緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/04/20

バラ🌹(薔薇)  No.191

バラ科に属する植物

◉植物の進化の程度で見ると、バラ科は双子葉植物(最初に発芽する子葉が2枚の種子植物)の中では、中間的な位置を占めます。

※双子植物で最も原始的な科は、モクレン科で、最も進化した科はキク科です。

★バラ科

①イチゴ ②リンゴ ③モモ ④ナシ ⑤ウメ ⑥キイチゴ ⑦ラズベリーなどの果実を食用とする植物がたくさんあります。

◆花を楽しむもの

①ボケ ②ヤマブキ ③サクラ ④ウメ ⑤モモ ⑥ユキヤナギ ⑦コデマリ


バラ科が他の科と大きく異なるのは、花床=かしょう(花托=かたく=とも言う。

花柄=かへい=の末端にある、花弁やガクなどの付着する部分)が肥大し筒状または杯状になりその上部の縁(ふち)に花弁とガクとが同心円状に付着していることである。

この花床の肥大のしかたは、バラ科の中でも植物の種類により異なります。

※萼=ガク=花びらを支えるひらたいもの、多くは緑色


「バラの花の構造、縦断面図」
✻雌しべ:柱頭、子房の各部分からなります。

✻雄しべ:やく(葯)花糸からなります。


◉バラはバラ亜科に属する
バラ科は主に①シモツケ亜科 ②バラ亜科 ③サクラ亜科 ④ナシ亜科からなります。

バラ亜科には、オランダイチゴ属(いわゆるイチゴの事)ヤマブキ属、キイチゴ属、ワレモコウなどがありバラ科の中では、最も大きな亜科で、約75属=1200種が含められています。

※バラ亜科の特徴
雌しべが2本またはそれ以上あり、それぞれの中には一個ずつ胚珠=はいしゅ(将来、種子になる器官)があることです。

また、多くのもので、ガク片が脱落しないことがあげられます。

◉バラ属に含まれる4亜属
バラ属はアルフレッド.レーダーの論文(1940年)の分類をもとに
①フルテミア亜属 (葉が単葉となる)

②ロサ(バラ)亜属 (さらに10節に分けられています)

③プラティロードン(サンショウバラ)亜属 (ガク筒がカップ状になる)

④ヘスペロードス亜属 (ガク筒がカップ状になる)

※属内の分け方
①小葉(しょうよう)の数 
②ガク筒の形 
③托葉(たくよう)の葉柄(ようへい)のつき方 
④花柱=かちゅう=(雌しべの一部)のガク筒からの突出度などの特徴の違いによります。

◆バラ属の4亜属に含まれる野生種の分布図

✫バラ属の4亜属に含まれる野生種の分布図

原図作成:ツェリンスキ(Zielinski)、1985年


◆葉が単葉となるフルテミア亜属(葉が単葉で托葉がない)

バラ属は、葉が単葉か複葉(葉身が2枚以上の小葉に分かれる)かで大きく分けられる。

園芸的に改良された品種がすべて複葉なのは、バラの品種改良に用いられてきた、野生種がすべて複葉型の種であったからです。


バラの葉(複葉、5枚葉)
✻バラの葉は複葉単位で数えるので、小葉が5枚ついていても、葉としては1枚になります。

                             
単葉の野生種は、ロサ·ペルシカ1種のみで、フルテミア亜属に属します。

本種が品種改良に用いられたのは最近のことで、その後代はロサ·ペルシカの形質を引き継いでいます。

引き継がれている形質は、花の芯のところにブロッチ(目)が入ることで、単葉の形質は交雑後代には引き継がれていません。

◆ロサ·ペルシカについての参考ブログ
バラの原種のお話(1) No.82

◉ガク筒がカップ状になるプラティロードン亜属、ヘスペロードス亜属

複葉型の野生種はガク筒がつぼ状となるか、カップ状になるかで分けられます。

※ほとんどの野生種でガク筒は、つぼ状になりますが、プラティロードン亜属とヘスペロードス亜属はガク筒がカップ状となります。

※プラティロードン亜属に属する野生種には3種あり、この亜属の種はバラ属中で唯一、樹木(高木)状になることが特徴です。
(茎が大きくなり主幹を形成する)

代表的な種はサンショウバラ(ロサ·ヒルツラ)

