緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/10/15

ひんぷんガジュマル No,565

 ひんぷんガジュマル

クワ科イチジク属 「榕樹」

ひんぷんガジュマルは、沖縄県名護市の商店街の入口にたたずむ、推定樹齢300年以上の天然記念物のガジュマルの木である。




ガジュマルはクワ科の高さ10m以上になる常緑高木で、枝から多数の気根を垂らす特徴のある木で、気根は地面に着くと支柱根となって木を支えます。


他の樹上に着生したガジュマルが、気根を寄主した幹に絡ませながら生育し、締め付けて枯死させることから「締め殺し」の木とも言われる。


屋久島以南の亜熱帯から熱帯にかけて広く分布し、沖縄では屋敷木、防風林、防潮林、緑陰樹、公園樹などとして広く植栽されている樹種である。


カンボジアのアンコール遺跡などで見られる、根が遺跡の石に絡みつく写真などが有名ですが、これもガジュマルの近縁種です。


ひんぷんガジュマルもかつては「リュウキュウマツ」に寄生し成長したもので、そのリュウキュウマツは絞め殺されてすでに存在していません。

名護大通りの幸地川に架かる「あなだ橋」のたもと、道の中心部にひんぷんガジュマルは生育し、ガジュマルを中心としたロータリー状の道路となっているが、これはガジュマルを避けるように後から道路が作られたものだと言えるだろう。


ひんぷんとは、屋敷の正門と母屋との間に設けられた塀のことを言う。

樹下に置かれた石碑の三府龍脈碑(さんぷりゅうみゃくひ)の別名「ヒンプンシー」に由来する。


外から屋敷内が見えないようにする役目があると同時に、悪霊や災難が入り込まないようにするという意味もある。

名護の町に災難が入り込まないよう、地元住民の信仰の対象となっている。


また、ガジュマルの木には「キジムナー」と言ういたずらの大好きな伝説の妖怪(精霊)が12匹住むと信じられていて、道路端には『がじゅまるがんた』と言うキジムナーをイメージして作られたキャラクターが立っている。



一般的にはガジュマルの古木に住むとされる精霊であるが、精魔、セーマグ、ブナンガー、ブナガイ、ミチバタ、ハンダンミー、アカガンダーなど様々な呼び方があり、これは出会える場所などによって呼び方が違うとされている。



    「キジムナーと言う精霊」

ひんぷんガジュマルは、2002年(平成14年)の台風16号の強風によって樹が南西方向に傾いてしまい、倒木の危険性がある被害を受けたが、その後対策工事が行われ維持された。

