緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/10/06

キイチゴ No,561

 キイチゴ バラ科

木苺
主に低木で茎は直立するもの、這うものなど多様で普通トゲがある。

地上部は普通2年で枯れ、1年目の茎には葉だけがつく。

2年目に横に枝を出して開花結実し、そのあと枯死するものが多い。

果実は、果床(花床)の上に小さな核果が多数集まった集合果で「キイチゴ状果」と呼ばれる。


北半球の温帯を中心に数百種が知られ、果樹として栽培されているものも多くある中で雑種が多い。

日本では山野に自生しているものもある。




栽培されているのは輸入種のラズベリー、ブラックベリー、デューベリーの三種で、庭植えでも樹高1〜1.5mで80〜100果、鉢植えは6〜7号鉢で40〜50果が収穫の目安です。


栽培適地(生育期4月〜10月)


種類によって適温が違い、ラズベリーは耐寒性が強く、夏も涼しい気候を好みます。

ブラックベリー、デューベリーはやや耐寒性に劣りますが、関東地方までなら庭植えで十分育ちます。

日当たりがよく、土層が深い風当たりの弱い場所が適しています。

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土を用いて、植え付け時に根を乾かさないように注意します。


春と秋は日当たりの良い場所へ置きますが、西日は避けるようにします。


肥料

庭植えは毎年1月から2月、配合肥料を根周りに100gばら撒き、軽く土壌にすき込んでおきます。

鉢植えは3月に玉肥を3〜4個置肥します。


病害虫対策

3月の初芽前に、石灰硫黄合剤20倍液を散布して病気予防をします。


せん定(1月、2月)

結実した枝は収穫後茎部から切り取り、翌年結果枝になる新梢の通風、日当たりを良くしてやります。


庭植え、垣根仕立て



✪ブラックベリー

側枝は5〜6芽で先端を切り、混み合った枝も切り取って全体に日が良く当たるようにします。

結果母枝が多過ぎる時は、間引きせん定し、本数を制限する。



✬デューベリー

全体にバランスよく誘引し、針金で止めてる。

広い面積を使う時は、本数を多くするか、翌年以降発生してくるシュートを切り取らずに誘引していく。


鉢植え、あんどん仕立て



★植え込み

生育が早いので、すぐにあんどんを仕立てます。

鉢の高さの2.5〜3倍の高さを目安にします。



✬夏のせん定

収穫後の枝は元から切り取ります。
根元、地下茎から伸びるひこばえ(サッカー)は切り取るが、3年に一本ずつ残して主枝を更新します。


あんどんから出る枝は切り詰め、結実する側枝は3〜4節ぐらいにせん定します。






2021/10/05

ムベつる性植物 No,560

 ムベ アケビ科

郁子、野木瓜 別名=トキワアケビ
不老長寿の果実と言われる。

朝廷に献上した大贄が語源でオオニエ⇒オオムベ⇒ウムベ⇒ウベ⇒ムベと転訛したものとされる。

大贄(おおにえ)とは、朝廷に献上するその土地の産物を言う。

果実が昔は貴重な山の幸であったことが伺える。

また、アケビに似て常緑なので『トキワアケビ』の別名もある。


         「8月8日撮影」

❉ムベの歴史、名前由来

ムベの歴史は、天智天皇(てんぢてんのう=西暦626〜672年)が狩猟で蒲生野(がもうの、現在の滋賀県東近江地域)を訪れた際に、長命な老夫婦に出会い、長寿の秘訣を訪ねたところ、これを食べているからですと老夫婦が手渡したムベを食べ、「むべなるかな」もっともだとおっしゃったことが由来とされています。

ムベは、皇室献上品のひとつとされ、天智天皇ゆかりの霊果とも呼ばれています。

ムベの実は現在でも皇室に献上されています。

ムベは古くから知られていた果実で、918年頃に書かれた「本草和名」にムベの名が初めて出てきます。

本草和名(ほんぞうわみょう)とは、平安前期にできた日本現存最古の薬物辞典である。

大医博士=深根輔仁(ふかねすけひろ)著

自生は暖地の山地の林縁や原野などに生える。

関西以西が自生地の暖地性植物ですが、耐寒性が強いので北海道を除く全国で庭植えができる。

熟してもアケビのように果実が口を開かないのが特徴。

ムベは常緑樹で果実は開かない、アケビは落葉樹で果実が開く。


雌雄同株で、一本の枝に両性の花が4月頃に咲き、9月下旬から11月頃にかけて暗紅色で大形の果実が結実します。


   

