緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2023/11/03

ビロウヤシ No,671

 ビロウヤシ 檳榔、蒲葵

ヤシ科ビロウ属 別名=セイタカビロウ

ビロウヤシはインドネシアなどの熱帯アジアが原産地のヤシ科の常緑樹です。




日本では四国の南部から南に分布し、島や海岸付近の山に生える。

四国、九州では3m程で、大きく育ったものでも5m程だが、亜熱帯では幹は直立して高さ15m程になるが、原産地では30m程の高さまで生長する。


種子は嗜好品(しこうひん)として、噛みタバコに似た使われ方をされ、ビンロウジという場合は通常この種子を指すが、発がん性が指摘されている事から「死の実」とも呼ばれる。

日本への伝来は奈良時代とされ、当時は高級な漢方、薬や染料の材料として使用されたが、庶民まで伝わることはなかったようだ。

寒さに強く、多くの地域で屋外でも越冬可能

成長は非常にゆっくりで、関東では年々数センチくらいです。


直射日光には若干弱い傾向があり、夏に葉焼けすることもあります。

九州地方では街路樹などに利用され、その他に扇や笠に利用する。










カラスザンショウ No,670

 カラスザンショウ (烏山椒)

ミカン科サンショウ属 落葉高木
別名=アコウザンショウ/イヌダラ/コメダラ/ヤマザンショウ

サンショウと違って✪アルカロイドを含むので、イヌザンショウとともにイヌザンショウ属に入れる場合がある。

✪アルカロイドとは、窒素を含む塩基性の植物成分の総称で、アルカロイドはアルカリに似た化合物と言う意味で、植物塩基ともいう。

一般に少量で動物に対して強い生理作用をもつ。
ニコチン、モルヒネ、コカイン、アコニチン、キニーネなど

カラスが種子を食べることからついた名前だという。





落葉樹としては塩分に強く、自生は太平洋岸の山地に多いが、ヒヨドリ、ムクドリ、ヤマドリ、メジロなどの野鳥が好んで種子をついばみ、カラスによって散布された種子はよく発芽し、裸地のはじめに生える先駆植物になっている。


枝には鋭いトゲがあり、大木に生長しても樹皮にはイボイボのトゲの痕跡が残る。

花期は7月から8月で花はとても小さく、直径5㍉ほどで果実は赤く、裂開すると黒い種子ができる。


他のミカン類同様、若葉はモンキアゲハやカラスアゲハなどアゲハチョウ類の幼虫に食害されるほか、蜂の蜜源植物にもなっている。








2023/11/02

ヒメユズリハ No,669

 ヒメユズリハ(姫譲葉)

ユズリハ科 別名ユズルハ

本州中南部、四国、九州及び沖縄の主に海岸部に分布し、ユズリハに似た葉が小さい木としてヒメユズリハと名付けられた。




トベラやウバメガシと共に、海岸林の重要な構成樹種である。

雌雄異株の常緑高木で樹高は10m程になる。

西日本では正月飾りとして、ダイダイやウラジロと共に鏡餅などに使われる縁起の良い木とされる。

樹皮や枝葉にはユズリハ同様、有害成分が含まれていて除虫に使われる。

葉や幹が小さく成長が遅いため、一度せん定をした後は次のせん定までの期間を、あける必要があります。

幹や太枝からの萌芽があまり期待できないので、太枝などのせん定は避けた方が無難です。

せん定の時期は花を付けた後の6月頃と、実が落ちた後の12月頃が適しています。

せん定作業は多くても年2回行う程度で十分です。

乾燥に弱く、粘土質でやや湿り気のある土壌が適し、水はけの良い場所では育ちにくいため、堆肥や腐葉土を混ぜ込んだ水持ちの良い土で育てます。

耐寒性があり、日当たりの悪い場所でも植えることができますが、1日中日の当たらない場所では間延びした枝ぶりになってしまうので、植え付け場所は十分に選ぶ必要があります。


エゾユズリハ

北海道及び近畿地方以北の本州、日本海岸内陸部に分布する常緑低木で樹高は1〜3m、雪が多い寒地に適した樹種です。

この他、葉が黄白色の斑が入る園芸品種のフイリユズリハや沖縄、台湾に分布するシマユズリハ、奄美大島に自生するアマミユズリハなどがあります。









シャシャンボ No,668

 シャシャンボ 

ツツジ科スノキ属 別名=ナガバシャシャンボ、シャセンボ




四国、九州、沖縄に分布する
(小小ん坊、南燭)

