緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2025/01/10

マタタビ No,746

 マタタビ マタタビ科

木天蓼 日本、中国、朝鮮半島に分布

アイヌ語の「マタタムブ」が語源とする牧野富太郎植物学者節が最も有力とされる他、旅に病んだ人がマタタビの実を食べて元気になり、「また旅」を続けられたからという薬効説がある。

アイヌ語のマタタムブとはマタは冬、タムブは亀の甲と言う意味

日本の山野に自生しているツル性落葉植物で、よく分枝して絡みつくものがないとヤブ状に茂ることもあります。

雄花しか咲かない雄株と、果実のつく両性花の株がある。

両性花と雌花は五弁花を1個つけ、雄花は1〜3個つけるので花をよく見れば雄雌の識別ができます。

梅の花に似ていることから「ナツウメ」とも呼ばれます。

花が咲く頃に枝の上部の葉が白くなるのが特徴で、花が終わると緑色に戻る習性があります。


花は葉の陰に隠れるように下向きに咲き、直径2㌢ほどで良い香りがする。

花が咲く頃に葉が白からピンクに変わるものは、「ミヤママタタビ」と言う別種で、花も小さく猫も喜ばない。

果実は秋に黄色く熟し、果肉には独特の辛味と芳香があり、塩漬けや果実酒などに利用されます。


        「マタタビの果実」

マタタビの効能

漢方薬に利用される果実は、子房にマタタビアブラムシが産卵し、異常発達して虫コブ状に変形したものを熱湯に入れて殺虫し、日干しして粉末にしたものです。

漢方薬は冷え症、利尿、強心、神経痛、鎮痛剤などに利用されている。

猫が「マタタビ反応」を示すのは、マタタビに含まれる「マタタビラクトン」「アクチニジン」「β-フェニルエチルアルコール」という成分が猫の上顎(うわあご)にある器官を通ることで、酔っ払ったかのような状態にするからです。


植え付け場所

耐寒性が強く日陰でも丈夫に育つ、全国で庭植えができます。

やや湿り気のある土壌が適しています。

鉢植えは赤玉土5、川砂3、腐葉土2の混合土に植え、春と秋は屋外で日に当て、夏は風通しの良い場所を選んで置きます。

冬も水やりを注意すれば屋外で越冬できます。


肥料

2月頃に根の回りを掘って堆肥を100〜200g程度埋め込みます。

鉢植えは3月に玉肥を株回りに置き肥します。


せん定

庭植えは支柱仕立て、棚仕立てなどにしますが、発育が早く放置しておくと近くの木にツルを絡ませてしまうので、ツルの先端を切り詰めるようにします。

新梢も30㌢ぐらい切り詰め、花芽のつく短枝を発生させます。

鉢植えはあんどん仕立てが一般的に好まれています。

あんどんは鉢高の2.5〜3倍の高さに仕立て、あんどんの上部から果実が吊り下がるように育てるとよいでしょう。


病虫害

病虫害はほとんどありませんが、猫に荒らされて枯死することが少なくありません。









2025/01/08

スグリ(酸塊) No,745

 スグリ 

スグリ科スグリ属 落葉低木

ヨーロッパが原産で、北半球の温帯地域に広く生息する落葉性の小高木から大木です。

日本では青森県が有数の生産地

以前はユキノシタ科のスグリ属に分類されていた24属350種以上だったが、「クロンキスト体系分類」によってユキノシタ科からスグリ科が分類され、スグリ属の1属なりスグリ科スグリ属となった。

1990年(平成2年)の出版書では、ユキノシタ科と表記されているものもある。


          「スグリ」


クロンキスト体系とは

アメリカのアーサー·クロンキスト博士が1980年代に提唱した被子植物の分類体系で、ストロビロイド説に基づいている。

ストロビロイド節とは、モクレン科などの花のように花被や雄しべ、雌しべなどの構造が螺旋状(らせんじょう)に並ぶ花が最も原始的であると言う考え方に基づいています。

ストロビロイドとは、マツ科などの花、松ぼっくりのような形のものと言う意味です。

クロンキスト体系は、あまり日本では普及しなかった分類体系でしたが、海外では「新エングラー体系」に代わって広く採用されていました。

しかし、1990年代にAPG体系が登場すると、クロンキスト体系は旧分類となった。

APG体系は、20世紀来に直接生物のDNAを取り出す手段が開発され、物理的な証拠に基づいた分類体系として1998年に発表され、その後改訂が繰り返され、2017年に第4版が発表されています。