      「ムベの花、4月4日撮影」


果肉は白く甘味があり生食できます。




昔から縁起木として知られ、長命、延寿、富貴を表す樹木とされています。

葉は最初単葉ですが、成長に連れ3枚、5枚、7枚と増えていき、最後に結実することから、七五三の祝い木とされています。

茎や根は利尿剤や強心剤として利用される。





栽培適地

日当たり、水はけの良い場所が適地で、土層が深い肥沃地を好みます。

鉢植えは赤玉土5、腐葉土4、川砂1の混合土に植え、日当たりと風通しの良い場所へ置いて管理します。

浅根性なので盆栽仕立てにもできます。


肥料

1月から2月、根周りに配合肥料を100gぐらい薄く撒き、浅く土壌にすき込んでおきます。

鉢植えは、3月に玉肥を3〜4個置肥します。

収穫時期は9月頃から11月頃

せん定

棚仕立てや垣根仕立てなどにして、毎年混み過ぎた枝を間引きせん定し、古い枝は切り詰めて新しい枝を出させます。

生長の良い新梢は年に15mも伸びるので、長くなり過ぎたら6月から7月にもう一度、軽く切り詰めせん定を行います。


鉢植えは模様木仕立てにしますが、切り詰めせん定で樹形を作り、成木になったら毎年根を切り詰めて、短枝を多く出させるようにすると開花結実します。


病害虫対策

葉表や葉脈などに黒点のできるさび病が発生します。

春と秋にダイセン水和剤500倍液を散布して予防します。

混み合って風通しが悪くなると、カイガラムシが発生します。

見つけ次第ヘラなどで剥がして駆除、混み合った枝を間引きせん定し、風通しを良くします。


発生量が多い場合では、冬期に石灰硫黄合剤を散布して駆除します。









2021/10/03

ブルーベリーの話 No,559


 ブルーベリー  ツツジ科

別名=ヌマスグリ

ブルーベリーは、日本に自生しているクロマメノキやナツハゼなどと同属の低木果樹で、葉の紅葉や花も美しい樹です。


クロマメノキは食べられる果実を黒豆に例えた名であるが、長野県ではアサマブドウと呼び、ジャムなどに加工された土産物になっている。


ナツハゼは黒く熟し、食べられる。
果実をブンブクチャガマと呼び、よく熟すとザラッとした舌触りはあるがブドウのような味がする。


ブルーベリーは、果実の加工品が主にアメリカから輸入されるようになってから、一般にも知られるようになった。

日本でも長野県や東北地方などの一部で国産品も栽培されるようになり、今では栽培可能地で栽培されることが増えている。

庭植えは、生育が早いと2年で開花結実しますが、確実に収穫できるのは4年、5年目からです。


樹高1.5m程で100〜200果、鉢植えは3年目で開花結実し、5号〜6号鉢で20〜30果が収穫の目安とされます。




栽培適地

耐寒性の強いハイブッシュ系は、東北地方や長野県など、夏期も涼しい場所に適しています。

ラビットアイ系は、関東地方以西で庭植えが可能とされる。

耐寒性があるので半日陰でも育ちますが、西日の当たる場所は避けます。

ツツジの仲間で酸性土を好み、通気性の良い砂質土か火山灰土が適しています。


水はけ、通気性の悪い粘質土などの重い土質の場合、栽培が上手くできません。

一般の庭では、ピートモスを土壌改良剤として用いて、多めに土壌にすき込むと生育が良好になります。


鉢植えは、赤玉土4、鹿沼土3、ピートモス3の酸性の強い混合土に植え、西日を避け、風通しの良い場所に置きます。


主なハイブッシュ系品種

✪ブルークロップは乾燥に強く香り、果肉も良く大粒で甘みがある。

✪ノースランドは食感が良く果肉はジューシーでバランスが良い。

✪アーリーブルーは美しい早生品種で樹勢が強く直立性で、果皮は明るい青色で樹木も丈夫。

✪ブルージェイは房なりで果実も大きく、収穫量の多い品種。



写真=ジャージーは成長が早く栽培しやすいハイブッシュ系品種で、果肉が締まって雨による裂果の被害も少なく、風味も良く樹も丈夫。


