緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2022/09/27

植物に必須な元素 No,617

 植物に必要な中量要素

チッ素、リン、カリウムの三大要素に次いで、重要な成分であるカルシウム(Ca)マグネシウム(Mg)イオウ(S)に「中量要素」と呼びます。

カルシウムは、植物の細胞分裂や組織形成に関わる成分で、不足すると新芽の先や葉の先端の色が白っぽくなり、枯れてきます。


カルシウムは細胞壁成分の1つであるペクチン酸のカルボキシル基と、架橋を作ることによって細胞壁の構造の維持に関わっている。

大半は細胞壁や細胞膜などの部分(アポプラスト)に存在し、細胞質内の濃度はごくわずかで、ショウ酸と不溶性の塩を作って液胞中に存在する。


細胞質内ではタンパク質(カルモジュリン)と結合し、セカンドメッセンジャーとして機能している。

その他、ATPase、ホスホリパーゼなど膜結合性酵素を賦活化する。

❉賦活化(ふかつか)
活力を与えること、活性化


❉ホスホリパーゼは、リン脂質を脂肪酸とその他の親油性物質に加水分解する酵素である。

触媒する反応の種類により、A.B.C.D.の4種に大きく分類される。

❉触媒(しょくばい)とは、一般に、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものを言う。

化学的には触媒は、化学反応を促進させるような物質のことである。


マグネシウムは、葉緑素を構成する元素で、すべての植物にとって重要な成分です。


不足すると、古い葉から順に葉脈と葉脈の間が黄色くなってきます。

マグネシウムは、葉に含まれる約10%はクロロフィルの構成成分となっているが、70%は水溶性で多くの酵素の活性化や、細胞pH調節アニオン(陰イオン)のバランス維持に重要な役割を果たしている。


酵素タンパクと「ATP」との間に、架橋を作りリン酸化反応を助ける。

また、「グルタミン合成酵素」の活性化やタンパク質合成系に関与する。


ATP(アデノシン三リン酸)とは、すべての植物、動物及び微生物の細胞内に存在するエネルギ分子です。

細胞の増殖、筋肉の収縮、植物の光合成、菌類の呼吸及び酵母菌の発酵などの代謝過程にエネルギーを供給するために、すべての生物が利用する化合物である。

グルタミン合成酵素は、細胞内の窒素利用を制御する上で中心となる酵素である。

グルタミンはタンパク質を作るだけではなく、DNA塩基やアミノ酸のように窒素が多く含む分子を作る酵素に、窒素原子を渡すのにも使われる。

そのため、グルタミンを作るグルタミン合成酵素は、慎重に制御されなければならない。


イオウ(硫黄)は、タンパク質、アミノ酸、ビタミンなどを構成する元素なので、全く無いと植物は生育できません。

火山の多い日本では、天然の土壌中に含まれているので不足することは殆どありません。


鉄、マンガン、ホウ素などの量としてはごく微量でも、植物の生育に欠かせない元素を「微量要素」と呼びます。

天然の供給、又は培養土や堆肥などの資材に十分に含まれているので、不足することはほとんどありません。

植物は根から硫酸イオンの形で吸収する。

葉からも少しではあるが空気中の二酸化硫黄(無機化合物)ガスを吸収する。

硫酸イオンは還元されて、含硫アミノ酸などの有機化合物に変化し、一部はそのまま膜の糖脂質(スルホリピド)に組み込まれる。









2022/09/24

三大芳香花 No,616

 どれだけ香るというの?

