緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2024/10/03

腐植物質の機能 No,726

 腐植物質

腐植とは、有機物が土壌中で微生物の作用により、徐々に分解してできた黒褐色のもので、植物の肥料として優れています。

腐植土は腐葉土と同様に扱う文献も有るが、腐植土は主に土壌を指し、腐葉土は主に林床で腐熟した落葉落枝や落葉堆肥を指します。

堆肥とは、廃物を微生物に分解させて作った肥料のこと

腐植物質は、土壌生態系の中で多くの役割を果たしています。


その機能は土壌の化学性、物理性、生物性の全てに関わることが知られています。


それは①植物養分供給能、②植物養分保持能、③植物生育促進能、④団粒形成能などです。


腐植物質は、農耕地土壌にとって不可欠の機能を持つことから、特に有機物の分解、消耗の激しい畑土壌においては、堆肥などの有機資材を投入することが「土づくり」の基本とされています。

なお、家畜ふん堆肥やバーク堆肥などが用いられる傾向があるが、家畜ふん堆肥では塩濃度の高まりに注意する必要があります。

バーク堆肥などの木質系堆肥では、植物生育に有害な成分を除くため、十分に熟成したものを使うことが重要です。

①植物の養分供給能とは

1'
植物は水に溶けた無機物を養分として吸収する。

2'
植物の生育に必須な栄養素は17種類あり、チッ素(N)、リン(P)、カリ(K)の三大要素が特に重要である。

カリウム(Ca)、酸素(O)、水素(H)
炭素(C)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)
鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)
亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)
塩素(Cl)、ニッケル(Ni)


3'
植物は、根の細胞のイオン濃度を利用して、水や養分を吸収する。

4'
養分が不足すると根から有機酸を放出して、通常は吸収できない養分を溶かして吸収する植物もある。

5'
植物は光合成によって炭水化物などの有機物を合成する。

6'
植物の茎の内部には、根から吸収した水分、養分を運ぶ導管と、葉で作られた炭水化物などの養分を運ぶ師管が形成されている。

7'
作物の場合は、チッ素、リン、カリウムが不足しやすいため、肥料として与えられる。

8'
植物の生育に応じて必要な養分を追加で与えることを追肥といい、速効性のある液体肥料や化成肥料が利用される。


植物の養分保持能とは

植物によるタンパク質や脂質の蓄積が、一番見られるのは「種子」の場合です。

植物は葉以外の場所の細胞にも、葉緑体に相当する細胞内小器官を持っており、色素体と総称されます。

デンプンの蓄積は植物が順調に生育しているときにも見られ、葉緑体にデンプンが存在するほか、根にはデンプンの蓄積に特化した色素体が存在している。

植物が順調に生育している場合は、タンパク質や脂質を機能しない状態で、多量に蓄積することはありません。

デンプンは分子が大きいので、色素体を包んでいる膜を通り抜けることができません。

従って、分解も色素体の中で起こり、分解されてできた「糖」を色素体から細胞質に出して「ショ糖」の形に変換した後、必要な場所に送ります。

「ショ糖」とは、スクロール、サッカロースとも言われる砂糖の主成分とする甘味物質のこと。


葉緑体は、光合成以外にも脂質の合成やチッ素の代謝に重要な働きをしていますが、葉緑体が存在しない葉以外の細胞にも何らかの色素体は存在するので、冬に葉を落とした植物が生育できなくなるということはありません。


植物の生育促進能とは

植物生育促進能とは、植物の生育を促進する効果を持つ微生物や薬剤などを指します。

植物の生育を促進する微生物は「PGPM」と呼ばれます。

(Plant Growth Promoting Microorganism)

