ひんぷんガジュマル
クワ科イチジク属 「榕樹」
ひんぷんガジュマルは、沖縄県名護市の商店街の入口にたたずむ、推定樹齢300年以上の天然記念物のガジュマルの木である。
ガジュマルはクワ科の高さ10m以上になる常緑高木で、枝から多数の気根を垂らす特徴のある木で、気根は地面に着くと支柱根となって木を支えます。
他の樹上に着生したガジュマルが、気根を寄主した幹に絡ませながら生育し、締め付けて枯死させることから「締め殺し」の木とも言われる。
屋久島以南の亜熱帯から熱帯にかけて広く分布し、沖縄では屋敷木、防風林、防潮林、緑陰樹、公園樹などとして広く植栽されている樹種である。
カンボジアのアンコール遺跡などで見られる、根が遺跡の石に絡みつく写真などが有名ですが、これもガジュマルの近縁種です。
ひんぷんガジュマルもかつては「リュウキュウマツ」に寄生し成長したもので、そのリュウキュウマツは絞め殺されてすでに存在していません。
名護大通りの幸地川に架かる「あなだ橋」のたもと、道の中心部にひんぷんガジュマルは生育し、ガジュマルを中心としたロータリー状の道路となっているが、これはガジュマルを避けるように後から道路が作られたものだと言えるだろう。
ひんぷんとは、屋敷の正門と母屋との間に設けられた塀のことを言う。
樹下に置かれた石碑の三府龍脈碑(さんぷりゅうみゃくひ)の別名「ヒンプンシー」に由来する。
外から屋敷内が見えないようにする役目があると同時に、悪霊や災難が入り込まないようにするという意味もある。
名護の町に災難が入り込まないよう、地元住民の信仰の対象となっている。
また、ガジュマルの木には「キジムナー」と言ういたずらの大好きな伝説の妖怪(精霊)が12匹住むと信じられていて、道路端には『がじゅまるがんた』と言うキジムナーをイメージして作られたキャラクターが立っている。
一般的にはガジュマルの古木に住むとされる精霊であるが、精魔、セーマグ、ブナンガー、ブナガイ、ミチバタ、ハンダンミー、アカガンダーなど様々な呼び方があり、これは出会える場所などによって呼び方が違うとされている。
ひんぷんガジュマルは、2002年(平成14年)の台風16号の強風によって樹が南西方向に傾いてしまい、倒木の危険性がある被害を受けたが、その後対策工事が行われ維持された。
同時に大規模な枝の剪定作業が行なわれ、約940㌔もの枝がせん定された。
その枝は市内の小・中学校に植樹され、名護博物館にて挿し木にして育てられた苗木も、希望者に配られることになった。
かつての広大な樹幹は見られなくなったが、今でも元気な姿で気根を垂らして、大きな木陰を作り出している。
ひんぷんガジュマル
推定樹齢300年以上
沖縄県指定天然記念物1956年(昭和31年)10月19日指定
国指定天然記念物1997年(平成9年)9月2日指定
所在地=沖縄県名護市大東1丁目1