主なラビットアイ系品種

✬タイタンはラビットアイ系ではNo.1の大きさ特大サイズで、ジョージア大学が育種した品種。

✬クライマックスはラビットアイ系の早生種。
中粒で日持ちも良い収穫が簡単な品種。

✬プレミアは大粒で甘くて食感も良く美味しい。
欠点は受粉が難しく収穫量が少なめであること。


✬ベッキーブルーは早生種で樹勢がやや弱い。

✬ハーモニーは甘さ控えめでブルーベリー本来の自然の味と風味が味わえる。



写真=ウッダードはラビットアイ系品種で、比較的暑さに強い暖地性品種、関東以西の太平洋側の夏期もよく成長し、九州地方まで栽培可能とされている。

その他にもいくつかの系統の品種がある。


庭植えの株仕立てにする場合

①一年目の落葉期に、ピートモスを多めに土壌にすき込み、土壌を改良しておく。

②二年目の生育期に出来るだけせん定しない。
花芽をつけた弱い枝は切り取ります。

③2年目の落葉期は、弱い枝や混み合う枝は元から間引きせん定を行う。

④三年目の落葉期は混み合う新梢を間引きせん定する。

⑤四年目以降は、根際から出たシュートは先端で切り詰めておくと、翌年短果枝が発生し4本ほどの主枝の株になる。

弱小枝や混み枝などは切り取ります。


鉢植えの株仕立てにする場合

①一年目の落葉期に、抜き出した苗生は、根を少し崩して土ごと植える。

赤玉土4、鹿沼土3、ピートモス3の混合土
5〜6号鉢に植える。

②二年目の落葉期に、混み合っている枝は間引きせん定する。

③三年目の落葉期は、主枝が若いうちは株から発生する新梢は元から切り取る。

④四年目以降は、花芽のついた枝は2年から3年で株元から出てくる新梢に更新する。


着果習性

花芽は新梢の先端部に数個つきます。

葉芽からは翌年新梢が発生し、同じように花芽を持ちます。

収穫後は自然に枯れてしまう。


肥料

庭植えは毎年1月から2月頃、株周りに配合肥料200gと多めのピートモスを撒き、浅く土壌にすき込んでおきます。

鉢植えは毎年3月頃、玉肥を3〜4個置肥します。


果実の管理

ハイブッシュ系は、自分の花粉で結実しますが、ラビットアイ系は自家不結実性であるため、他品種の花粉で受粉させる必要があります。

2〜3品種を植えて人工受粉をすると、ハイブッシュ系もラビットアイ系も、大果になり成熟も早くなります。

開花後5日ぐらいは受粉可能なので、他品種と交互受粉すると効果的です。



ブルーベリーの効能

ブルーベリーの果実に含まれるアントシアニンが、目にやさしい事はよく知られていますが、この効能は、イギリス空軍の一人のパイロットの言葉がきっかけとなり、見つかったと言われています。

第二次世界大戦中に、夜間の空中戦や明け方の薄明かりの中での攻撃の際に、いつも大きな戦果をあげたとされるパイロットは、その理由を聞かれて『ブルーベリージャムをつけたパンを食べてから戦闘に飛び立つと、薄明かりの中でも物がはっきり見えるからです』と答えたそうです。


この話をヒントに戦後のフランスやイタリアで、ブルーベリージャムに含まれるどの成分が、視力を良くするのかを調べるための研究が始められました。


その結果、ブルーベリーに含まれる赤紫色の色素であるアントシアニンが、視力を高めるのに効果を持つことが明らかになったのです。

その後の研究で、ブルーベリーに含まれるアントシアニンには、人間の目の網膜にあるロドプシンという物質の合成を、活発にする働きがあることがわかりました。

このロドプシンに光が当たると人は、物が見えると感じます。

しかし、目を使っていると徐々に分解されて無くなっていきます。

アントシアニンがロドプシンの合成を活発にすることから、ブルーベリーのアントシアニンは、目をよく使う人の視力の維持や回復に役に立つことがわかります。


また、ブルーベリーのアントシアニンについて、2012年7月に国立研究開発法人、国立長寿医療研究センターの研究者から「骨粗鬆症の予防に効く」という発表がなされました。

