緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2018/12/12

コケ(苔)の話  NO.81

苔のはなし


◉苔には
①セン類(スギゴケなど)
②タイ類(ゼニゴケなど)
③ツノゴケ類と言う3つのグループに分けられ、園芸に多く利用されるのはセン類です。

★セン類はは、体の小さいコケの中でも大きく見栄えがよく、比較的乾燥に強いことから園芸に利用されています。

    ◎ホソバオキナゴケ(シラガゴケ科)

透明な細胞があるため全体が白っぽく見え「白髪、爺」の名がある。

透明細胞は吸水、保水作用があり園芸材料として「ヤマゴケ」の名で売られている、苔庭に使われ、盆景や苔玉にも利用できる。


コケは色々な性質があるため、普通の園芸植物とは異なった育て方が必要です。

①コケは体には根がなく水分や養分は体の表面から吸収します。

②仮根があるが体をものに付着させる役目をするだけである。

③体の作りは簡単で、水分や養分を運ぶ構造や水分の蒸発を防ぐ「クチクラ」はない。

クチクラ=植物の表皮にあるロウまたは脂肪酸(脂肪を酸または、アルカリで分解して得たものの主要な1つ)の分泌物。

水分の蒸散や外部からの侵入物質を防ぐ働きがある。

④葉は乾くと、縮んで巻いたり茎に接するように折り畳んだりする。

⑤コケは普通、たくさんの個体が集まって生えており、それが水分を保持する役目をしている。




◉園芸で利用するものは、土の上に生えているものが多く、体のつくりを見るとギンゴケやオオスギゴケなど地面から直立するものと、ハイゴケのように地面を這うものに分けられます。

谷沿いに多くのコケが見られるのは、適度の日当たりと湿度が高いことによります。

コケの体のまわりの空気中の水分を上手に管理することが、コケを育てる上でもっとも大事な要素だと言えるでしょう。




◉コケは根がないので、赤玉土や鹿沼土など、保水性と通気性のよい用土を使い、コケの体のまわりの湿度を高くする必要があります。

肥料は施しません。

ただ、用土の表面に置いただけでは不安定になるので、体の小さなものは黒土、大きなものは富士砂などで一部を覆いコケの体を固定します。

特にハイゴケのように這うものは、竹串やワイヤーなどで固定します。

苔玉に使う場合は、はがれないように糸を巻いて固定します。

★コケは種ではなく胞子でふえますが、胞子はいつもあるとは限りません。

胞子から育てることも難しいので主に株分けでふやします。

株分けでふやす場合は、細かく分け過ぎたり、植え込みの間隔が広すぎると成長が悪くなりますので注意が必要です。

また、違った個体のコケを混合すると効果的な成長があると言われています。

コケはお互い寄り添って水分を失いにくくしていますので、バラバラにしないで植え込みます。



◆参考ブログ
※苔玉盆栽 No.52
※コケの胞子 No.90
※小さな盆栽、苔玉を暮らしの中に No.97
※苔玉、鉢植えのコケ管理 No.165
※花のない植物コケ胞子隠花植物 No.187







