緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2023/06/10

土壌、土質の診断と対策 No,641

 土壌、土質の適応力

地域の気候に適応した樹木でも、土との相性が合っていなければ順調に育つことはできません。

すでに★成木になった樹木では、ほとんど問題はありませんが、苗木の植え付けや移植に当たっては土質をチェックすることが大切となります。


★成木(せいぼく)とは樹木が生長すること、生長した樹木のこと

造形樹の様々な技術を生かして、健康で美しい樹形を作り上げるためにまず、土質を改良することが最初になります。


土層と土質

樹木が生育している土壌は通常、溶脱層、集積層、母材層の3つからできており、その表面は動植物の残骸が風化してできた有機物質の薄い地表(有機物層)で覆われています。

(A図参照)


「A図」

地表から30~50㎝の深さの溶脱層は、植物の栄養分となる有機物を多く含む黒、黒褐色の土です。

根が地表近くの浅い部分を横に広がるように伸びていく、浅根性樹木(桜など)の根の大半はこの地層に広がっています。

地表から50~80㎝の集積層は、粘土質と上層から分解されずに落ちてきた有機物質を含む褐色の土で、溶脱層ほどではないが植物の育成に必要な養分を含んでいます。


根を地中深く伸ばしていく、深根性樹木の主根はこの地層まで達します。

母材層の地層は無風化の岩石層で、樹木の生育と直接の関係はないとされています。


樹木の生育にとって最も重要なのは溶脱層です。

従って、樹木にとっては有機物質を多く含む、厚い溶脱層を持ち、養分に富んでいる土質が好ましく、地表から30~50㎝の土壌管理が重要となります。


土の色からわかること

★黒色

黒は腐植の色です。

黒々とした火山灰土は関東地方に多い土ですが、日本各地で見ることができます。

この土はこのままでは酸性度が強く、リン酸の欠乏した土です。

有機質の多い黒い土が肥えた良い土だとは限りませんが、保水力があり、通気性も良い土なので、効率的な施肥によって畑に利用されている土です。


★褐色、赤色、黄色

これらの色はすべて鉄分の色で、土の成分である水酸化鉄や酸化鉄の結晶構造によって色が変わります。

酸化鉄の多いときは赤色が強くなります。

赤色の土は一般に粘土が多く保水性はありますが、通気性は悪く弱酸性でリン酸も欠乏しています。


★青灰色

これは二価鉄の色です。

二価鉄とは、酸素が不足した状態の土壌中で多く生じる成分で、最も湿った環境下でできる水はけの悪い土です。

土を1㍍掘ったときに、この土壌にぶつかってしまったら要注意です。

傾斜をつけて雨水を流れやすくしたり、土管や排水用のチューブを埋めるなどして、排水対策を行う必要があります。


★灰色

酸化鉄が少ない事を示す土壌で、砂質の土では土の中の養分も少ない土です。

酸化鉄とは、鉄の酸化物の総称で鉄が錆びた物質です。

同じ灰色でも、粘土質の場合なら保肥力や保水力のある比較的良い土と考えられます。









2023/06/09

暑さに弱い代表的樹種 No,640

 暑さに弱い樹種

◉シラカバ(カバノキ科)
夏の暑さと乾燥に弱い、四国、九州以南の高温地域での露地植えは適さない。

「シラカンバ」とも言い、幹が白いのでこの名がある。

フィンランドなどでは春先に、この木の樹液を飲む風習がある。



★関連ブログNo,464



◉エゾマツ(マツ科)
北海道、東北地方に自生する常緑針葉樹

山間の寒冷地を除いて、東北地方以南での露地植えには適さない。

エゾ(蝦夷)とは北海道の古称で北海道に多いのでこの名がある。



★関連ブログNo,435



◉トドマツ(マツ科)
北海道北部、樺太に自生する亜寒帯性の常緑針葉樹

本州以南では、高山部を除いて露地植えには適さない。

エゾマツとともに北海道を代表する針葉樹で、海岸から深山まで広範囲に生える。











2023/06/08

寒さに弱い代表的樹種 No,639

 寒さに弱い樹種

♣アカシア(マメ科)
ミモザアカシア
関東地方南部より北での露地植えには適さない。

アカシアとはマメ科ネムノキ亜科アカシア属の総称で、1.000を超える種類がある。



ニセアカシアと言われているのは「ハリエンジュ」の別名で、アカシアと呼ぶ人もいるが正しくはニセアカシアである。

★関連ブログNo,639



♣ザクロ(ザクロ科)
東北地方北部より北での露地植えには適さない。