植物ホルモンを生成する微生物も含まれますが、植物ホルモンを大量に出す微生物は、植物の成長を妨げる可能性があります。


団粒形成能とは

微生物資材が、土壌に与える団粒形成の程度を評価する指標です。

微生物濃度が高まると、多糖類やウロン酸などの代謝産物が多く生産されるため、団粒構造が発達し、土壌の物理性が最善されます。

腐植物質も粘土と複合体を形成していることから、団粒形成の役に立っています。









2024/09/30

生け垣に適した樹種の条件 No,725

 生け垣に使用する樹種の

一般的条件

せん定、刈り込みに強く萌芽力が強い

長い年数が経過して樹の幅が広くなり過ぎたり、樹が高くなり過ぎた生け垣は、かなり強いせん定を行って樹形を保つ必要があります。


生け垣にする樹種は、強いせん定、刈り込みをしても樹勢が衰えず、すぐに芽生える強い萌芽力を持っていることが重要です。

特に、強い刈り込みに耐える樹種としては、カヤ、ウツギ、カシ類、カナメモチ
シイ、マサキ、ピラカンサス
ドウダンツツジ、サンゴジュなどがあります。

逆に、自然風の生け垣にしてあまり強く刈り込まない樹種には、カイヅカイブキ
コウヤマキ、コノテガシワ、モッコク
ヒイラギナンテン、ジンチョウゲなどがあります。


枝葉が密生しやすく、下枝が枯れにくい

目隠しとしての役割を持つ外生け垣には、枝葉が密集する樹種が適しています。

一般に、樹木は頂部優勢性であるため、樹冠の樹勢が強く、下枝は弱い傾向にあります。

生け垣では、日照や通風なども一般の庭木より厳しい生育条件下に晒されます。

そのため、生け垣には下枝の枯れ上がりが少ない樹種を選ぶ必要がありますが、基本的に強いせん定に耐えられる樹種は条件を満たしています。


カラタチ、サワラ、スギなど、生長の早い樹種も枝葉が早く生い茂るので、下枝の枯れ込みが少なくなります。


下枝が枯れにくい、又は生長が早い樹種

ウツギ、カラタチ、サワラ、スギ、マサキ
ネズミモチ、ピラカンサス、ポプラなど


病虫害が少なく管理しやすいこと

庭木全般に当てはまることは、病虫害の発生しやすい樹種は管理の面で負担が大きいことです。

特に、刈り込み整形垣で病虫害が発生すると、一般の単植の樹木より被害が拡大しやすいので注意が必要です。

マサキは、ウドンコ病やアブラムシによるスス病が比較的発生しやすいので、注意が必要です。

しかし、その他の条件が非常に優れているなめ、実際にはよく生け垣に使用されています。

マサキは、強い刈り込みや萌芽力、枝を切断された後の芽吹きが強く、この特性が生け垣に向いているとされています。

生け垣によく使われる常緑樹は、病虫害に比較的強いが、花木はアブラムシ、グンバイムシなどがつくものもあるので注意が必要です。

また、丈夫な樹種でも日照や通風などの条件が悪い生け垣では、常に病虫害に対する注意が必要となります。


寒さや日陰に強く、比較的土質を選ばない

生け垣は日陰になることが多くなります。

生け垣のすぐ脇には、主木となる庭木を植えることが多いため、中高木や高木によって日陰を作ってしまう原因となります。

日陰になっている時間が長いと、気温も上がりにくくなるので、寒さや相当の日陰にも耐える樹種を選ぶ必要があります。


更に、土質に対しても比較的条件を選ばず、よく育つタイプの樹種が適しています。

特に日陰に強い樹種

アオキ、アスナロ、イチイ、カヤ
クチナシ、コウヤマキ、サカキ
シキミなど


湿地に強い樹種

イヌマキ、サンゴジュ、ハルニレ
マサキ、ハンノキなど


海岸地に強い樹種

イヌマキ、カイヅカイブキ、サンゴジュ
シャリンバイ、トベラ、マサキなど


日本全国で幅広く使われてる樹種

イヌツゲ、マサキなど

北海道を除く日本各地で使われている樹種

コノテガシワ、サワラ、スギ、ヒノキ
ヒバ、カラタチ、バラ、ムクゲなど


主に東北地方、関東地方で使われている樹種

アスナロ、ヒムロ、ドウダンツツジ
クコ、レンギョウなど


主に関東地方以南の地方で使われている樹種

カシ類、カイヅカイブキ、カナメモチ
クチナシ、サンゴジュ、サザンカ
ツバキ、ツツジ類、チャ、ピラカンサス
モチノキ、キョウチクトウ(有毒)など


主に九州地方以南で使われている樹種

ホクオウチク、ホウライチク、カンチクなど









2024/09/28

生け垣づくり④ No,724

 樹種または植え方による分類

重層垣(二、三段垣)