2018/12/11

スモモ バラ科 落葉広葉樹  NO.80

スモモ バラ科


日本や中国が原産。

現在栽培されている品種は、アメリカから逆輸入された改良品種です。

スモモの仲間には、セイヨウスモモ、いわゆるプルーンがあります。

セイヨウスモモは日本の気候に合わず、あまり栽培されていません。

甘味と酸味のバランスの取れた香りのよい実がなります。




〈適性〉

耐寒性、耐暑性が強く日本のどこでも栽培は可能ですが、晩霜(おそじも)の被害を受けやすいので、暖地性気候の地域が向いています。

土質は軟らかく、排水のよい土壌が適しています。

〈収穫〉
開花時期は、3月下旬から4月上旬で、ほとんどの品種が自家受粉しないので、人工受粉をします。

収穫時期は、品種により異なりますが6月中旬から8月頃です。

〈肥料〉
収穫後の8月から9月に、堆肥に鶏糞と油かすを混ぜ、リン酸とカリウムの多い化成肥料を加えたものを与え、肥料は株まわりに埋め込みます。

〈剪定〉
徒長枝や混んだ枝を夏に整理します。また、枝が伸びると果実が取りにくくなるので、3~4年に一度切り戻すようにしましょう。


注意する症状として

①幼果が黄変して落ちる。
原因は晩霜の被害です。

スモモは開花時期が早いため、晩霜の被害を受けやすい果樹です。

②実がつかない。
実がつかない理由として、受粉していない事が考えられます。

スモモは自家受粉しない品種が多く、別の品種と人工受粉をする必要があります。

大石早生(わせ)、ソルダム、サンタローザなどの品種間で受粉が可能です。

③枝の先が枯れる。
枝の先が枯れる原因として、根詰まりが考えられます。

スモモは軟らかく排水のよい土壌を好み、固い粘土質の土では根詰まりを起こしやすくなります。

対処法として、堆肥や腐葉土などの有機質の肥料をすき込み土壌の改良を行いましょう。


病気

◎ふくろみ病
幼果が急にふくらみ、白緑色に変色し、病状が進行すると落果します。

病気の果実は処分します。

開花前に石灰硫黄合剤を冬期に散布して予防しましょう。


害虫

◉アブラムシ、クワシロカイガラムシ、モンクロシャチホコ
★モンクロシャチホコ(フナガタケムシ)
このケムシは9月に発生し、若齢期は赤褐色で葉の裏に群れをなし葉を食べます。