日本では古くから庭木として扱われ、各地に栽培されている落葉広葉樹。




★関連ブログNo,153


♣キョウチクトウ(キョウチクトウ科)
露地植えできるのは関東地方が北限。

東北地方及び山間部での露地植えには適さない。

原産地はインドで一重咲きと八重咲きがある。


         「八重咲き」

★関連ブログNo,167



♣クチナシ(アカネ科)
高温、多湿を好み、関東地方以北での露地植えには適さない。




★関連ブログNo,6



♣ソテツ(ソテツ科)
自生地は九州南部と沖縄のみ

関東以南の本州でも冬季の保護をすれば露地植えできる。

雌雄異株の常緑低木で高さは4㍍ほどになる。




★関連ブログNo,246



♣モッコク(ツバキ科)
関東地方以南の地方に自生している。

東北地方での露地植えは適さない。

沿海の山地に生え、高さは15㍍ほどになる。




★関連ブログNo,239


♣サンゴジュ(スイカズラ科)
関東以北での露地植えは適さない。

赤く熟した実が珊瑚のように美しいのでこの名がある。



★関連ブログNo,268



♣ツゲ「ホンツゲ」(ツゲ科)
関連地方以南の地方に自生している。

東北地方から北での露地植えは適さない。

寒さに強い「イヌツゲ」とは別種。



★関連ブログNo,58








2023/06/06

広い地域での植栽が可能な代表的樹種 No,638

 広い地域植栽が可能な樹種


◉イヌツゲ(モチノキ科)
日本の各地で植木として、幅広く栽培されている常緑小高木。

萌芽力が強いので様々な造形ができる。

ツゲ(ホンツゲ)に似ているが、役に立たないのでこの名があり、植物名では「イヌ」は役に立たないものに使う。

ツゲは葉が対生でイヌツゲは互生と見分けられる。




★関連ブログNo,265


◉アオキ(ミズキ科)
日本庭園などで古くから栽培されている代表的な庭木の一つ。

野生種も北海道南部から九州まで幅広く自生している。

枝が青いのでこの名がある。

山地の樹林下に生える雌雄異株の常緑低木で、日本の特産である。




★関連ブログNo,272


◉カラタチ(ミカン科)
暖帯性のミカンの仲間だが耐寒性が強い。

生育が早く、北海道以外の各地で防犯を目的に生け垣として利用されることが多い。

原産地は長江上流域とされ、8世紀頃には日本へ伝わっていたとされる。





◉ドイツトウヒ(マツ科)
耐寒性が非常に強く、北海道から九州の各地で栽培可能。

ヨーロッパからシベリアにかけて広く分布し、ヨーロッパでは主要な造林樹種となっていて、建材として幅広く利用されている。




★関連ブログNo,380


◉ビワ(バラ科)
暖帯性植物だが、耐寒性が強く北海道以外の各地で栽培可能。

野生種は中国、四国、九州地方に自生している。

果実の形が楽器の琵琶に似てるのでこの名がある。

原産が中国とされるが、石灰岩地のものは本来の自生と言う説もある。




★関連ブログNo.55,No.137,No.150

◉ニシキギ(ニシキギ科)
日本各地の山野に自生する落葉低木

紅葉が美しい樹種で、各地で栽培されている。

紅葉の状態を「錦」に例えた名前である。




★関連ブログNo,443



◉ウメモドキ(モチノキ科)
秋から冬にかけて美しい実がなることで植木によく用いられる落葉低木。

北海道から九州まで栽培でき、葉が梅に似ているのでこの名がある。

山野の湿地やその周辺の水分が豊富にある場所に生える。





◉カエデ類(カエデ科)
日本の各地に自生する落葉高木で、紅葉が美しいことから庭木や公園樹として栽培されている。

古くから親しまれた庭木として非常に種類が多く、その地方に適した種類がたくさんあり、北海道から九州まで数えきれないほどの園芸品種がある。




★関連ブログNo,299









2023/06/05

気候適性による樹木の分類 No,637

 樹木の適性気候の分類

一般に日本の樹木はその適性気候から
①亜熱帯性樹木
②暖帯性樹木
③温帯性樹木
④亜寒帯性樹木の4つに分類されます。


      「樹木の分布図」

①主な亜熱帯性樹木

ソテツ、ヤシ類、ガジュマル、バショウ、キョウチクトウ、ハクチョウゲ、ドラセナなど


      「ハクチョウゲ」


②主な暖帯性樹木

カシ、シイ、クスノキ、マテバシイ、タブノキ、ユズリハ、モチノキ、ヤマモモ、カナメモチ、ソヨゴ、タラヨウ、イヌツゲ、カクレミノ、サザンカ、モクセイ、シャリンバイ、ウバメガシ、モッコクなど


