緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2024/09/16

樹木の移植(2) No,715

 移植の時期

移植の時期は常緑樹であるか落葉樹か、あるいは地域などによって異なります。

落葉樹では、一般に12月から1月の厳寒期を除く休眠期間(落葉期間)が適期とされますが、その中でも初春の萌芽前が最適期です。

やむを得ず、入梅期(6月〜7月)などの生長期間中に移植する場合は、地上部の葉をすべて取り除いて、蒸散作用を抑制するようにします。


常緑広葉樹は、3月頃から秋までの期間のうちで、新芽が伸長しつつある時期と、一番暑い真夏の頃を除いた時期が、移植の適期です。

そのうち初春の萌芽前、または梅雨期が最適期です。

常緑針葉樹は樹種によって異なりますが、2月下旬から4月までの萌芽前が最適期で、10月から11月の秋期も適期とされています。


北海道などの寒冷地ではすべての樹種において、雪解けから1ヶ月くらいの短い初春の時期が最適期となり、また、9月から10月の間にも樹種によっては移植可能なものがあります。

熱帯地方が原産のものは、一般に真夏に移植する方が活着率が高い傾向にあります。


また、何回も移植して細根がよく発達しているものや、鉢植えにされているものを鉢から抜いて、そのまま露地に植え替えるような場合には、地域に関わらず必ずしも適期に移植しなくてもよく活着します。









2024/09/15

樹木の移植(1) No.714

 移植とは

樹木の根は、しっかりと地上部を支えるように直根=主根が発達し、表土など地中のなるべく広い範囲から養水分を吸収できるように、側根が伸びているのが理想です。


樹木を移植する場合は、側根が伸びていることよりも幹の周りのなるべく主幹に近い範囲に、細い根が多く生じているが好ましい。

このような根を持った状態の樹は、植え替えても枯れたり、樹勢が衰えたりすることがありません。

造園樹木では、細い根が多くある樹木が好まれます。

長年同じ場所に植えられていた樹木は、根が長く伸びていて、株の根元近くに細根が発達していません。


このような状態の樹木をいきなり移植すると、移植のために掘り取りする際、細根の大部分は切り取られてしまいます。

従って、植え付け後に水分の吸収ができないために、枯れてしまうことが少なくありません。

このような事が起こさないために、移植の数ヶ月から1年くらい前にあらかじめ根元近くで太い側根を切断、もしくは環状剥離をして再び埋め戻し、株元近くに多くの細根を新たに発生させる処置を行います。

この作業を「根回し」といいます。


✼移植後に樹木が枯れる

移植によって樹木が枯死する主な原因は、堀り取る際に樹木の細根が著しく減少して、水分や養分の吸収が困難になりますが、それにも関わらず葉面から水分が蒸散し続けるために、植物体内の水分のバランスが保たれないと言う理由からです。


