緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/02/13

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑴ No,374

 バイケイソウ ユリ科多年草

シュロソウ属

草丈60〜150cmにもなる多年草で、初夏に緑白色の臭気のある花を咲かせます。


              (猛毒草、バイケイソウ)
✻ギボウシに葉姿がよく似ている。
葉脈が隆起し、全ての脈が葉の付け根から並行して走る。


やや小型の仲間に「コバイケイソウ」がありますが、同じく有毒植物です。


           (猛毒草、コバイケイソウ)

❆バイケイソウと見分け方は同じ。
草丈50〜100cmでバイケイソウより小ぶり。

深山、高山の湿地に自生し、若葉が山菜として食用にされる、オオバギボウシ(ウルイ)やギョウジャニンニクなどの若芽と類似するため、誤食する事がある。

誤食すると、おう吐、下痢、血圧降下、けいれんなどの症状がでる。

全草が有毒でプロトベラトリン、ジェルビン、ベラトラミなどのアルカロイド類の毒成分がある。


               (山菜、オオバギボウシ)
✻美味しい山菜
葉の中心に太い主脈が通っていて、他の脈はそこから派生して伸びている。


          (山菜、ギョウジャニンニク)

❆美味しい山菜
強烈なニンニクの風味が特徴。
スズラン(有毒)とも間違えられる。

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ヤマトリカブトNo,372
モミジガサ山菜No,373






モミジガサ 山菜 No,373

 モミジガサ キク科

コウモリソウ属 (紅葉笠)
別名=シドケ、キノシタ、シトギ
モミジソウ

春、茎が20〜30cmに伸び、茎先の葉が展開しないものは、山菜として食用される。

日本の山野には数多くの山菜が生育しているが、その中で「山菜の女王」と言われる「モミジガサ」がある。


                                (モミジガサ)


春先の若芽の味わいは、フキノトウ、セリ、ヨモギなど、いくつもの山菜の旨味をいっぺんに楽しめると言う、不思議で優れた山菜。

有名なわりに、食べる習慣がない地域も多く、身近に群生地が隠れていたりする。

葉の形がモミジを思わせ、傘のように開くのでその名があります。

キノシタと言う別名も木立の下、渓流沿いの斜面など、湿った場所を好む性質に由来します。


山菜として楽しむなら、歯ごたえを残すように軽く塩ゆでし、ワサビしょう油、酢味噌などでシンプルに食べたり、磯巻きで風情を味わったりと言うのがおすすめの様です。






2021/02/12

ヤマトリカブト No,372

 ヤマトリカブト 猛毒草

世界的にも類を見ない猛毒草、ヒト経口致死量の推定値は1~2mg
(LD=50値、50%が死亡すると推定される値)

mgは1gの千分の1で摂食すると、猛毒の成分は速やかに血へと浸透し、体内を駆け巡るため、解毒は困難である。

花の姿は有名であるが、若芽を実際に見たことがある人は、なかなかいない。

長年山地の集落に住んでいる人でも、間違えるほど形態の違いは微妙である。


               (ヤマトリカブトの花)

花期は9月から11月

1992年、岩手県でトリカブトを訪花したと思われる、ハチの蜜で中毒事故が起きた事例がある。

トリカブトは深山に育つとは限らず、地域によっては低山や丘陵周辺に生育します。

園芸店で販売されている改良品種も、依然高い毒性があるので注意が必要である。

識別法のひとつに「毛」があります。

主なトリカブト類は、茎に毛がなく、ツルっとして触るとヌメリのような感触があり、葉にも微細な毛以外は殆ど見られません。

他の類似した山菜は、柔らかなうぶ毛や長毛が目立ちますが、どれくらいに毛が生えているのかなど、実際に見てみないと分からないものです。

日本産のトリカブトは約30種と22変種が知られていて、地域や生育環境で微妙な違いが出るため、肉眼での判定はほぼ無理です。


                    (トリカブトの若芽)

研究者の中には、一般図鑑やハンドブックに書かれた識別法について、警鐘を鳴らしています。

特に「ニリンソウ」や「モミジガサ」などはよく似ているので、見分けが難しいため、誤って食べてしまう事故が絶えません。


                     (ニリンソウの花)

