ビナンカズラ マツブサ科 常緑蔓性
原産地=日本 別名=サネガヅラ
学名も日本産の「蔓(ツル)性植物」を意味する。
「カズラ·ジャポニカ」と名付けられています。
日本では、関東地方以西の本州、四国九州に幅広く分布していますが、台湾、朝鮮半島南部にかけて、20種程の仲間が自生していることが、確認されています。
7月から8月にかけて、葉腋から長い花柄を出し、淡い黄白色の花を下向きに咲かせます。
雌雄異株で、雌花の花柄は4~5㎝と雄花の倍以上の長さがあるのが特徴ですが、雌雄同株で両性花が咲くものもあります。
これは、自生地の環境によって繁殖戦略を変化させてきた事の名残りと考えられます。
ツルは長さ7~8㍍程に伸び、生長すると直径2㎝程の太さになり、古くなるとコルク層が発達する。
褐色で柔らかく厚い樹皮をつけます。
この樹皮は粘液を多く含んでいて、樹液を水に溶かして煮出したものを、整髪料として用いていました。
男女ともに利用していたようですが、中世以降に男性(武士)の整髪に多く用いられた事から、ビナンカズラ(美男葛)と呼ばれるようになりました。
葉は先端が尖った楕円形で、互生しまばらな鋸歯があり、やや肉厚で表面は濃緑色で光沢がある。
葉の裏面は紫色を帯びている。
雌株は10月~12月にかけて、直径2~3㎝程の球状の果実が集まって結実する集合果で、晩秋から冬にかけて赤く熟す果実は、よく目立つ事からサネガヅラ(実葛)と言う名がある。
古代では、こちらの呼称の方が一般的で、万葉集や古今集などの歌集にもサナカズラ、サネガヅラな名で詠まれた歌が多数あります。
熟した果実を細かく崩し、天日で乾燥させたものを南五味子(なんごみ)といい鎮咳、滋養強壮の生薬として用いられています。
樹勢が強く、大気汚染にも強い事から、庭木以外に公園樹や環境緑化樹として利用されるほか、木質化する茎を使って盆栽や鉢植えでも幅広く親しまれています。
◆品種
類似種として
果実が黄白色に熟す、「スイショウカズラ」
紫黒色の実が成る「マツブサ」
葉に斑が入る「ニシキカズラ(フイリビナンカズラ)」などがあります。
◉生育環境
水はけのよい、腐植質に富んだ半日陰の土地を好みます。
自生種はやや湿潤気味の場所に多く分布しますが、実際は乾燥にも強く土質はほとんど選びません。
ただし、株元が乾燥すると実つきが悪くなりやすいので、乾燥が酷い場合は、ピートモスや敷きワラなどで、マルチングする必要があります。
◉植え付け、植え替え
根が粗いので植え付け、植え替えは地上部を切り詰め、根の負担を軽くして行います。
植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んでから植え、植え付け後は支柱を立ててツルを誘引します。
よほどの痩せ地でない限り、肥料は必要ありませんが、必要に応じて鶏ふん、骨粉、油粕などを混ぜた有機肥料を、秋と冬に少量株元に蒔きます。
◆病害虫
神戸地域だけに棲息する、帰化昆虫のキベリハムシがビナンカズラの葉のみを、食べる事が知られていますが、基本的に病害虫の心配はほとんどありません。
◉せん定
強いせん定や刈り込みにもよく耐えます。
放任するとツルが伸び過ぎて、暗くうっそうとした雰囲気になるので随時、不要なツルは切り取ります。
棚に絡ませて仕立てる場合は、株元が雑然としないように最初は、根元から2~3本の茎を出させて他は整理します。
適当な高さに誘引してから分枝させます。
花芽は短枝の先に分化するので、この枝は残すようにします。
◆殖やし方
充実した新梢を15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土小粒にさします。
半日陰で乾燥に注意し管理、翌春定植します。
取り木は春に2~3年の枝を環状剥皮します。