老熟幼虫は五センチほどになり、紫黒色(しこくしょく)に変化し、黄白色の長毛が生えます。

発生量が少ない場合は、一匹づつ捕殺するか、群れを枝ごと処分します。

発生量が多い場合は、スミチオン、ディプテレックス、エルサンなどの薬剤を散布します。

年に一回、7月頃に成虫が発生し、その次の世代が被害を起こします。







2018/12/10

サザンカ ツバキ科 常緑樹広葉樹 NO.79

サザンカ


◉日本原産の花木でツバキ科の植物。

ツバキの開花期が早春なのに対し、サザンカかは晩秋から冬にかけて咲きます。

ツバキどの違いとして、葉が小さいこと、花弁が、離れていてバラバラに落ちることなどがあります。

品種も多く、花の色は白、紅、桃などがあり、さらに絞りや斑の入ったものがあり、品種は300種ほどある。

〈適性〉
日当たりがよく、寒風の当たらない場所が適しています。

暖地性の気候であらば、多少の悪条件でも生育可能で、半日陰の場所でも育ち、大気汚染にも強い樹です。

しかし、苗木の段階ではまだよわいので、なるべく日当たりのよい場所で育て、冬には霜囲いをしてやる必要もあります。

〈肥料〉
一般の花木と異なり、開花時期は10月から3月ですが、2月に寒肥として堆肥に少量の鶏糞を混ぜたものを埋め込みます。

ただし、施肥量は普通の花木よりも少なめにします。

また、9月には追肥として油かすと化成肥料を混ぜたものを少量与えます。

〈剪定〉
剪定は花後から花芽が分化するまでの4月から6月におこないます。

萌芽力の強い樹なので、刈り込んでも大丈夫です。

徒長枝やふところ枝を切り、日当たりや風通しをよくするようにします。




注意点


冬に肥料を与えた後で枯れる場合

一般の花木は、少し多めに肥料を与えてもそれほど悪影響は出ません。

しかし、サザンカへの施肥量は少し多すぎるだけでも、根を傷める事があります。

春先に枯れた場合は、冬の施肥量が多すぎないかチェックしてください。

肥料はなるべく控えめに与える。

樹の大きさや土質により施肥量は異なりますが、だいたい樹高1メートルで1平方メートル当たり、化成肥料50㌘程度が目安です。


花腐れ病

花腐れ病にかかった花は、見つけ次第除去して焼却処分します。

予防法としは、開花前にTPN剤(ダニコールなど)を散布して殺菌しておきます。


スス病

アブラムシ類やカイガラムシ類などの吸汁性害虫の排泄物を栄養として、繁殖する病気。

一年を通して発生、特に虫の繁殖期の4月から10月によく発生する。

主に葉に発生するが、枝や幹に発生する事もある。

ススを被ったように真っ黒なカビに覆われる。

★スス病には、ダイセン、ダイファー、トップジンMを散布。

スス病の原因となる害虫を退治しないと再発するので、スミチオン、オルトラン、マラソンなどを散布して害虫を退治する事です。

スス病の予防法は、植物に寄生する害虫を発生させないような環境を作る事。
そのために①日当たり、風通しをよくすること。
②冬に落葉した葉を処分すること。

◆石灰硫黄合剤(冬期使用厳守薬剤)を冬の間に1~2回散布すると効果的。


モチ病

モチ病は文字通り、葉が餅を焼いたように厚くなったり内側に葉がねじれる病気です。
4月から5月に発生。
まれに9月から10月の秋にも発生する。

この病気の病原体はカビですが、病原体は葉の細胞の内部で活動するので、薬をいくらまいても効きません。

病葉を見つけたら抜き取って処分します。

毎年発生するようなら、病葉を抜いた後で新芽に銅水和剤(ボルドーなど)を散布しましょう。


害虫

チャドクガ
サザンカの重要害虫です。
葉の裏に毛虫が群れて、葉肉だけを食べるので表からは葉の色が黄色に見えます。

★この虫は毒毛を持ち、触れるだけでなく近寄ってもかぶれるので、ほかのケムシのように捕殺するのは適当ではありません。

駆除はなるべく薬剤で行うようにしましょう。

◆薬剤は、スミチオン、ディプテレックス、DDVPなどが適しています。
葉の色が黄色く変わるので、これを目印に孵化(ふか)後、早いうちに駆除します。

成虫も毒毛を撒き散らします、早期に駆除する事が大切です。

◉大敵であるチャドクガには注意してください。







2018/12/09

博物:植物学者カーネル·フォン·リンネ NO.78

植物学者

カーネル·フォン·リンネ


一つの植物には、様々な呼び名が付けられています。

国が違えば言葉も変わるので世界各国で、それぞれ別々の名称が存在する。

同じ言語を持つ地域でも、場所により独自の名称を付けていることもある。

逆に、別の種類の植物を同じ名前で呼んでいる場合もあります。

このように入り乱れていた植物の名称を、ラテン語で世界共通の学名をつけた人物が、カール·フォン·リンネです。
(Carl von Linne')


        「カーネル·フォン·リンネ」


◆リンネは(1707年5月23日~1778年1月10日)18世紀のスウェーデンの医師でまた植物学者でした。

リンネは、すべての自然物をラテン語による二名法で分類しました。

これが今日、用いられている生物の学名の基礎になっています。

◉二名法

二名法とは、生物の名前を属名と小種名(しょうしゅめい)の2つを連記して示す方法です。

実際には、二名の後に命名者の名前を付けて書きます。

これは省略することもでき、例えば、
ヤブツバキの学名は
(Cameria  Japonica  Thunberug) 
カメリア ジャポニカ ツンベルグと発音。


カメリアが属名、ジャポニカが小種名、ツンベルグは命名者である。

C.P.トゥンベリーと言う、スウェーデンの植物学者の名前をラテン語読みしたものです。

◆リンネのラテン語名は、カルロス·リンナエウス
(Carolus Linnaeus)「分類学の父」同名の息子と区別するために「大リンネ」とも表記されます。

◉和名と学名

学名はラテン語で書き表すので、日本人には扱いにくい。

ほとんどの植物には、学名と対応した標準和名が付けられています。

和名と標準和名は混同しやすい、単に和名と言う場合は、方言名や俗称(世間でのとおり名)も含むので区別が必要です。

◎植物の名前に関わる逸話


昭和天皇に謁見したある学者が、「自分のような名もない路傍の雑草を、、、」と挨拶を始めたところ、博物学者でもあった天皇陛下から「この世に、名もない植物などありませんよ」と言われたそうです。