✭花の似た有毒植物のイチリンシウ、サンリンソウもあるので要注。


花が見分けるポイントでもあるので、花のない時期に絶対採ってはいけないと、識別法に書くべきです。

写真で見るとまるで違うが、同じ場所に混生すると厄介です。

その様な場所での山菜採りは避けることです。


✺毒性が強いとされるエゾトリカブト

関東にもヤマトリカブトなどが咲きますが、北海道に自生する「エゾトリカブト」の毒性が最も際立ちます。


                 (エゾトリカブトの花)


全草が猛毒であるが、特に根に毒が多く含まれ、この地に住んでいたアイヌ民族は、これを矢の毒に利用してヒグマを捕らえ、生態系の頂点に君臨して来たのだと言う。

戦乱の時代には盛んに用いられ、矢毒や毒殺にも使用された猛毒である。

日本三大毒草であるドクウツギ、ドクゼリ、そしてトリカブトは食用になる野山の山菜によく似ているのです。










2021/02/11

アンズ バラ科 No,371

 アンズ (杏子、杏)

別名=カラモモ 英名=アプリコット

中国東北部が原産地で、多くの品種が作り出され、東洋系品種群と呼ばれています。

これに対して、地中海地方へ運ばれ、現地の気候に適するように改良されたものを、欧州系品種群と呼びます。

東洋系のアンズの果実は、梅が交雑したものが多いため酸味が強く、生食には適さないため、加工用が主ですが、酸味が少なく甘みが強くて、そのまま生食できる欧州系の品種は、加工用にも適している。

しかし、欧州系は夏に雨が多い気候では裂果や灰星病、胴枯れ病などの発生が多く、育てにくいのが難点である。





日本の主産地は、長野県千曲市が日本一の「あんずの里」として知られる。

愛媛、広島など、瀬戸内地方、青森県津軽地方が古い産地である。

米国カリフォルニア州が世界一の産地。

日本に渡来したとされる期日は
不明であるが、平安時代にはすでに
唐桃(からもも)の名で呼ばれていたと言う説がある。

弥生時代以降の遺跡から出土している。

✿生育環境

庭植え、鉢植えで育てられますが、日本に多い東洋系の品種は、耐寒性が強く、雨の少ない気候に適しています。

4月の開花期に雨が少なく、6月から7月の果実生育期に、空気が乾燥している場所が適地です。

甲信越や東北地方など、リンゴの産地と同じような気候が、栽培に向いています。




✿花、冬芽

アンズは花の美しい果樹の1つで、3月から4月の葉が展開する前に、淡紅色の花を咲かせます。

花芽は長さ約4㍉の広卵形
葉芽は花芽より小さい
外側の2個が花芽でその真ん中に葉芽がつく。


             (左右花芽で真ん中が葉芽)


❆果実
直径約3cmの球形で6月に橙黄色(とうこうしょく)に熟す。

縦に溝が入り表面にはビロード状の毛が密生する。




✿収穫の目安

庭植えなら樹高2.5〜3㍍で80〜100果鉢植えなら7〜8号鉢で5〜10果

果実は発育の良いものを残すようにし、摘果を行うと良いでしょう。

✿栽培場所

庭植えは土層が深く、水はけの良い有機物の多い土質で、日当たりの良い場所が適しています。

土質は軽いものより、やや粘土質の方が適しています。

鉢植えは、赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、風通しや日当たりの良い場所に置きます。

アンズと言う名がはじめて現れる文献は林道春の(多知識編、1612年)