同時に大規模な枝の剪定作業が行なわれ、約940㌔もの枝がせん定された。

その枝は市内の小・中学校に植樹され、名護博物館にて挿し木にして育てられた苗木も、希望者に配られることになった。


かつての広大な樹幹は見られなくなったが、今でも元気な姿で気根を垂らして、大きな木陰を作り出している。




ひんぷんガジュマル

推定樹齢300年以上

沖縄県指定天然記念物1956年(昭和31年)10月19日指定

国指定天然記念物1997年(平成9年)9月2日指定

所在地=沖縄県名護市大東1丁目1









2021/10/13

尾八重の一本杉 No,564

 尾八重(おはえ)の一本杉

吹き荒れる尾根に育ち生きてきた杉

一本杉は尾八重集落の奥、横尾峠から続く尾根伝いに位置し、ちょうど旧街道が尾根を越える。

まさに峠の頂上部分に一本杉は生長している杉の名木である。

その生命力は計り知れないほどの強さである。

高地の尾根上に当たるため、四方から季節風が吹き荒れてまともに杉を、傷めつけているかの様である。

生育環境が過酷すぎる条件下に育っていると言える。

やせ地の尾根に育つため根元は固い岩盤で、根を深く伸ばすことができないため、樹高が伸びずに低い幹の部分に数多くの枝を伸ばす。

自らその生長の仕方を選んだようで、太いコブのような枝が集中して伸びる様子は異様である。


真っ直ぐに伸びる本来の杉の姿とは程遠い、杉としては珍しい樹形そのものである。

この尾根の厳しい自然条件が杉の運命と生き方を決めたと言えるだろう。




一本杉の根元を横切る山道は昔、南郷村に至る交通の要路であったが、日本経済成長に伴い、自動車による移動手段とり、次第に峠道の存在が忘れ去られて行った。


かつては山の神として信仰された杉であったことから、峠を旅する人々たちへ安らぎの場所を与えていたに違いありません。


400年以上の長きに渡り、尾八重の暮らしや旅人の安全を見守ってきたことだろう。


今では、ほとんど人の通ることのない峠となっているが、いまだに尾八重集落の守り神と峠の番人として存在しているのだと思う。



宮崎県西都市尾八重地区は、西都市北西部の深い山中にあり、一ッ瀬川の支流、尾八重川上流の集落。

山の習わしを色濃く残す尾八重神楽と有楽椿が咲き誇る地として知られ、かつて日本に数多く存在した山里の風情を漂わせる集落である。


尾八重の一本杉
推定樹齢450年以上

西都市指定天然記念物(昭和46年6月10日)

