緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/09/28

アメリカデイゴ No,289

 アメリカデイゴ マメ科

「亜米利加悌梧」落葉中高木

原産地は、南アメリカでアルゼンチンとウルグアイ両国の、国花として知られています。

夏に丸みのある蝶形の★鮮紅色(せんこうしょく)の花を咲かせます。

★鮮紅色は猩々緋色=(しょうじょうひいろ)と言われ、やや黒みを帯びた鮮やかな色です。

室町時代後期(西暦1336年~1573年)以降に流行した、ポルトガル、スペインとの南蛮貿易の舶来品で知られる色で、特に戦国時代に武士は貿易で入手した猩々緋色の羅紗、(らしゃ、セルビアの首都ラサ産でこの名称)の生地で、陣羽織などを仕立て珍重された色である。

また、猩々緋色は★臙脂色(えんじいろ)と区別するために付けられた色名で、赤みの強い赤紫色である。

◆えんじ色=黒みを帯びた、深く艶やかな、濃い紅色のこと。

アメリカデイゴの花期は長く、6月頃から咲き始め、断続的に9月中旬頃まで咲き続けます。

葉柄や葉裏にトゲがあるのが特徴です。

花後はマメ科特有の偏平楕円形の種子が入った、15㎝程の長さのサヤを付ける。

日本には、江戸時代末期(1853年~1869年)に和歌山県の白浜周辺に伝えられたのが、最初と言われています。

南国の風情がある大型の花は、比較的に耐寒性もある事から、日本の四季でもよく育ち特に、暖地の庭の鑑賞木として親しまれてきました。

遥か遠い海を渡ってきた赤い花で、マメの様なサヤが成ることから、海紅豆(かいこうず)の別名があります。

鹿児島県では特に人気の高い樹種で、県の木として指定されています。

沖縄県の県花としても有名なデイゴは、同じデイゴ属ですが、台湾、沖縄、インドを原産とする近縁種で蝶形の花が、アメリカデイゴと比べると細く、若干異なった印象を受けます。


「放浪記」のベストセラー作家で知られる、林芙美子さんがアジサイの花と共に、愛した花としても知られる。

メキシコでは、生け垣に用いるほか、花はサラダや煮物などの食用にも用いられます。

潮害、公害にも強い事から、沿岸の防潮樹や街路樹などに利用されています。


        (アメリカデイゴ)

◆園芸品種
小葉の丸いマルバデイゴ

アメリカデイゴと近縁種のエリツリナ、ヘルバケアの交雑種で、花の色が濃く小葉が菱形の、サンゴシトウ(ヒシバデイゴ)などが多く栽培されています。

◉生育管理、環境
暖地性ですが、耐寒性は意外に強く、降雪が年2~3回程度の地方であれば、露地栽培が可能です。

栽培可能地としては、関東地方南部以西が目安です。

日当たり、水はけのよいやや乾いた場所が適しています。

土質は特に選びませんが、砂質土を好みます。

◉植え付け、植え替え、移植
生長が早く移植も容易ですが、植え付け、植え替えは十分暖かくなった4月中旬に行うようにします。

浅根性なので高植えにすることが重要です。

大きくなりやすいので、出来るだけ広い場所に植えましょう。

★肥料
生長が早いので十分に肥料を与えます。

チッソ分は控え、3月と9月頃の2回に、油粕、骨粉などの有機肥料を、株の大きさに応じて根元にすき込みます。
(目安として2~3握り)

