフスチンと言う色素になります。

これは黄褐色で「老化性色素」と呼ばれます。

年齢を重ねると脳や肝臓、心臓などの組織に多く沈着してくるので、老化の原因と考えられています。

ヨモギの葉には、過酸化脂質の生成を抑える強力な作用があると言われています。


ヨモギ茶の作り方、煎じ方

春ヨモギの5月〜6月、秋ヨモギの10月〜11月の若葉を摘み取り、水洗いして水切りした後、細かく刻んでザルなどに入れ、風通しの良い場所で1週間ほど陰干しします。

ヨモギは日干しよりも陰干しの方が精油を逃しません。

パリパリに乾燥したら、乾燥剤を一緒に入れて密閉容器で保存します。

煮出して飲む場合は、水500mlに対してヨモギ茶葉1gを目安とし、沸騰したら中火か、弱火にして約10分ほど煮出します。

ポットに入れる時には、不要なものを取り除くために濾して入れるようにします。

粉末のヨモギ茶の場合は1日5g程度を目安とします。


食物繊維が豊富なので、飲み過ぎると下痢を起こす可能性があるので1日2リットルを目安に飲用します。

飲み辛い場合は、ハチミツを入れたり、他の健康茶とブレンドしたり味に工夫すると良いでしょう。


   「ヨモギとビワのブレンド茶」


ヨモギ茶にはリラックス効果があり、ストレスや不安を和らげるのに効果的です。

寝る前に飲むのに適しています。









2024/10/24

森林、草地の土壌生物 No,735

 森林、草地の土壌生物の特徴

森林土壌の表層に厚く堆積した「リター層」は、耕地土壌には見られない森林土壌に特有の有機物の土層です。

「リター層」とは、森林において地表に落ちた葉や枝、果実わ樹皮、倒木、動物の糞などが堆積した層を指します。

また、土壌生物によってほとんどか分解されていない有機物の層で「落葉落枝層」とも呼ばれます。

針葉樹林では、リター層が特に厚く鉱質土壌はわずか10数cmが暗色の有機物を多く含む「モル型土壌層」である。

「モル型土壌」とは、寒冷多湿や乾燥が強い環境下で、土壌動物や微生物の活動が盛んであるため、植物遺体の分解が遅く、厚い「土壌F層」や「土壌H層」が発達した土壌です。

土壌の特徴として、酸性が強く有効な養分が乏しく、有機物の鉱質土層への浸透が悪い。

「土層F層」とは、土壌断面において分解が進み植物遺体の原形が崩れ、破片や屑状になっている状態で肉眼により識別できる層位です。

「土壌H層」とは、堆積有機物層の層位で、分解がかなり進んで元の組織が判別できないほどまで分解が進んだ層で、「Oa層」とも呼ばれます。


広葉樹林では、リター層は薄いが暗色の鉱質土層は深くまで発達している「ムル型土壌層」です。

「ムル型土壌」とは、広葉樹林では比較的薄い土壌が生成され、土壌中の有機物が地中深部まで多く発達した土壌です。

針葉樹のリター層は酸性で、タンニンやリグニンなど、フェノール性物質を多く含み、土壌動物の餌として適さないのに対し、広葉樹のリターを土壌中の巣穴へ運び込む土壌動物の主な働きは、リターの分解ではなく摂食に伴うリターの粉砕=表面積の増大であり、排泄されたリターはその後、速やかに微生物により分解されます。


また、森林の落葉落枝の分解は主に糸状菌によって行われています。

森林や草地の土壌は土壌動物相(土壌に生息する動物の分類群)が豊富であるのに対し、耕地土壌では耕うんや農薬による殺虫剤散布の結果、土壌動物相は貧弱である。









2024/10/22

土壌中の生物④ No,734

 土壌生物の種類(4)

④原生動物(単細胞動物の総称)