※ヘスペロードス亜属もたいへん特殊な種類で、北アメリカの乾燥地にのみ自生する。

この種は、ロサ·ステラータとロサ·ミニュティフォリアの2種からなります。

◉托葉が葉柄に沿ってつくロサ亜属

バラ属のほとんどの野生種が含まれるロサ亜属は、托葉が葉柄に沿ってつくか、離れてつくかで大きく分けられます。

※ロサ亜属で、托葉が葉柄に沿ってつく野生種は7節があります。

この7節は雌しべの柱頭を支えている花柱が、ガク筒から飛び出るか(抽出)、出ないかで分けられます。

花柱が、ガク筒から抽出する野生種には、シンスタイル(ノイバラ)節、インディカ節があります。

※シンスタイル節には(ノイバラ)ロサ·ムルティフロラ

※テリハノイバラ(ロサ·ルキアエ)ロサ·モスカータなどが含まれ、インディカ節にはロサ·キネンシスとロサ·ギガンティアが含まれます。

◆残りの5節は、花柱がガク筒の開口部をふさぎ、抽出しない野生種からなります。
①ピンピネリフォリア節 
②ガリカ節 
③カニナ節 
④カロリーナ節 
⑤ロサ節
花のつき方、小葉数、刺(トゲ)の形などの違いにより分けられています。

◉托葉が葉柄に離れてつくロサ亜属

托葉が葉柄から離れてつく野生種には、モッコウバラ、ナニワイバラ、カカヤンバラの3節があります。

※モッコウバラは他の野生種にない特徴的な花序(かじょ)となる。

※ナニワイバラでは、小花柄とガク筒に刺毛(しもう)が密生します。


◆バラの花序(かじょ)