APG体系は、被子植物系統研究グループが構築した分類体系である。

新エングラー体系は、花の形態を基に植物を分類する体系で、科の特徴が解りやすく覚えやすいのが特徴です。


スグリの種類

セイヨウスグリ(グーズベリー)

フサスグリ(アカスグリ、シロスグリ、レッドカラント、グロゼイユ)

クロスグリ(ブラックカラント、カシス)などがある。

古代ローマ時代から薬用として用いられており、果実酒やリキュール、ジャムの製造(原料)にも利用されています。


特徴

枝にはトゲがありますが、キイチゴほど鋭くはありません。

マイナス30℃に耐えるほど寒いに強いが、夏の高温や直射日光には弱い樹木です。


植え付け場所

水はけがよく西日の当たらない明るい日陰で、風通しの良い場所が適しています。

庭植えは、生育が良ければ2年で開花結実し、樹高1メートル以内で100〜120果、鉢植えは5〜6号鉢で8〜10果程度の収穫が望めます。


鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、夏は強い直射日光を避けた通風の良い場所に置きます。

庭植えは、寒冷紗(かんれいしゃ)などを樹上に張って遮光する。


せん定

庭植えは株立あんどん仕立てにし、新梢がよく出ますが混み合わないように間引きせん定します。

常に枝数を10本程にします。

2年目の生育期にあんどんを作り、枝を誘引して広げます。

2年枝に開花結実しますが、2〜3年経つと枝先しか花芽が着かなくなるので、根元から切り取って新しい枝に更新していきます。

鉢植えはあんどん仕立てにしますが、枝が垂れ下がらないように誘引し、結実し終わった枝や弱い枝は、収穫後に間引き剪定を行います。

2年目に鉢高と同じくらいの高さであんどんを作り、落葉期に混み合った枝や伸びの悪い枝を切り取ります。


肥料

3月に配合肥料を一握り程度根回りにばらまき、浅くすき込んでおきます。

鉢植えは3月に玉肥を3〜4個株の周囲に置き肥します。


スグリの効能

ビタミンCが豊富で、風邪の予防や疲労回復、肌荒れなどに効果が期待できます。

疲れ目改善効果のあるカシスポリフェノールやアントシアニンが含まれ、美肌に効果的なビタミンCはレモンの6倍

疲労回復や美容にいいクエン酸、繊維質のペクチンやカリウム、鉄分、カリウムなども他の果実に比べ豊富に含まれている。

黒スグリとカシスは似ているが別々の果実です。

黒スグリは甘酸っぱい味わいで、主にジャムやデザートに使われ、カシスは酸味が強くリキュールやカクテルの材料として人気がある。









2025/01/02

不老不死の植物と言われたアロエ No,744

 アロエ ユリ科多年草

昔々医者いらずと言われた植物

アロエの起源は、アフリカやインドで太古から原住民が薬草として使用していた事にさかのぼります。

紀元前2000年頃、アロエベラは古代エジプトで「不死の植物」「不老不死の植物」と呼ばれていた。

女王クレオパトラは美容のため、アロエの液汁を全身に塗っていたと言われています。

また、アレキサンダー大王(マケドニア帝国)もアロエを愛用し、兵士の病気や怪我の治療に使い、遠征時には必ず持参していたと言われています。

アロエと言う名前はアラビア語で「苦いと言う意味の「ロエ」で、紀元前1550年の古代エジプトのミイラの膝の間から、アロエについて記述した「パピルス」が出てきました。

パピルスとは、ナイル河川中に繁茂していたカヤツリグサ科の大型の多年草で、エジプトの地に住んでいた人々が最初にパピルスを使って文字を書き始め、エジプト文明の発展と共に改善されて受け継がれてきた、今で言う紙のことです。

昔、パピルスの茎の繊維を縦横に重ねて作った紙だが、パピルスには水に溶けた原液を漉(す)くと言う工程がないため、実際は紙とは言えないものです。

日本への伝来

アロエはシルクロードを経て、中国から鎌倉時代に日本へ伝わったと言われるほど古く、これまでに500種以上もの品種が見つかっていると言われ、一番効能があるのはキダチアロエとされ、一番効能があるのは葉の部分とされています。