✿肥料

栄養状態が悪いと、翌年、耐寒性の弱い花が咲きます。

雌しべが褐色に変色したら、不完全花が多くなり、結実が悪くなります。

1月〜2月、株の周囲に溝を掘り、配合肥料を与えます。

9月頃にも追肥として同様に施肥します。

鉢植えは、植え付け1ヶ月後の3月に玉肥を3〜4個根回りに置き肥します。

これを毎年繰り返し、収穫できるようになったら、9月の落葉前に追肥を同様に施します。

✿せん定

放置すると、5〜8㍍の高木になってしまうので、主幹は3㍍ぐらいで芯を止め、小柄な樹形に仕上げます。

幹の上部は毎年伸びますが、新梢は冬に3分の1ぐらいに切り詰めて、誘引して真っ直ぐな主幹に育てます。

側枝葉大きくなり過ぎないように更新し、結果枝(けっかし)の基部まで切り詰めます。

結果枝も3年ぐらいすると長くなり、弱ってくるので切り取り、主幹や側枝に近い結果枝を育てて更新するようにします。

落葉期の冬に樹形を確かめ、主幹の周囲に平均して新しい側枝や結果を配し、枯れ枝や不要枝を間引くせん定を行います。

✿病害虫

発芽直前の3月に、石灰硫黄合剤の20倍液を予防散布します。

また、開花終了後、アブラムシと黒星病の防除に、殺菌剤と殺虫剤を混合し散布します。

✺アンズの用途

果実をシロップ漬け、ジャムなどにする。
ジャム、生食には十分に着色、完熟してから収穫する。

着色の早い果実から2〜3回に分けて収穫するとよい。

干しアンズや瓶詰め用には、全体が黄色に着色し、果実がやわらかくなる前に収穫する。

種子は杏仁(きょうにん)と呼ばれ、咳止めなどの薬用に用いられる。

✻果実酒

アンズ酒
アンズ(果実)1kg
砂糖250㌘
原酒(焼酎35度ホワイトリカー)
3ヶ月から飲用できますが、6ヶ月以上熟成させる方が、味も香りも良くなります。

❆桃源郷と言われるアンズの郷

パキスタンの首都イスラマバードから北へ約700キロ、標高7000m級のカラコルム山脈に桃源郷と言われる、秘境地のフンザ渓谷がある。

奇跡の様に広がる緑豊かな果樹園や、田園風景から「桃源郷」と呼ばれている。

登山家なら一度は訪れたい山々に恵まれ、フンザは登山隊の多くが拠点としている人気の場所である。

毎年3月下旬〜4月上旬にかけて、アンズ、桜、リンゴ、アーモンドがフンザの谷一帯に咲き、この姿はまさに桃源郷のようだと言われ、特に日本人の間で人気がある。

平均寿命は90歳以上と言う長寿の村としても知られ、病気で亡くなる人も少ないと言う。

それは、フンザの人々の食生活が関係すると言われている。

質素な食生活の中で、アンズなどの果実を利用した食文化が、長く続きいている結果であるだろう。

アンズを常食しているフンザの人々には、殆どガンがみられない。

古い時代からアンズの効能を理解し、食生活にとり入れてきたのでしょう。

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2021/02/10

沖縄は蘭の宝庫 No,370

 沖縄 亜熱帯県 沖縄ラン


豊かな自然が広がる沖縄は、多種多様な野生ランが自生する、亜熱帯地である。

沖縄は100を超える島々で構成されている自然豊かな所です。

年間平均気温は約22度で、年平均降水量が2000㍉と言う温暖で雨の多い、亜熱帯海洋性気候に属しています。

太古の頃、中国大陸と陸続きであったという地でもあり、様々な条件なども加わって、独特の✫植物相を形成しています。

✫植物相とはフロラとも言われ、特定の限られた地域や水域に分布、生育する植物の全種類をいい、動物相と合わせて、生物相を構成する。

沖縄における植物相の一つの特徴は、そこでしか見ることのできない固有種、亜種や変種が多いことです。

沖縄には、日本国内のラン科植物の約半数が分布していることから、ランの楽園とも言えるでしょう。

また、日本だけではなく中国やマレーシアなどの国外地域と、共通するランが多数自生し、南方系の植物の北限種も数多く見られます。


✿貴重な沖縄ラン

✻着生ラン
植物は一般的に土から生えるものですが、ランの一部種には土を離れて木にくっついて(着生)生活するものもあります。

木に着生するようになってから、根が乾燥にさらされるようになって行く過程で、独自に根を発達(進化)させたのが着生ランですが、栽培環境下でも、根に適度な湿度を保つことが重要です。

✻主な着生ラン種類
イリオモテラン、オオオサラン
オキナワセッコク、カシノキラン
クモラン、コウトウヒスイラン
シコウラン、ナゴラン、フウラン
ボウラン、マメヅタラン、ヨウラクラン


                     (イリオモテラン)

✺イリオモテラン
南西諸島からフィリピンにまで分布
春に開花し、個体によっては芳香がある。


                         (カシノキラン)

❆カシノキラン
日本の暖地から台湾にまで分布。
淡黄色のちいさな花を密に咲かせる


✿地生ラン

地生ランは、薄暗い林床に生えるものと、太陽の照りつける場所に生えるものとがある。

栽培においても、自生している場所と同じ様な環境を作ってあげる事が大切です。

✻主な地生ランの種類
オキナワチドリ、カツウダケエビネ
キバナシュスラン、タイワンエビネ
ナテラサギソウ、ナリヤラン
バイケイラン、ヒメトケンラン


                   (タイワンエビネ)