この事はマウスによる研究結果で得られている事である。

このように、ブルーベリーのアントシアニンの効果が分かってきましたが、アントシアニンは多くの植物の葉っぱや花、実にも含まれています。

ではどうして、ブルーベリーのアントシアニンだけが『目に良い』と言われるのでしょうか。


それは、アントシアニンというのは総称であり、アントシアニンには色々な種類があるからです。

アントシアニンには、デルフィニジン、シアニジン、ペツニジン、ペオニジン、マルビシンなどの種類があり、それぞれが色々な効能を持ち、効能の強さも種によって異なります。


アントシアニンを含むと言われる花や野菜、果物にこれらが1種類だけ含まれていることは無く、いくつかが組み合わさって含まれています。


更に、組合わさるときにはそれぞれの比率が違ってきます。

ですから、アントシアニンを含むと言っても花や野菜、果物ごとにアントシアニンの種類やその組み合わせと比率が異なるのです。


『ブルーベリーのアントシアニン』と限定される理由は、ブルーベリーに含まれるアントシアニンの種類、その組み合わせ、その比率が相まって効果がもたらされるからです。


ブルーベリーは北アメリカ原産やヨーロッパ原産などの品種がありますが、品種によっても含まれるアントシアニンの種類、組み合わせ、比率は違っています。


その事から、品種によって効果も違うというような事が言われることもあるのです









2021/10/01

檸檬(レモン)No,558

 レモン ミカン科

レモンは、独特な香りと酸味が特徴の香酸柑橘です。

果実に含まれるビタミンCは100g当たり約50mgもあり、柑橘類の中ではトップクラスです。

ビタミンCは活性酸素を防ぐ抗酸化作用を持ち、一般的に動脈硬化や高血圧などの症状を防ぎ、疲労回復にも良いと報告されています。


また、日本では、農薬の心配のない果実スライスを紅茶などに浮かべて飲みたいなどの思いが高まり、自宅で栽培されている方が増えています。

原産地はインド、ヒマラヤ地方で降水量が少なく、暖かい気候を好みます。

そのためやや寒さに弱いのですが、最低気温がマイナス3℃までなら耐えることができるので、瀬戸内海地方以西の平野部なら庭でも育てることができます。

リスボンやマイヤーレモンなどの寒さに強い品種を選び、鉢植えで適切な冬の管理を行えば、関東地方以西の平野部でも十分育てることができます。

果樹は1品種では実がつきにくいものが多いが、レモンは一本でも果実が収穫できる品種が多い。


レモンにはユーレカ、リスボン、ビラフランカ、ピンクレモネード、クックユーレカなどの品種がある。

柑橘類と言うと日本では「ミカン」と一般的には言われる。

その中では温州ミカンが一番に挙げられます。

産業的にはミカン属にキンカン属とカラタチ属を加えて、柑橘類と総称し、温州ミカンやブンタン、グレープフルーツ、オレンジ、レモンやユズ、キンカンなどが含まれます。


レモンやユズは料理などに利用される柑橘類で「香酸系柑橘」と言われて、洋種ではレモンとライム、アジアまたは日本発祥のものとしてはユズ、スダチ、カボスなどが含まれます。


