緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2019/09/05

イチョウ「銀杏、公孫樹」No.178


イチョウ 落葉高木

別名=ギンナン、コウソンジュ

恐竜時代の太古から現存する歴史的樹種。

二億年前のジュラ紀から、現存するたいへん古い樹種当時は日本にも自生していましたが、古い時代の内に滅んだと考えられています。

日本で見られるイチョウは、中国浙江(せっこう)省の原産と言われ、飛鳥時代(593年~710年)の仏教伝来と共にもたらされ、初めは寺社を中心に植えられました。

室町時代(1338年~1573年)以降、一般に広まりました。

耐暑性、耐寒性ともに強く、北海道から南西諸島に至る全国に分布

樹高は30~40メートル

刈り込みに耐え、大気汚染にも強く、耐火性も高いことから寺院庭園樹、街路樹、防火樹、環境緑化樹に利用される。

その他、盆栽樹としても親しまれています。

太平洋戦争の大空襲で、焼け野原となった東京に最初に芽生えたのもイチョウで、東京都の樹木に指定されています。

イチョウは雌雄異株で、4月から5月にかけて開花します。

雄花は房状に下垂し、比較的目立ちますが、雌花は先端に2つの丸い膨らみ(これが後にぎんなんになる)を持つ小さなY字型の花で注意して見ないとよく分かりません。


                              (雄花)


                            (雌花)


イチョウは、扇形の葉が特徴的ですが、この形が鴨の足形に似ていることから鴨脚(おうきゃく)の中国読みである「イーチャオ」が転訛して、イチョウとなったと言われています。

尚、鴨脚はいちょうと読むこともできます。

秋に美しく黄葉することで知られますが、南西諸島などの暖地では黄葉しません。

雌株の果実は9月から11月に黄色く熟し、種子を銀杏(ぎんなん)として食用にするのは周知の通りです。

※「銀杏」という漢字は実を指す言葉です。

木材はまな板の高級品として使われる他、基盤などにも利用されます。

中国では、乾燥した果実を白果(はくか)と呼び、鎮咳去痰
(ちんがいきょたん=せきをしずめながらたんを取り除くこと)

葉を銀杏葉(ぎんようは)と呼び、血圧安定などの生薬として古くから用いています。

20世紀後半からドイツを中心に、イチョウ葉の研究が進み主成分であるフラボノイド、ギンコライド、ビロバノイドなどに優れた薬効があることが証明されました。

こんにちでは痴ほう症、耳鳴り、めまいなどに効く医薬品として、世界55ヵ国以上で認定されています。

イチョウには園芸種(変種)として、葉に黄色い斑が入るフイリイチョウ、葉の上に結実するオハツキイチョウ、葉が円筒状になるラッパイチョウなどがあります。


雌雄異株

雄の木と雌の木の見分け方は、開花時期になってから雄花か雌花かを見ないと判断出来ません。

街路樹の場合、実が落ちて臭くなることがないように実が落ちない、実が出来ない雄の木だけを選んで植えています。

雄の木だけを選別し、接ぎ木や挿し木で株を殖やしています。

イチョウは、花粉が運ばれて数キロ、雄、雌の木が離れていても受精することができます。

これを「風媒花=ふうばいか」といいます。

風媒花とは、花粉媒介を風に頼る形の花のことで、目立たない花をつけるものが多いヒノキやスギと同じように、風で花粉が運ばれるのです。

例えば、庭に雌の木だけを植えていても、飛んでくる花粉で受精し、結実するということがあります。

相手が全くいないように見える状況でも、結実する可能性があると言うことで、まるで遠距離恋愛のようである。

実が地上に落ちて、種になり自然に生えるものは実が出来るまで25年くらいと言われています。

当然接ぎ木や挿し木の方が、枝自体がもともと年数を経ているわけなので、実が早くなると言うことです。

実が出来るには雌の木5本くらいに対し雄の木は1本で十分で、遠距離かつ、ハーレム?なのである。

長く生き続けるイチョウの生命力の強さを感じるものです。

ギンナン食中毒?