✻花茎に花がどのようについているか、つく順番や位置などを花序といいます。

科を判定する1つの大きな「形態的特徴」にもなります。

★バラ関連ブログ
※ローズガーデン No.57
※バラの原種のお話 No.82~No.89

※グラハム·トーマスと言う薔薇 No.91

※鉢植えのバラの花が咲かない No.213

※バラの花に秘められたもの No.223







2020/04/12

樹種別さし木の適期、植え替え時期 No.190

樹種別さし木の適期、植え替え時期


さし木の適期、植え替えの時期
アオイ   
挿し木5月下旬~7月上旬
植え替え9月中旬~10月下旬

アセビ   
挿し木4月中旬~6月中旬   
植え替え9月中旬~10月下旬

カクレミノ 
挿し木4月下旬~7月上旬  
 植え替え9月中旬~10月下旬

カナメモチ 
挿し木7月中旬~8月中旬   
植え替え9月中旬~10月下旬

カルミア  
挿し木5月上旬~6月下旬   
植え替え9月中旬~10月下旬

クチナシ  
挿し木3月中旬~6、7~8月  
植え替え9月上旬~10月下旬

サツキ   
挿し木3月中旬~7月上旬   
植え替え9月中旬~10月下旬

ツツジ類  
挿し木3月中旬~4月中旬   
植え替え9月中旬~10月下旬

ツバキ   
挿し木7月中旬~8月下旬   
植え替え9月中旬~10月下旬

ナンテン  
挿し木3月上旬~4月下旬   
植え替え9月上旬~10月下旬

沈丁花   
挿し木3月中旬~下旬7.8月   
植え替え9月上旬~10月下旬

キンモクセイ   
挿し木4月上旬~5月下旬   
植え替え9月中旬~10月中旬

キョウチクトウ   
挿し木3月上旬~下旬     
植え替え9月上旬~10月下旬


さし木の適期、植え替えの時期
アジサイ  
挿し木3月上旬~4月上旬   
植え替え9月上旬~10月下旬

イチジク  
挿し木3月中旬~6月下旬   
植え替え9月上旬~10月下旬

ウツギ類  
挿し木3月上旬~下旬     
植え替え9月上旬~10月下旬

コデマリ 
挿し木3月上旬~7月上旬   
植え替え9月上旬~10月下旬 
翌年2月上旬~3月下旬

サルスベリ 
挿し木3月中旬~4月下旬  
植え替え9月上旬~10月下旬

トサミズキ 
挿し木3月中旬~4月上旬  
植え替え9月上旬~10月下旬 

ハナミズキ 
挿し木3月上旬~5月下旬  
植え替え9月上旬~10月下旬

ボケ    
挿し木4月上旬~下旬    
植え替え8月中旬~9月中旬
翌年2月上旬~4月下旬 

ムラサキシキブ  
挿し木3月上旬~4月下旬 
植え替え9月中旬~10月中旬
翌年2月上旬~4月下旬

ヤマブキ  
挿し木3月中旬~4月上旬  
植え替え9月上旬~10月下旬

ユキヤナギ 
挿し木2月中旬~3月下旬  
植え替え9月上旬~10月                   
翌年3月上旬~4月下旬

レンギョウ 
挿し木3月上旬~下旬    
植え替え9月上旬~10月下旬

サザンカ  
挿し木5月上旬~6月下旬  
植え替え9月上旬~10月下旬
7月~8月 

イチョウ  
挿し木3月上旬~6月下旬  
植え替え翌年3月~4月、9月

ザクロ   
挿し木3月中旬~4月中旬  
植え替え9月上旬~10月下旬

さし木の適期、植え替えの時期
アスナロ  
挿し木4月上旬~下旬    
植え替え9月上旬~10月下旬

コノテガシワ   
挿し木3月上旬~4月下旬   
植え替え9月上旬~10月下旬

サワラ   
挿し木2月下旬~5月上旬
植え替え9月上旬~10月下旬

スギ    
挿し木3月上旬~5月上旬   
植え替え9月上旬~10月下旬
7月~8月

ヒノキ   
挿し木3月上旬~5月下旬   
植え替え9月上旬~10月下旬

コウヤマキ 
挿し木3月上旬~5月上旬  
植え替え翌年3月上旬~4月下旬

シンパク 
挿し木3月上旬~5月上旬  
植え替え翌年3月上旬~4月下旬 

カイズカイブキ 
挿し木3月中旬~5月上旬  
植え替え9月上旬~10月下旬


★参考ブログ
※挿し木(春さし) No.188
※さし木後の管理について No.189









さし木後の管理について No.189

さし木の管理

◉水やり
さし床はやや多めに灌水し、さし穂の切り口と床土の密着を促します。

ただし、水やりが多すぎるとさし穂を腐らせたり、土中の酸素不足の原因となるので注意が必要です。

基本的には、さし穂とさし床が乾かないように水やりを続けます。

風雨よけ
ビニールハウスの場合
通気が悪いと湿度が上がりやすいので一部を開けて通気を保つなどの工夫が必要です。

夏期はビニール内の温度が40℃以上に高まるため腐るなどの危険がある。




常緑樹の春ざしと秋ざしに主として適用し、8月の土用ざしは行わない方が安全です。

6月~7月の梅雨ざしでは、ビニールの上からヨシズやカンレイシャを2枚くらい重ねて遮光することで、高温になるのを防ぐことが大切です。




◉直射日光を避けるに日除けをする。
活着率を高めるためには、さし床が乾燥しないように灌水することはもちろん、噴霧器や霧吹きを用いて、1日に数回葉水をかけてやるのが効果的です。

グリンナーなどの蒸散抑制剤をさし穂に散布しておくのも効果的です。


◉さし木の施肥
さし木後は入念に、生長の様子を観察し、適宜肥料を与えます。適宜(てきぎ=その時々の状況に応じて行う)

さし木して新芽が出たら(およそ1ヶ月程度)ハイポネクス2000倍などの薄い液体肥料を施します。

芽がしっかりしてきたらエキヒの希釈を1000倍に高めて、根づくまでの間月に2回~3回与えるようにする。

樹種により生長度合いに差がありますが、枝同士がぶつかり合うようになったら、別の容器か、通常の鉢に植え替えます。

用土はさし床と同様で構いませんが、これを機に施肥は化成肥料や油粕などに切り替えます。

その後は冬期を除いて1ヶ月おきに1000倍に希釈した液体肥料、油粕6:骨粉2:魚粉2の混合肥料などを、さし木をしたがって年の秋から翌年の春の植え替え時期まで与え続けます。