移植した樹木を活着させるためには、バランスを崩さないように処置をすることです。

一方で、もともと移植が容易な樹種もあります。

サツキやツツジ類のように、根元近くに細根が多く発生する性質があるものは、根を切られてもすぐに再生するという性質を持っています。

また若い苗木は、側根がまだ遠くまで伸びていないので、移植に際して切断される根が少なくすみ、若木の活力も手伝って移植は一般に容易と言えます。

葉面からの水分の蒸散を抑えれば良いので、移植時に枝葉をせん定して葉数を減らしたり、蒸散抑制剤を散布することで活着率を高めると言う効果もあります。


場合によっては、移植時にほとんどの葉を取り除いても、活着すれば再生することができます。

移植によって相当弱った樹木でも、活着する見込みがある場合には、葉柄の根元に「離層」が形成されて、樹木が自ら古葉を落としてしまいます。

✫離層(りそう)とは、葉が落ちる前に葉柄に生じる特殊な細胞層のこと

この状態を「とやする」といいますが、移植後葉が枯れる場合でも、離層が形成されて自然落葉するときには、活着する前兆と判断する目安になります。

樹種によってはクスノキのように、ある程度(目通り30㌢)の太さに生長したものの方が、細い苗木の時よりも移植が容易なこともあります。

これは、樹幹内に水分を蓄える性質があって、幹が太いほど含有水分が多くなったり、生長するにつれて移植に対する抵抗力が増すためと考えられています。









2024/09/13

コガネムシ類によるマキノキの被害 No.714

 2024年異常繁殖のコガネムシ類

今年はコガネムシ類が異常繁殖している。

2日間で140匹ほど捕殺駆除しました。


    「食害されたマキの葉」


  「スミチオン液の中に入れ駆除」


コガネムシ類は小型から中型の甲虫で、夕暮れ後しばらくした頃から植物に飛来して、葉や花などを食害する厄介な害虫です。

葉脈を残して網の目状に食害するのが特徴、雑食性で各種の樹木の葉を食い荒らすことから、庭園の害虫としても極めて重要な害虫とされます。

成虫は7月頃から、土中浅くに十数個の卵を数日間にわって産みます。

孵化した幼虫は、土中の腐熟有機物や植物の根を食って育ちます。

成虫の多発期の5月頃から新葉を中心に食害を始めます。

昼間も葉の陰などで静止している個体が多いので、できるだけ捕殺します。

朝早くに樹を揺すったりして落ちてくる成虫を捕殺します。

近縁種にアオドウガネがありますが、同様の被害を示し、砂地に多く海岸に近い地帯での発生が多い。

ドウガネブイブイと、形態的によく似ているが、体色は緑色が強く一見して区別できる。

夜間活動性のコガネムシは、日没後しばらくしてから飛来し始め、夜間樹上で食害する。

一部を除いて早朝には飛来して姿を消す。


昼間活動性の種類は日中葉上にいて食害しています。









2024/09/12

造園樹木 No,712

 造園樹木

造園樹木とは、主として造園に使用される樹木のことを言いますが、広い意味では竹や笹類、ヤシ類、リュウゼツランなど樹木以外の植物も含まれています。

造園樹木として利用される植物は「樹姿=じゅけい」や花などに観賞的価値があり、育てやすくて丈夫なものが選ばれています。

✼樹姿とは、盆栽用語では(きすがた)といい、その意味は盆栽の姿形、たたずまいの事です。

このような造園樹木の多くは、その土地に自生しているものの中から選定されますが、外国産の植物を輸入して利用しているものも少なくありません。

選定の目安として

①見た目に美しいこと
②育てやすく移植しても活着しやすいこと
③樹勢が強いこと
④入手が容易なこと
⑤大きくしたい場合に、せん定等によって望ましい大きさに止めておけるものであること

このような条件として有してる造園樹木が望ましいと言えます。









2024/09/10

樹木の根とその働き No,711

 樹木の生理

樹木の地下部分全体を根系(こんけい)といいます。

主幹の真下から直下に伸びている根を直根=主根、横方向に伸びている根を側根といいます。

❉直根(ちょっこん)と言う表現は主に造園学で表しますが、樹医学的には主根(しゅこん)と表現することが多い。


横に伸びた側根(そくこん)の末端に生じる細い根を、細根(さいこん)といいます。

細根には毛のような根毛(こんもう)があります。

根毛は水分や養分を土中から取り入れ、導管に送る働きをしています。

導管は師管と交互に並んでいます。


      「根の構造」


根が地中深くに発達する性質のものを深根性(しんこんせい)といい、比較的浅い場所に発達する性質のものを浅根性(せんこんせい)といい区別します。

この性質は、樹種によって異なりますが、同じ樹種でも土質や地下水の状況などによって大きく変化します。


樹木の側根は、あまり地中深くには分布しないのが普通です。

側根の大部分は深さ1㍍以内の所に根が発達しています。

特に人によって踏圧されない林野地等では、根の50%以上が深さ30㌢までの地中に分布していることが多いと言われています。

しかし、種子から育ったまま1度も移植をしていない樹木では、主根の発達は著しい反面、側根は発達しない傾向にあります。


針葉樹は一般に側根に比べて、主根の発達が著しいとされ、広葉樹はこの逆の性質が強いと言えます。


しかし、一旦移植を行って太い根を切ると、その後針葉樹は広葉樹に比べて、再び太い根が伸びにくいと言う性質があります。

高さ50㍍の樹木は、主根の深さが2.5㍍位ですが、側根の拡がりは樹の高さと同じくらい広がっていると言われています。

概ね、枝先の真下まで側根は伸びていると言われています。

手入れと管理された造園樹木は、一般に何回も移植が繰り返されているため、その都度主根をはじめとした太い根が切り取られています。

造園樹木以外の大木は、株元周りの太い根を切って細根を出してから移植を行うことがあります。

それは、細根が株元に少ない株は、細根を出すための準備が必用だからです。

そのため、移植がすぐ行えるわけではありません。

細根が無い状態でそのまま移植しても、樹木の成長が妨げられる事にもなります。


✫双子葉植物と単子葉植物

主根と側根がある根は双子葉植物に見られます。

双子葉(そうしよう)植物は子葉が2枚または、それ以上ある植物をいいます。

根の付け根から、同じくらいの太さの細い根がたくさん生えていて、主根と側根の区別がつかないものをひげ根といいます。

これは単子葉(たんしよう)植物に見られる根の造りです。

単子葉植物は子葉が1枚の植物をいいます。









2024/09/09

日本の造園史(9) No,710

 戦後の造園

1945年〜

戦後の復興期から石油危機(オイルショック)にかけては、国民総生産が飛躍的に伸び、これまでになく庶民の生活は豊かになりました。

反面、公害や自然破壊などの社会問題がクローズアップされるようになりました。

❉オイルショックは、1970年代に2度発生し、石油を産出する国のサウジアラビアやイランなどが、石油価格の大幅な引き上げや石油生産の削減、石油の輸出制限などを行う事によって生じた、世界的な経済的混乱の事です。


一方庭園は、以前の時代よりも更に小規模な、個人庭園が多く造られるようになりました。




特に都心部では、住宅の敷地が狭くなって広い庭園を造る事はほとんど不可能な状態でした。

こうした新しい造園的空間の特徴の一つに、樹木の植栽等を通じて自然の持っている潤いや安らぎの場を、増やそうとする目的が挙げられます。




自然が少なくなった都心部のビルの谷間や、造成された新興住宅地、集合住宅の造園、広場や公園、運動施設などが造園の新しい対象として注目されるようになりました。