果実が小さいのでこの名がある。

晩秋に熟す実は昔から食用とされ、「サシブ=烏草樹」という古名で親しまれていました。

粒は小さいが甘酸っぱくて美味しい。

低山の林に生え、3m程の高さになる。

花は上部の葉の付け根から伸びた花茎に、びっしりと下向きにつく。

花期は5月から7月、花には軟毛が密生し、先端部分がわずかに開く。

果実は直径が5㍉ほどで粉白を帯びる。

樹勢が強いためブルーベリーの台木に使われる。









2023/10/29

材質腐朽病(害) No,667

 材質腐朽(ふきゅう)病

この病気は木材から栄養を吸収している「木材腐朽菌類」という、一群の菌類によって引き起こされる病気です。

腐朽すると細胞壁が破壊され、材は強度が低下してしまって、用材としての利用価値を失ってしまいます。

木材腐朽菌類には、担子菌類(キノコなど)のヒダナシタケ目に属する菌類が多く含まれるが、クロサイワイタケ科などに属する子のう菌類や、不完全菌類(無性生殖とされるもの)の一部も含まれます。

シマサルノコシカケやナタタケなどの一部の菌類を除き、木材腐朽菌類は直接生立木(せいりゅうぼく)を枯死されることはありません。

しかし、材質腐朽病害は樹木の材の利用を妨げるだけではなく、しばしば幹折れの原因となり、更に樹木の衰弱の誘因ともなります。

立木の腐朽の仕方は、根株腐れ(根株心腐れ)、幹腐れの2種類があります。

◉根株腐れ(ねかぶくされ)とは、樹木の根系の傷から菌が侵入して腐ることで、原因は土壌や水分と密接な関係があります。

立木が強風に揺らされたり、車などに踏み固められて根系が切断されたことで傷ができ、土壌の中にいた腐朽菌が侵入したりして起きます。


根から侵入した菌で腐朽する場合は、根株の心材が被害を受けて、それから地上部の心材まで、円錐状に被害が広がることが多く、このような侵入方法をとる菌にはレンゲタケ、ハナビラタケ、ベッコウタケなどがあります。

✪根株辺材(へんざい)腐れは、根から侵入しても皮層部分から、樹幹の辺材部分を腐朽される菌です。

これはナラタケ菌によって起きますが、この菌は根に傷がなくても樹が弱っていると、根に侵入できます。

多湿土壌を好むので、水はけの悪いところで被害が大きくなります。

✪幹腐れは樹幹にできた傷から菌が侵入して腐る。

樹と樹の接触が下でできた傷や、動物の食害!間伐のときにできた傷から、菌が侵入して幹が腐ります。

しかし、一番多い原因は枯れ枝で、空中湿度の高い林の中などが菌の最も好む環境です。

幹腐れにも、樹幹心腐れと樹幹辺材腐れの2種類があり、心腐れを起こすものはエゾノコシカケ、チウロコタケモドキ、マツノカタワタケなどがある。

辺材腐れを起こすものは、モミサルノコシカケ、チャアナタケモドキなどがある。

材質腐朽病害の種類

腐朽病害は発生する部により「根株腐朽」「樹幹腐朽」「枝腐朽及び辺材腐朽」「心材腐朽」のように分けられ、これらを組み合わせて樹木の腐朽被害を《根株心材腐朽》《樹幹部辺材腐朽》のように呼ぶ。

また、材の腐朽様式により、材中の❉セルロースと❉リグニンの両方が分解され、リグニンが残される褐色腐朽に大別される。

更に、腐朽材の形状により、海綿状白色腐朽/孔状白色腐朽/立方状褐色腐朽/孔状褐色腐朽などに区分される。

❉セルロースとは、植物の細胞壁及び繊維の主成分で、植物はすべてセルロースを主構成成分として含んでいる。

地球で最も多く存在する炭水化物である。


❉リグニンとは、植物の細胞壁の構成成分の一つで、セルロースとともに二次壁に含まれ、木部での水分移動や植物たちの物理的支持などの役割を果たしている。


防除

この病害は樹材の外見から判断できない場合が多く、早期の発見は難しい。

一般に樹木の枝や幹、地際部腐朽菌類のキノコ(子実体)が発生している場合は、その樹木の材内部では腐朽が進んでいると考えられるので注意が必要です。

樹幹腐朽に関しては、林木では枝打ちを実施して、枯れ枝や傷が生じないようにします。

庭園樹や街路樹では、枝のせん定痕が腐朽菌の侵入口となる場合が多いので、せん定後は切り口にペースト状の殺菌剤(トップジンМペーストなど)を塗布するなどの処理を行います。


根株腐朽の防除は難しいが、林木では間伐や択伐(たくばつ)時に、残存木の幹や根系に傷をつけないようにすることが大切です。

以前に、根株腐朽が発生した伐採跡地に再造林する場合は、地中に原因となった腐朽菌が生息している可能性が高い。

よって、腐朽病害に抵抗性のある樹種に転換する必要があります。

また、老樹や名木に腐朽病害が発生した場合には、腐朽した部分を取り除き、殺菌剤を塗布した後、空洞部を樹脂で充填、または保護対策などの外科手術を行うこともある。

外科的対策では、再生可能な状態になるようにすることが重要です。








2023/10/28

植物に対する温度と湿度 No,666

 植物の生育には温度と湿度が大きく影響しています。

特に冬の寒さ、夏の暑さを生き延びために植物は色々な工夫をしています。


気温と植物の関係

寒さに強い樹、弱い樹
植物の耐寒性は種によって大変な差があり、冬の厳しい寒さにあうと枯れてしまう熱帯起源の植物がある一方、マイナス60度という超低温の中でも生存できる北極地方のワタスゲ、スゲ、矮性低木(チョウノスケソウ)などの植物もあります。