※大変丈夫な樹種で、病害虫の心配はほとんどないでしょう。

◉せん定
東京以北の関東周辺や内陸部では、本年枝は冬の寒さで枯れてしまいます。

11月中旬~下旬に付け根で切り取り、幹や太枝をワラやコモで巻いて防寒します。

花は今年伸びた枝の先端に付きます。

花は終わったものから、花の少し下で切り戻すと、晩夏にもう一度花を咲かせます。

また、庭が狭い場合は、春に2㍍程の高さで樹芯を止め、将来枝にする部分を付け根から30㎝前後で切り戻し、不要な枝は付け根から切り取って整姿します。

◆殖やし方
★とり木は新梢の組織が固まる6月に行います。

親指程の太さの枝を選び、3㎝幅くらいに環状剥皮します。

水ゴケで包み、ビニール袋で乾燥を防いで、管理すると秋までに発根します。

▲挿し木は冬または春にせん定した枝を使います。

40~50㎝に切った枝を、通常の庭土に半分程植えると夏には発根します。

◉根伏せは3月から4月に行います。
根元付近の根を掘り、3~4㎝の太さの部分の根を30~40㎝の長さに切り取り、幹側に近い方を上向きにして斜めにした状態で、土中に植えます。

夏には発芽、発根するので、凍結に注意してそのまま越冬させ、暖かくなった3月に掘り上げて定植します。

およそ3~4年で開花します。






2020/09/27

コムラサキ 、ムラサキシキブ No,288

 コムラサキ クマツヅラ科 落葉低木

原産地=日本、朝鮮半島、中国 別名ムラサキシキブ

地際から細い枝を出し、6月から7月に淡紫色の筒型の小花をたくさん咲かせます。

9月になると直径3㍉程の果実が紫色に熟し、株全体を覆いつくします。

花は根元に近い部分から先端に向かって、順次開花し同じように根元から実をつけていきます。




コムラサキ(コムラサキシキブ)は、樹高が小ぶりですが、実つきがよく鑑賞木として最も多く用いられている。

園芸店で「ムラサキシキブ」として売られているものの、ほとんどがコムラサキです。

実際のムラサキシキブは、各地の山野に自生し、樹高3㍍と大きく、花、実ともコムラサキとそっくりですが、実つきがまばらで鑑賞木としてはやや見劣りするようです。

名前の由来としては、古代高貴な色とされた紫色の実の清楚な美しさを、理想的な平安美女の代表格である、紫式部になぞらえたと言われていますが、紫の実が折り重なってびっしりつくことから「紫重実=むらさきしきみ」と呼ばれていたものが、転訛したと言う説もあります。

果実は、★才媛と呼ばれ結婚記念樹として植えられることも多いようです。

★才媛=さいえん(高い教養や才能が優れた女性、才女のこと)

因みに男性は?と言う事だが、古来からの学芸と武芸、文武両道の表し方が、当てはまると考えられるが、女性用、男性用に分かれた言葉を使う事に、違和感を感じる人もいるような現代社会では、文美両道と言う四字熟語が、メディア等でも使われていることは、時代の流れ、空気を表しているように思えます。

◆品種として

果実が白いシロシキブ(白式部)

果実が小さく実つきがよいコムラサキシキブ

葉が小さいコバノムラサキシキブ

葉に軟毛のあるヤブムラサキシキブなど品種も多い


        (シロシキブ)