樹の高い生け垣と、低い生け垣を組み合わせたものです。

仕立て方は、整形刈り込み垣または自然風垣同士で合わせたり、整形刈り込みと自然風を組み合わせる場合など、様々なパターンがあります。

高さのある生け垣の前面に低い生け垣を作ることで、高さのある樹木の足元(根元)を隠すことができます。

特に、敷地と道路との高低差がある場合は、目隠し効果が増し見栄えも良くなり、下枝が少なくなりやすい樹木に最適です。


しかし、重層垣を作る場合は、生け垣の幅にかなりの場所を取るので、敷地の広さに余裕が必要です。


混ぜ垣

複数の樹種を混植して作った生け垣です。

重層垣も混ぜ垣の部類に入りますが、異なる樹種を玉ものなどの同じ形に仕立てて、これを列植したもの、整形刈り込みで高さを変えたものなどがあります。


混ぜ垣を作るときのポイントは、生長の速度や枝葉の張り出し方などの性質が異なる樹種を組み合わせると、生長していくにつれて樹形が大きく乱れたり、その後の管理が複雑になるので注意が必要です。


花垣

花木を使った生け垣で、開花期には花のある美しい風情を楽しむことができます。

花垣にする樹種は、花つきがよく、強いせん定にも比較的耐えられるものを選ぶ必要があります。

一般には、ツバキ、サザンカ、クチナシなどがよく利用されています。

また、ウメモドキなどの実のなる樹種で生け垣に使われたものもあり、これらも含めて花垣と呼びます。

生け垣にできる主な花木
アジサイ、アセビ、オウバイ、カイドウ
キョウチクトウ、クチナシ、コデマリ
サザンカ、サツキ、ジンチョウゲ
シモツケ、ツツジ、ハギ、バラ
ヒイラギナンテン、ヤマブキ
レンギョウなど


生け垣にできる主な実ものの花木
ウメモドキ、ナンテン、ピラカンサス
メギ、ニシキギなど


注意が必要な毒性樹種
キョウチクトウは花、葉、枝、根などすべての部分に、青酸カリよりも毒性が強いと言われる「オレアンドリン」という有毒物を含んでいます。

口に入れると死に至ることもあるほど、危険な植物であるため、注意が必要です。


キョウチクトウによる死亡事故
1975年にフランスで、バーベキューをしていた7人の男女が、死亡するという事故が起きている。

また、1980年には、千葉県の農場で牛に与える飼料の中にキョウチクトウの葉が混入した。

この飼料を食べた乳牛20頭が中毒を起こし、そのうちの9頭が死亡しました。

混入した牛1頭当たりの量は、乾いたキョウチクトウの葉、約0.5g程度だったとされている。


アセビの毒性
(グラヤノトキシン、クエルセチン)
アセビには、葉や茎、花、枝、根のすべてに毒性があり、摂取すると中毒症状を引き起こします。

アセビの毒性は、馬が葉を食べると酔ったようにふらつくことから、「馬酔木」という名が付けられました。

人にも有害で、摂取すると下痢や嘔吐、腹痛、痙攣、麻痺など様々な症状を引き起こす可能性があります。

野生動物もアセビは決して口にすることはありません。


つる垣

つる性の植物を利用した生け垣で、金網のフェンスや竹を縦横に組んだ四つ目垣などに絡ませ、柔らかい風情を出します。

常緑性のものでは、テイカカヅラ、ムベなど

落葉性のものではツルウメモドキ、ノウゼンカズラなどがつる垣によく利用されています。

注意が必要なつる性の毒性植物
テイカカヅラは、キョウチクトウ科の植物で有毒植物です。

葉や枝など全体的に毒性を持っているので、利用の際は注意が必要な植物です。

日本では古来から自生していた植物で、古くは「マサキノカズラ」と呼ばれたつる性の木本です。

✿木本(もくほん)とは、地上に出ている茎が二次成長で太り続け長い間存続する植物で、普通に言う「木」のことです。









2024/09/26

生け垣づくり③ No,723

形状による分類

整形刈り込み垣

外生け垣に最も多く見られる、生け垣全体をひとつの造形として、整然と刈り込んだ生け垣です。


刈り込み後は細かい枝葉が密集するので、とても美しい印象を与えます。

形は長方形にするのが最も一般的ですが、その他にも円形、列植、盃形、三角形、紡錘形(ぼうすいけい)、台形など様々な生け垣の形があります。


自然風垣(自然形垣)

