緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2018/12/14

#バラの原種のお話(5) NO.86

◉現代バラの主要系統に関わった野性種④

★ロサ.ムルティフロラ(R.multiflora)  和名:ノイバラ

北海道から九州までと朝鮮、中国北部に分布します。

平地や山地に普通に見られるややツル性となる種です。

                      (ロサ.ムルティフロラ)


◉円錐状の花序(円錐花序=えんすいかじょ=花序は花が茎に集合してついている状態のことで、花の付き方と花が付いている枝を合わせて花序という。

円錐花序は枝が何度も分かれて全体が円錐形に見える花序のこと)
に、多数の花をつけ、この房咲き性が栽培バラの房咲き性の基になっています。

◆托葉(たくよう=バラでは葉柄の付け根につく小葉片)が羽状に細く裂け(羽状裂=うじょうれつ)くしの歯状になるのが特徴です。

日本に自生するバラであることから、バラの繁殖台木(接ぎ木で、元になる木)として利用されています。

★変種にツクシイバラ(R.multiflora var.adenochaeta)があり、中国地方西部から九州に分布しています。

この変種は花色が淡桃色から、濃桃色で葉に光沢があり、花序や花柄(かへい)に腺毛(せんもう=先に球状の膨らみがあり、そこから粘液を分泌する毛)が多いのが特徴です。






#バラの原種のお話(4) NO.85

◉現代バラの主要系統に関わった野性種③

★ロサ.ギガンティア(R.gigantea)
中国南西部雲南省から、ミャンマーにかけて分布する種です。


                  (ロサ.ギガンティア)


◆ツル性で光沢のある葉を持ち花は単生(枝の先に一つだけ花が咲くこと)で、大きな白からクリーム色の花をつけ、たいへんよい香りがします。

中国では「大花香水月季」(R.osa odorata var.gigantea)別称=巨花薔薇と呼ばれています。

ティーローズの香りは本種に由来します。

ロサ.キネンシス.スポンタネアとともに、中国の栽培バラの基になった野性種です。

ロサ.ギガンティアも開花が早く、5月上旬には咲き始めます。















#バラの原種のお話(3) NO.84

◉現代バラの主要系統に関わってきた野性種②

★ロサ.キネンシス.スポンタネア(R.chinensis var.spontanea)


        (ロサ.キネンシス.スポンタネア)

◉栽培型のロサ.キネンシス(R.chinensis)の野性種で、中国西南部、四川省を中心に分布する種です。

ロサ.キネンシスを含む、中国の栽培バラは現代バラに四季咲き性と木立ち性を伝えましたが、本野性種は一季咲きでツル性となり、花は各節の小枝の先端につきます。

人が栽培を続ける過程で、シュート(新芽から伸びる若枝のこと)が長く伸びずに、背の低いブッシュ(木立ち)状となる個体が現れ、それとともにシュートの先端には、常に花をつける「四季咲き」の特性を獲得したと思われます。

花色は淡紅色から濃紅色までの変異があり、色変わりするものもあります。

開花は早く、4月の終わり頃から咲き始めます。







2018/12/13

#バラの原種のお話(2) NO.83

①現代バラの主要系統に関わってきた野性種

◉ロサ.ガリカ(R.gallica)

ヨーロッパで紀元前から栽培されている最も基本となる野性種。

ヨーロッパ中西部から西アジア開発銀行にかけて分布している。

ロサ.ダマスセナの品種の親としての存在です。


                     「ロサ·ガリカ」

◉この種を基に数多くの品種がヨーロッパで育成されました。

いわゆるオールドローズの1品種(ガリカ系統)です。

種名のガリカはフランス地域の古い呼び名で「ガリア」から由来している。

その事から本種は、フレンチローズと呼ばれます。

◆変種のオフィシナリス(R.gallica .var .officinalis)は「薬剤師のバラ」
(Apothecary's Rose)と呼ばれ、13世紀から18世紀にパリの南郊外プロヴァンで香料用に生産されていた。

★本種には、白の絞り斑(しぼりふ)の入る品種でバーシカラー(R.gallica   f.versicolor)もある。


          (ロサ.ガリカ.バーシカラー)