かつてキンモクセイは、トイレの消臭剤としてその香りがよく使われていました。

「九里香=きゅうりこう」の別名を持つことからも分かるように、強い芳香があります。

九里は日本の1里で約4kmですから36kmにもなります。

キンモクセイの原産地である中国の1里は400〜500㍍ですので、10分の1程に短縮されます。

それでも相当な距離になります。

強い香りでトイレの臭いを消すためと言われていますが、実際には無理があります。

「秋の香り」とも言われるキンモクセイの香りは、10月の上旬に10日間ほど香るだけです。

なので、トイレの横に植えたとしても消臭作用は、ごく短期間しか発揮することはできません。

長らくトイレの消臭剤として使われてきたキンモクセイも、現在ではほとんど使われなくなりました。

一方、この九里香に対して「七里香」の名を持つ植物が「ジンチョウゲ」です。


早春に「ダフネチン」という香り成分を持つ花が咲いて、甘い芳香を漂わせます。

また、歌謡曲に「旅路の果てまでついてくる」と歌われる「クチナシ」の花もすごい香りですが、旅路の果てまでが一体何kmなのか?と疑問ですが、どれだけ臭うのかと言う話です。

様々に例えられた3種のキンモクセイ、ジンチョウゲ、クチナシは『三大芳香花』とされています。


✿関連ブログ記事
キンモクセイNo,290
ジンチョウゲNo,7.No,134
クチナシ(アカネ科)No,6








2022/09/23

虫を惑わす植物の香り No,615

 虫を惑わす色香

数ある花の中には強すぎて嫌われる香りがあります。

ユリの女王と呼ばれる「カサブランカ」

「カサ」が家、「ブランカ」が白色、スペイン語で「白い家」を意味しますが、レストランなどの料理店では、料理の香りがこの花の強い香りに負けてしまう事から、敬遠されています。


        「カサブランカ」


そのため、香りを抑えた品種が作られていますが、そこまでしても『飾りたい』と思われるのもこの花の美しさからでしょう。


一方、「官能を刺激する香り」と言われるのは「イランイラン」という花の香りです。

この花の名前はタガログ語で「花の中の花」を意味し、香りはとても官能(特に性的感覚)的で東南アジア(フィリピン、インドネシア)では、新婚カップルが夜を過ごす部屋に巻き散らかす花として知られています。


        「イランイラン」


イランイランノキはバンレイ科の東南アジア原産であるが、世界中の熱帯地域で栽培され、香料や材、観賞用に利用されている。

特に花から抽出される精油は、様々な香水に利用され、アロマテラピーにも用いられています。


『芳香が百里漂う香り』と言われる滋賀県伊吹山に自生する「イブキジャコウソウ」別名を「百里香=ひゃくりこう」といい、全体に麝香(じゃこう)のような香りがする。



❉イブキジャコウソウ シソ科
別名=イワジャコウ、ナンマンジャコウソウ

基本は高山植物

人間の場合、「色香で惑わす」と言うような言葉はあまり良いとされる表現ではありませんが、植物は確実に色香で虫を惑わし、誘い込むという生き方をしています。


そのために花には色々な香りがあり、香りは虫を誘う役割をしているのです。


❉麝香(じゃこう)とは雄のジャコウジカの腹部にある麝香腺(香りを入れる袋)から、(雄1頭から約50g)得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種でムクスとも呼ばれる。


麝香は甘く粉っぽい香りを持ち、香水の香りを長く持続させる効果があることから、香水の素材として古くから重要されてきた。








2022/09/22

グレープフルーツ No,614

 グレープフルーツ ミカン科

原産地=西インド諸島のバルバドス島

別名=ポメロ、トローニャ、パンプルムース

黄色い実がブドウの房のように鈴なりにつくのでこの名がある。

果肉は白色、薄い紅色、赤色、レモンイエローなど


       「グレープフルーツ」


グレープフルーツはマレー原産のザボンもしくはブンタンが中国を経て、西インド諸島に渡り、1750年代に西インド諸島のカリブ海のバルバドスで発見されたものが最初とされ、自然に交配した変種と言われています。


         「ブンタン」



ザボンとオレンジの雑種とする説もある。


          「ザボン」


グレープフルーツの名が初めて用いられたのは1814年のジャマイカとされ、その後、1830年頃にアメリカのフロリダに伝わり、テキサス、カルフォルニア等に伝わって大規模な生産が始まったとされている。