体長20~200μm

土壌中の原生動物は、アメーバ、鞭毛虫、繊毛虫などからなり、多くは動物遺体や各種の微生物を食べて生きています。

✼鞭毛虫(べんもうちゅう)とは、原生動物の中で鞭毛で運動する生物を総称する呼び方です。

多くの細菌は、鞭毛と言う運動器官により液体内を泳ぐことができます。

✼繊毛虫(せんもうちゅう)は、原生動物のうち、運動のため細胞器官として繊毛を持つ仲間の総称。

原生動物の中では最も進化した一群で、淡水、海水に広く分布し、他の動物に寄生するものもある。


原生動物の存在により、土壌中の物質環境が促進されることが明らかにされているが、土壌中での働きには不明な点が多い。

微生物に加え、土壌中には藻類、土壌動物が生息しています。

土壌藻類の主なものは、緑藻、珪藻であり、光エネルギーと無機物だけで生育可能な生物です。

土壌動物にはミミズやダニ、トビムシなどが存在しています。

一般に多くの原生動物が細菌を捕食しますが、植物病原細菌のうち、クワ縮葉細菌病菌やアブラナ科野菜黒腐病菌などにおいて、それらを捕食する原生動物が知られています。


微生物は各種物質の分解や酸化、還元反応など土壌の化学性に関与し、土壌動物は主に土壌の物理性に関与しています。









2024/10/20

土壌中の生物③ No,733

 土壌生物の種類(3)

③糸状菌(カビ)

分糸状の菌糸(直径0.3~50μm)

糸状菌は真菌門のうち、栄養繁殖期に菌糸状をなす接合菌、子嚢菌、担子菌などの総称。真核生物

真菌門は、分子系統を考慮して分類された真菌の門の一つです。

真菌は酵母やキノコ、糸状菌(カビ)などの微生物を指し、6つの門に分類されています。

1'ツボカビ門
鞭毛を有する細胞を生やすことを特徴とする菌類

鞭毛(べんもう)とは、真核生物の細胞の中でも最も複雑で精巧に作られいる、運動性を持つ小器官(糸状の突起物)です。

2'接合菌門
菌界の中の分類群で、接合胞子嚢を形成するのを特徴としている。

3'担子菌門
有性生殖を行う際に、担子器と呼ばれる器官に4個の胞子が外生する特徴を持つ菌類のグループ。

傘を持つ多くのキノコもこのグループに属しています。

4'子嚢菌門(しのうきんもん)
菌界に属する分類群の一つであり、担子菌門と並ぶ高等菌類である。

胞子を袋(子のう)の中に作るのが特徴で、酵母、カビや一部のキノコ(トリュフ)などがある。


5'グロムス菌門
ほとんどが陸上植物に共生して、すべて生きた生物から栄養を得なければ生きられない絶対共生性生物です。


6'微胞子虫門(びほうしちゅうもん)
様々な動物の細胞内に寄生する単細胞真核生物の一群で、これまで1500種から1600種程度が知られています。

以前は「原虫」に分類されていたがDNA解析に基づき、真菌またはその近縁種である微生物とされました。


真菌は、動物の次に進化した高等な生物で、細菌やウイルスよりも人間に近い生物です。

真菌と人の細胞は、どちらも核や細胞小器官を持つ真核細胞で見た目が似ています。


肥沃な表土では、菌糸長が土壌1㌘当たり数100mにも達します。

細菌に比べて一般に耐酸性が強く、酸性土壌中での有機物分解において、重要な働きをになっています。

土壌中における「リグニン」の分解は主に糸状菌によって行われています。

森林土壌表面に厚く堆積した「リター層」の分解は主に、糸状菌によって行われています。

リグニンは主要な樹木細胞壁成分の一つで、木質素とも呼ばれます。

リグニンやセルロース(炭水化物)が腐朽菌との戦いに敗れると樹木は枯死してしまう。

腐朽菌はキノコのナラタケなどのキノコ菌

リター層とは、森林において地表に落ちた葉や枝、果実、樹皮、倒木などの落葉落枝類や動物の糞などの、微細な有機物粒子(デトリタス)が堆積した層を指します。









2024/10/18

土壌中の生物② No,732

土壌生物の種類(2)

②放線菌

(菌糸状の形態をとる細菌の総称)

菌糸の幅1μm(1㍉の1000分の1)
μm=マイクロメートル

曲型的な放線菌は気菌糸を形成する。
気菌糸は放線菌が誘導する菌糸です。

放線菌は一般に、グラム陽性の細菌のうち、細胞が菌糸を形成して細長く増殖します。

主に土中などに生息し、抗生物質をはじめ生活に必要な多くの薬を生産してくれる、とても有用な細菌です。

しかし中には、皮膚や身体の中に住み着いて病気を引き起こす仲間もいます。

多様な有機物を栄養源にして生育し、難分解性の高分子多糖(キチン)を分解する微生物を含む。


キチン物質は、植物病原菌の多くを占める糸状菌の細胞壁構成成分であり、キチン分解放線菌を利用して、植物病原性糸状菌のコントロールが図られています。

また、各種抗生物質を生産する能力があり、土壌伝染性病原菌の抑制に役立っているものと考えられています。