もし目の前にいるのが名も無い植物であったなら、天皇陛下がすぐに名前を付けてしまったことでしょう。









イチジク クワ科落葉広葉樹 NO.77

イチジク    クワ科


よく知られている果樹ですが、原産地は日本ではありません。

原産地は、小アジアと言われ、日本には江戸時代の始めに入ってきました。

暖地性の果樹で、病害虫が少なく、雌雄同株のため人工受粉の手間がかからないので、手軽に栽培できます。

果実は、酸味がなく、消化もよくて便秘に効くと言われています。




〈適性〉

関東地方より南で栽培できます。

土質は中性から弱アルカリ性を好み、土層が深く、乾燥しない土地が適しています。

〈収穫〉

収穫時期は6月から7月につく夏果と、8月から10月につく秋果の2タイプがあり、樹の種類によって違います。

代表的な種類のマフイドーフィンは夏果と秋果の両方が収穫できます。

〈肥料〉

寒肥として10月に堆肥に鶏糞と牛糞を混ぜ少量の化成肥料を加えたものを浅めに埋め込みます。

追肥は3月にリン酸(過リン酸石灰、熔成リン肥)とカリウム(塩化、硫酸)の多い化成肥料を根の周りにまきます。

〈剪定〉

剪定の適期は3月で、夏果の場合は、前の年に伸びた枝の先にかじったらの芽がついているので、枝先を切らないようにします。

秋果の場合は、その年に伸びる枝に芽がついているので、新梢(しんしょう)を出させるために切り詰めます。

注意する症状

挿し木が育たない。
イチジクは一般的に挿し木で簡単に増やせます。

しかし、イチジクには、忌地(いやじ)現象があり、同じ場所に続けてイチジクを植えると(連作)育ちが悪くなります。

★ウリ科やナス科などの作物に多い現象。

◉対処法として

前に植わっていたイチジクの根を丁寧にすべて取り除いてから植えるようにします。

実が裂ける。
乾燥が続いた後に雨が降ったために、実が裂けたのだと思われる。

乾燥時期には、注意をして水やりをしてあげれば裂果は防げます。

枝が枯れたり、折れたりする。
クワカミキリが原因です。

対処法は、他のカミキリムシ類と同じです。

幼虫が幹に穴を開け侵入し、内部を食い荒らします。

幼虫は別名テッポウムシと呼ばれます。

成虫になると葉や小枝などを食害します。

成虫は見つけたら捕殺。

成虫が産卵するときに幹に傷をつけるので、傷跡を探してその部分を切り出すか、叩いて圧殺します。

食入り口を見つけた場合は、穴にスミチオンなどの薬剤を穴に注入して穴を塞ぎます。

〈防除〉

4月の発生時期に、サッチューコートやすみなどの薬剤を散布すると効果的です。

しかし、大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番です。






2018/12/08

キンカン ミカン科常緑広葉樹 NO.76

キンカン  ミカン科


キンカンは、他の柑橘類のように実を食べる事ができず、逆に皮が甘くて食べれるかわった果樹てす。

そのまま食べても美味しく味わえますが、砂糖漬けや砂糖煮にする事が多く、風邪薬にもなります。

常緑樹で、樹高が1.5メートルほどなので、庭木としても楽しめます。




〈適性〉

一般の柑橘類と同じく暖地性で、関東地方より南で栽培可能です。

植え付け場所は、日当たりがよく冬に寒風が当たらない場所が適します。

土壌は排水がよく、土層の深い所が適しています。

〈収穫〉 

7月後半に開花しますが、人工受粉の必要はありません。

実が多くついたときは9月頃に、大きな実を残して摘果します。

収穫は12月から1月に行います。

11月の末頃から実の黄色が濃くなり、甘味が増して収穫できるようになります。

〈肥料〉

収穫後の3月頃に、堆肥に油かす、鶏糞、骨粉と化成肥料を加えたものを与えます。

追肥として9月下旬に、油かす、鶏糞、骨粉と少量の化成肥料を加えたものを与えます。

〈剪定〉

剪定は3月頃に行います。

混んだ枝を整理して、内部に日がよく差すようにしてください。

◆病害虫は果樹としては、比較的少ないほうです。

特に、ソウカ病やカイヨウ病には強くほとんど発生しません。

①アゲハチョウ:幼虫が葉を食害します。見つけたら捕殺

②アブラムシ:樹液を吸汁し、植物を衰えさせる。

反射光線を嫌うので、銀色のポリエチレン製のフィルムを敷くとあまり寄ってきません。

③ハダニ:ミカンハダニが発生します。

乾燥した天候が続くとよく発生します。

殺ダニ剤(専用殺虫剤)で駆除してください。

◉ツノロウムシ

キンカンの大敵です。

被害が大きいと樹勢が衰える事もあるので、見つけ次第駆除します。

幼虫の時期なら殻がまだ出来上がっていないので、スミチオンなどを散布します。

成虫になると、薬剤は浸透しにくく効果があまりないので、捕殺します。

薬剤は、DEP剤のディプテレックスやイソキサチオン剤のカルホスが有効です。

◎キンカンの品種

①ニンポウキンカン=球形で甘味の強い品種
②ナガキンカン=長楕円形で少し甘味が劣ります。
③マメキンカン=主に観賞用として、盆栽に用いられます。

その他、マルキンカン、フクジュウキンカンなどの品種があります。