列植した樹木を1本ずつ整形した生け垣で、整形刈り込み垣のように全体を、平面に切り揃えることはありません。


1本ずつの樹形は使用する樹種によって自然形、円錐形、円筒形、散らし玉などに仕立てます。

実際には人工的な樹形になりますが、一本一本の樹木をそのまま使うと言う意味で、整形刈り込み垣に対して「自然風」と名付けられています。


樹と樹のすき間が、大きく開かないように注意して配列するのがポイントです。









2024/09/25

生け垣づくり② No,722

 作る場所による分類

外生け垣

外生け垣は家の外周に作る生け垣ですが、単純に「外垣」とも呼びます。

通常は侵入防止や目隠しが目的で、人の視線を遮る「1.5〜2㍍」程度の高さのものが一般的です。

ただし、防風や防火を目的とした生け垣は、通常「5〜6㍍」以上の高い生け垣にします。

厳密な高さの規定があるわけではありませんが、一般に3㍍以上のものを「高生け垣」1㍍前後以下のものを「低生け垣」と言います。


通常の高さの生け垣は、高生け垣や低生け垣に対比する場合は「普通垣」と呼ぶこともあります。


   「高さによる生け垣の呼称」


また、侵入防止のために作る生け垣を「バリヤー」と呼び、トゲがあったり人や動物を寄せ付けいほど、枝葉が密生して丈夫な生け垣を作る事が出来る樹種を利用します。

和風ではカラタチ、洋風ではクリスマス装飾でよく使われるヒイラギの仲間の、クリスマスホーリー(セイヨウヒイラギ)などが代表的樹種です。


高生け垣によく使われる樹種

一般的な生け垣に適した樹高3〜5㍍程度のもの

イヌマキ、サンゴジュ、ツバキなど


防火、防風目的で使用する樹高3〜7㍍程度のもの

カシ類、スギ、ヒノキ、シイ類など


景観と防風などの実用を兼ねる樹高5〜8㍍のもの

クロマツ、アカマツなど


低生け垣によく使われる樹種

タマイブキ、サツキ、ツツジ類
イヌツゲ、ジンチョウゲ、レンギョウなど


バリヤーによく使われる樹種

カラタチ、ピラカンサス、ヒイラギ
クリスマスホーリー、ホンツゲ
キャラボクなど

内生け垣

内生け垣は庭の内部に作る生け垣で、単純に「内垣」とも呼びます。

内生け垣の多くは、比較的広い庭で雰囲気の異なるスペースを区分けする場合に作ります。

一般家庭の庭では、景観を考えたとき、他の庭木を楽しむ際の障害になったり、存在感が薄れないように「50㌢〜1㍍」ほどの低生け垣にすることが多く、高くても1.5㍍程度に高さを抑えるのが通例です。

内生け垣によく使われる樹種

ジンチョウゲ、イヌツゲ、チャ
ハイビャクシン、サツキ、ツツジ
カナメモチなど










2024/09/24

生け垣づくり① No,721

 生け垣づくり

生け垣とは、植物を使った囲いや仕切りのことで、文字通り「生きている」垣根のことを言います。

生け垣に対して無表情なブロック塀やコンクリート塀などは「死に垣」と言われる。

生け垣は、四季折々の葉色の変化で楽しめるほか、花木を使った生け垣は開花時の美しさを楽しむこともできます。

更に、通風や通気性が優れていることや、地震による倒壊に対する安全面も注目されています。

開放感を保ちながら境界を仕切る効果もあり、敷地面積の狭い家でこそ生け垣をする利点は多いと言えます。

生け垣の種類

生け垣は、その目的によって使う樹種や作る形が異なります。

最も一般的なのは、隣家や道路との境界を囲い、外部からの目隠しとして使用するものです。

その他に、日陰を作るため、防風や防火を考えた生け垣など、主に外部からの侵入を防止する役目として、トゲのある樹種を用いる生け垣など、目的ごとに適した樹種わ形状があります。

美観と実用の両面で使う樹種を選ぶようにします。