2018/12/12

#バラの原種のお話(1) NO.82

(1)バラの原種は北半球に自生する。

バラ属(Rosa)の野性種は南はエチオピア、北はシベリア、アラスカまで北半球の亜熱帯から寒帯にかけて広く分布しています。

もし、南半球で野性のバラを見つけたとしたら、それは誰かが持ち込んだものです。

★エチオピアの野性種は、ロサ·アビシニカ(R.abyssinica)の一種で標高2.000m以上の高地に自生しています。

乾燥地では、北米バハカリフォルニア(メキシコ領域)にロサ.ミニュティフォリア(R.minutifolia)が自生し、北米アリゾナ、テキサスにはロサ.ステラータ(R.stellata)が自生します。

         (ロサ.ステラータ.ミリフィカ)


アジア大陸の乾燥地帯には、ロサ.ペルシカ(R.persica)のような変わった野性のバラも自生しています。

                         (ロサ.ペルシカ)


◉オオタカネイバラの仲間(R.acicularis)は最も高緯度(北緯70度付近)にまで分布を広げています。

   (オオタカネイバラの仲間、ロシア産)

北から南まで、そして乾燥地から湿潤な場所まで幅広い地域にバラは自生しています。

野性種の数は、分類学者によっても異なってしまうが、約150~200種ぐらいだろうと思われています。

この種の中から、現在の主要となる栽培のバラの系統に、関わってきた野性種は7~8種類と言われています。






コケ(苔)の話  NO.81

苔のはなし


◉苔には
①セン類(スギゴケなど)
②タイ類(ゼニゴケなど)
③ツノゴケ類と言う3つのグループに分けられ、園芸に多く利用されるのはセン類です。

★セン類はは、体の小さいコケの中でも大きく見栄えがよく、比較的乾燥に強いことから園芸に利用されています。

    ◎ホソバオキナゴケ(シラガゴケ科)

透明な細胞があるため全体が白っぽく見え「白髪、爺」の名がある。

透明細胞は吸水、保水作用があり園芸材料として「ヤマゴケ」の名で売られている、苔庭に使われ、盆景や苔玉にも利用できる。


コケは色々な性質があるため、普通の園芸植物とは異なった育て方が必要です。

①コケは体には根がなく水分や養分は体の表面から吸収します。

②仮根があるが体をものに付着させる役目をするだけである。

③体の作りは簡単で、水分や養分を運ぶ構造や水分の蒸発を防ぐ「クチクラ」はない。

クチクラ=植物の表皮にあるロウまたは脂肪酸(脂肪を酸または、アルカリで分解して得たものの主要な1つ)の分泌物。

水分の蒸散や外部からの侵入物質を防ぐ働きがある。

④葉は乾くと、縮んで巻いたり茎に接するように折り畳んだりする。

⑤コケは普通、たくさんの個体が集まって生えており、それが水分を保持する役目をしている。




◉園芸で利用するものは、土の上に生えているものが多く、体のつくりを見るとギンゴケやオオスギゴケなど地面から直立するものと、ハイゴケのように地面を這うものに分けられます。

谷沿いに多くのコケが見られるのは、適度の日当たりと湿度が高いことによります。

コケの体のまわりの空気中の水分を上手に管理することが、コケを育てる上でもっとも大事な要素だと言えるでしょう。




◉コケは根がないので、赤玉土や鹿沼土など、保水性と通気性のよい用土を使い、コケの体のまわりの湿度を高くする必要があります。

肥料は施しません。

ただ、用土の表面に置いただけでは不安定になるので、体の小さなものは黒土、大きなものは富士砂などで一部を覆いコケの体を固定します。

特にハイゴケのように這うものは、竹串やワイヤーなどで固定します。

苔玉に使う場合は、はがれないように糸を巻いて固定します。

★コケは種ではなく胞子でふえますが、胞子はいつもあるとは限りません。

胞子から育てることも難しいので主に株分けでふやします。

株分けでふやす場合は、細かく分け過ぎたり、植え込みの間隔が広すぎると成長が悪くなりますので注意が必要です。

また、違った個体のコケを混合すると効果的な成長があると言われています。

コケはお互い寄り添って水分を失いにくくしていますので、バラバラにしないで植え込みます。



◆参考ブログ
※苔玉盆栽 No.52
※コケの胞子 No.90
※小さな盆栽、苔玉を暮らしの中に No.97
※苔玉、鉢植えのコケ管理 No.165
※花のない植物コケ胞子隠花植物 No.187