✻タイワンエビネ
台湾と沖縄に分布。
基本種のエビネとほぼ同じで、ウイルス病に弱い。
器具の殺菌や媒介虫の予防など特に気をつける。


                       (ナリヤラン)

✺ナリヤラン
熱帯、亜熱帯アジアに広く分布。
和名のナリヤとは西表島の成屋に因んで名付けられた。

✪自生環境知ってラン栽培

沖縄の自生ランであるからといって、必ずしも高温性とは限りません。
それぞれのランの自生環境を作ってあげる事が重要です。

沖縄には多くのランが自生していますが、その殆どが絶滅の危機に瀕しているのが現状です。

その原因の多くは、園芸目的の乱獲、採取です。

野生ランが山採り株でないことなど、購入時は確認してほしいと、植物管理財団より植物保護の訴えも上がっています。










2021/02/09

ギシギシ 雑草と言う名の薬草 No,369

ギシギシ タデ科ギシギシ属

ギシギシの仲間たち

全国各地の道端や荒れ果てた土地に、「ギシギシ」は生育する。


                           (ギシギシ)


大きな葉姿が牛が舌を出したように、あっかんべーしている様子に似ていることから、「ウシノシタ」とも呼ばれるが、様々な諸説もある。

ギシギシは重要薬草の一つで、お腹に優しい下剤、或いは解熱、皮膚病の改善、強い抗菌作用が知られる。

その他西洋では「春の強壮剤」として知られています。


ギシギシの根っこを掘れば、なるほどと薬草の風情たっぷりである。


            (エゾノギシギシの根茎)


夏から秋に掘りあげて乾燥させたものを薬用にする。

葉は食用に利用される。

ただ、安易な使用は皮膚病や嘔吐の危険があるのも事実であり、注意しなければならない。

また、ギシギシは「冬の山菜」でもあり、若芽にジュンサイを思わせる食感がある事から、オカジュンサイとも呼ばれます。


エゾノギシギシの新芽、赤矢印


株元の中心から生えてくる、柔らかな新芽の部分はみずみずしく、ヌメリがあり爽やかな酸味で美味。

味噌汁の具やお浸しにして、酢じょうゆや酢味噌と和えて、食しても美味しい。

ただし、痛風や結石の原因となる硝酸を豊富に含むため、よく茹で、よく水にさらして、硝酸をしっかり抜く事が肝要です。

ギシギシは見分ける事が悩みと言える薬草です。

主に食用、薬用とされるのはギシギシ、エゾノギシギシ、ナガバギシギシの3種です。

簡単に見分けるなら、果実の形に注目します。

デベソ的な突起がありますが、ここに✻瘦果が宿る。

✻瘦果(そうか)

果皮が堅い膜質で熟すと乾燥し、一室に一個のの種子を持つもの

タンポポ、菊、キンポウゲなど

多くの被子植物に見られる単純で乾いた果実の一種である。

成熟しても種を飛ばすことはなく、瘦果の種子は果皮に包まれている。

種子と思われていたものが実は、瘦果だったと言う事はよくあることである。

これを取り囲んでいるものを翼(よく)と呼ぶ。

この翼の形を比較すると覚えやすい


                      (ギシギシ)


①ギシギシは翼の回りに浅い鋸歯が並び、翼の下部が尖った三角形を描いている事も見分けるポイントです。


                      (エゾノギシギシ)


②エゾノギシギシは翼の回りが特徴的で、鋭い鋸歯を持ち、数本だけ極端に飛び出しています。


                        (ナカバギシギシ)

③ナカバギシギシは、ギシギシと非常によく似ていますが、鋸歯は緩やかで全縁に近く、翼の下部が丸みを帯びている事に気がつけば、見分ける事ができるでしょう。


ギシギシの3種は以上ですが、他種との交配も盛んであるため、中間種が増え、見分けが困難になっています。

前述したポイントを覚えておけば、見分けるための絞り込みが可能です。

ギシギシは繁殖力も旺盛であるため、栽培植物にとってはとても迷惑な存在です。

けれど、他の雑草に比べたら数も少なく、よく目立つのでわかりやすい。

みずみずしく、爽やかな食感といい、有り難い薬効もありますが、すぐに手を出せぬ薬草です。

ギシギシ君が、「あっかんべー」と
舌を出し、食べて見んねと言うけれど、ギシギシと歯ぎしりするのである。