グレープフルーツの起源には、はっきりしない部分があると思います。


          「オレンジ」

栽培地

日当たりや水はけのよい深い土層が敵地ですが、ミカン類の中では寒さに弱い種類であるため、日本国内で庭植えできる地方は限られることになります。


九州、四国などの温かい地方で、冬に風の当たらない陽だまりになるような場所であれば、育てることも可能でしょう。



鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、
日当たりの良い場所に置き管理します。

冬の温度管理が大切なので、暖かい室内で保温し、夜間でも5℃以下にならないように注意します。

暖房設備のある家庭でも夜間は暖房を停止する事が多いので、必要とする温度を保てず失敗することがあります。


場所によっては簡単な温室が必要になります。

11月から3月末まで暖かい部屋に取り込んで冬越しさせます。


肥料

庭植えは2月に根周りに溝を掘って、配合肥料を200〜300g程度埋め込みます。

鉢植えは毎年4月に玉肥を3〜4個根周りに置き肥します。

鉢植えは水やりも大切ですので、表面が乾いたらたっぷりと与えます。

せん定

庭植えは主幹形仕立てにします。

花芽は枝先につくので基本樹形ができたら間引きせん定を主に行います。


混み合った枝を根元から切除して内部まで日当たりをよくしてやり、主枝は定期的に更新して新しい結果枝を発生させます。


鉢植えは模様木したてにして、鉢の高さの2.5〜3倍の樹形にします。

年数が経つうちに根が肥大して根詰まりしてくるので、5年目には植え替えが必要です。

5年後は1年おきに植え替えを行い、根の状態を良好に保ちます。

また、2年目の6月には、主幹と主枝に針金をかけて樹形を整えます。


果実の管理

人工受粉を行う必要があります。

多くの花が開花しますが、自然落花も多く、鉢植えで結実するのは一株で3〜4果です。

この中で形がよく大きいものを1〜2果選んで残し、他は摘果して養分を残した果実に集中させ、肥大させるようにします。


嗅ぐだけで痩せる香り

アメリカの医学博士アランハーシュが、様々な年齢の人の体にいろいろな香りを振りかけて、何歳に見えるのかを答えてもらう実験をしました。

すると、ほとんどの香りは振りかけても年齢相応に見えた中で、「グレープフルーツ」の香りをかけた中年女性は6歳若く見えるという結果が出たと言う。


グレープフルーツの香りについては、2005年に大阪大学の研究グループが「嗅ぐだけでダイエット効果がある」と発表しています。

しかし、実際にその効果がどれくらい大きいかは不明ですが、香りの成分から一応理論的に裏付けをすることはできます。


グレープフルーツの香りの1つは「ムートカン」という成分で、これは交感神経を刺激します。

刺激された交感神経は、興奮と緊張状態をもたらすので、エネルギー消費され、それを補うために脂肪が燃焼します。

グレープフルーツの香りを嗅ぐと痩せると言われるのはそのためです。








2022/09/20

日本の胡椒(こしょう) No,613

 山椒(さんしょう)

山椒は日本原産、ミカン科の植物と言われ、縄文時代の遺跡の中から山椒の入った土器が出土したことから、古くより利用されていと考えられ、そのため日本最古のスパイスとも呼ばれています。


しかし、現在のように香辛料として使われていたかは定かではないとされている。

山椒の原産地は2説あるとされ、中国でトウザンショウの果実を花椒と称し、香辛料として使われているのでそこから来たものであるとする説と、中国の花椒は山椒と別種であり日本が原産であるとする説がある。