ギンナンを食べて食中毒になることがあります。

ギンナン食中毒を引き起こす原因はビタミンB6の欠乏だと言われています。

ギンナンには、ビタミンB6に似た毒性物質が含まれていて調理などでこれを分解することが出来ません。

この物質が体内のビタミンB6の作用を低下させビタミンB6欠乏症を引き起こすことで、健康な人でも
ギンナン食中毒を起こす可能性があります。

その時々の体調によって、引き起こされる可能性があるものです。

体内のビタミンB6の状態を、把握することは困難です。

その為、防ぐには大量摂取しない。

少量でも、継続して摂取しないことが重要です。

子どもはさらに注意が必要です。
ギンナンを食べることは避けるべきと思います。



昭和20年8月の水戸空襲の際に、黒焦げになりながらも、生き残ったと言われている水戸駅北口側にある銀杏の木。


イチョウの生育管理

日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ場所を好みます。

土質は特に選びません。

極端な乾燥地でなければ、やせ地でもよく育ちます。

ただし、潮風にはやや弱い傾向があります。

半日陰でも育ちますが、十分な日照がないと側枝が徒長しやすくなり、扱いにくくなってしまいます。

移植はかなりの大木になっても可能です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んで高植えにします。

大木もそのまま植え替えが可能ですが一般の庭では幹を途中で切って植え付け、活着するまでワラやコモなどで幹巻きして保護します。

適期は3月から4月、暖かい地方では11月も可能この時期であれば、根鉢の土が落ちても活着します。

肥料は余程のやせ地でない限り必要ありません。

やせ地や枝葉を充実させたい場合は、リン酸、カリ分の多い肥料を寒肥として与えます。

病害虫の心配はほとんどないでしょう。

せん定

放任すると大木になるので、一般家庭では強せん定が必要になります。

好みの高さで樹芯を切り、太い枝も切り詰めます。

芽吹きがよくすぐに短い枝が出るので、毎年整理して枝数を殖やします。

葉は葉柄が長く、短い枝に密に互生するので美しい葉姿を楽しめるでしょう。

また、脇枝が分枝している部分でせん定を繰り返すとコブ状になりますが、この独特の樹形を楽しむのもひとつの方法です。

殖やし方

実生、挿し木で殖やします。実生は果肉を取り除き、赤玉土(小粒)にそのまま蒔くか、翌春に蒔きます。

ギンナンは3月~4月に蒔くのが一般的ですが、秋に採り蒔きした方が発芽しやすい。

挿し木は、前年枝を20センチほどに切って挿し穂とし、赤玉土などの暖地さし床に挿します。

いずれも十分に灌水し、ピートモスなどを薄く敷いて乾燥に注意しながら管理します。

庭木からギンナンを採取するには雌木が必要ですが、公孫樹(こうそんじゅ)の名が示すように40年以上もかかります。

従って、結実年数に入った木から得た接ぎ穂を接いだ(実成りイチョウ)の苗木を求めて植えることです。


◉イチョウ関連ブログ
イチョウ葉の薬効 No,579
太古から現存するイチョウの木 No,521
銀杏(ギンナン)の実生で盆栽を作りたい。
No,66





2019/08/31

複色(ふくしょく)という色 No.177

複色(ふくしょく)について

複色とは、ひとくちで赤、ピンクとは言えないひとつのお花の中に、複数の色が含まれている色を表現するときに使われている、花業界独特の色の名前です。

一つの花の中に2つ以上の色があることを複色と呼んでいます。

複色の花色を表現する言葉として
バイカラー(二色花) トリカラー(三色花)などがよく使われますが、複色の花は2つ以上の色彩がいろいろなパターンで組合わさった模様を作り花色が複雑になることも多く、この場合にはこれらの複色をうまく表現するのが、難しい場合もあって困ることもあります。


                          (アンネのバラ)

新しく出てくる花は、複色のものがとても多い傾向にあります。

単色の花も素敵ですが、微妙な色合いの複色カラーは合わせる花色によって、まったく見え方が違ったり、色合わせをするのが楽しくなる花色でもあります。


代表的な複色の花

アジサイ、アサガオ、アストロメリア、アザレア(ニコレット)

アマリリス、カーネーション、ペチュニア、チューリップ

ビオラ、フロックス、ナデシコ、ユリ、バラ等その他多数

咲き進むと花色が変化していくもの、これを「色変わり」と言いますが、これも複色の一つと言っていいでしょう。

その他、複色と言える代表的なもの

絞り(しぼり)