◉生育環境

樹勢が強く日なたでも、半日陰でもよく育ちます。

北海道南部から九州まで、幅広い地域で栽培できますが、腐植質に富んだやや湿潤地が適しています。

夏場の乾燥や冬の乾いた風を嫌います。

◉植え付け

若木、老木を問わずよく根付くので移植も容易です。

移植時期は3月下旬と11月から12月

植え付け時期は、2月から3月の落葉期が理想ですが、梅雨時や9月でも可能です。

日陰にも強いので、他の樹種と一緒に混植して、下木として利用することもできます。

しかし、果実の鑑賞を楽しむためには、単独で植えた方がよいでしょう。

◆肥料

通常、肥料は植え付け時の元肥で十分ですが、2月に寒肥として鶏ふんなどを与えてもよいでしょう。

また、実つきが悪い場合は、リン酸系の肥料を追肥として8月頃に与えます。

★病害虫

まれに小さな甲虫が発生することがあります。

見つけ次第、スミチオン乳剤などを散布して駆除します。

熟した果実は小鳥が好んで食べるので、実熟期にネットを掛けたり、鉢物は室内に取り込むなどの工夫が必要になります。

◉せん定は7月、11月~3月

放任しても樹形はよく整いますが、茂りすぎる傾向があるので、状態により枝抜きして整理します。

葉が動き出す前に、なるべく不要枝だけを付け根から切り取り、自然樹形を保つようにし、古枝は切り戻して更新します。

初夏(7月)には込み枝を間引き、地際から発生したひこばえや、徒長枝を早めに切り取ります。

花芽は前年枝のせ先端につくので、秋以降は先端を強く切り詰めないように注意します。

強過ぎるせん定も枝が徒長気味になり、実つきが悪くなります。

◆殖やし方


実生は果実が完熟する10月~11月に採種し、果肉をよく洗って種子を取り出し、そのまま採り蒔きする。

初根した苗は2年目の春に鉢上げして管理する。

種蒔きから2~3年で開花、結実します。

挿し木は3月の春ざしと6月の梅雨ざしがあります。

充実した前年枝を10~15㎝に切ってさし穂とし、赤玉土小粒や鹿沼土のさし床に挿します。

発根後2~3ヶ月で鉢上げして植え付け、管理します。







2020/09/26

ハナショウブ (アイリス) No,287

 ハナショウブ アヤメ科 宿根草(常緑)

別名=アイリス 「花菖蒲」

アヤメの仲間は非常に種類が多く、世界各地で200種以上の自生種が確認されており、欧米的では、「アイリス(アヤメ科の学名)」と呼ばれている。

原産地は日本、朝鮮半島、東シベリア、中国東北部一帯で、ハナショウブと呼ばれているのは、日本に自生する「ノハナショウブ」の改良品種です。




そのため欧米では「ジャパニーズ·アイリス」ので名で親しまれています。

5月下旬から7月上旬にかけて紫、白、絞りなど、様々な色合いの直径10~20㎝に達する大輪の花を咲かせます。

梅雨期の代表的な草花として、万葉時代(歌が詠まれたのは西暦629年~759年)から親しまれてきました。

花、葉ともに同属の「アヤメ」や「カキツバタ」とよく似ていますが生育環境がそれぞれ違います。

※アヤメは乾燥にも強く陸生植物。

※カキツバタは水の中で育つ水性植物。

※ハナショウブは水辺の湿地帯に育つ陸生植物である点が異なります。

しかし、平安時代から鎌倉時代頃までは、ハナショウブをアヤメと呼んでいたために、かなり混同されているようです。

現在も各地でよく開かれる「あやめ祭り」のあやめが実際には、ハナショウブであることが多いのもその名残りと言えるでしょう。

あやめ園などでハナショウブが、水中に咲いている風景をよく見かけますが、これは開花中だけの演出です。

ハナショウブには葉の中央に隆起した、葉脈が1本通っていてこれも、アヤメやカキツバタと見分ける大きなポイントになります。


(菖蒲湯に利用されるサトイモ科のショウブ)


単にショウブと言った場合は、ハナショウブを指す事が多いようですが、ショウブは本来端午の節句の「菖蒲湯」にその葉を使う「サトイモ科」の植物の事で、ハナショウブは葉の形がショウブによく似ている事から、名付けられた呼び名です。

園芸種が多いアヤメ属の中でも、ハナショウブの品種は最も多く、江戸時代から盛んに品種改良が行われ、現在では約2000種と言われています。

★品種系別
※爽やかで華麗な江戸系

※気品ある伊勢系

※豪華絢爛、壮麗な大輪の花を咲かせる肥後系

※アメリカで改良されたアメリカ系に大別されます。

近縁種として、明治初期に渡来した、花の黄色いヨーロッパ原産の「キショウブ」があります。

葉の中央の隆起した葉脈など、ハナショウブとの共通点も多く、交配種も多数作られています。


         (ハナショウブ)


◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい湿潤地を好みます。

日陰では花が咲きません。

花壇や鉢植えで楽しむことが多いようですが、休眠期の冬以外は水やりをこまめに行い、乾燥を防げば庭植えも可能です。

◉植え付け新芽を数個残して、葉を半分に切り詰め、浅く植えてたっぷり水を与えます。

土は苦土石灰で中和しておきます。
元肥に暖効性肥料を与え、根茎の上部が出る程浅く植えます。

花の終わった直後の6月下旬から7月上旬が適期です。

葉が生長した状態を想定し、列植、群植にする場合は、株と株の間隔を30㎝以上開けるようにします。

茎丈が高くなるので鉢植えの場合は、最低でも6号鉢以上の大きさが必要です。

夏期は充分な水やりが必要なので、底面給水鉢を用いると便利です。

耐寒性は強い植物ですが、土中水分が凍ると根を傷めやすいので、冬期は鉢を花壇に植えるか、寒冷紗で覆うなどの対策が必要になります。

◆肥料
寒肥として完熟堆肥を与え、春と秋に油粕などを少量与えます。

肥料を与え過ぎると株が腐りやすくなるので、控えめに与えましょう。

チッソ分の多い肥料は、軟腐病になりやすいので避けます。

◉病害虫
まれにズイムシ(アヤメキバガ)が発生し、花芽を食害することがあります。

見つけ次第捕殺するか、大量発生した場合は、オルトラン水和剤などを散布します。

★軟腐病=なんぷびょう
病原体のバクテリアが導管部で繁殖し、養水分が地上部に行き渡らなくなり、青枯れ状態になります。

地際部から根にかけて、やわらかく溶けるように腐敗し、悪臭を放つようになります。

高温多湿を好むので、5月から9月に発生します。

チッソ肥料のやり過ぎも多発の原因になります。

バクテリアの病気は薬剤による治療は困難です。

病気にかかった株は見つけ次第、引き抜いて処分しましょう。

バクテリアは傷口から侵入するので、根を傷つけないように注意しましょう。

5月頃から月に1~2回ストレプトマイシンや、銅水和剤(ボルドーなど)を散布すると、多少の予防になります。

この病気はキク、ユリ、ダリア、チューリップ、タマネギ等にも発生します。

◉せん定
一番花、二番花と次々に花が咲くので、終わった花びらは速やかに摘み取ります。

一般的に花期は、5月中旬頃から7月までですが、品種により異なります。

つぼみの先端を突くと開花しないので、作業は慎重に行いましょう。

花が終わったら茎ごと切り取り、3~4年に1回は6月頃に植え替えます。

この時に株分けで殖やせます。

★殖やし方
植え付けて3~4年が最盛期でその後は衰えます。

鉢植えは1~2年、庭植えは3年に1度を目安に株分けします。


古株を掘り起こし、葉を3分の1程度切り詰め、子株を傷めないように切り分け、植え付けます。







2020/09/25

ユズリハ No,286

 ユズリハ ユズリハ科 (譲り葉)

別名=ユズルハ、ユズル 助力広葉中高木

原産地は日本、朝鮮、中国一帯で日本では福島県以西の山地に多く自生しています。

以前はトウダイグサ科に分類されていましたが、DNAを用いた研究により、ユズリハ科とする説が有力です。

ユズリハ科に分類されている植物は、1属10種程ですべて東アジア一帯に分布しています。

新葉が生長すると、入れ換わるようにふるい分け葉が一斉に落葉します。

その様子を子供が立派に、成長するのを見届けてから親が家督を、譲る事になぞらえて「譲り葉」と名付けられました。

世代交代と一家繁栄を象徴する縁起木として、記念樹や正月飾りに古くから珍重されてきました。

また、神仏への供え物を乗せるのに、その葉を用いたとする古文があり、神社などによく植えられていました。

清少納言の「枕草子」にも、ユズリハを使って正月を祝う様子が記載されている。

万葉時代にはユズリハ「弓弦葉」と呼ばれていました。

新葉が成長してから古葉が落ちる現象自体は、常緑樹に一般的に見られるもので、さほど珍しい訳ではありませんが、ユズリハは急激に新旧交代が行われます。

大きな葉で、特によく目立ったことが命名に影響しているようです。

樹高は5~10㍍に達します。

雌雄異株で5月から6月にかけて、前年枝の葉腋に穂状の総状花序をつけます。

樹皮、葉にはアルカロイド系の物質が含まれていて「有毒」です。

古くは薬用に用いたり、家畜につく害虫の駆除に使われていました。


         (ユズリハ)