     「サンショウの若葉」



若芽や葉、花や実なども香辛料として使われ、捨てるところがない。

太平洋戦争後に、香辛料や薬品原料として山椒の需要が急増したことで、畑での本格的な栽培が始まり、栽培面積も広がっていった。

サンショウはコショウと同じように香辛料として使われ、実は小粒でピリリと辛い。

また、実が弾けることから「はじける実」「はじけた実」という意味で、古くは「はじかみ」と呼んでいた。


    「山椒の実、4月18日」


葉っぱは強い香りがありますが、この香りは病原菌に感染しないためであり、また、虫や動物にかじられないためにも役立っています。

香りの成分はリモネン、ゲランオール、シトロネラールなどで、葉っぱは日本料理の食材にも使用されます。


「木の芽」とは山椒の若い葉を指し、木の芽和えとしても食される。

また、木材はすりこぎ棒に使われます。

食べすぎると腹痛や下痢などを引き起こすことがあるので注意が必要です。

山椒の適正な摂取量は定められていませんが、一回分の適量として、0.2〜0.3g程度が目安とされている。


❉関連ブログ記事
サンショウ(山椒) No,201








2022/09/18

根の光屈性と重力屈性 No,612

 光と反対方向に伸びる

植物の根は地中に向かって、茎は空に向かって成長します。

これは植物が重力の方向を感じとって行う「動力屈性」と呼ばれる反応です。


重力屈性は1985年頃までは「屈地性」と呼ばれていました。

動力屈性には、オーキシンという植物ホルモンが関与しています。

❉オーキシンはほとんど茎に対して根の方向にしか移動しない。

天然オーキシンと合成オーキシンに分類される。


種子が初芽すると根は必ず下に向かって伸びます。

芽の代わりに地上に根が出てくることはありません。

「なぜ根は下に向かって伸びるのか」というその理由の1つは、根には光と反対方向に伸びる性質があるからです。

芽が光に向かって伸びる「光屈性」に対して、これを「負の光屈性」と言います。

しかし、真っ暗な地中でも根は下へ伸びて行きます。

なので、根が下に伸びるのは「負の光屈性」という性質だけによるものではありません。

根には重力を感じ、その方向に伸びるという性質があります。

光のない真っ暗な中で発芽したものを、土中から抜き取って水平に置いておくと、根の先端はやがて下向きに曲がり、下に向かって伸び出します。

これは根の重力に対する反応であり「重力屈性」と呼ばれる性質によるものです。


根が下に向かって伸びる現象は、負の光屈性と重力屈性が支配さているということになります。

植物が、刺激の方向に支配されて運動する性質がある「屈性」には色々ありますが、実際、根が下に向かって伸びることに関しては、負の光屈性と重力屈性であるとされてきました。


しかし、それだけではないことが分かってきました。

そこで考えられるのが「根は水分を求めて伸びるのではないか」という可能性とする、水分が刺激となる「水分屈性」である。

根は水分を求めて伸びる性質がある


土の表面近くが乾いていても、地中深くには水分が存在し、その水分を求めて根は下に向かって伸びて行くのではないかと考えられます。

しかし、地球上には重力があるので、根が水分屈性で下に伸びていることを、重力屈性と切り離して証明する事は難しい。


そのため、水分屈性の関与についてはこれまで言及されてきませんでした。

しかし、近年、主に3つの事実を根拠として、水分屈性の関与がはっきりと認められています。

1つ目は、根が水を求めて伸びる現象で、例えば土の中の排水管などの割れ目から水が漏れていると、根が割れ目に向かって伸びる現象が観察されています。


2つ目は、重力を感じることがない突然変異体が「シロイヌナズナ」という植物で作られたことです。

❉シロイヌナズナとは、アブラナ科の植物で、遺伝子数が少なく、植物として初めてゲノム(遺伝子と染色体)情報が明らかにされているため、現在ではモデル植物(研究用植物)として様々な研究に利用されている。


       「シロイヌナズナ」


この突然変異体の根は、重力を感じることはないが、土の中深くに多くの水を求めて、下に伸びて行くということです。


3つ目は、宇宙ステーションでの実験です。

重力のない宇宙ステーションの中でも、シロイヌナズナの種子は発芽し、根が下に伸びたということです。

この時、発芽した芽生えの下には、岩石を加工して水を含むようにしたロックウール(保温材等として使用される)という物が置かれていましたが、無重力にも関わらず、根はロックウールに含まれた水を求めて伸びたのです。

地球上では重力があるため、水分屈性という性質が見えにくいが、無重力の宇宙でははっきりと水分屈性が示されたということです。