この「香酸系柑橘」に共通する特徴は、どれもが直立する樹形であることです。


温州ミカンや甘夏(ナツミカンの突然変異)、日本産の柑橘雑種タンゴール、ブンタンは樹形が大きな円形または扇形のものが多い。


樹高を低く育て若木の時から主枝を短く切り戻しつつ、複数の主枝を育てるようにします。

しかし、香酸系の樹形は直立するため、同じように育てると樹が小さくなる反面、柔かく細い無数の枝が伸びてしまい、樹勢の低下に繋がります。


このような樹形になると、樹体を作る前から多くの花芽が付き、多くの花は咲くけどまともな大きさの果実を収穫できず、樹勢の衰弱によって枯死してしまう場合もあります。


そのため、植え付けから3年間は主枝となる強い枝を地面から垂直に伸ばし、主枝の直立した自然な樹形を作って行くことが重要となります。




栽培適地

瀬戸内海沿岸以南なら庭植えが可能で、日当たりがよく土層の深い肥沃地が適しています。

冬期はむしろなどで防寒、防風対策を行う。


レモンはマイナス以下では成長できず、越冬は不可能となります。

春植えで鉢植えにするか、ハウス内で霜よけをして栽培します。


秋植えは避けます。

鉢植えの場合は、赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置きます。


晩秋から厳寒期は室内へ移動し防寒します。

レモンは庭植えより鉢植えの方が、温度や水の管理がしやすい果樹です。

特に果実が肥大する6月から8月は、水分を多く求めるので、一日に3回は鉢底から水が流れ出るくらい、たっぷりと与える必要があります。


初収穫を植え付けから3年目と設定し、最終的に露地栽培になる場合でも、植え付けから2年間は鉢植えで育て、基本となる樹形を作ることだけを考えます。


植え付け(2月下旬〜4月中旬)

根鉢が一杯になると株は老化します。

レモンは寒さに弱い果樹なので、基本的には鉢植えで、植え付けはスリット鉢を利用するのが理想的です。

根が鉢底でぐるぐる巻いたような状態にならず、直下に伸びる直根を鉢内に均等に伸ばすことができます。

苗木は主枝が太くしっかりしたものを選びます。

植え付け前に、根を鉢の幅に合わせて切除しますが、この時に根をできるだけ長く残さず、基部から2〜3㎝程度の長さに切り戻します。

また、下方に伸びる直根も鉢の深さの3分の2程度の長さまで切り戻します。

苗木は植え付け前後に、接ぎ木部分から50㎝程度の高さの位置で主枝を短く切除します。

こうすることで、太く元気な新梢が多く発生します。

植え付け後は主枝がぐらつかないように支柱を立て固定します。

暖地では9月から10月も可能で、この時期に実つき苗を購入した場合は、収穫を終えたあと、春を待って植え付けを行います。

鉢植えは、南向きで日当たりがよく、風の当たらない場所に置きます。

1年生の接ぎ木なえであれば7〜10号(直径21〜30cm)の鉢を準備し、鉢底土を適量入れた後、赤土4、腐葉土3、赤玉土小粒3、緩効性化成肥料、土1㍑当たり5㌘程度を混合し、鉢の半分程度まで入れ、根鉢を崩し、根を広げて、接ぎ木の部分が埋まらない程度まで用土を入れます。

植え付け後は十分に水を与えます。

植え付け後1年から2年目

数本の新梢が発生してきますが、接ぎ木部から上に20㎝程度の間に発生する枝は、すべて基部から切除します。

また、それより上の部分から発生する新梢は、20㎝伸びた時期に成長の良さそうなものから5本をバランスよく残し、それ以外は切除します。

尚、この時に生育には全く不要なトゲをすべて取り除きます。

この事で、大敵とされる「カイヨウ病」の発生をかなり抑えることができます。

その後もトゲの発生があればその都度取り除きます。

残した新梢5本が50㎝程度に伸びたら、まとめて支柱に枝を真っ直ぐに上向きに伸びるよう、軽くひもで結束します。

こうすることで新梢の樹勢は衰えることなく伸長します。


冬の寒さで新梢の伸長は止まりますが、結束したひもはそのままにしておき、翌春の発芽までにひもを解いて、その時にすべての枝を翌年の夏枝が伸び始めた所まで切り戻します。
(充実した部分で切り戻す)



肥料

庭植えは毎年2月、根回りに溝を掘って配合肥料を200〜300g埋め込み、9月には同量を追肥する。


せん定(間引きせん定が重要)