◉品種
園芸種として、葉に白や淡黄色の斑が入る「フイリユズリハ」葉柄が緑色の「アオジュクユズリハ」などがある。

類似種として、内陸部に多い自生するユズリハと異なり、海岸沿いに自生し、葉が一回り小さい「ヒメユズリハ」耐寒性が強く本州中部から北海道の、日本海側の山地に多く自生する、矮性の「エゾユズリハ」がある。

★生育環境
やや粘土質の湿潤地を好みます。

日陰にも強い樹種ですが、ある程度の日照があった方が枝が、密に茂り樹形が美しくなります。

◉植え付け
植え付けは冬の寒風の当たらない場所を選び、植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込み土中湿度を十分に保つように管理します。

日陰に強いので建物の北側の植栽や目隠しとしても活用できます。

移植は比較的容易ですが、大木は前年から根回しし、細根を十分発根させてから行います。

乾燥を嫌うので、移植時では幹巻きして、蒸散を防ぐことも大切です。

◆肥料
寒肥として鶏ふん、腐葉土、完熟堆肥などの有機肥料を株回りに溝を掘って施肥します。

化成肥料や油粕など、チッソ分の多い肥料は枝分かれが粗くなり、樹形を乱す原因になるので控えるようにします。

◆病害虫
枝葉が密生し過ぎると、アブラムシやカイガラムシ発生する事があります。

定期的にせん定し、樹冠内の枝葉が蒸れないように注意し、必要に応じて薬剤を散布して防除します。

◉せん定
樹形を乱す徒長枝や立ち枝が目立ってきたら、思いきって2分の1から3分の1の長さに切り戻し、細かい枝が多数出るように促し、樹形を更新します。

葉が大きく枝が粗いので、細い込み枝は枯れ込みます。

弱い枝や込み過ぎた枝を間引き日照、通風を保つようにしましょう。

★殖やし方
秋に種子を採り乾燥しない様に貯蔵し、翌春に蒔きます。

土中湿度を保ちながら管理します。

発芽までには1年程かかり、3年目の春に定植します。






2020/09/24

リヨウブ No,285

リヨウブ「令法」落葉中高木 

リヨウブ科別名=ハタツモリ、サルダメシ

北海道南部から九州にかけて、山麓や低山地に幅広く自生する日本原産の樹木で、その他朝鮮半島にも分布が見られる。

「リヨウブ」の仲間は世界で数十種が確認されていますが、日本に自生しているのはリヨウブ1種だけです。

樹皮に特徴があり、赤褐色または灰褐色の樹皮が剥がれ落ち、まだら模様になる様子には深い味わいがあります。

すべすべした幹肌は中国から伝来した、「サルスベリ」によく似ていますが、実際にリヨウブをサルスベリと呼ぶ地方もあるようです。

また「サルダメシ」と言う別名もあります。

7月から9月にかけて枝先に、白い小花を密につけた円錐花序を形成します。

ひとつの花は5ミリ程の小さなものですが、蜜腺が発達していて、蜜を求めて多くの昆虫が集まります。

花は5弁で花びらより雄しべの方が長く伸びる。

葉は枝先近くに多く集まり互生し、先端が尖り鋸歯があります。

花もそれなりに楽しむことも出来ますが、リヨウブの魅力は何と言っても、樹皮の趣と一斉に出る、新芽の芽吹きの美しさにあります。

庭木だけでなく茶花や生花の材料としても幅広く利用されています。

大量に芽吹く若芽や若葉は柔らかく、古くは食用に共されました。

塩ゆでにした若芽を刻んで米に混ぜた「リヨウブ飯」や、天ぷらが今日でも郷土料理として残っている地方があります。

一説によると令法(りょうぶ)と言う表記は、飢饉(ききん)の時に山村の非常食として、リヨウブの葉の採取、貯蔵を命じる官令がよく発せられた事に、由来すると言われています。