◉ポイント
小さなさし穂はとても敏感です。
湿気が多すぎると、さし穂が炭疽(たんそ)病に冒され黒くなることがあります。

そんな場合はさし床を乾燥させるとともに、病変ができたさし穂を取り除き、さし床の用土をベンレートなどの殺菌剤で消毒します。

逆に乾燥し過ぎたり、温度が高すぎるとさし穂の葉が落ち、新しい芽が垂れ下がるという情状酌量が現れます。

さし穂に根が生えている場合は、根元にたっぷり水を与え、温度を20℃~25℃に調節するとうまく育てられます。

根がよく生えていない場合は、さし木をやり直した方がよいでしょう。

◉発根の状態
さし木をして発根するまでの日数は、樹種や同じ種類でもさし木をする時期、さし木後の管理のしかたなどによっても違いがあります。

レンギョウ、タニウツギ、サンゴジュなど早いもので15~20日

カイズカイブキ、スギ、イチイ、キンモクセイ、ツバキなど遅いもので40~60日くらい、条件が悪いと翌春まで発根しないこともある。

針葉樹では葉が緑色を呈して精気があっても、発根しているとは限らず、ひどい場合には新芽が伸びてきても発根していないことがある。

常緑広葉樹や落葉広葉樹では、新芽が伸びてきたものはすでに発根していると判断してほぼ間違いないでしょう。

古葉が葉柄(ようへい)からポロリと落ちてしまうものは、発根の見込みがあると判断されます。

葉がさし穂についた状態で枯れ、葉柄と茎がしっかりと付着して、手で触れても落ちないものは、発根の見込みがないと判断されます。

◆日覆い等の除去
常緑樹のさし木においてはもちろん、落葉樹でも緑枝ざしをする場合には、さし床に直射日光が当たらないように日覆いを行います。

この日覆いは、さし穂の蒸散作用を抑制するために設けられるものですから、発根してからは日光が当たるよう取り除いて光合成を促進させ、苗の生長を促してやらなければいけません。

多くの針葉樹など、発根するまでの日数が長いものや陰樹では、取り除く時期が遅れてもあまり影響はありません。

陽樹では、活着を確認したら早めに取り除く。

日覆いを取り除く際は、昼間はそのままにし午前中と午後だけとり除くなど、あるいは葉水をたびたび散布するなどしながら徐々に外気に慣らすことが大切です。

◉ビニール等の除去 取り除く時期

春ざしでは、3~4ヶ月後
梅雨ざしでは、さし木して3ヶ月後
秋ざしでは、翌春とするのを標準にします。

※ビニールを取り除く際は、ビニールに穴をあけるなどして徐々に外気に慣らすようにします。

◆移植
さし木をして発根するまでの日数が短く、活着後の生長が特によいものはその年の秋9月~10月頃に苗と苗の間隔をあけて移植法します。

普通は、翌春3月に移植しますが、秋ざしを行った場合、あるいは針葉樹など発根するまでの日数が長いものでは翌秋9月~10月、または翌々年の春3月頃に移植を行う方が安全です。

苗木を養成する場合には、以後1年おきに移植を繰り返し、苗と苗の間隔をあけると同時に細根の発生を促すようにします。



◉参考ブログ
※挿し木 (春さし) No.188
※樹種別さし木の適期、植え替え時期 No.190







挿し木 (春さし)  NO.188

挿し木

親木となる樹木の枝、葉、茎などの一部を切り取って発根されたものを植え付けて殖やすこと。

実生と比べて生長が早く、花木などでも短期間で開花、結実させることが出来るのが特徴です。

※実生よりも2年くらい早く開花する。

他の繁殖方法よりも実施期間に幅があり、一般に春に行う場合を「春さし」といいますが、梅雨時や秋口も適期です。

挿し木は気温が暖かく(15℃~20℃)温度が十分に保たれている時期が適しています。

発根の元となる養分を多く蓄えているのは冬ですが、この時期は気温が低いので、暖かくなり根の活動を始めた頃の「春さし」が最もよい時期と言えるでしょう。

春伸びた柔らかい枝が固まり、2回目の伸長を始める6月頃に行う「梅雨さし」も養分、水分の状態がよいので挿し木の時期に適しています。

◉挿し木のいろいろ
①さし穂に樹木の枝を用いる場合は(枝挿し)
②根を用いる場合は(根挿し、根伏せ)
③ベゴニア、イワタバコなど草木の葉を用いる場合は(葉挿し)
④カーネーション、キクなど草木の茎を用いる場合は(芽挿し)

★挿し木の時期による分け方
2月~4月に萌芽前に行う場合は「春ざし、彼岸ざし」

6月~7月の梅雨期に行う場合は「つゆざし、夏ざし」

8月に行う場合を「土用ざし、夏ざし」

9月~10月に行う場合を「秋ざし」(針葉樹と常緑広葉樹)


◆さし穂の熟度による分け方。
(枝ざしの場合)

2月~4月の萌芽前に行う春ざしでは、休眠中の枝をさし穂にするので「休眠枝ざし、熟枝ざし」という。

6月~8月の生長期間中に行う夏ざしでは、その年に伸びた新梢をさし穂にするため「緑枝ざし」という。

◉さし穂が枝のどの部分かによる分け方。

✻枝をさし穂とする場合を「天ざし」

枝の先と基部を除いた部分からさし穂を取る場合を「くだざし」

枝の先と基部に1芽だけつけてさし穂とする場合を「葉芽ざし」

★さし穂の切り口による分け方。
(切り口の種類)



