根頭癌腫病
(こんとうがんしゅびょう)
病原菌学名=Agrobacterium tumefsciens(Smith et Townsend)com
バラ科植物では発病しやすいものだが、多くの常緑樹や落葉広葉樹、針葉樹、菊、かすみ草、クレマチスなど、判っているだけでも46科の植物に発病する、極めて他犯性の高い病気です。
バラ栽培面積の20%が発病し、営利生産では20億円の損失があると言われています。
根や幹(茎)の地際部(根頭)が病気になります。
苗木や幼齢木の根冠部や、根の一部に小さなコブを生じ、樹の生長とともに次第に膨大して、樹冠や太根側面では半球形、細根では球形の癌腫に発達します。
最初は類白色軟質(ゴムのような)の弾力がある「癌」ですが、のちに硬化して表面が粗造りな黒褐色から黒色と変化し、秋には肥大は停止するが、翌春から再び膨れて年毎に大きくなり、削ってもまた盛り上がってくる。
樹勢が衰える事になりますが、転移していない貴重品種などは、挿し木や接ぎ木で子孫を残すようにします。
この病気はウイルス病と違って全身病ではありません。
病原菌は、✫桿菌に属する細菌(バクテリア)で、多くの植物に寄生する土壌生息細菌です。
✫桿菌(かんきん)とは
棒状、円筒状の細菌で病原となるものにはチフス菌、ジクテリア菌、赤痢菌などがある。
桿菌には「バチルス菌」で病原菌の殺菌
病原菌は、コブやコブの崩れた組織片とともに土壌に残って伝染源のとなり、苗木が植え付けられると接ぎ木部、根部の傷害痕、害虫の食害痕など、主として根部や地際部に生じた傷口から侵入します。
傷口などから侵入した細菌は、健全細胞の遺伝子に変化を起こすと癌化し、その後は病原菌が存在しなくても癌化細胞は、異常分裂を繰り返し増殖する。
病状は感染後、一週間から数週間の潜伏期間を経て現れるが、時には数ヶ月に及ぶこともある。
感染部では地温が上昇し、樹体の生長速度が早い春から夏にかけてはコブが急速に大きくなるが、地温が下がり生長休止期になると一時的に休息する。
この病気は土壌に病原菌が潜伏するので、細菌に汚染された土壌では、植栽と同時に感染、発病に至ることが多く、特に苗木を育生する畑(圃場=ほば)など、数年に渡って連作される所では被害が著しい。
また、この他に接ぎ木などを行う場合には汚染した刃物によって感染する事が多い。
このように多くは、感染圃場や刃物によって感染した苗木、或いは購入した苗木が感染していた場合などで、病原菌が運ばれ伝染する「種苗伝播」によることが主となっている。
防除法
苗木の育生にあたっては無病地を選んで、健全な育苗を行うことが重要です。
育苗畑では連作になりがちなので、輪作するか汚染地でクロルピクリン剤、NCS、バスアミド等で土壌消毒を施す必要があり、植え直しても発病します。
「輪作ローテーションのイメージ」
植え付けの際には、苗木の地際部をよく検査し、多少でもコブが確認できたものは廃棄します。
コブを切除して外見健全と見られるものでも、すでに感染が進行していて定植後発病に至るので、このような苗木も使用しない。
また、健全な苗木であっても念の為、ストレプトマイシン500倍水溶液に一時間浸漬(しんし、しんせき)した後、無病菌地へ植え付けるようにします。
土壌への✭灌注は効果がありません。
✭灌注(かんちゅう)とは、薬剤などの液体を直接土の中に注入すること、薬液が飛散することもなく、天候にも左右されにくい方法です。
生物農薬としてアグロバクテリウム、ラジオバクター剤、「商品名=バクテローズ」は定植前処理をした苗の発病予防に効果的です。
バラの苗を移植或いは定植のたびにバクテローズに浸漬します。
20〜50倍希釈液に苗の根部を一時間浸漬処理し、根部が乾燥しないように速やかに植え付けます。
✿バラの根頭癌腫病
アビオンCA(アビロン)を幹部に塗る。
患部に尿素の粒を置く。
木酢液原液で患部を洗うようにして20cc程ふりかけてる。
数日後には患部のコブが縮小し始め、その後月に3回程度原液のふりかけを続けた結果、数カ月後には跡形もなく消滅。
通常、癌腫の患部は時間とともにボロボロに崩れて地面に散らばりますが、それとは異なる変化があったとする報告がある。
冬の植え付け時に癌腫病を発見した場合は、原液をふりかける処理を行うと同時に、根を洗った後に8倍程度に薄めた木酢液中に20〜30分浸けてから植え込みます。
尚、木酢液には不良品、偽物も多く存在します。
利用する際には十分注意が必要です。
木酢液使用の注意点については、「No,37の木酢液について」を参照してください。
✣病原細菌(バクテリア)
植物病原細菌は、植物に寄生することにより、植物体から必要な栄養源を得ています。
病斑内で増殖する病原細菌は、一般には植物細胞の✻膜透過性を変化させ、水分とともに各種有機化合物を得ているが、その中には植物が生産した糖類が多く含まれている。
✻膜透過性(まくとうかせい)とは、膜が気体、液体、溶質、イオンなどを透き通らせる(透過)性質のこと。
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