リヨウブは伐採に強い、再生能力の高い樹木として知られています。

リヨウブの根は浅く広がり、地中深く伸びる直根がほとんどありません。

そのため、野生のものは強風を避けるように松やコナラなどの大木の下に、二次的発生し群生します。

浅い根は太い幹を支えるためには不利ですが、地表近くに豊富にある栄養分を吸収するには有利です。

倒れやすい反面、栄養を十分取れるので大変丈夫で幹元付近に常に、休眠状態の不定芽を多数準備しています。

そして幹が倒れたり傾くとすぐに活性化し、新しい幹として伸長すると言う面白い性質を持っています。

◆品種
園芸種として、樹高2㍍前後で花が咲く「一才リヨウブ」

日本のリヨウブより低木で小庭に向く「アメリカリヨウブ」があります。

◆生育環境
日当たり、水はけともによい腐植質に富んだ肥沃な土地を好みますが、痩せ地や乾燥地、酸性土壌にもよく耐えます。

◉植え付け
植え穴に完熟堆肥、腐葉土を十分すき込み高植えにします。

強風に当たると倒れやすいので、樹高の高い木の下など、風避けが出来る場所に植えるようにします。

植え付け後は必要に応じて支柱などで支えます。

耐寒性は強く、北海道南部まで庭植えが可能です。

◉肥料
生長力が強くよほどの痩せ地でない限り、肥料は余り必要としません。

与える場合は、鶏ふんなどの有機肥料を冬期に寒肥として、株元にすき込みます。

★病害虫
まれに「うどん粉病」が発生する場合があります。

白いカビが若い葉や若い茎、新芽などの表面にうどん粉をまぶした様に、びっしりと生える病気の総称です。

病気が進行すると、葉が変形して形状が小さくなります。

発生する時期は植物によって異なりますが、高温(20度前後)多湿を好み、4月から10月に発生します。

病気を見つけ次第、10日ごとにモレスタン、トップジンM、ベンレート、水和硫黄剤などを散布します。

チッソ肥料を与え過ぎると発生しやすくなります。

チッソ肥料を減らし、カリ肥料を多めに与えましょう。

樹木の場合は、枝で越冬している菌糸を殺すために、1月から2月に冬期限定使用薬剤の、石灰硫黄合剤を1~2回散布するのも効果的です。

この病気は数多くの植物に発生します。

◆せん定
自然樹形で楽しむのが一般的です。

倒れやすいので樹冠が重くならないように、徒長枝や枯れ枝、込み枝は付け根から切り取り整理します。

通常のせん定は、落葉期の冬に行います。

ひこばえが盛んに出る性質があるので、見つけ次第早めに切り取るようにします。

◆殖やし方
実生は10月から11月に種子を採り、冷暗所で貯蔵し、翌春の3月から4月に蒔きます。

挿し木は、6月中旬から7月上旬に今年伸びた枝を15㎝程切り、さし穂とします。

一時間ほど水揚げしてから赤玉土、鹿沼土などの用土に挿します。


(リヨウブ)