★穂木を取る時は、養分を摂取する根の元となる切り口の細胞を傷めないように、よく切れる鋭利な刃物を使うことが大切。

切断した穂木は、挿し木するまで水に浸けておきます。

数時間から一昼夜
(休眠枝ざしは水上げしない)

長時間置いた場合は、切り口を切断しなおしてから使う。

切り直した穂木は、メネデールやルートンなどの発根促進剤を溶かした水に1~2時間程度浸けておく。


✿穂木の長さの目安は
✣常緑樹で10~15㎝(緑枝ざし)
          
✣落葉樹は10~20㎝(休眠枝挿し)

日当たりのよい部分に成熟している枝を選びます。

古い枝よりも生長力が強く養分も豊富な若い枝がよく根づく。

挿し木の時期によって異なるが、栄養が多く与えられている本年枝、または前年枝を選ぶ。

穂木を取る時間帯は、植物の活動が盛んな日中は避け、朝(午前7時~9時)または夕方(午後5時~6時)に取る。

◆さし穂に用いる枝の採取
※マツ類
カラマツ、ヤマモモなどの挿し木の活着率が低い樹種では、なるべく樹勢が強い若木からさし穂を採取することが大切です。

※ヒバ類
コウヨウザン、ヒマラヤスギ、メタセコイアなどのように枝が横に長く伸長する性質のものは、出来るだけ上向きの枝または樹芯に近い上向きの枝からさし穂を採取しないと、苗がまっすぐに伸長しにくい性質がある。


落葉樹のうち、生育活動を開始するのが早い樹種を春ざしにする場合、1月下旬から2月頃に枝を切り取って貯蔵しておいたものを、挿し木の最適期である3月から4月上旬に取り出して挿し木することがある。

これは、挿し木適期に採取するとすでに生育活動が開始しているため、枝の養分が消費されつつあり、その為に発根力が弱まるという理由によります。

1月下旬から2月頃に切り取る枝は、30~40㎝の長さにして束ね、土中に埋めておくか、ビニールに包んで冷蔵庫15℃で保存。


◉土中に埋めて保存貯蔵の仕方。



◉さし穂の葉数
さし穂に蓄えらている養分によって発根することを考えると、葉は多いほど活着率が高まると考えられます。

しかし、葉数(あるいは葉の面積)が多いとそれだけ蒸散作用が活発になり、さし穂が乾燥しやすくなりますので、御互いにバランスを保てるように調整する必要があります。


※アジサイ類のように、特に大きな葉をつけるものでは、2枚残してさらに葉を半分に切ります。

※サンゴジュ、ツバキ、カクレミノ程度の葉のものは2枚から3枚が目安です。

※サツキ、ツツジ類のように小さい葉をつけるものでは8枚から10枚が目安です。

※マツ類、スギ、イチイ、キャラボクなどの針葉樹では、さし穂の基部3分の1くらいの葉を取り除く。

針葉樹以外の広葉樹においても基部3分の1くらいの葉を取り除く。

◉挿し木の時期②

2月から4月の萌芽前に休眠枝を用いて挿し木する方法
常緑広葉樹、落葉樹広葉樹、針葉樹のいずれも適用。

6月から7月の梅雨ざし、8月の土用ざしは原則として常緑広葉樹に適用されますが、落葉樹、針葉樹でも行われることがあります。

9月から10月の秋ざしは原則として針葉樹と常緑広葉樹に適用されます。

最も安全なのは2月から4月に行う春ざしです。

ツバキ、サザンカ類、サンゴジュ、モッコク、ゲッケイジュなどの常緑広葉樹は一般に6月から7月の梅雨ざしを行うのが最も安全です。

★注意⚠️
冬期に霜柱が生じてさし穂が動くとか、耐寒性の弱い樹種では、ビニールで防寒しなければならないことなどを考えると、特に露地で大量に挿し木する場合などは、この時期には行わない方がよいでしょう。