一般に植物は、冬の低温にあって組織が凍ってしまっても、氷が解けるとまた機能を回復するものが多い。

低温に強いかどうかは氷が解けるとときに、機能が回復する力の程度によって決まるようです。

また、低温への適応としては、寒さに強い形で越冬するという植物もあります。

乾燥した種子や、芽、地下茎などの形で越冬するのがその例である。


植物の地理的な分布は、その土地の冬の気温に大きく影響されます。

どのような地域にどのような群系が繁殖しているかを示したものを、植物の生態分布と言いますが、この生態分布は植物同士の相互の関係によっても影響されます。

主な影響を与えるのは、気温や降水量といった気候条件です。

気温は地球の赤道と極からの距離、つまり緯度差による変化が大きい為、降水量は大陸の海岸から内陸へ向かうに連れて変化します。

一般に寒さに強いのは針葉樹と落葉樹で、常緑樹は冬、暖かく年間降水量も多い土地に向いている傾向があります。

落葉樹は冬を生き抜く手段として、葉を落としますが、これは一種の「冬眠」とも言えるでしょう。


暑さに強い樹、弱い樹

植物の高温に対する耐暑性は、耐寒性と同様で種によってたいへん差があります。

高山に育つ陰生植物(日陰を好む植物)や極地に分布する海藻などは、高温に弱く呼吸が光合成を上回ってしまうことで、消耗が激しくなり枯れてしまいます。

植物は光合成によって作られた糖と気孔から吸った酸素を結びつけてエネルギーに変え、二酸化炭素を放出します。

これを「植物の呼吸」といい、光合成と全く逆の反応をしています。

呼吸は光と関係なく1日中行われています。

もっと高温の場合は、葉などの原形質(細胞の生きている部分、核と細胞質)が固まってしまい、枯れることもあります。

同種の植物でも、育つ環境によって耐熱性が向上することもあります。

砂漠や海辺の植物が耐熱性を持っているのは、生育条件と関係があると見られています。

また、ヨーロッパのように涼しい気候のところで育った樹は、暑さに弱いものが多く、高温多湿の土地でうまく育ちません。


湿度と植物の関係

気温とともに植物の生育に関係が深いのが湿度です。

植物は葉の裏にある気孔を通して、蒸散作用を行います。

蒸散は植物の表皮の外側からも行われていますが、ほとんどは葉の気孔を通して行われています。


蒸散により水分が放出されて、葉が水不足になることで、植物が根から水を吸い上げる力となっています。

しかし、あまり高温で水蒸気要求度が高く、水分の蒸散が激し過ぎてしまうと、根からの吸水が追いつかずに植物は消耗してしまいます。

また、冬は根の働きが鈍っているのに、空気が乾燥することで水不足になる傾向があります。


温度、湿度と病原菌の関係

《温度》
一般に胞子の形成に適する温度は、菌糸の生長に適した温度とほぼ一致しています。

イネのいもち病菌では、菌糸の生育適温は28℃で、胞子形成の適温も28℃で両方が一致しています。

また、野菜類の灰色カビ病菌もそれぞれ25℃であり、トマトの萎縮病では28℃である。


《湿度》
多数の病菌では、胞子の形成には低湿度よりも高湿度の方が適しています。

しかし、ウドン粉病菌では、分生子及び子のう殼の形成とも空気湿度が低いときに盛んである。

病原菌の性質を明らかにするため、あるいは殺菌剤の効果を検定するなどのために接種試験を行う場合には、条件を組み合わせて培養すると、接種源として多量の胞子を得ることができる。

湿度は空気に含まれる水蒸気量を表す尺度で、相対湿度(RH)と絶対湿度があるが、単に湿度という場合は相対湿度を指す場合が多い。

相対湿度は観測された水蒸気圧を、観測された気温に対する飽和水蒸気圧で割ったものであり、体感的な空気の湿り具合とよく対応する量である。

絶対湿度は、単位体積の空気中に含まれる水蒸気の質量として定義される。

空気中の水蒸気量を表す概念として、他に露点、比湿、混合比などがある。

露点とは観測された水蒸気圧を、飽和水蒸気圧とする温度である。

気温と露点の差は湿数と呼ばれ、湿度がゼロに近いほど空気が湿っていることを表します。

比湿とは、空気密度に対する水蒸気密度の比であり、混合比は、空気の水蒸気以外の成分の密度に対する水蒸気密度の比である。