所在地=宮崎県西都市尾八重







2021/10/08

冬から春先のバラ庭  No,563

 バラの弱点を他の植物で補う

わずかな品種を除けば、バラはその多くが落葉性であるので、バラを中心とした庭では冬から春先まで、ガランとした寒々しい庭に見えます。


秋の花が終わってから2月のせん定までは、樹形の乱れたままの姿で過ごすことになり、庭全体が雑然としたままです。


このような状態を避けるためにも、弱いせん定を行い乱れた印象を感じないようにします。


また、樹木や草花との組み合わせなど、バラの冬の状態を想定して、樹木を配植することも必要です。


12月から春まで咲く花木などの植栽で、バラにかわって庭の景観を良くします。

草花との組み合わせでは、ひとつのバラの株元近くに常緑の宿根草を、冬に備えて植え込みます。


一般の庭木もバラも大きくして、花をたくさん咲かせれば良いわけではなく、庭全体や構造物とのバランスを整える必要があります。


適正な大きさと樹形を維持するせん定が重要です。



冬にバラの庭を補う常緑宿根草

アガパンサス ユリ科

花期=4月〜7月
植え付け時期=3月〜5月、9月〜10月

明るい緑の葉が密生し、花期もバラに合わせられる。
小型種のピーターパンなどが使いやすい。




クリスマスローズ キンポウゲ科

花期=12月〜4月
植え付け時期=10月

大型の葉で冬の緑として存在感があり、花期が長く花色も多彩。




シロタエギク キク科

花期=6月〜9月
植え付け時期=10月〜11月

シルバーリーフプランツ、銀葉植物の代表種
バラの開花期には濃い色を浮き立たせる。




宿根カスミソウ ナデシコ科

花期=6月〜7月
植え付け時期=3月〜4月、10月〜11月

冬の間は多少ボリュームに欠けるが、花期には切り花としてバラと合わせるのが定番。




宿根ダイアンサス ナデシコ科

花期=3月〜7月、9月〜11月
植え付け時期=4月〜5月、9月〜10月

バラ花壇の縁取りには「ライオンロック」などの小型のものが足元を引き締めてくれる。




ゼラニウム フウロソウ科

花期=3月〜11月
植え付け時期=4月〜6月、9月〜10月

秋に切り戻して低く仕立てておく。
暖地では少し湿気に弱いが「アイビーゼラニウム」が合わせやすい。




ブルーデージー キク科

花期=3月〜6月、9月〜10月
植え付け時期=2月〜4月

冬の間も葉の緑のボリューム感は十分
花期にはブルーの花がバラを補う。

寄植えやハンキングバスケットの材料にも最適。




ベルゲニア ユキノシタ科

花期=2月〜5月
植え付け時期=3月〜4月、9月〜10月

大型のしゃもじ形の葉が広がり裸地を覆う。
バラの小さな葉との対比も大きい。




ペンステモン、ジキタリス ゴマノハグサ科

花期=6月〜9月
植え付け時期=3月〜5月、9月〜11月

「ハスカーレッド」は、赤茶色のツヤのある葉がロゼット状に広がり観賞価値も高い。




ヒューケラ ユキノシタ科

花期=5月〜7月
植え付け時期=3月〜4月、9月下旬〜11月上旬

多彩な葉色の品種があるが、花期のバラの花色を考慮して品種を選ぶ。




シバザクラ ハナシノブ科

花期=3月〜5月
植え付け時期=3月〜4月

冬からバラの開花まで、グランドカバーとして株元の乾燥を防ぎ早春の花も美しい。

芝生代わりに庭に植えたり、石垣などに利用する。




ユリオプスデージー キク科

花期=11月〜6月
植え付け時期=10月〜4月

バラの終わる晩秋から春まで咲き続け、冬の庭を彩る。
葉の緑も低木並みのボリュームがある。




ヤブラン キジカクシ科

花期=8月〜10月
植え付け時期=3月〜6月、9月〜11月

濃い緑の原種のほか、黄斑種、白斑種があり、丈夫。




マーガレット キク科

花期=10月〜6月
植え付け時期=3月〜5月

暖地でのみ植栽可、春早くから咲き、茎が木質化するのでその前に切り戻す。

9月頃に草丈の半分ほどを切り戻しすれば秋にまた開花する。




宿根スターチス イソマツ科

花期=6月〜11月
植え付け時期=4月〜5月

葉小さいもの、大きいものがあり、葉色は緑から青緑。

花期にはバラに合わせる切り花に利用する。
ドライフラワーの素材としても利用され、乾燥させても花色があせない。





ライズイヤー シソ科 (ハーブ)

花期=5月〜7月
植え付け時期=3月〜5月、9月〜10月

明るい緑の葉が密生する。
花期もバラに合わせられる。
小型種のものが使いやすい。





クリービングタイム シソ科

花期=3月〜6月
植え付け時期=3月〜5月

草丈3〜5㎝で冬の間も緑のじゅうたんを作る。
花期にはピンクのじゅうたんに変わる。












2021/10/07

バラの手入れ10月 No,562

 バラの手入れ

10月頃になると気温もかなり下がって、快適な気候となりますが、上旬は秋の長雨の時期です。

バラは中旬には咲き始めます。

春と違って気温が低いので、花色も一段と冴えゆっくり開いて花も長持ちします。




①咲き柄摘み

春ほど忙しくありませんが、下旬には咲き柄摘みを始めます。

②病害虫の防除

秋の開花期の最中でも、薬剤の定期散布は9月に準じて実施しますが、ハダニ対策は不要になります。


下旬には地域によってカイガラムシが発生し、白く目立ってきますので、殺虫剤のスプラサイドなど効果のあるものに切り替えます。


③施肥

庭植えのものには与える必要はありません。

鉢植えの置き肥と液肥は上旬で打ち切ります。





2021/10/06

キイチゴ No,561

 キイチゴ バラ科

木苺
主に低木で茎は直立するもの、這うものなど多様で普通トゲがある。

地上部は普通2年で枯れ、1年目の茎には葉だけがつく。

2年目に横に枝を出して開花結実し、そのあと枯死するものが多い。

果実は、果床(花床)の上に小さな核果が多数集まった集合果で「キイチゴ状果」と呼ばれる。


北半球の温帯を中心に数百種が知られ、果樹として栽培されているものも多くある中で雑種が多い。

日本では山野に自生しているものもある。




栽培されているのは輸入種のラズベリー、ブラックベリー、デューベリーの三種で、庭植えでも樹高1〜1.5mで80〜100果、鉢植えは6〜7号鉢で40〜50果が収穫の目安です。


栽培適地(生育期4月〜10月)


種類によって適温が違い、ラズベリーは耐寒性が強く、夏も涼しい気候を好みます。

ブラックベリー、デューベリーはやや耐寒性に劣りますが、関東地方までなら庭植えで十分育ちます。

日当たりがよく、土層が深い風当たりの弱い場所が適しています。

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土を用いて、植え付け時に根を乾かさないように注意します。


春と秋は日当たりの良い場所へ置きますが、西日は避けるようにします。


肥料

庭植えは毎年1月から2月、配合肥料を根周りに100gばら撒き、軽く土壌にすき込んでおきます。

鉢植えは3月に玉肥を3〜4個置肥します。


病害虫対策

3月の初芽前に、石灰硫黄合剤20倍液を散布して病気予防をします。


せん定(1月、2月)