ネズミモチ No,284

ネズミモチ 「鼠黐」モクセイ科

別名=タマツバキ、テラツバキ常緑広葉樹

原産地=日本(九州、四国、関東以西、沖縄)
中国、朝鮮半島一帯

ヨーロッパにも同種の自生種が見られる。

樹高は5~7㍍程で6月頃、枝先に円錐花序を形成し、長さ5ミリ前後の筒状の白色小花を多数咲かせる。

萌芽力が強く、よく枝分かれすることから、主に暖地の生け垣、公園樹などに幅広く利用されている。

卵形の葉はなめらかで、短い葉柄があり対生する。

花、葉ともほのかな香りを放ちます。

10月から12月にかけて、長さ1㎝前後の楕円形の果実が紫黒色に熟し、果実の表面は白い粉をまぶした様になっている。

この果実が地表に落下した様子が、ネズミの糞に似ていること、葉がモチノキの葉に似ている事から「ネズミモチ」と名付けられました。

10世紀中期頃の「★和名抄」と言う書物にネズミモチが薬用樹として利用されていたとする記述があり、古くから薬用として用いられていた事が分かります。

★和名抄とは和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)の略称。

平安時代中期(承平年間=しょうへいねんかん、931年~938年)に作られた、意義分類体の辞書の事。

約2600の漢語を分類し、その文例、語訳を漢籍から引用して、割注で字音と和訓を示す。

漢籍=かんせき(中国の漢文書物)

割注=わりちゅう(文章の途中に小さな文字で入れる注釈、二行にする事が多い)

字音=じおん(特に日本に伝わって国語化した漢字の発音)

和訓(倭訓)=わくん(漢字に固有の日本語を当てて読む事、その読み方)

果実、樹皮、葉などを乾燥したものを「女貞=じょてい、にょてい」と呼び、滋養強壮、便秘、生理不順、健胃整腸、網膜炎など幅広い薬効があり、東洋医学では貴重な生薬とされています。

木材は道具の柄や杖、楊子(つまようじ)などに用いられ、実用的価値も高い樹種です。


         (ネズミモチ)

◉品種

ネズミモチの変種でフクロモチ

樹高が10㍍以上になり葉、花、果実ともにネズミモチより一回り大きい、中国原産の類似種★トウネズミモチ(女貞の元祖の樹)

園芸変種として、フクリンネズミモチ、キマダラネズミモチ、キモンネズミモチなどがある。

★トウネズミモチは一見するとネズミモチによく似ていますが、葉が大きく先端が尖っていること、陽に当たると葉脈が透けて見えることや、花期が遅い(7月)事などから見分けることが出来ます。

◉生育環境

日光を好みますが日陰でもよく耐えます。

樹勢が大変強く、土質は特に選びませんがやや湿潤地がより適しています。

◆植え付け、移植

厳寒期を除きいつでも可能ですが、暖かくなる3月から4月と、酷暑が過ぎた9月から10月頃が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んで高植えにし、十分水を与えます。

移植にも強いですが、大木は半年程前に根回しを行い細根を株回り出してから、枝葉を出来るだけ切り詰めて蒸散を防ぐ対策を取り、移植することが大切です。

◉肥料

葉の色が悪い場合は、春先にチッソ系の肥料を株元に蒔きます。

また、寒肥として堆肥、油粕を与える。

◆病害虫

新梢や若葉に「うどん粉病」が発生する事があります。

病変部を切り取り処分しますが、症状が酷い場合は、カラセン水和剤などを散布します。

カイガラムシの発生には、1月から2月にマシン油乳剤を2~3回散布し防除する。

◉せん定、整姿

せん定期間は4月から11月
萌芽力旺盛で強せん定にも耐えるため、様々な樹形に仕立てる事が出来る樹種です。

かなり大胆に切り詰めても2~3年で元に戻るので、成木になってからの仕立て直しも可能です。

樹形が乱れやすいので、こまめに整姿、せん定をして樹形を保つようにします。

徒長枝やひこばえ(やご)が盛んにでるので、早めに切り詰めます。

枝が密生すると細枝が枯れ込むので、随時枝抜きを行い、樹冠内の通気を保つことも大切です。

生け垣の場合では、樹形を保つためには最低でも年2回の刈り込みが必要です。

★殖やし方

実生は晩秋から冬にかけてよく熟した種子を採ります。

暖地ではそのまま採り蒔きにできますが、寒地では冷暗所で貯蔵し、翌春に蒔きます。

種子の表面を少し傷つけると発芽率が高くなります。




1年程で40㎝前後になるので、よい苗を選んで4月から5月に定植します。

挿し木は、充実した本年枝を15㎝程に切って指し穂とし、赤玉土、鹿沼土などの単用土に挿します。

挿し木の適期は6月から7月です。