「絞り」は布を糸でしばるなどして、染まらない部分を作る染色の技法ですが、花びらに現れた不規則な模様に似ていることから「絞り」と呼んでいます。


                         (ツバキ)

また、絞りを細かく分類すると
大絞り(おおしぼり) 絞りが大きく入る大小絞り(だいしょうしぼり)大小の絞りが花弁に入る小絞り(しょうしぼり)細かい点がはいる荒絞り(あらしぼり)おおざっぱな絞りが入る竪絞り(たてしぼり)花弁に明瞭な縦筋が入る伊達絞り(だてしぼり)一つの花に大絞り、竪絞りが入るこれは一部の分類であり、他にも多数あります。

覆輪(ふくりん、ピコティ、斑入りの一種)

花びらを縁取るように、縁だけに別の色が載る模様の花を「覆輪」と呼びます。

中には縁取りの幅が狭く、ほぼ「線」くらいの細さになっているものを「糸覆輪」と呼ぶこともあります。


                          (クリスマスローズ)

その他、白覆輪、紅覆輪等がある。

ブロッチ

花の中央に地色(グランドカラー)と異なった色の大きな斑点が入る模様を「ブロッチ」と呼びます。

パンジーの花の真ん中にある斑紋が代表的です。


         (ビオラ)









アガパンサス No.176

宿根草 アガパンサス

別名=ムラサキクンシラン ユリ科

ギリシャ語で「愛の花」という意味のアガパンサス。

花色 紫、白、複色

水はけの良い土に元肥を与えて植え付け、日なたでも半日陰でもよく育ちますが、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。




5月と9月の上旬には、株回りに固形肥料を与えてます。

開花時期は5月頃から9月上旬頃まで。


花が咲き終わったら花茎の根元から切りとり、寒い地方では冬に、室内に取り込んで管理します。

切り花にする場合は、切り口をきれいに洗い、水揚げをよくします。

春(3月)と秋(9月)に株分けして殖やすことができます。

植え付け時期

3月~5月 9月~10月









2019/08/20

アベリア「花園衝羽根空木」No.175

アベリア

夏から晩秋にかけて長期間、花が楽しめる。

刈り込みにも強く、和風にも洋風にもマッチする。

◆スイカズラ科
アベリア属(ツクバネウツギ属)

アベリアの仲間は、主にメキシコや中国南部を原産地とするものが大半を占めますが、一般に「アベリア」と呼ばれているのは、中国原産のアベリア·シナンシス(シナツクバネウツギ)とアベリア·ユニフローラを交配して作った園芸品種「アベリア·グランディフローラ」です。

ハナゾノツクバネウツギと言うこと和名がありますが、和名で呼ばれることは稀です。

東京以西の暖地では常緑ですが、寒地では冬に落葉します。

◉生育管理

日当たりのよい場所を好みますが、土質は特に選びません。

日照が不足すると徒長枝が伸びて樹形が乱れやすくなるほか、花つきも若干悪くなります。











2019/08/06

真夏の花、サルスベリ咲くNo.174

サルスベリ(百日紅)

今年も元気に花を咲かせてくれた、樹齢40年のサルスベリ。


「移植して17年」

   「せん定後に付いた花芽」

一番最初の花が咲き終わってから、咲き終わった枝先を切り戻すと、新たに花芽がつく。

   「せん定後に2度目の開花」


枝先をせん定する事で2度花を咲かせることができます。










2019/08/04

よい土?悪い土?No.173

よい土は見た目もきれい

土を購入して、袋を開けたら?なにこの土?なんてことはありませんか?