        「キダチアロエ」

アロエの効能

アロエには30種を超える有効成分が含まれているとされ、その成分は熱や酸、アルカリにも強く、素早く皮膚や粘膜にも浸透することが知られています。

更にアロエを乾燥しても煮詰めても、これらの有効成分は変化しません。

葉の裏に白い斑点がある「ジャンボアロエ」はハワイでも民間薬としてよく使われています。

表皮には刺激成分があって、チクチク肌が針で刺されたような刺激があるので、表皮を削り取って中身だけを使います。

アロエは苦味が効能の源であり、噛んでみて苦くないものは効力が落ちるとされています。

苦味が強いのはキダチアロエで苦味が少ないのはアロエベラです。

紀元前1世紀のローマ皇帝ネロの侍医(じい)ディオスコリデスの「ギリシャ木草」に、アロエの医薬的効能が記述されています。

侍医とは天皇、皇族、貴人づきの医者のこと

記述内容は、アロエは肌に収縮(ひきしめ、小さく)作用があり、眠りを催し、体をしっかりさせ、腹を暖かくし、胃を浄化するとあり、更に乾燥させたアロエ粉末を傷の上に散布すると傷口を癒合させる。


中国でも「政和本草」宋代の医書に、「どんな薬でも治らなかった子どもの重症の湿疹が、アロエをあぶって甘草(かんぞう)の粉末と混ぜて患部に湿布したら、たちどころに治った」と症例が記録されています。


          「甘草」


甘草とはマメ科の多年生植物で、根を干したものは特殊な甘味を持ち、薬用、甘味用とされ「あまき」や「あまくさ」とも呼ばれる。


鎌倉時代に伝わったアロエは、現在主流である「キダチアロエ」ではなく「ケープアロエ」だったと言われています。

その記録は江戸時代の文献に残っており、アロエの様々な特徴について記載があり、日本でもアロエが多用されていた事が伺えます。

ケープアロエはアロエ属で最も大型の木本性多肉植物で、葉液はヨーロッパや日本で、お通じを良くする薬(原料)として昔から使われてきました。


アロエには細菌を殺す力(殺菌力)、炎症を鎮める働き(消炎作用)、体の抵抗力(免疫力)を高めると言う3つの作用があります。


添田百枝医学博士

アロエの薬効についてはじめて解明した博士で、抗生物質研究の第一人者

トリコマイシンの発見者として知られています。

1961年来のアロエ研究で3つの有効成分を発見した。

①アロエチン②アロミチン③アロエウルシン


①アロエチン

抗細菌性、防カビ作用がある。

細菌を殺す作用と細菌の出す毒素を中和する作用があります。

例えば「おでき」これはグラム染色陽性菌で、肺炎を起こす肺炎双球菌にも効果があるとされています。

ニキビが治ったのも、アロエチンが強力な殺菌作用で皮膚の細菌を殺したからで、更にアロミチンと言う物質の働きが大きく、皮膚の免疫力を高めたからです。

その他、大腸菌、チフス菌、赤痢菌などに幅広い殺菌力を示します。

水虫菌の出す毒素を中和するので、水虫の悩みも鎮まります。

水虫の原因は白癬菌(はくせんきん)と言うカビの一種で、アロエチンにはカビや細菌を殺す力がある。

実際アロエによって水虫が治った人は大勢います。

また、インフルエンザの抗ウイルス作用もあるとされ、アロエの服用で感染が阻止され、治りも早いと言われています。


②アロミチン

抗腫瘍作用があり、ガン、肉腫、白血病への効果が確認されています。


③アロエウルシン

腫れや痛みを鎮め、傷を修復する成分

抗潰瘍作用が確認され、潰瘍(かいよう)に対して穏やかに働きかけます。

これが胃腸ポリープや腫瘍に作用して治癒(ちゆ)させている。

胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍への効能が実験で証明されています。


血糖値が下がり、肝硬変直前の肝炎が治った症例

血糖値が200㍉以上だったが、アロエジュースを毎日コップ1杯飲んだだけで血糖値が下がった。

アロエジュースにする品種はアロエベラが主として使われている。

また、肝硬変直前と言う慢性肝炎でほとんど寝たきりの生活だったが、胆石手術後もアロエジュースを飲み続けたところ、普通の仕事ができるほどまでに回復した。

昔から民間療法として、糖尿病、肝臓病にアロエが優れた効果を上げています。


アロエのネバネバした成分は「アロエボラン」と言う薬効成分で、血糖値が大幅に低下し、その持続時間は糖尿病治療薬のインスリンより長く効果があったとの研究結果もある。

アロエボランなどのネバネバした繊維には保水性があり、肌につければしっとりする。

また、ネバネバには免疫力を高める「アロエマンナン」などといった成分も確認されています。

やけどや切り傷の応急処置に最適

我慢できない痔痛(湯上がりにアロエ汁を塗る)

アロインと言う成分が排便を促進し便秘を治す

打ち身や捻挫にはアロエを湿布する

アロエ浴剤、アロエ湿布、アロエ茶、おろし汁、アロエ酒など