時期は3月から4月上旬

庭植えは主幹形か半円形に仕立て、鉢植えは模様木仕立てにします。


3月に垂れ下がった枝や冬の間に枯れた枝を切り取ります。

主幹や主枝は、伸びの良い夏枝を切り詰めせん定して作ります。


ミカン類は常緑樹なので、せん定すれば時期に関係なく必ず葉を切り落とすことになります。


葉を切り落とせばそれだけ栄養分を失い、樹木を弱らせることになるので生長も遅くなります。


内部への日当たりを良くし、樹高を止めて管理しやすくするためにせん定は必要ですが、出来るだけ軽くなるようにすることが大切です。

不要な枝の除去は生育中も欠かさず行います。


鉢植えは鉢の高さの2.5〜3倍の樹高にします。



果実管理

レモンの花は5月から10月までほぼ連続して咲きます。




レモンの花は寒さに弱いが、鉢植えにして室内で冬越しさせれば、栽培は容易。

花は良い香りを漂わせる。


開花後約6ヶ月で果実は成熟するので、暖かい適地で栽培されている場合、樹上には幼果から収穫可能な成熟果まで揃うことになり、冬以外は順次収穫できます。


しかし、一般の庭植えや鉢植えでは年中着果させると、樹勢が弱くなるので年に一回の収穫を目安にします。

春果だけを利用しますが、葉20〜30枚に1果が適し、混み入ったものや弱小果は摘果し、良いものを目標数だけ残して育てます。

鉢植えも同様に春果を3〜5果バランスよく残し、それ以後できる夏果や秋果はすべて摘果してしまいます。

病害虫

着花と同時に発生する夏芽には、ミカンハモグリガが付きやすいので注意します。

葉の裏側の柔らかいところに侵入し、葉の表面に蛇行した食害痕を描く事から、エカキムシと呼ばれます。


主な病害虫として、黒点病、灰色かび病、ハダニ、スリップス類があり、果実の外観にも大きく影響します。

イセリアカイガラムシはスミチオン乳剤などを発生初期に散布して防除します。

ハダニ類が雨の少ない、高温期の春から夏にかけて発生が多くなります。

殺虫剤を発生期に散布しましょう。

最も重大な病気はカイヨウ病で、葉や果実、緑枝に褐色のコルク化した病斑を作ります。


夏から秋にかけてカイヨウ病が発生するので、コサイド3000などの殺菌剤を散布しましょう。

風や台風による傷み、害虫による食害を極力抑える必要があります。


カイヨウ病についてはNo,555『主に柑橘類に多い潰瘍病』を参照

害虫駆除にはボルドー液、ICボルドーを毎月1回の頻度で散布すると効果的です。


尚、カイヨウ病に抵抗性のあるレモンの品種が作出されている。

「璃の香」と言う従来の品種より果実が大きく、酸味もまろやか。

リスボンレモンと日向夏の交配種で果汁は多く、種も少ない新品種のレモンです。



     「レモンの実生苗」

せん定(追記)

レモンのせん定は2月から3月に行います。

レモンは年3回程度開花し、次々に結実するので、樹への負担が大きくなります。

そこで、春の花が結実した果実のみを残し、それ以外の時期に開花した花は除去し、最終的には一株当たり(鉢植え)3〜5個の果実を付けるのが目安です。

温州みかんなどのトゲは、樹が古くなるとなくなっていきますが、レモンのトゲはなくなりません。

特にリスボンの品種はトゲが比較的多いので、トゲが果実や葉を傷つけたり、子どもたちにも危ないと考えられます。

植え付け後、樹勢がついてきたらトゲの付け根から切り取りましょう。

収穫

春に咲いた花は、およそ6ヶ月で収穫期を迎えます。

色で判断すると果汁が少ないものもあるので、ゴツゴツした皮がなめらかになったら収穫するようにします。

温暖な地方を除いては12月までに収穫を終えた方が無難です。

また、成熟させ過ぎてしまうと酸味が少なくなります。

直径5cm程度になった果実は、青くても香りが高く、皮を刻んでサラダに入れたり、料理や飲み物の香り付けにも最適です。









2021/09/30

糸状菌とは何? No,557

 糸状菌について

糸状菌はカビ、菌類と呼ばれる菌糸体で栄養成長する微生物、細菌やウイルスで起こる病気より圧倒的に多い。


細菌による感染症が中心の動物とは異なり、植物病害の約7〜8割が糸状菌によるものです。

栄養繁殖期に菌糸状をなす接合菌、子嚢(しのう)菌、担子菌などの総称で、大きく変形菌類と真菌類に分けられる。


細菌に比べて一般に耐酸性が強く、酸性土壌中での有機物分解において重要な働きを担っている。


土壌中における「リグニン」の分解は主に糸状菌によって行われる。


「リグニン」とは、木質素とも呼ばれる高等植物の木化する高分子のフェノール性化合物で、「木材」を意味するラテン語から命名された。

「リグニン」は、陸上植物の細胞壁を固くしっかりした構造とするために生み出された物質のことで、木材中の繊維同士を接着される役割を果たしている。


土壌中の腐植物質の生成過程では、植物遺体に含まれる「リグニン」が、腐植物質の「芳香族成分」の主要な供給源と考えられている。

★芳香族成分=ベンゼンを含む化合物成分(石油精製、液体炭化水素混合物の製造)