◉発根促進剤
植物ホルモンと同様の働きをします。

※さし穂の切り口にまぶして使用するもの(タルク剤)
ルートン、オキシベロン、ルチエース

※希釈液に浸して使用するもの
メネデール、ハイフレッシュ

※砂糖水の1000倍液を代用
★挿し木が比較的難しい樹種では、これらの薬品で処理してから挿し木するようにする。

◆さし床を作る
さし床を作るときは、保水性、排水性、通気性をよくすること。

切り口が腐らないように清潔な土であることが大切です。

樹種によって若干異なりますが、一般には赤玉土を使い、サツキなどの酸性土壌を好む樹種には、鹿沼土を用います。

小粒と中粒を用い、箱の底に中粒を敷いて上部に小粒を入れます。

赤玉土に砂土など混ぜた混合土にすると、通気性は更に向上します。

赤玉土に砂やピートモスを2割くらい混入したもの、あるいはバーミキュライトを単用する。

挿し木する本数が比較的少ない場合は、木箱表焼き鉢などに用土を入れて床を作る。

挿し木する本数が多いときは、畑や庭に直接床を作りますが、この場合は砂壌土の土地とし、排水性が悪い場所では、砂などを混入してから床を作る。

★穂木には、肥料を吸収する根がありませんから、施肥の必要はありません。

発根後は水で薄めた液肥を少量ずつ与えるようにする。




◉さし方
さし床は、さし木を行う前に十分灌水して土を落ち着かせておく。

直接土に挿すと穂木の切り口が傷むことがあるので、あらかじめ割りばしなどでさし床に2~3㎝程の深さの穴を等間隔にあけておきます。

全体の3分の1くらいを目安にし、挿した後は手で押さえるなどして土をよく密着される。


さし穂の用土に挿す部分3㎝にある葉や芽を除去します。

葉の大きなものは、蒸散作用を抑えるため、さらに上部の2~3枚の葉の先端を切ります。

◆さし穂を痛めないようにピンセットを使用してさし床に挿します。表面に対して垂直に挿します。



◉さし穂が倒れないように穴の細かいジョウロなどで静かに水を与えます。


◆参考ブログ
挿し木後の管理について No.189
樹種別挿し木の適期、植え替え時期 No.190






2020/04/07

花のない植物 コケ 胞子隠花植物 No.187

シダ、コケ、藻類、菌類

胞子隠花植物(ほうしいんかしょくぶつ)

◉シダ、コケ、藻類、菌類などは胞子隠花植物と言って胞子で繁殖します。

※胞子とは、菌類や植物が無性生殖(むせいせいしょく)をするときにつくる生殖細胞のこと。



◆隠花植物とは

植物界を花の有無で2つに分けた時に、花のある植物を顕花(けんか)植物と言います。

これに対して、花を持たない植物のことを隠花植物と言います。

これは高等植物以外の植物を一括して指すのに用いられます。

★シダ植物の胞子は発芽するとまず前葉体·ぜんようたい(配偶体)をつくる。

これは生殖器官を持っていて、卵と精子をつくりこれが受精してシダの体が芽生えます。

※配偶体とは、シダ植物やコケ植物などの多くの植物は、有性生殖を行う世代と無性生殖を行う世代とが交代します。

有性生殖を行う世代は、配偶子を作るので配偶体と言います。

無性生殖を行う世代は、胞子を作るので胞子体と言います。

コケ植物では、胞子が発芽して原糸体と言うものになります。

原糸体(げんしたい)とは、胞子が発芽して糸状になった状態のことで糸状体(しじょうたい)とも呼ばれます。

これから更に生殖器官を持った、雌性(しせい)と雄性(ゆうせい)のコケの体が発芽します。



◉コケの栄養源

コケは同じ隠花植物であるシダと比べても、体のつくりが簡単にできています。

普通の植物が栄養の多くを吸収する根を持っていますが、コケは持っていません。

仮根と呼ばれる細長い細胞からできたものがあります。

しかし仮根は体を支える程度の役目しかありません。

コケはたくさんの葉緑体で朝夕のわずかな光や空気中の湿度、炭酸ガスで養分をつくって(光合成)育ちます。

仮根からはほとんど水分も栄養も吸収しないでコケは育つことができます。

このため少量の油粕でさえも、腐ったり蒸れたりすることで害する方が大きく、コケのための肥料は利がないと言えるでしょう。

◆肥料のかわりの栄養剤

肥料に含まれるチッソ、リン酸、カリ、マグネシウムなどを吸収できないものの、微量でも徐々に長期間溶出するミネラル(リン、カルシウム、マグネシウムなど)は、コケの生育に良いと言われ、葉の色が良くなるようです。

※ミネラル(灰分)を多く含有する炭が最適。

ただし、粗悪な炭には、植物の生育を害する炭化水素類の残留があるので、備長炭は灰分(ミネラル)が多く、揮発分がとても少ない灰で、植物の根腐れ防止、発根を促進し、コケの生育にも期待できる炭です。

