緑のお医者の徒然植物記

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2020/04/26

カイドウ(海棠) No.194

カイドウ(海棠)バラ科 落葉広葉樹

別名=ハナカイドウ
中国西部原産のバラ科リンゴ属

日本には室町時代(15世紀後半)に実の大きいミカイドウが渡来し、江戸中期(18世紀初頭)頃に花の美しいハナカイドウが伝えられました。

樹勢が強く、暑さ寒さにもよく耐えることから、伝来当初から幅広く親しまれて、北海道南部から沖縄に至る各地で栽培されている。

放任すると樹高は8㍍にも達します。

剪定にも強く小ぶりに仕立てて鉢植えや盆栽にも盛んに利用されています。

園芸品種としてもっとも多く栽培されているのは、長い花柄の先に桜に似たやさしい色合いの、ピンクの花が下垂して咲くスイシカイドウ(垂糸海棠)です。

桜の花が終わりかけた頃から咲き始め、5月中旬~6月上旬頃まで花が咲きます。

いかにも女性的な趣きの花で、中国では牡丹と並ぶ人気の花木です。

その様子を酒に酔って寝た気にしている、美女楊貴妃にたとえ、「睡花」と言う別名があります。

日本にも文学作品などで「雨に打たれる海棠の風景」と美女を表する言葉が見られます。


                      「ハナカイドウ」


秋には直径5~10㍉ほどの小さな黄色い実がなります。

一方、ミカイドウはスイシカイドウと比べて花柄が短く、花の美しさでは一歩譲りますが、秋には直径20㍉位の実がなり食用になります。

中国ではミカイドウの方が多く栽培されていて、江戸時代までは日本でも単にカイドウと言う場合は、ミカイドウを指していました。

現在ではハナカイドウを指すことが多いようです。

園芸品種では花を楽しむハナカイドウが多く、八重咲きでボリューム感のあるハナヤエカイドウ

さらに大ぶりの花をつけるオオヤエカイドウ

枝垂れ性のシダレカイドウ

花が上向きに咲き鉢植えに向くウケザキカイドウ(ベニリンゴ)

葉に白い斑が入るフイリカイドウなどがあります。

また、ピンクにうっすらとぼかしが入る花を咲かせるズミ(ミツバカイドウ)は、庭木として楽しむほか、樹勢が非常に強いことから、他のカイドウの接ぎ木台木としてもよく利用されます。

◉カイドウの生育管理

花木の中では極めて樹勢の強い樹種です。

土質は特に選びませんが、花つきをより良くするためには、日当たり、水はけがよいことが条件になります。


植え付けや移植は、落葉期の11月から3月が適期で、寒い地方では春植えする。

植え穴は大きめにして、堆肥や腐葉土をよくすき込み、高植えにし、保水性を高め根の発育を助ける工夫をする。


※移植にはあまり強くないので、成木を植え替える場合は半年ほど前から★根回しをしておきます。

★「根回し」とは、確実に根付かせる為に、移植の前にあらかじめ根を切断して細い根を出させること。

◆肥料

肥沃な土地では肥料はほとんど必要ありませんが、やせ地や乾燥地では、有機質に富んだものを寒肥としてたっぷり与えます。

冬期の1月から2月に、元肥として堆肥に鶏糞と骨粉を混ぜて、株回りに埋め込みます。

追肥は花の後に、少量の化成肥料のばら蒔きと、8月末にリン酸カリ分の多い化成肥料を、成木の場合で500㌘以内ばら蒔きます。

花つきのよい樹種ですが、あまり花つきが思わしくない場合は、花芽形成の終わる8月下旬から9月上旬頃に、チッ素分の少ない化成肥料を少量施すとよいでしょう。


                        「ミカイドウ」

◉病害虫

4月頃にアブラムシが発生する場合があります。

葉が巻いてしまわないように、早めにマラソン乳剤やスミチオン乳剤の1000倍液を定期的に散布し駆除します。

また、4月から8月にかけて発生するカミキリムシの場合は、長いヒゲをもった甲虫ですので見つけしだい捕殺するか、スミチオン1000倍液を散布します。

「サビ病」には、冬期の1月から2月に石灰硫黄合剤の30倍液を散布して病気を予防し、これは同時に殺虫効果もありますので、2~3回散布します。

また、発生時期(4月から9月)には、ベンレート水和剤2000倍液かサプロール乳剤を、月に2~3回散布します。

※注意
石灰硫黄合剤は冬期以外での使用は厳禁薬剤です。

厳守しましょう。

薬害が起きてしまう危険があります。

◆カイドウの剪定·整姿

生長が旺盛な樹種です。

込み枝やふところ枝、徒長枝ができやすいので、落葉期の1月から2月にかけて整理します。

花芽は充実した短い枝につき、長い枝にはつきません。

花後の剪定は、長い枝を10~20㎝ほど残して切り詰めると、その基部から短い枝が出て翌年の開花枝となります。

この枝を切ってしまうと花が咲きません。

また、樹勢が強すぎて枝葉の生長に養分を取られると、年々花つきが悪くなることがあります。

その場合は、春先に株元の一部を掘り、根の一部を切っておくと翌年の花つきがよくなります。


★カイドウの殖やし方

接ぎ木で殖やします。

ミツバカイドウの実生苗(2年生)を台木とし、3月下旬に充実した新梢をつぎ穂にして切り接ぎにします。


✻ノカイドウ(野海棠)

鹿児島県霧島山のみに自生する。
えびの高原のものは、国の天然記念物に指定されている。

1910年(明治43年)に発見され、牧野富太郎博士によって「ノカイドウ」と命名され、新種として発表された。


                         「ノカイドウ」


✻近似種に宮崎県高鍋町の固有花木
「タカナベカイドウ」があり高鍋では「牟田桜」とも呼ばれている。


       「タカナベカイドウ、牟田桜」

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植物を愛し続けた博士
ブログNo,395
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