糸状菌病の診断

地上部の病害と異なって土壌病害の場合は、地上部に症状が現れた時にはすでに、地上部は予想外に侵されています。

その病害個体に限らず、栽培土壌でのかなりの部分に被害が及んでいると考えてもよい。

土壌病害にかかると地下、地際部の茎や根が侵されるので、全身病の様相を現します。


一度発生してしまうと発病個体を救うことは難しいので、植え付け前に発生の予測や予防対策を行う必要があります。


土壌病害の発生は、植え付け土壌の条件や栽培管理で左右されます。

植え付け前の調査は、土壌病害の検診と呼ばれ重視されています。

そして、この検診の結果に基づいて、植え付け計画の変更や消毒などの土壌管理が行われます。


検診法では、栽培地から土壌を採取して分析するが、ほとんどの病原菌の活動好適域は地表から15〜30㎝までに限られるので、それ以上の深層から土壌採取はあまり意味がありません。


糸状菌病は種類が多く、ほとんどの樹種で主要病害の原因となっています。


空気伝染性、土壌伝染性、水媒伝染性で、通常はその第一次伝染源が樹上に分布する事が多い。


夏に「永久組織」が侵害される枝幹病害である胴枯病の種類も多い。

永久組織=分裂能力を失った細胞からできている植物の組織、表皮(樹)や維管束など







2021/09/29

梅の潰瘍病 No,556

 ウメ潰瘍病(かいようびょう)


葉、枝、果実に発生し、若木では主に枝に被害があり、成木では主に果実の被害が大きい。

葉が展開する頃のごく若い葉では黒色の葉焼け症状となり、黒変して落葉する。

生育期の若葉でははじめ小斑を生じ、やがて周縁が赤色で中心が褐色か黒褐色になり、裂けたり穴が空いたりする。


新梢では、円い初期病斑から周縁部が赤色で縦長楕円形の褐色病斑となり、やがて中心が裂ける。


秋以降の当年枝では、円形病斑が現れて越冬し、翌春やや膨らんで更に拡がり縦に裂けて、潰瘍状となるかもしくは年内は潜伏して病症を現さないが、開花前期から病症が急速に拡がって潰瘍状の症状となる。


これらは潜伏越冬病斑と呼ばれるが、越冬伝染源としての役割が大きく付近に芽枯れ、葉焼け、花腐れ、幼果発病などの諸症状を引き起こす。

また、病斑部は夏以降2次寄生菌の加害によって、表面が粗い病斑となって枝込みが起きる。


果実では、落花直後の幼果が発病すると水浸状のまま縮んで落果する。

大豆粒大以上の幼果が感染すると、周縁は紫赤色、中央部が黒褐色か灰褐色の小斑点が形成される。

病原菌はウメのほかにスモモにも寄生して同様の被害を及ぼす。


病原菌は越冬枝上の潜伏病斑から放出され、雨媒伝播によって樹幹の傷口などから侵入して伝染する。


病原菌は比較的低温を好む性質があり、冬も徐々にではあるが進行が見られ、ウメの開花期には活発に増えて伝染が起こる。


平均気温が12〜15℃、風雨を伴った環境条件で激しい果実感染が起こる。

また、樹木に潜在している病原菌も伝染に関与していることが多い。


防除法

秋の感染期に軟弱な枝が多い場合、越冬病斑を持つことが多く、翌春への伝染源となる菌量が増大する事になるので、晩秋まで若枝を発生伸長されないように適切な肥培管理を行う。

また、病斑の枝はせん定除去、焼却処分して伝染源を断つようにする。


薬剤防除法

開花前の休眠期に銅製剤を散布し、3月下旬頃から5月下旬頃にかけて、ストレプトマイシン剤の散布を3回から4回行う。

状況によって更に散布回数を増やす。

土壌の湿りやすい所や風当たりの激しい場所で多発しやすいので、排水を良くしたり防風対策を行う事が重要です。