アサヒビールが販売している培地資材(オーキッドベース)は備長炭と同等の含有ミネラルがきわめて豊富です。

コケ園芸でのミネラルを含んだ培地資材としては、オーキッドベースと備長炭がお勧めです。

★生育不良のコケに効果が期待できるもの。

木酢液、竹酢液、HB-101、オーキッドベース

苔玉に混合するには、つぶ備長炭や中粒のオーキッドベースが使いやすいでしょう。

どちらも重く水に沈むので苔玉の下の飾り砂として使っても生育に効果が期待できるでしょう。





◉参考ブログ
※木酢液について No.37
※苔玉盆栽 No.52
※コケ(苔)の話 No.81
※コケの胞子 No.90
※小さな盆栽、苔玉を暮らしの中に No.97
※苔玉、鉢植えのコケ管理 No.165






2020/04/04

桜の樹に付く代表的な害虫 No.186

桜の樹に加害する害虫

◉アメリカシロヒトリ(fall  webworm)
(麟翅目·りんしもく)ヒトリガ科

葉上に灰白色の吐糸で巣を作り、中に毛虫が群生して葉を食う。

被害は6月から8月にみられ、ときに大発生してきわめて大きな被害となる。

通常、年2回の発生であるが、近年3回発生する系統が発生し、近畿地方以西の地域でも発生が続いている。

樹皮の割れ目や根際でサナギで越冬し、第1回成虫は4月下旬から5月に発生して葉上に700~800粒の卵の塊を産み付けます。

幼虫は卵塊ごとにまとまった巣を作り群生するので、発生の多いときには枝の先々に多数の巣が見られる様になり、一目で本種の被害とわかる。

          (アメリカシロヒトリ幼虫)

第2回成虫は7月中下旬、この幼虫は8月中下旬に発生する。

2世代のものは9月に蛹化(ようか)して越冬に入るが、3回発生のものでは更に9月~10月に幼虫が現れて食害を続け、11月に越冬に入る。

卵は葉裏に産みつけられ成虫の体毛で覆われている。

老熟幼虫は約30㎜、活発に行動し巣付近の葉を食いつくすと移動して新しい枝に移り、食害を続ける。

※1945年頃東京都と神奈川県で発見されたが、太平洋戦争直後の混乱にまぎれてアメリカ軍の貨物について北アメリカから侵入したと推定された。

たちまち首都圏の庭園樹、街路樹、公園樹の大害虫になった。

その後各地に分布を拡大して定着したが、西日本では散発的な発生が確認されたものの定着せず、関東から中部地方にかけての様な発生を見る事はありませんでした。

ところが1980年頃から定着するものが見られる様になり、これが3回発生する系統である。

          (アメリカシロヒトリ成虫)

侵入後30年を経て、新たに3回発生する系統が生まれ、これが関東以西の各地に定着するようになった。

きわめて雑食性の害虫で、100種類以上の加害植物が記録されている。

★被害の甚大なものとして
サクラ、プラタナス、ヤナギ、トウカエデなどがあり、ミズキ、クワ、キリ、ハンノキ、ニセアカシア、フジ、シンジュ、トネリユ、シラカンバ、ケヤキ、ナシ、リンゴなどの被害も大きい。

◆防除法として
被害の進展が速いので、樹上の巣を見つけたら早急に切除して処分する。

薬剤防除では、スミチオン、ディプテレックス、DDVP(劇物)、オルトラン、カルホスなどの効果が高いが、高い木では防除が困難で特殊な防除器具を必要とする。

また、都市部での化学殺虫剤の散布は問題が起きやすいので、微生物殺虫剤として開発されたBT剤(バチルス·チューリンギエンシスを製剤化したもの、ダイポール、トアローCT、チュウリサイドなどがある)を利用するとよい。

害虫量が多い時は火をつけた棒で焼くか、薬剤散布。

幼虫は樹皮の隙間などで、サナギ状態で越冬するので、秋に樹の幹にムシロを巻いておき、冬場にこれを焼却(2月頃)


◉オビカレハ(tent  caterpillar)
麟翅目カレハガ科 別名テンマクケムシ
樹幹や枝の分岐部に巣網が張られ、内部に幼虫が群生してすむ。

昼間は巣の中に隠れていて夜間になると集団で外に出て葉や新芽を食害する。

幼虫は老熟すると昼夜の区別なく樹上にいて食害を続け、大きな被害となる。
発生は春から初夏

※天敵はクモ類
年1回の発生、小枝に産みつけられたリング状の卵塊で越冬し、3月下旬頃ふ化して枝の分岐部に天幕状の巣網を張る。



      (オビカレハの卵) 