よい土は粒がそろい、さらさら、ふかふかしていかにも気持ちが良さそうです。

一方悪い土は、カビが生えていたり、じめじめと湿った感じで
、見た目も悪いものが多いようです。

土を購入するときは、購入時にパッケージの上から、カビや藻、水滴の有無をよく確認することが大切です。


臭いをチェックしましょう

袋を開けたとき、見た目と同時に、臭いもチェックしましょう。

完熟堆肥を使用している土は、ほとんど臭いがありませんが、未熟な堆肥などを使用していると、アンモニア臭やカビのような臭いがします。

よい土はみじん(粉)が少ない

よい土とは、みじんが少なく粒状で、通気性、水はけのよい土のことです。

土の袋を持ったとき、重すぎるつちは大抵みじんが多く含まれていると思っていいでしょう。

みじんが多いと水やりのたびに、底部にみじんが集積して、水が抜けにくくなるので、根腐れを起こす原因にもなります。

みじんの多い土を購入してしまった場合は、篩(ふるい)にかけてみじんを取り除くか、腐葉土を混ぜて改良します。

よい土は粒ぞろい

よい土のもうひとつの条件として、土の粒の大きさが揃っていることも重要になります。

土の粒の大きさが揃っていると、土の中に均一な隙間ができて水はけがよくなり、新鮮な空気が隙間にとどまるので、根の生育がよくなります。

根の呼吸がよくなり、早く根が伸びて生育します。

粒の大きさは、赤玉土の小粒程度で揃っていると理想的てす。

また、粒の大きさがまちまちだと、均一なすき間ができず、大きなすき間にみじんや腐葉土の細かい粉が入り込んで、すき間を埋めてしまうので、かえって水はけや空気の通りが悪くなるので注意しましょう。

水はけ、水持ちの違い

鉢植えの場合、水やりの時によい土、悪い土の差がてきめんにでます。

よい土は水が均一にしみ込んで、鉢底穴からすぐに水が流れ出します。

ピートモスが多く、水分量があまりにも少ないと、乾き過ぎたピートモスが水をはじくため、水やりすると土が浮きます。

鉢底穴から水は流れ出ますが、土に水が浸透していないことが多い。

このままにしておくと、根が水分を吸収出来ずに根の先が傷み、やがて枯れてしまいます。

このようにピートモスが多く、乾燥した土は、植物を植える前に土に少し水を与え、水分を含ませてから使用します。

また、みじんが多く、水はけが非常に悪い土は、すぐに水はけのよい新しい土か、腐葉土などを3割程度混ぜて植え直します。

未熟な堆肥が入った土は要注意

市販の培養土は、改良用土として腐葉土のほかに、バーク堆肥などが配合されたものが多くあります。

堆肥は熟度にばらつきがあるので、品質が不安定になりがちです。

培養土の中の堆肥の配合割合が多いほど、ばらつきの幅が大きい。
未熟な堆肥が混入されていると、植え付けて数日で枯れてしまうこともあります。

少ない土で植物を育てる鉢栽培では、未熟な堆肥入りの培養土は特に注意が必要です。

堆肥が含まれているかは、品質表示で確認できるほか、土の中に樹皮が含まれていたら、バーク堆肥入りと判断できるでしょう。

堆肥入りの培養土を使う場合は、熟度の高い堆肥であることが重要になります。

熟度の高いものほど色が濃い茶色から黒色。

臭いがほとんどない。

木くずなどが含まれず、粒の大きさが揃っている。

みじんが少ない。
鉢底から流れ出る水がきれい。
じめじめとしていない。
カビがはえていない。

肥料入りの土

肥料入りの場合は、植え付け時の元肥は不要ですが、土によっては、植物の生育度合いにかなりの差が出ます。

これは、配合されている元肥の肥料効果期間の違いによるものです。

肥料入りの培養土でも、植え付けて2~3週間たったら追肥をします。

これは、2~3週間ほどすると、根が新しい土になじみ始め、縦に伸び出して生育を始めるためです。

土をはしでつつくのはダメ🆖?

草花や花木、果樹などを鉢植えする際に、鉢土をはしでつつくと、赤玉土などの粒をつぶしてしまい、みじんを増やしてしまいます。

水はけ、通気性を悪くするので、おすすめできる方法とは言えません。

ただし、シンビジウムの植え替えなどで、バークチップや軽石などのつぶれにくい植え込み材料をはしで突きながら植え付けるのは、植え込み材料と根の密着度を高めるため、水や養分の吸収に効果的です。

また、植物を鉢に植え付けた後に、指などで土の表面を強く押さえ過ぎると、水はけを悪くする原因になります。

鉢をトントンと軽く地面に叩いてならす程度で十分です。

尚、焼き物の鉢等は割れないように注意が必要です。