結実した枝は収穫後茎部から切り取り、翌年結果枝になる新梢の通風、日当たりを良くしてやります。


庭植え、垣根仕立て



✪ブラックベリー

側枝は5〜6芽で先端を切り、混み合った枝も切り取って全体に日が良く当たるようにします。

結果母枝が多過ぎる時は、間引きせん定し、本数を制限する。



✬デューベリー

全体にバランスよく誘引し、針金で止めてる。

広い面積を使う時は、本数を多くするか、翌年以降発生してくるシュートを切り取らずに誘引していく。


鉢植え、あんどん仕立て



★植え込み

生育が早いので、すぐにあんどんを仕立てます。

鉢の高さの2.5〜3倍の高さを目安にします。



✬夏のせん定

収穫後の枝は元から切り取ります。
根元、地下茎から伸びるひこばえ(サッカー)は切り取るが、3年に一本ずつ残して主枝を更新します。


あんどんから出る枝は切り詰め、結実する側枝は3〜4節ぐらいにせん定します。






2021/10/05

ムベつる性植物 No,560

 ムベ アケビ科

郁子、野木瓜 別名=トキワアケビ
不老長寿の果実と言われる。

朝廷に献上した大贄が語源でオオニエ⇒オオムベ⇒ウムベ⇒ウベ⇒ムベと転訛したものとされる。

大贄(おおにえ)とは、朝廷に献上するその土地の産物を言う。

果実が昔は貴重な山の幸であったことが伺える。

また、アケビに似て常緑なので『トキワアケビ』の別名もある。


       「8月8日撮影」

❉ムベの歴史、名前由来

ムベの歴史は、天智天皇(てんぢてんのう=西暦626〜672年)が狩猟で蒲生野(がもうの、現在の滋賀県東近江地域)を訪れた際に、長命な老夫婦に出会い、長寿の秘訣を訪ねたところ、これを食べているからですと老夫婦が手渡したムベを食べ、「むべなるかな」もっともだとおっしゃったことが由来とされています。

ムベは、皇室献上品のひとつとされ、天智天皇ゆかりの霊果とも呼ばれています。

ムベの実は現在でも皇室に献上されています。

ムベは古くから知られていた果実で、918年頃に書かれた「本草和名」にムベの名が初めて出てきます。

本草和名(ほんぞうわみょう)とは、平安前期にできた日本現存最古の薬物辞典である。

大医博士=深根輔仁(ふかねすけひろ)著

自生は暖地の山地の林縁や原野などに生える。

関西以西が自生地の暖地性植物ですが、耐寒性が強いので北海道を除く全国で庭植えができる。

熟してもアケビのように果実が口を開かないのが特徴。

ムベは常緑樹で果実は開かない、アケビは落葉樹で果実が開く。


雌雄同株で、一本の枝に両性の花が4月頃に咲き、9月下旬から11月頃にかけて暗紅色で大形の果実が結実します。


   

   「ムベの花、4月4日撮影」


果肉は白く甘味があり生食できます。




昔から縁起木として知られ、長命、延寿、富貴を表す樹木とされています。

葉は最初単葉ですが、成長に連れ3枚、5枚、7枚と増えていき、最後に結実することから、七五三の祝い木とされています。

茎や根は利尿剤や強心剤として利用される。





栽培適地

日当たり、水はけの良い場所が適地で、土層が深い肥沃地を好みます。

鉢植えは赤玉土5、腐葉土4、川砂1の混合土に植え、日当たりと風通しの良い場所へ置いて管理します。

浅根性なので盆栽仕立てにもできます。


肥料

1月から2月、根周りに配合肥料を100gぐらい薄く撒き、浅く土壌にすき込んでおきます。

鉢植えは、3月に玉肥を3〜4個置肥します。

収穫時期は9月頃から11月頃

せん定

棚仕立てや垣根仕立てなどにして、毎年混み過ぎた枝を間引きせん定し、古い枝は切り詰めて新しい枝を出させます。

生長の良い新梢は年に15mも伸びるので、長くなり過ぎたら6月から7月にもう一度、軽く切り詰めせん定を行います。


鉢植えは模様木仕立てにしますが、切り詰めせん定で樹形を作り、成木になったら毎年根を切り詰めて、短枝を多く出させるようにすると開花結実します。


病害虫対策

葉表や葉脈などに黒点のできるさび病が発生します。

春と秋にダイセン水和剤500倍液を散布して予防します。

混み合って風通しが悪くなると、カイガラムシが発生します。

見つけ次第ヘラなどで剥がして駆除、混み合った枝を間引きせん定し、風通しを良くします。


発生量が多い場合では、冬期に石灰硫黄合剤を散布して駆除します。