灰白色楕円形の卵が200~300粒くらい集まって小枝を巻いて産卵する。


幼虫は巣内部で休息するが、付近の葉を食いつくすと巣網を移動させて新たな葉を食害、成長につれて巣網も大きくなるのでよく目立つ。

老熟幼虫は巣から分散し、付近の葉上にマユを作って蛹化(ようか)、成虫は暖地では6月、寒地では7月~8月に発生する。



※花が咲いている頃に、枝先付近の花柄が密集した部分に、巣を作っているので、よく観察することで早く駆除できる。


      (オビカレハ幼虫)

成虫は黄褐色で夜間に活動して灯火にもよく飛来する。


        (オビカレハ成虫)

バラ科植物をはじめ、ヤナギ、ニレ、クヌギなどかなり雑食性である。被害はサクラ、ウメに最も多く見られる。

★防除法として
樹上の巣網を発見して除去する。
薬剤散布では幼虫の発生期にスミチオン、ディプテレックス、カルホス、オルトランなどが有効であるが、サクラはサトザクラなど品種によって薬害が発生しやすくなるので注意が必要である。

冬期落葉後は樹枝の卵塊がよく目立つので、剪定の時または見つけ次第処分しておく。


◉モンクロシャチホコ(cherry   caterpillar)
麟翅目シャチホコガ科

このケムシは9月頃に発生し、葉裏に赤褐色(若齢期)で光沢ある幼虫が群生して葉を食害する。

その後葉上に紫黒色(しこくしょく、老熟幼虫)に変わって黄白色の長毛がはえます。

葉を暴食し、大きな被害を見るようになる。

敵が近づくと、頭と尾を上げて反らす習性があり、この姿からフナガタケムシとかシリアゲムシと呼ばれ、この格好からすぐに判別出来ます。

(モンクロシャチホコ老熟幼虫)

老熟幼虫は体長50㎜内外、樹を降りて浅い土中でマユを作って蛹化し越冬に入る。


幼虫の食害によって全葉が食いつくされることも珍しくありません。

こうした場合には花芽も食害されて翌年の花数を減らすほか、葉が無くなって秋の時返り咲きの原因となる。

サクラ、ウメの被害が特に大きい。

◆防除法として
発生が多い時は、薬剤を散布します。

薬剤はスミチオン、ディプテレックス、MEP、エルサンなどが適しています。

年に1回、7月頃に成虫が発生し、その次の世代が被害を起こします。

そこで7月に発生する成虫の量が多い時は、予防剤を散布します。

成虫の量は、灯火に集まる量で判断します。

◉ゴマダラカミキリムシ(whitespotted  longicorn beetle)
甲虫目(こうちゅうもく)カミキリムシ科

樹幹内に幼虫(別名テッポウムシ)が侵入し、樹皮下、材部を食害し、枯死をまねく。

被害樹からは細かいおが屑状の虫ふんが排出され、地ぎわ部の上に積もっている。


           (ゴマダラカミキリムシ成虫)


成虫は体長25㎜~35㎜
発生は年1回または2年に1回、寄主植物によって成長に遅速があるようである。

5月下旬頃から成虫が現れ、カエデ、モミジ、ユキヤナギ、バラ、ミカン類などの被害も緑枝をかじって剥皮し、このため枝枯れが続出してこの被害も軽視できない。

成虫発生の最盛期は7月中旬であるが、発生は9月頃まで見られ、遅い場合では10月に成虫を見ることがあるから、かなりダラついた発生をしているようだ。

成虫は7月中下旬頃、樹皮下に産卵する。

産卵する部位としては、地ぎわ部が多く、幼虫も地ぎわ部から根にかけて食害する。

老熟幼虫は体長約60㎜、幼虫で越冬し、翌春蛹化して続いて成虫が羽化する。

ミカン類の重要害虫として知られるが、かなりの雑食性で庭園樹での被害も大きい。

◆防除法として
成虫は見つけ次第捕殺します。

また、成虫が産卵するときに幹に傷をつけるので、傷跡を探して、その部分を切り出すか、たたいて圧殺する。

食入口(虫ふん排出孔)を見つけた場合は、穴にスミチオンなどを注入して穴をふさぎます。

しかし、根部まで入った幼虫は発見しにくいので手遅れになることが多い。


4月の発生時期に、サッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。

成虫の発生最盛期には、エルサン、パプチオン、スプラサイドなどを散布すればよいが、産卵防止のため、樹幹にサッチューコートSやトラサイドなど樹幹塗布剤を地ぎわ部から20~30㎝くらいの高さまで塗布しておく。