       「イヌツゲ」


③主な温帯性樹木

アオギリ、ナラ、クリ、ブナ、ニレ、モミ、ツガ、ゴヨウマツ、サクラ、モクレン、コブシ、クヌギ、ヒノキ、スギ、サワラ、シャクナゲ、ホオノキ、トチノキ、カツラ、ミズキ、ハンノキ、モミジなど


       「コブシ」


④主な亜寒帯性樹木

エゾマツ、ハイマツ、ドイツトウヒ、トウヒ、トドマツ、イチイ、キャラボク、カラマツ、シラカバなど


      「キャラボク」


以上4つの分類は本来の植生に沿ったものです。

多くの樹木は多少の環境の変化には適応しますが、種類によっては寒い地方では育たない樹木、逆に暖かい地方では育たないものもあります。

一般に、植物は暑さに対する適応力よりも寒さに対する適応力の弱いものが多く、樹種によっては東北地方以北の地域では相当な防寒対策を施さないと、育成が困難な樹木も少なくありません。


また、統一の樹種であっても地域の気候、主に気温によって冬芽が顔を出す萌芽や開花の時期に差があるので、手入れの適期も異なってきます。


生育の目安として、地域周辺に自生している樹種や近隣の庭などで健康に生育している樹種てあれば、基本的には植樹可能と考えて良いでしょう。


それぞれの地域の気候に合った樹種を選ぶことが大切です。









2023/06/04

樹木、森林の炭酸ガス吸収能力 No,636

樹木の 炭酸ガス吸収能力

炭酸ガスは「二酸化炭素」「CO2」とも呼ばれ、人々が吐き出す息にも含まれ、物を燃やした後には必ず発生するものです。


空気よりも重く水に溶けやすい






樹木の炭酸ガス吸収量

根元の直径が60㎝、樹高が15㍍のスギの木が1年間に吸収する炭酸ガスの量は約62㎏とされています。

これは乗用車の約220㎞走行時の排出量に匹敵するものです。

例えば、この車が1年間に一万キロ走行すると、炭酸ガスの排出量は2.8㌧となり、この全量をスギの木に吸収させるには45本のスギが必要になります。


森林面積は10アール(302.5坪、10m×100m=1000㎡)程度必要になります。


樹木同様に、草花も一時的には炭酸ガスを吸収、貯蔵しますが、枯れると微生物にすぐ分解され、最終的には水と炭酸ガスになって再び大気中に放出されてしまいます。


しかし、樹木は成長している間はもちろんの事、木材になってからも腐朽(ふきゅう)あるいは焼却されない限り、炭酸ガスの貯蔵庫としての機能を持ち続けるのです。


紙の主原料も木材から採った「セルロース」ですが、紙も重要な炭酸ガスの貯蔵庫です。


♣セルロースは、植物の細胞壁及び繊維の主成分で、植物は全てセルロースを主構成成分として含んでいる。

セルロースは、地球上でもっとも多く存在する炭水化物です。

紙のリサイクルも炭酸ガスを地球に戻さないと言うことで大切なことである。


東京都内には約101万本の街路樹と、約475万㎡の道路内緑地があります。

101万本のすべての樹木の大きさが根元直径30㎝、樹高5㍍であると仮定すると、その総数による1年間の炭酸ガス吸収量は約12.625㌧と推定され、これは日本人約35.000人の年間の呼吸によって排出される炭酸ガス量に匹敵します。


1本の樹木による炭酸ガス吸収量は多くありませんが、これが大面積となった場合には相当量の吸収、貯蔵能力になるはずです。

地球温暖化が世界的にも問題化した時代であるなら、人々が植物や樹木に多くの事で依存して生きていることを認識し、樹木や森林の大切さを改めて考え直す時です。


大気中の環境が悪ければ悪いだけ、樹木には負担が大きい事を忘れてはいけない。

時にはその過剰な環境悪化により、枯死してしまうこともあるのです。


♣植物環境、温暖化、地球環境に関連するブログ
No,416
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No,635